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ゴノ闘技場編
王国騎士セツナの実力
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「大人しく捕まる気はないらしいな……ふふっ、丁度暇を持て余していた所だ。リン、お前は下がっていろ!!手を出すなよ!!」
「セツナ様……まさか、御一人で戦うつもりですか?」
「何か問題あるか?私がこんな変な仮面を付けた奴等に後れを取ると思うか?」
「……いえ、分かりました」
セツナの言葉にリンは少々呆れた表情を浮かべるが、後ろに下がる。その様子を見ながらもレノはセツナと向き合い、どのように戦うべきか考えた。まず、戦闘は避ける事が出来ず、逃げようにも先ほどから倒れたまま動かないドリスを放置するわけにはいかなかった。
ここへ訪れた時の地下通路の抜け道は残っており、そこを通れば闘技場に出られる。だが、それをセツナが黙って見過ごすはずがない。ならばどうするか、答えは簡単だった。自分が足止めして他の二人を逃がす、それ以外にレノに選択肢はなかった。
(ネココ、俺が時間を稼ぐからドリスを頼む)
(……無謀過ぎる、一人で勝てる相手じゃない)
(大丈夫……何とかするよ)
ネココはレノの言葉に信じられない表情を浮かべるが、証拠品が入った収納鞄をレノはネココに押し付けると、剣を構えた状態でセツナと向かい合う。その様子を見てセツナは一人で自分に挑むつもりなのかと意外な表情を浮かべる。
「ほう、まさか一人で私に挑むつもりか?いい度胸だな……さっきの吸血鬼の二の舞になる事を考えないのか?」
「……どうかな」
「まあいい、言っておくがそこに倒れている女も猫耳の方も逃がすつもりはない。もしも一歩でも動けばお前達も氷漬けにするぞ」
セツナはレノ以外の二人にも警戒を解かず、倒れているドリスの元に向かおうとしたネココは彼女の言葉に動きを止める。一方でレノの方はセツナに視線を外さず、どのように仕掛けるのかを考えた。
(相手は王国騎士、しかもドリス以上の使い手……なら、戦力で挑むしかない!!)
レノは魔法の鞘に取り付けた風属性の魔石と、指輪に取り付けた火属性の魔石から魔力を引き出し、既に刀身に纏わせていた炎を更に強化させる。その様子を見たリンは驚き、セツナも火力を増したレノの荒正を見て目を見開く。
「これは……!?」
「セツナ様!!お気を付けください!!」
「火炎……旋風!!」
刀身に纏わせた炎を利用してレノは炎の竜巻を発生させ、自分が繰り出せる最高の技を放つ。この魔法剣はトレントを葬り去った今のレノの最強の魔法剣だが、迫りくる火炎の竜巻に対してセツナは剣を構えると、刀身から冷気を放ちながら剣を振り下ろす。
「氷華」
「なっ!?」
セツナが剣を突き出した瞬間、華の形をした氷の塊が出現すると、正面からレノが繰り出した炎の竜巻を受け止め、火炎と氷が合わさった瞬間に煙を上げて消えていく。結果から言えばレノの火炎旋風は氷の華によって防がれてしまう。
二つの魔石から魔力を引き出した一撃さえも顔色を変えずに防ぎ切ったセツナに対してレノは呆然とした表情を浮かべ、一方でセツナは火炎の剣を繰り出したレノを見て余裕の笑みを浮かべた。
「中々の火力だ。どこぞの金髪女に見習わせたいぐらいだ」
「くっ……!!」
火炎旋風が防がれた事でレノはもう打つ手はなく、この技以上の攻撃は今のレノに繰り出す事は出来ない。祖父から教わった剣技も、自分の編み出した魔法剣も、今の段階ではセツナに通用しない事をレノは理解する。
「さあ、次はどうする?もう打つ手がないというのであれば終わりだぞ」
「降伏する事をお勧めします、これ以上に無駄な抵抗は止めた方がいいかと」
「うっ……!?」
セツナが近寄るとレノは後退る事しか出来ず、そんな彼にリンは降伏するように促す。確かにこのまま対抗手段が思いつかなければどうしようもなく、諦めるしかないかと思われた時、ここで廊下に足音が鳴り響く。
「何だ、今の音は!?」
「何事だ!!」
「書斎の方からだぞ!!」
ここで遅れて騒動を聞きつけた屋敷の兵士達が駆けつけたらしく、その様子に気付いたリンが彼等に書斎に近付かないように命じる。
「止まりなさい!!侵入者です、我々が対応しますので近づかないでください!!」
「侵入者だって!?」
「た、大変だ!!すぐに伯爵に知らせなければ……」
「全く、騒がしい奴等だ……」
兵士達の声を耳にしたセツナは面倒そうに振り返ると、その姿を見てレノは攻撃を仕掛ける好機だと判断した。一瞬でも彼女が別の事に気を取られている隙にレノは魔法腕輪に視線を向け、腕輪に新しく嵌め込んだ水属性の魔石に視線を向けた。
(そうだ、俺にはまだこれが残ってる……やるしかない!!)
自分の魔法腕輪に装着した水属性の魔石に視線を向け、一か八かの賭けになるがレノは最後の攻撃を繰り出す。
「セツナ様……まさか、御一人で戦うつもりですか?」
「何か問題あるか?私がこんな変な仮面を付けた奴等に後れを取ると思うか?」
「……いえ、分かりました」
セツナの言葉にリンは少々呆れた表情を浮かべるが、後ろに下がる。その様子を見ながらもレノはセツナと向き合い、どのように戦うべきか考えた。まず、戦闘は避ける事が出来ず、逃げようにも先ほどから倒れたまま動かないドリスを放置するわけにはいかなかった。
ここへ訪れた時の地下通路の抜け道は残っており、そこを通れば闘技場に出られる。だが、それをセツナが黙って見過ごすはずがない。ならばどうするか、答えは簡単だった。自分が足止めして他の二人を逃がす、それ以外にレノに選択肢はなかった。
(ネココ、俺が時間を稼ぐからドリスを頼む)
(……無謀過ぎる、一人で勝てる相手じゃない)
(大丈夫……何とかするよ)
ネココはレノの言葉に信じられない表情を浮かべるが、証拠品が入った収納鞄をレノはネココに押し付けると、剣を構えた状態でセツナと向かい合う。その様子を見てセツナは一人で自分に挑むつもりなのかと意外な表情を浮かべる。
「ほう、まさか一人で私に挑むつもりか?いい度胸だな……さっきの吸血鬼の二の舞になる事を考えないのか?」
「……どうかな」
「まあいい、言っておくがそこに倒れている女も猫耳の方も逃がすつもりはない。もしも一歩でも動けばお前達も氷漬けにするぞ」
セツナはレノ以外の二人にも警戒を解かず、倒れているドリスの元に向かおうとしたネココは彼女の言葉に動きを止める。一方でレノの方はセツナに視線を外さず、どのように仕掛けるのかを考えた。
(相手は王国騎士、しかもドリス以上の使い手……なら、戦力で挑むしかない!!)
レノは魔法の鞘に取り付けた風属性の魔石と、指輪に取り付けた火属性の魔石から魔力を引き出し、既に刀身に纏わせていた炎を更に強化させる。その様子を見たリンは驚き、セツナも火力を増したレノの荒正を見て目を見開く。
「これは……!?」
「セツナ様!!お気を付けください!!」
「火炎……旋風!!」
刀身に纏わせた炎を利用してレノは炎の竜巻を発生させ、自分が繰り出せる最高の技を放つ。この魔法剣はトレントを葬り去った今のレノの最強の魔法剣だが、迫りくる火炎の竜巻に対してセツナは剣を構えると、刀身から冷気を放ちながら剣を振り下ろす。
「氷華」
「なっ!?」
セツナが剣を突き出した瞬間、華の形をした氷の塊が出現すると、正面からレノが繰り出した炎の竜巻を受け止め、火炎と氷が合わさった瞬間に煙を上げて消えていく。結果から言えばレノの火炎旋風は氷の華によって防がれてしまう。
二つの魔石から魔力を引き出した一撃さえも顔色を変えずに防ぎ切ったセツナに対してレノは呆然とした表情を浮かべ、一方でセツナは火炎の剣を繰り出したレノを見て余裕の笑みを浮かべた。
「中々の火力だ。どこぞの金髪女に見習わせたいぐらいだ」
「くっ……!!」
火炎旋風が防がれた事でレノはもう打つ手はなく、この技以上の攻撃は今のレノに繰り出す事は出来ない。祖父から教わった剣技も、自分の編み出した魔法剣も、今の段階ではセツナに通用しない事をレノは理解する。
「さあ、次はどうする?もう打つ手がないというのであれば終わりだぞ」
「降伏する事をお勧めします、これ以上に無駄な抵抗は止めた方がいいかと」
「うっ……!?」
セツナが近寄るとレノは後退る事しか出来ず、そんな彼にリンは降伏するように促す。確かにこのまま対抗手段が思いつかなければどうしようもなく、諦めるしかないかと思われた時、ここで廊下に足音が鳴り響く。
「何だ、今の音は!?」
「何事だ!!」
「書斎の方からだぞ!!」
ここで遅れて騒動を聞きつけた屋敷の兵士達が駆けつけたらしく、その様子に気付いたリンが彼等に書斎に近付かないように命じる。
「止まりなさい!!侵入者です、我々が対応しますので近づかないでください!!」
「侵入者だって!?」
「た、大変だ!!すぐに伯爵に知らせなければ……」
「全く、騒がしい奴等だ……」
兵士達の声を耳にしたセツナは面倒そうに振り返ると、その姿を見てレノは攻撃を仕掛ける好機だと判断した。一瞬でも彼女が別の事に気を取られている隙にレノは魔法腕輪に視線を向け、腕輪に新しく嵌め込んだ水属性の魔石に視線を向けた。
(そうだ、俺にはまだこれが残ってる……やるしかない!!)
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