力も魔法も半人前、なら二つ合わせれば一人前ですよね?

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
197 / 215
ゴノ闘技場編

牙狼団の協力

しおりを挟む
――ロウガと思わぬ再会を果たした後、レノ達は牙狼団が拠点としている建物へと案内され、そこで身体を洗って新しい服と食事を用意してくれる。そして改めてレノ達はロウガと対面し、何があったのかを話す。


「そういう事だったのか……なるほど、つまりお前達もゴノ伯爵に狙われたのか」
「はい……あの、今はカジノはどうなっていますか?」
「大変な事になっているそうだな、なんでも貴族を狙った犯罪者が現れて騒動を引き起こしたという噂が広がっている。既に手配書も配られているぞ」
「何ですって!?」
「……動きが早過ぎる」


机の上にロウガは手配書を置くと、そこにはレノ達の似顔絵が記されていた。内容を確認した限り、どうやら先に逃げ出したアルトの似顔絵は描かれていなかったが、レノに関しては変装を止めてしまったので素顔が記されていた。


「今、街中では警備兵が出回っている。街中の傭兵達にもこの犯罪者を捕まえた者には高額の賞金を与える事が約束された。お前達を見つけたのは俺でよかったな」
「……どうして貴方は私達を助けてくれるの?」
「恩人を売るような真似はしない、お前達のお陰で俺の弟分を殺した犯人を突き止めることが出来た。それだけでお前達を助けるには十分な理由だろう」
「義理堅いですわね……そういう人は嫌いじゃありませんわ」


ロウガの言葉にドリスは騎士道精神に通じるものがあり、素直に感謝する。一方でレノの方は自分の似顔絵が街中に配布された事を知り、これでゴノ伯爵の不正を明かす事が出来なければ自分は犯罪者として指名手配される。


「くそっ、ここまでするなんて……いや、当たり前か」
「カジノはゴノ伯爵にとっては闘技場に次ぐ大きな収入源だ。カジノで騒動を起こせばこうなる事はこうなる事は予測できただろう?」
「でも、納得できませんわ!!悪いのは伯爵の方なのに……」
「……まあ、私達も不正の証拠を掴むためとはいえ、少しやり過ぎた」


レノ達も多少は無茶なやり方で調査を行ったのも事実のため、指名手配された事に関しては仕方がない面もある。だが、これで後には引けず、ゴノ伯爵の不正を正さなければレノはこれからお尋ね者として生きていく羽目になりかねない。

現在の街は警備兵や傭兵が出回り、外に出歩くのは危険過ぎた。この建物の中は牙狼団がいるので安全ではあるが、ネズミ婆さんの隠れ家である廃墟街へ向かうのは難しく、アルトたちとの合流は先になりそうだった。


「あ、そういえば……ここにネカという商人は来ませんでした?腕利きの傭兵を探しているようだから、ここを紹介したんですけど」
「ネカ?ああ、あの男か。話は聞いている、俺達に護衛をしてほしいそうだな。報酬も条件も悪くはないし、中々気前のいい男だった」


ネカは既に牙狼団との交渉を終えたらしく、現在はロウガが信頼する部下に護衛を任せているという。ネカが無事であった事に安堵する一方、レノ達はこれからどうするのか悩む。


「ドリス、私が持ち帰った羊皮紙……不正の証拠になりそう」
「う~ん……ネココさんの持ち帰った資料はカジノの帳簿の様ですわ。確認した限り、ゴノ伯爵は明らかに横領していますわね。ですけど……」
「何か気になるの?」
「ゴノ伯爵はカジノと闘技場で得た資金を利用して他の貴族にも賄賂を贈っているはずですわ。だから、私が訴えても他の貴族がゴノ伯爵を庇う可能性があります。そうなると、やはりゴノ伯爵と他の貴族が繋がっている証拠、賄賂を渡した証拠や手紙があればよかったのですけれど……」


ネココが持ちかえった証拠だけではゴノ伯爵の悪行を全て証明する証拠とはなり得ず、このままドリスが王国騎士として彼の不正を訴えても他の貴族がゴノ伯爵と結託すれば訴えは取り下げられる可能性が高かった。

苦労してカジノに忍び込んだにも関わらず、証拠不十分という結果にレノ達はため息を吐くが、ここで話を聞いていたロウガが口を挟む。


「それならば奴の屋敷に忍び込めばいいんじゃないか?」
「奴の屋敷……まさか、ゴノ伯爵の屋敷の事を言ってますの!?」
「そんな無茶な……」
「だが、奴の屋敷ならば確実に証拠になる物があるだろう」
「……確かに」


ロウガの言葉にネココは頷き、確かにゴノ伯爵の屋敷ならば彼が不正を行っている事を証明する証拠はあるのは確実だった。だが、ゴノ伯爵もそれを想定して屋敷の警備を高めているはずであり、簡単に忍び込めるはずがない。


「伯爵の屋敷に忍び込むにしても、何か方法がありますの?」
「ある、奴の屋敷で働いていた使用人から聞き出した情報によると、奴の屋敷には抜け道が存在するらしい」
「抜け道……どうしてそんな物を?」
「奴は敵が多いからな……万が一の場合を想定し、自分だけでも逃げ延びれるように脱出路を用意しているようだ」


ゴノ伯爵は自分が命を狙われた場合を想定し、屋敷に抜け道を作り出していると使用人の間で噂になったらしい。その噂を何処でロウガは聞きつけたかというと、実はその使用人とは彼の妹らしい。





※しばらくは2話投稿になります。
しおりを挟む
感想 53

あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

悠久のクシナダヒメ 「日本最古の異世界物語」 第一部

Hiroko
ファンタジー
異世界に行けると噂の踏切。 僕と友人の美津子が行きついた世界は、八岐大蛇(やまたのおろち)が退治されずに生き残る、奈良時代の日本だった。 現在と過去、現実と神話の世界が入り混じる和の異世界へ。 流行りの異世界物を私も書いてみよう! と言うことで書き始めましたが、どうしようかなあ。 まだ書き始めたばかりで、この先どうなるかわかりません。 私が書くと、どうしてもホラーっぽくなっちゃうんですよね。 なんとかなりませんか? 題名とかいろいろ模索中です。 なかなかしっくりした題名を思いつきません。 気分次第でやめちゃうかもです。 その時はごめんなさい。 更新、不定期です。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...