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ゴノ闘技場編
ミノタウロス
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「あそこを抜ければ外まで行けますわ!!」
「よし、急ごう!!」
「……待って!!」
レノとドリスは最初に入ってきた扉から抜け出そうとするが、ここでネココの猫耳が反応し、扉の外から複数の足音を耳にした。彼女はレノとドリスの腕を掴んで出入口から離れると、新手の兵士が駆けつけてきた。
「いったい何事だ!?これは何の騒ぎだ!!」
「警備隊長!!こいつらが騒ぎを起こしたんです!!」
「そいつらを捕まえてください!!」
「くっ……!!」
扉から続々と兵士が出現し、これでは数が多すぎて強行突破は不可能だった。他の扉からも兵士が封鎖しており、レノ達は退路を塞がれてしまう。
「さ、流石にこれだけの数の兵士は相手に出来ませんわ!!」
「弱音は吐かない……ここまで来たのに捕まるわけにはいかない」
「ネココの言う通りだ。けど、どうすれば……」
全ての扉を兵士に封じられてしまったレノは必死に逃げ道を探すが、ここである事を思い出す。それはまだ兵士が封じていない出入口が存在し、それは広間の中央に存在する試合場の扉だった。
あの試合場の扉の先がどうなっているのかは不明だが、少なくとも他の扉は封鎖されている以上は他に選択肢はなく、レノは試合場へ逃げるように促す。
「二人とも、あそこから逃げよう!!」
「えっ……正気ですの!?」
「……他に道はない」
レノが試合場を指差すとドリスは信じられない表情を浮かべるが、そんな彼女の腕をネココは掴み、3人は試合場へと向かう。その様子を見て兵士達は後を追いかけてきた。
「逃がすな!!追えっ!!」
「こ、このままだと捕まってしまいますわ!?」
「いいから、喋っている暇があるなら走って!!」
「うおおおおっ!!」
魔物同士や薬によって暴走した傭兵が戦う場所のため、観客に危害を与えないように鉄格子で覆い込まれた試合場だが、レノは荒正を振りかざして火炎剣を発動させる。ドリスも同様に魔剣を引き抜き、二人は同時に鉄格子に刃を振り抜く。
「火炎剣!!」
「爆炎剣!!」
『うわぁっ!?』
二人の炎の剣が鉄格子を破壊し、試合場の中へと3人は飛び込む。その様子を見て兵士達は慌てふためき、鉄格子の前で降りた3人を見下ろす。
試合場には2つの出入口が存在し、その片方に目掛けてレノは荒正を振りかざすと、嵐刃で扉を破壊する。そのまま3人は破壊した扉を越えて奥へと進むと、そこには煉瓦で構成された通路が広がっていた。
「カトレアはこの試合場から俺達の元へ来た!!という事はここの何処かに上に繋がる通路があるんだ!!」
「なるほど、それを見つけ出して脱出するんですね!?」
「……早く移動した方がいい、兵士が追いかけてくる」
レノの言葉にドリスは納得すると、ネココは後方を確認して兵士達がレノ達が破壊した鉄格子から降りてくる様子が伺えた。中には傭兵の姿も存在し、その中には人間よりも身体能力が高い獣人族の傭兵もちらほらと見えた。
「何としても捕まえろ!!捕まえた奴には褒美を渡すぞ!!」
「その言葉、嘘じゃないだろうな!?」
「よし、俺が捕まえてやる!!」
「くっ……!!」
試合場の方から聞こえてくる声を耳にしてレノ達は通路を移動し、上の階へと繋がる場所を探す。大型の魔物が通り抜けるために設計されたのか、通路の天井や横幅は広く、巨人族でも通り抜ける事が出来る程に広かった。
「すんすんっ……ここの扉が獣臭い、きっと魔物がこの扉の奥に閉じ込められている」
「本当ですの!?」
「魔物か……よし、二人は先に進んで!!」
レノはネココが魔物の臭いを感じ取った扉を開くと、彼女の予想通りというかそこには大量の檻が設置された広間が存在し、その檻の中には様々な種類の魔物が捕まっていた。その様子を確認したレノは魔物種類を確認し、彼等を解き放って自分達が逃げるまでの間、兵士の足止めさせようと考える。
客を楽しませるためか、檻の中には十数種類の魔物が閉じ込められた状態で放置され、その中にはレノが初めて見る魔物も多かった。そして彼が一番に注目したのは広間の一番奥に設置されている檻の中に佇む牛頭の巨人の姿だった。
「あれはまさか……!?」
「レノさん、何をしていますの!?」
「早く来ないと追いつかれる!!」
部屋の扉の方からドリスとネココの声が聞こえ、レノは考えている暇はないと判断し、荒正を構えて一番奥の檻へ目掛けて嵐刃を放つ。嵐刃によって檻の扉を施錠していた南京錠が破壊されると、物音を耳にした牛頭の巨人が振り返る。
――檻の中に閉じ込められていたのは身長が2メートルは存在する牛の頭に人間のような胴体を持つ生物だった。全身は黒色の皮膚と体毛に覆われ、その両腕と両足には枷が嵌められていた。
山暮らしのレノでさえも耳にした事がある有名な魔物であり、この試合場で囚われた魔物の中で最も危険な存在である「ミノタウロス」が解放されようとしていた。
「よし、急ごう!!」
「……待って!!」
レノとドリスは最初に入ってきた扉から抜け出そうとするが、ここでネココの猫耳が反応し、扉の外から複数の足音を耳にした。彼女はレノとドリスの腕を掴んで出入口から離れると、新手の兵士が駆けつけてきた。
「いったい何事だ!?これは何の騒ぎだ!!」
「警備隊長!!こいつらが騒ぎを起こしたんです!!」
「そいつらを捕まえてください!!」
「くっ……!!」
扉から続々と兵士が出現し、これでは数が多すぎて強行突破は不可能だった。他の扉からも兵士が封鎖しており、レノ達は退路を塞がれてしまう。
「さ、流石にこれだけの数の兵士は相手に出来ませんわ!!」
「弱音は吐かない……ここまで来たのに捕まるわけにはいかない」
「ネココの言う通りだ。けど、どうすれば……」
全ての扉を兵士に封じられてしまったレノは必死に逃げ道を探すが、ここである事を思い出す。それはまだ兵士が封じていない出入口が存在し、それは広間の中央に存在する試合場の扉だった。
あの試合場の扉の先がどうなっているのかは不明だが、少なくとも他の扉は封鎖されている以上は他に選択肢はなく、レノは試合場へ逃げるように促す。
「二人とも、あそこから逃げよう!!」
「えっ……正気ですの!?」
「……他に道はない」
レノが試合場を指差すとドリスは信じられない表情を浮かべるが、そんな彼女の腕をネココは掴み、3人は試合場へと向かう。その様子を見て兵士達は後を追いかけてきた。
「逃がすな!!追えっ!!」
「こ、このままだと捕まってしまいますわ!?」
「いいから、喋っている暇があるなら走って!!」
「うおおおおっ!!」
魔物同士や薬によって暴走した傭兵が戦う場所のため、観客に危害を与えないように鉄格子で覆い込まれた試合場だが、レノは荒正を振りかざして火炎剣を発動させる。ドリスも同様に魔剣を引き抜き、二人は同時に鉄格子に刃を振り抜く。
「火炎剣!!」
「爆炎剣!!」
『うわぁっ!?』
二人の炎の剣が鉄格子を破壊し、試合場の中へと3人は飛び込む。その様子を見て兵士達は慌てふためき、鉄格子の前で降りた3人を見下ろす。
試合場には2つの出入口が存在し、その片方に目掛けてレノは荒正を振りかざすと、嵐刃で扉を破壊する。そのまま3人は破壊した扉を越えて奥へと進むと、そこには煉瓦で構成された通路が広がっていた。
「カトレアはこの試合場から俺達の元へ来た!!という事はここの何処かに上に繋がる通路があるんだ!!」
「なるほど、それを見つけ出して脱出するんですね!?」
「……早く移動した方がいい、兵士が追いかけてくる」
レノの言葉にドリスは納得すると、ネココは後方を確認して兵士達がレノ達が破壊した鉄格子から降りてくる様子が伺えた。中には傭兵の姿も存在し、その中には人間よりも身体能力が高い獣人族の傭兵もちらほらと見えた。
「何としても捕まえろ!!捕まえた奴には褒美を渡すぞ!!」
「その言葉、嘘じゃないだろうな!?」
「よし、俺が捕まえてやる!!」
「くっ……!!」
試合場の方から聞こえてくる声を耳にしてレノ達は通路を移動し、上の階へと繋がる場所を探す。大型の魔物が通り抜けるために設計されたのか、通路の天井や横幅は広く、巨人族でも通り抜ける事が出来る程に広かった。
「すんすんっ……ここの扉が獣臭い、きっと魔物がこの扉の奥に閉じ込められている」
「本当ですの!?」
「魔物か……よし、二人は先に進んで!!」
レノはネココが魔物の臭いを感じ取った扉を開くと、彼女の予想通りというかそこには大量の檻が設置された広間が存在し、その檻の中には様々な種類の魔物が捕まっていた。その様子を確認したレノは魔物種類を確認し、彼等を解き放って自分達が逃げるまでの間、兵士の足止めさせようと考える。
客を楽しませるためか、檻の中には十数種類の魔物が閉じ込められた状態で放置され、その中にはレノが初めて見る魔物も多かった。そして彼が一番に注目したのは広間の一番奥に設置されている檻の中に佇む牛頭の巨人の姿だった。
「あれはまさか……!?」
「レノさん、何をしていますの!?」
「早く来ないと追いつかれる!!」
部屋の扉の方からドリスとネココの声が聞こえ、レノは考えている暇はないと判断し、荒正を構えて一番奥の檻へ目掛けて嵐刃を放つ。嵐刃によって檻の扉を施錠していた南京錠が破壊されると、物音を耳にした牛頭の巨人が振り返る。
――檻の中に閉じ込められていたのは身長が2メートルは存在する牛の頭に人間のような胴体を持つ生物だった。全身は黒色の皮膚と体毛に覆われ、その両腕と両足には枷が嵌められていた。
山暮らしのレノでさえも耳にした事がある有名な魔物であり、この試合場で囚われた魔物の中で最も危険な存在である「ミノタウロス」が解放されようとしていた。
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