力も魔法も半人前、なら二つ合わせれば一人前ですよね?

カタナヅキ

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ゴノ闘技場編

アリスラとの再戦

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「あぢぃっ!?あちちちっ!?」
「げ、ゲイツさん!?大丈夫ですか!?」
「あれ、その腕……」
「どうして右腕が……」


悲鳴を上げて床を転がりまわるゲイツを見て兵士達は慌てて駆けつけるが、すぐに彼の右腕が存在する事に驚く。一方でレノは炎を纏った義手に視線を向け、やはり本物の義手ではなく、腕鉄甲の類だと知る。


「義手にしては妙に指が動くからおかしいと思っていたけど……やっぱり偽物だったのか」
「え?という事は……この男、義手を付けていたふりをしていたんですの?」
「爺ちゃんに腕を斬られたという話も嘘だったのか?」
「う、ううっ……!?」


ゲイツは右腕を隠すように抑えるが、今更誤魔化す事は出来ずに顔色を青くさせる。ゲイツはかつてロイに腕を斬られたと言っていたが、実際はただのでまかせで彼はそもそもロイと戦ってすらいない。



――かつてゲイツは戦場にてロイと遭遇したのは事実だが、あまりの彼の強さにロイは恐怖を抱き、まともに戦わずに逃げ出してしまった。その後、ロイが姿を消してからはゲイツはロイの名声を利用し、あの伝説の傭兵と戦った男として名を広めようとした。

偶然にも手に入った魔道具を利用し、彼はロイに腕を斬られたと周囲に言いふらして右腕に腕鉄甲型の魔道具を身に付ける。魔道具の類ならば義手を細かに動かしても魔道具の性能だと言い張れば誤魔化す事は出来た。また、魔道具に魔石を取りつける事でまるで魔法剣のように闘拳に魔力を纏う性能もあったため、戦闘面でも十分に役立った。

ロイの名声を利用して名を知らしめ、更に高性能の魔道具を手にしたゲイツは傭兵の間では「鋼腕のゲイツ」という名前が広がり、1年ほど前に蝙蝠に誘われて入団した。入団後は表向きは自分が引退したという噂を広げ、実際の所は蝙蝠の元で裏稼業を行って生きてきたが、遂にずっと隠していた秘密が知られてしまう。



「爺ちゃんの名前を利用して、しかもこんな魔道具を頼って戦っていたなんて……」
「他人の名声を利用して名を上げるなんて恥ずかしくないんですの!?」
「う、うるせえっ!!お前等、さっさとこいつ等を殺せっ!!」
『…………』


ゲイツの命令に兵士と傭兵達は互いの顔に視線を向け、彼等も明らかにゲイツの正体に落胆していた。周囲の反応に気付いたゲイツは冷や汗を流し、慌てて言い訳を行う。


「お、おい!!何してんだお前等、こいつらは標的だぞ!!さっさと殺さないとお前達の立場も危なくなるんだぞ!!あの人に殺されたいのか!?」
「そ、それは……」
「忘れたのか!!ここのカジノの主を!?失敗すれば俺達の命はないんだぞ!!」


最終的にはカジノを取り仕切る人物を利用して他の者を煽るゲイツにレノは呆れると、この時に彼の背後から近づく人影が存在し、その人物は容赦なくゲイツの頭を掴むと地面に叩き込む。


「見苦しんだよ、馬鹿がっ!!」
「あぐぅっ!?」
「あ、貴女は!?」
「……まさか、アリスラ?」


ゲイツの背後から現れたのはネココの元相棒であるアリスラであり、彼女はゲイツの頭を掴むと容赦なく柱へと叩きつける。その際にゲイツは額から血を流し、白目を剥く。

一撃でゲイツを気絶させたアリスラはため息を吐き出すと、彼を床へと放り投げる。その様子を見ていた兵士達はアリスラの登場に動揺し、一方でレノとドリスは再びの対面に戸惑う。


「たくっ、馬鹿な男だね。実力はあるのにやり方がせこすぎなんだよ、あんたは」
「アリスラさん……どうしてここに?」
「決まってるだろ、怪我も治った事だし、私を追い詰めた奴等に復讐さ」


アリスラは背中の双剣を引き抜くとレノとドリスに身構え、笑みを浮かべる。アリスラの実力を知っているドリスは緊張するが、一方でレノは周囲の様子を伺う。


「他の二人は?」
「ジャドクの爺さんならここにいるよ。キルの奴は……ありゃ、駄目だね。心が完全に折れちまったから使い物にならない」
「あの老人もいるんですのね……」


やはりというべきか一度倒した相手とはいえ、生きていればまた戦う事になるのは予想できていた。しかし、こんなにも早く再戦の機会が訪れるとは思わなかったドリスは冷や汗を流す。


「さあ、あんたらは下がっていな。正直に言って足手まといだからね、その馬鹿を連れて離れな!!」
「は、はい!!」
「おい、起きろ!!駄目か……完全にのびてやがる」
「たくっ、仕方ねえな……おい、運ぶぞ!!」


気絶したゲイツは他の傭兵が雑に運び出し、その様子をレノとドリスは敢えて見逃す。腕鉄鋼がなければゲイツなど脅威ではなく、問題はアリスラだった。ネココは奇襲を仕掛けて彼女を倒す事に成功したが、純粋な実力はアリスラが上回る。

ドリスとレノは二つの剣を持つアリスラと向かい合い、意を決して動き出そうとした瞬間、天井のシャンデリアから聞き覚えのある声が響く。
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