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ゴノ闘技場編

傭兵の殺し合い

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『さあ、対戦相手は現在5勝1敗のマモル選手です!!』
「あおぉおおおんっ!!」
「こら、暴れるな!!」
「くそっ、薬が切れてきやがったか!!」
「さっさと来い!!」


複数名の兵士が試合場に現れると、鎖で囚われた獣人族の男性が現れた。男性は正気を失ったかの様にまるで獣のような咆哮を放ち、兵士達に無理やり試合場へと連れ出される。

その様子を見てレノ達はダイゴもマモルも普通の状態ではない事を察し、どちらも理性を失っているように見えた。比較的にダイゴの方が興奮してはいるが無暗に暴れ回る様子はなく、一方でマモルの方はまるで本当の獣のように荒れ狂っていた。


「あれはまさか……」
「アルト?」
「いや……決めつけるのはまだ早いか、しかしどう見ても……」
『それではこれより試合を開始致します!!皆様、勝ち上がると思った方に賭けてください!!』
「よし、ダイゴに金貨2枚だ!!」
「マモルに金貨1枚だ!!」


バニーガールの言葉に試合場の周囲に存在した者達が金貨を掲げ、試合の選手に賭けを行う。すぐに兵士達が観客の元に駆けつけ、賭けを行う。その様子を見てアルトは考え込み、試合場へと近寄る。


「少しだけ様子を見よう」
「ちょ、ちょっとアルトさん?私達の目的は……」
「どうしても彼等の事が気になるんだ。君、ここの席に座らせてもらうよ」
「ええ、どうぞどうぞ。一般席ならば何処にでも座っても構いませんよ」


アルトは近くにいた兵士に話しかけ、試合場から一番離れた席に座り込む。試合場から近い距離の席はどうやら予約制らしく、貴族の客が独占していた。一方で試合場から離れた席は自由に座れるらしく、目立たないように気を配りながらもアルトは試合場の選手二人の様子を伺う。


『それでは試合を開始致します!!皆様、心の準備はいいですね?では、試合開始!!』
「うおおおおっ!!」
「があああっ!!」


試合開始の合図の鐘の音が鳴らされると、ダイゴとマモルは同時に動き出し、対戦相手へと向かう。互いに示し合わせたかのように頭部を繰り出し、お互いに頭突きを行う。


「ふんっ!!」
「うあっ!?」
『おっと、いきなりマモル選手が倒れた!!やはり体格差が大きすぎたか!?』


巨人族のダイゴの方がやはり膂力は上回るらしく、頭同士が衝突するとマモルは地面へと倒れ込む。そんなマモルに対してダイゴは容赦なく右足を上げて踏みつぶそうとした。

しかし、踏みつぶされる寸前にマモルは身体を転がして回避すると、彼は獣人族の身軽さを利用して即座に態勢を整え、空中へ跳躍を行う。


「うがぁあっ!!」
「ぐえっ!?」


マモルの跳び蹴りがダイゴの鼻頭に的中し、派手に鼻血を噴き出しながらダイゴは後退る。その光景を見て観客席の貴族は沸き上がり、生の戦闘を見て興奮が抑えきれない状態だった。


「いいぞいいぞ、やってしまえ!!」
「何をしている!!さっさと殺せっ!!」
「こ、この方達……人の命を何だと思っているんですの!?」
「落ち着いて……目立ったらまずい」


ドリスは観客の反応を見て不快感を露にするが、一方でアルトの方は注意深く選手の観察を行い、レノも戦っている選手の様子が気になった。まるで二人とも理性を失ったかのように戦法もなにもなく戦い、相手を殺そうとしている様にしか見えなかった。


(こんなの、まるで獣同士の殺し合いじゃないか……)


まるで本物の獣のように無我夢中で相手を倒すために戦う選手達の様子を見て背筋が凍り、その光景を他の人間達が楽しみながら見守る様子の異常さに吐き気を催す。

鉄格子に取り囲まれたダイゴとマモルは二頭の獣と化して殺し合い、遂には一方的な展開になってきた。最初は押していたダイゴだったが、鼻血が泊まらずにどんどんと血を流し始め、動きが鈍くなっていく。


「ぐううっ……ああっ!?」
「うがあああっ!!」
『決まったぁっ!!マモル選手、十八番の噛みつき攻撃!!』


鼻から血が流れるのが泊まらず、頭に血が回らなくなったのかダイゴの動きが鈍り、その隙にマモルは口を開いてダイゴの頸動脈に噛みつく。まるで狼やコボルトのように噛みつくその姿に観客は圧倒され、最終的には首の肉ごと噛み千切る。


「ぐぎぃいいいいっ!!」
「あがぁっ!?」
『そこまで!!勝者、マモル!!』
『うおおおおっ!!』


巨人族のダイゴの首から血飛沫が舞い上がり、やがて力を失った人形のように倒れ込む。その様子を見てドリスは目を背け、アルトも口元を覆い、ネココも眉をしかめる。レノは倒れたダイゴに視線を向け、言いようのない感情を抱く。


(死んだ……!?)


ダイゴの様子はどう見ても助かる傷ではなく、試合場の床に流れた血液量から考えても回復薬や回復魔法の類でも治療は間に合わない事は明白だった。その様子を見てレノは身体が震え、人の死を目にして動揺せずにはいられなかった。
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