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ゴノ闘技場編
目撃者の尋問
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ロウガの指示の元、キバが殺害された現場を見た目撃者の傭兵が姿を現すと、彼はどうして自分が呼び出されたのかとおどおどとした態度で尋ねる。
「だ、団長……俺に用事があると聞いたんですけど、どうかしました?」
「ああ、この男がお前にいくつか質問したいらしい」
「やあ、どうも」
アルトは現れた男性に気さくに手を振ると、そんな彼を見て傭兵の男はあからさまに怪しげな視線を向ける。だが、団長の指示である以上は逆らえず、彼はアルトの質問に答えるしかなかった。
「僕の名前はアルト、君の名前を教えてくれるかい?」
「ヒ、ヒデミツだ……」
「ほう、珍しい名前だね。それじゃあ、色々と聞きたいことがあるんだけど嘘偽りなく答えてくれるかい?」
「ああ……」
「これから君が話す事はこの事件の解決に導くにはどうしても必要な情報なんだ。協力してくれ」
ヒデミツという名前の傭兵に対してアルトは今回の事件が彼がキバが殺される場面を目撃した事から始まった事を確認する。
「まず、君は本当にキバという傭兵が夜中に橋の上で殺された場面を見ていたのかい?」
「ああ、間違いない……俺はキバの兄貴が刺された後、川に投げ込まれたのを見たんだ!!」
「そうか、だが気になるのは犯人が使った武器だ。君は犯人の後ろ姿しか見ていないようだが、犯人が刃物を突き刺して殺したという事が良く分かったね」
「えっ……い、いや、ちらっと見えたんだ!!兄貴が川に落とされた時、胸の部分に短剣が突き刺さっている所を!!」
「なるほど……じゃあ、次の質問だ」
机の上に広げられた地図にアルトは指先を置き、被害者の死体が発見された現場と、目撃者が被害者が殺される場面を見たという場所を指差す。
地図上では確かに被害者の死体が発見された上流の方に目撃者が殺される場面を見たという橋は実在した。距離的には数十メートル程離れていた。
「君の話によると犯人が殺されたのは深夜、一方で死体が発見されたのはこの場所だ。つまり、川に落とされた死体は下流の方に流れて偶然にも一般人に発見されて見つかった」
「……それがどうした?死体が下流に流れるのはおかしくはないだろう」
「ああ、確かに普通に考えればおかしな話じゃない。だけどね、実は昨日の晩に川で夜釣りを行っていた人を見つけたんだ。その人が釣っていた場所はここなんだが、妙な話だね、死体が流れてきたのならその釣り人が気づかないはずがない」
「何だと?」
「そ、そんな馬鹿なっ!?」
レノとアルトは昼間に遭遇した釣り人から話を聞いたとき、実は彼が昨日の夜からずっと釣りを続けている事が判明した。彼が釣りを始めたのは深夜からだが、その間にずっと川で魚を釣っていたが死体が川を流れる場面を見ていないという。
釣り人が下流の方で死体を発見されたという話は耳にしていたが、その発見した人物はずっと川で魚を釣っていた彼ではなく、橋を通りかかろうとした一般人が川の底に沈んでいるキバに気付いたという証言は既に確かめていた。
「その人は夜からずっと釣りを行っていたが、死体が川から流れる場面は見ていないらしい。しかも僕達は殺された現場に向かったが、血痕の一滴も残っていなかった。これはおかしな話だとは思わないかい?君は本当にこの場所で被害者が殺される現場を見ていたのかい?」
「ふ、ふざけるな!!俺は確かにこの場所で兄貴を殺されるのを見たんだ!!しっかりと覚えている!!」
「その割には犯人の容姿も詳しくは覚えていなかったじゃないか。最初はうちのレノ君を犯人だと言い張っていたんだろう?」
「そ、それは……」
「おい、どういう事だ!!本当にお前はキバが殺されるのを見たのか!?」
ヒデミツの顔色が徐々に青くなり、その様子を見てロウガは本当に彼がキバが殺される現場を目撃していたのかを怪しむ。そんな彼にヒデミツは慌てて言い直す。
「も、勿論です!!きっと、その夜釣りを行う男が訪れる前に兄貴は殺されて死体は流れたんだ!!」
「それだとおかしな話だね、男性は昨日の夜からずっと釣りをしていたんだ。もしも男性が釣りを行う前に死体が下流の方に流れていたとしたら、どうしてこんな現場からそれほど離れていない場所で発見されたんだい?君の言う事が正しければ死体はもっと離れた場所で発見されていてもおかしくはないだろう?」
「知るかよ、そんな事……き、きっと兄貴の死体は何処かで引っかかったんだろ!?それで下流に流れずに見つかったんだ!!」
「あくまでも誤魔化すつもりかい?やれやれ、仕方ないね……レノ君、あれを見せてくれ」
「うん……」
苦し紛れの言い訳を行うヒデミツの言葉にアルトはわざとらしくため息を吐き出し、そんな彼に対してレノは一枚の羊皮紙を取り出す。それを机の上に乗せると、ロウガは何を取り出したのかと羊皮紙の内容を確認すると、目を見開く。
「だ、団長……俺に用事があると聞いたんですけど、どうかしました?」
「ああ、この男がお前にいくつか質問したいらしい」
「やあ、どうも」
アルトは現れた男性に気さくに手を振ると、そんな彼を見て傭兵の男はあからさまに怪しげな視線を向ける。だが、団長の指示である以上は逆らえず、彼はアルトの質問に答えるしかなかった。
「僕の名前はアルト、君の名前を教えてくれるかい?」
「ヒ、ヒデミツだ……」
「ほう、珍しい名前だね。それじゃあ、色々と聞きたいことがあるんだけど嘘偽りなく答えてくれるかい?」
「ああ……」
「これから君が話す事はこの事件の解決に導くにはどうしても必要な情報なんだ。協力してくれ」
ヒデミツという名前の傭兵に対してアルトは今回の事件が彼がキバが殺される場面を目撃した事から始まった事を確認する。
「まず、君は本当にキバという傭兵が夜中に橋の上で殺された場面を見ていたのかい?」
「ああ、間違いない……俺はキバの兄貴が刺された後、川に投げ込まれたのを見たんだ!!」
「そうか、だが気になるのは犯人が使った武器だ。君は犯人の後ろ姿しか見ていないようだが、犯人が刃物を突き刺して殺したという事が良く分かったね」
「えっ……い、いや、ちらっと見えたんだ!!兄貴が川に落とされた時、胸の部分に短剣が突き刺さっている所を!!」
「なるほど……じゃあ、次の質問だ」
机の上に広げられた地図にアルトは指先を置き、被害者の死体が発見された現場と、目撃者が被害者が殺される場面を見たという場所を指差す。
地図上では確かに被害者の死体が発見された上流の方に目撃者が殺される場面を見たという橋は実在した。距離的には数十メートル程離れていた。
「君の話によると犯人が殺されたのは深夜、一方で死体が発見されたのはこの場所だ。つまり、川に落とされた死体は下流の方に流れて偶然にも一般人に発見されて見つかった」
「……それがどうした?死体が下流に流れるのはおかしくはないだろう」
「ああ、確かに普通に考えればおかしな話じゃない。だけどね、実は昨日の晩に川で夜釣りを行っていた人を見つけたんだ。その人が釣っていた場所はここなんだが、妙な話だね、死体が流れてきたのならその釣り人が気づかないはずがない」
「何だと?」
「そ、そんな馬鹿なっ!?」
レノとアルトは昼間に遭遇した釣り人から話を聞いたとき、実は彼が昨日の夜からずっと釣りを続けている事が判明した。彼が釣りを始めたのは深夜からだが、その間にずっと川で魚を釣っていたが死体が川を流れる場面を見ていないという。
釣り人が下流の方で死体を発見されたという話は耳にしていたが、その発見した人物はずっと川で魚を釣っていた彼ではなく、橋を通りかかろうとした一般人が川の底に沈んでいるキバに気付いたという証言は既に確かめていた。
「その人は夜からずっと釣りを行っていたが、死体が川から流れる場面は見ていないらしい。しかも僕達は殺された現場に向かったが、血痕の一滴も残っていなかった。これはおかしな話だとは思わないかい?君は本当にこの場所で被害者が殺される現場を見ていたのかい?」
「ふ、ふざけるな!!俺は確かにこの場所で兄貴を殺されるのを見たんだ!!しっかりと覚えている!!」
「その割には犯人の容姿も詳しくは覚えていなかったじゃないか。最初はうちのレノ君を犯人だと言い張っていたんだろう?」
「そ、それは……」
「おい、どういう事だ!!本当にお前はキバが殺されるのを見たのか!?」
ヒデミツの顔色が徐々に青くなり、その様子を見てロウガは本当に彼がキバが殺される現場を目撃していたのかを怪しむ。そんな彼にヒデミツは慌てて言い直す。
「も、勿論です!!きっと、その夜釣りを行う男が訪れる前に兄貴は殺されて死体は流れたんだ!!」
「それだとおかしな話だね、男性は昨日の夜からずっと釣りをしていたんだ。もしも男性が釣りを行う前に死体が下流の方に流れていたとしたら、どうしてこんな現場からそれほど離れていない場所で発見されたんだい?君の言う事が正しければ死体はもっと離れた場所で発見されていてもおかしくはないだろう?」
「知るかよ、そんな事……き、きっと兄貴の死体は何処かで引っかかったんだろ!?それで下流に流れずに見つかったんだ!!」
「あくまでも誤魔化すつもりかい?やれやれ、仕方ないね……レノ君、あれを見せてくれ」
「うん……」
苦し紛れの言い訳を行うヒデミツの言葉にアルトはわざとらしくため息を吐き出し、そんな彼に対してレノは一枚の羊皮紙を取り出す。それを机の上に乗せると、ロウガは何を取り出したのかと羊皮紙の内容を確認すると、目を見開く。
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