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ゴノ闘技場編
ネカとの再会
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「……駄目だった、この街の知り合いの情報屋の所に行ったけど、何も教えてはくれなかった。どうやら伯爵は情報屋にも口封じしているみたい」
「ですが、口封じをしているという事はやましい事があるに違いありませんわ!!私達は引き続き、調査を続けます!!」
「おい、お前等うるさいぞ……人の店の前で何を騒いでやがる」
歩きながら話している間、レノ達は目的地である鍛冶屋へと辿り着いたらしく、中から呆れた表情を浮かべるムクチが現れた。彼はレノ達が戻ってきた事を知り、金をもう用意してきたのかと驚く。
「ここへ戻ってきたという事は、金を用意したのか?」
「あ、はい。どうにか手に入れました」
「そうか……なら、剣を俺に預けろ」
レノはムクチに金を用意した事を伝えると、彼に荒正を渡して魔法金属製の鞘の製作を依頼する。ムクチは荒正を受け取り、大きさや形状を把握すると、机の上に置いていた四角形の青色の金属を見せつける。
「こいつがお前の鞘を作るために用意したミスリルだ」
「へえ……綺麗ですね」
「加工前でもこれだけの美しさ……魔法金属の中でも人気が高いのも頷けますわ」
ムクチはレノから代金を先に受け取ると、彼は気合の込めた表情を浮かべてミスリルを手にする。そしてレノ達へと振り返り、すぐに店から出て行くように指示を出す。
「明日の昼に取りに来い、それまでには仕上げてやる」
「えっ!?そんなに早く!?」
「それとお前の刀は預からせてもらう……そいつは代用品だ、持っていけ」
「これの事?」
魔法金属製の鞘を作り上げるためにムクチは荒正を1日だけ借り、その間に彼が打った長剣をレノに手渡す。渡された剣はかなりの業物らしく、素人目から見ても優れた剣だという事は分かった。
荒正を渡す間はこちらの剣を貸してくれるらしく、レノは有難く受け取るとムクチの仕事の邪魔にならないように出て行く。これで明日の昼までは時間が空いてしまい、これからどうするのかを話し合う。
「これからどうしようか、ドリスとネココは情報収集に出かけるの?」
「ええ、ですけど何処かで食事にしませんか?旅をしていた時は碌な食べ物もありつけませんでしたし……」
「……賛成」
「それならいい店を知ってるよ。僕の知り合いが働いている店があるんだ、そこへ案内するよ」
「アルトは本当に顔が広いな……」
アルトの知人が経営するという飲食店に向けてレノ達は向かうと、彼に案内された場所はいかにも貴族などの上流階級の人間が立ち寄りそうな高級そうな外見の建物の前に立ち止まる。レノとネココは唖然とした表情で見上げると、ドリスだけは感心したような表情を浮かべる。
「あら、中々良い雰囲気の建物ですわね。これなら期待できそうですわ」
「そうだろう?この店は元々は僕の家で雇っていた料理長が経営しているんだ。2年ぐらい前に料理長を辞めて、この街で店を建てたんだよ」
「えっ……ここって、貴族専門のお店とかじゃないの?」
「……料理の値段も凄く高い」
店の出入口には料理の献立表が記され、そこに記されている料理の値段を見てネココとレノは冷や汗を流す。一方で元貴族のアルトと公爵家の令嬢であるドリスの方は値段を見ても特に気にもかけず、中に入ろうとした。
「さあ、中に入ろう。本来なら正装しないといけないんだが、僕の知り合いならこの格好のままでも大丈夫だよ」
「久々に食事が楽しめそうですわ。さあ、早く入りましょう」
「「…………」」
自然な流れで店の中に入ろうとする二人にレノとネココは何とも言えない表情を浮かべ、財布の中身を確認しながら二人の後に続こうとした時、ここで後ろから声を掛けられる。
「おおっ!?そこにいるのはもしや、アルト様とレノ様ではないですか!?」
「え?この声は……」
「何だ、ネカ商人じゃないか」
「ネカ……?」
「あら、お知り合いですの?」
レノとアルトは振り返ると、そこには二人の知り合いの商人であるネカが立っていた。どうして彼がここにいるのかと驚くが、ネカもこの街に商売のために訪れてきたらしい――
――その後、ネカも交えてレノ達は上客にしか用意されない特別個室に案内され、共に食事を味わう。この店の代金は久々に再会を祝してネカが支払ってくれるらしく、彼は上機嫌でレノとアルトに語り掛けた。
「いやはや、まさかここで御二人に出会えるとは思いませんでしたな。アルト様が勘当されたと聞いたときは驚きましたが、元気そうで何よりです」
「まあ、盗賊に攫われたり、荒くれに絡まれたりはしたけど元気でやっているよ。もしも腕のいい用心棒に心当たりがあれば紹介してくれないかい?」
「おお、それなら都合がいい!!実は私も新しい護衛を雇おうと思ってこの街に来ましてね、一緒に探してみますか?」
「護衛?」
「ええ、もうすぐゴノ闘技場で年に一度開催される闘技祭が目当ての者達が集まってきますからな。今年は誰が優勝するのか……」
「闘技祭……?」
レノは聞いた事もない名前に戸惑うが、他の者達は心当たりがあるのかネカの言葉に納得したように頷く。
「ですが、口封じをしているという事はやましい事があるに違いありませんわ!!私達は引き続き、調査を続けます!!」
「おい、お前等うるさいぞ……人の店の前で何を騒いでやがる」
歩きながら話している間、レノ達は目的地である鍛冶屋へと辿り着いたらしく、中から呆れた表情を浮かべるムクチが現れた。彼はレノ達が戻ってきた事を知り、金をもう用意してきたのかと驚く。
「ここへ戻ってきたという事は、金を用意したのか?」
「あ、はい。どうにか手に入れました」
「そうか……なら、剣を俺に預けろ」
レノはムクチに金を用意した事を伝えると、彼に荒正を渡して魔法金属製の鞘の製作を依頼する。ムクチは荒正を受け取り、大きさや形状を把握すると、机の上に置いていた四角形の青色の金属を見せつける。
「こいつがお前の鞘を作るために用意したミスリルだ」
「へえ……綺麗ですね」
「加工前でもこれだけの美しさ……魔法金属の中でも人気が高いのも頷けますわ」
ムクチはレノから代金を先に受け取ると、彼は気合の込めた表情を浮かべてミスリルを手にする。そしてレノ達へと振り返り、すぐに店から出て行くように指示を出す。
「明日の昼に取りに来い、それまでには仕上げてやる」
「えっ!?そんなに早く!?」
「それとお前の刀は預からせてもらう……そいつは代用品だ、持っていけ」
「これの事?」
魔法金属製の鞘を作り上げるためにムクチは荒正を1日だけ借り、その間に彼が打った長剣をレノに手渡す。渡された剣はかなりの業物らしく、素人目から見ても優れた剣だという事は分かった。
荒正を渡す間はこちらの剣を貸してくれるらしく、レノは有難く受け取るとムクチの仕事の邪魔にならないように出て行く。これで明日の昼までは時間が空いてしまい、これからどうするのかを話し合う。
「これからどうしようか、ドリスとネココは情報収集に出かけるの?」
「ええ、ですけど何処かで食事にしませんか?旅をしていた時は碌な食べ物もありつけませんでしたし……」
「……賛成」
「それならいい店を知ってるよ。僕の知り合いが働いている店があるんだ、そこへ案内するよ」
「アルトは本当に顔が広いな……」
アルトの知人が経営するという飲食店に向けてレノ達は向かうと、彼に案内された場所はいかにも貴族などの上流階級の人間が立ち寄りそうな高級そうな外見の建物の前に立ち止まる。レノとネココは唖然とした表情で見上げると、ドリスだけは感心したような表情を浮かべる。
「あら、中々良い雰囲気の建物ですわね。これなら期待できそうですわ」
「そうだろう?この店は元々は僕の家で雇っていた料理長が経営しているんだ。2年ぐらい前に料理長を辞めて、この街で店を建てたんだよ」
「えっ……ここって、貴族専門のお店とかじゃないの?」
「……料理の値段も凄く高い」
店の出入口には料理の献立表が記され、そこに記されている料理の値段を見てネココとレノは冷や汗を流す。一方で元貴族のアルトと公爵家の令嬢であるドリスの方は値段を見ても特に気にもかけず、中に入ろうとした。
「さあ、中に入ろう。本来なら正装しないといけないんだが、僕の知り合いならこの格好のままでも大丈夫だよ」
「久々に食事が楽しめそうですわ。さあ、早く入りましょう」
「「…………」」
自然な流れで店の中に入ろうとする二人にレノとネココは何とも言えない表情を浮かべ、財布の中身を確認しながら二人の後に続こうとした時、ここで後ろから声を掛けられる。
「おおっ!?そこにいるのはもしや、アルト様とレノ様ではないですか!?」
「え?この声は……」
「何だ、ネカ商人じゃないか」
「ネカ……?」
「あら、お知り合いですの?」
レノとアルトは振り返ると、そこには二人の知り合いの商人であるネカが立っていた。どうして彼がここにいるのかと驚くが、ネカもこの街に商売のために訪れてきたらしい――
――その後、ネカも交えてレノ達は上客にしか用意されない特別個室に案内され、共に食事を味わう。この店の代金は久々に再会を祝してネカが支払ってくれるらしく、彼は上機嫌でレノとアルトに語り掛けた。
「いやはや、まさかここで御二人に出会えるとは思いませんでしたな。アルト様が勘当されたと聞いたときは驚きましたが、元気そうで何よりです」
「まあ、盗賊に攫われたり、荒くれに絡まれたりはしたけど元気でやっているよ。もしも腕のいい用心棒に心当たりがあれば紹介してくれないかい?」
「おお、それなら都合がいい!!実は私も新しい護衛を雇おうと思ってこの街に来ましてね、一緒に探してみますか?」
「護衛?」
「ええ、もうすぐゴノ闘技場で年に一度開催される闘技祭が目当ての者達が集まってきますからな。今年は誰が優勝するのか……」
「闘技祭……?」
レノは聞いた事もない名前に戸惑うが、他の者達は心当たりがあるのかネカの言葉に納得したように頷く。
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