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ゴノ闘技場編

ボアに追い掛け回される兵士

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「――や、やりましたわ皆さん!!見てください、遂に2本の指に火を灯せるようになりましたわ!!」
「お、おおっ……頑張ったね」
「……凄い」
「ええ、やりましたわ!!この調子で今日中は3本目の指に火を灯せるように頑張りますわ」
「ウォンッ……」
「ぷるぷるっ(頑張れ)」


旅の道中、ドリスは移動中も魔法の訓練に励み、指先に火の魔力を集中させる。昨日も夜遅くまで訓練に励み、自分の魔力を操作する感覚を忘れないようにドリスは訓練に熱中する。

そんな彼女と共にレノ達は徒歩でゴノへと向かい、遂に時刻が昼を迎えた頃にゴノの街が視界に入った。街の大きさはシノと同程度ではあるが、丘の上から見下ろすと街の中央には巨大な建物が存在した。


「うわっ……なんだあの建物、街の外からでも見えるぐらい大きいなんて」
「……あそこがゴノが誇る闘技場、国内でも二つしか存在しない闘技場の内の一つ」
「ウォンッ……」


街の外からでも確認できるほどの巨体な建物にレノ達は圧倒され、早速向かおうとした時、レノ達の耳に悲鳴が聞こえる。


「た、助けてくれぇっ!?」
「ひいいっ!!」
「プギィイイイッ!!」
「むっ、人が襲われていますわ!!助けに向かわないと!!」
「あ、ドリス!?」


悲鳴が聞こえてきた方向に視線を向けると、そこにはボアに追い掛け回される兵士の姿が存在し、それを見たドリスは烈火を手にするとボアの元へ駆け出す。その様子を見ていたレノ達も慌てて彼女の後を追う。

兵士を追い掛け回されているボアは何故か身体中に縄を纏っており、まるで縄で拘束されていた所を無理やり引きちぎって逃げ出したかのような姿をしていた。しかも離れた場所には大きな荷車が存在し、車輪の部分が壊れた状態で倒れていた。

ボアに追い掛け回される兵士と壊れた荷車を見てレノは疑問を抱くが、ここでドリスは鞘に納めていた剣を引き抜き、魔法剣を発動させて相手の注意を引く。


「爆炎剣!!」
「プギャッ!?」
「うわっ!?」


兵士に襲い掛かろうとしたボアに対してドリスは兵士とボアの間に割り込むと、爆炎を放つ。目の前に出現した強烈な炎にボアは怯み、その隙にネココは蛇剣を構えてボアの足を斬り付ける。


「……ていっ」
「プギィッ!?」
「ああっ!?ボアがっ……」
「や、止めてくれ!!」


しかし、何故か兵士はネココがボアを斬り付けると慌てたような声を上げ、彼女に攻撃をするのを止めるように告げる。そんな兵士達の態度にネココは不審な表情を浮かべるが、その間にも身体を傷つけられて怒りを抱いたボアは暴れ狂う。


「プギィイイイッ!!」
「ま、まずい!!早く取り押さえるんだ!!」
「そ、そういってもどうやってだよ!?
「うわっ、こっちにきた!!」


兵士達はボアを捕まえようとするが、捕獲用の道具も無しにボアを捕まえる事など出来ず、どうするべきか悩んでいる間にもボアは突進を再開する。それを見ていたレノはため息を吐き出し、拳を握りしめるとボアの正面へと立つ。


「仕方ないな……嵐拳!!」
「フゴォッ!?」
「おおっ……凄い一撃」


拳に竜巻を纏わせたレノはボアの鼻頭に叩きつけると、右手に宿した竜巻がボアの巨体を飲み込み、肉体を半回転させて地面に倒し込む。鼻が若干曲がってしまったが、ボアは白目を剥きながら気絶した。

気絶したボアを見て兵士達はお礼も告げずにボアの元へ駆けつけると、生きている事を知って安堵した。そんな彼等にレノ達は何をしているのかを尋ねた。


「これはいったいどういう事ですの?どうして私達が倒そうとしたのを止めたのですか?」
「あ、ああ……悪かったな、助かったよ。あんたらのお陰で命拾いした、礼を言う」
「ふうっ……よかった、この程度の傷なら治せるな」
「あんた、凄いな。よくこんなデカブツを一発で……」
「……質問に答えて、どうしてこのボアを庇ったの」


兵士達はレノ達に一応はお礼を告げるが、彼等が気にかけているのはボアの様子だった。自分達の命を狙ったボアを心配する兵士達にネココは訝し気に尋ねると、兵士達は説明する。


「俺達は王国兵じゃない、闘技場で働いているんだ」
「闘技場?闘技場で働いている兵士の方がどうしてこんな所にいらっしゃるのですか?」
「見ての通り、こいつを街まで運ぶ途中で荷車がぶっ壊れて使い物にならなくなったんだ。しかも車輪が壊れた時に眠り薬で動けなくしていたボアまで目を覚ましちまうし……」
「ボアを街へ……生け捕りにしたんですか?何のために?」
「何のためも何も、こいつを闘技場で戦わせるためだからさ。あんたらは知らないのかい?闘技場では魔物を参加者に戦わせる事もあるのさ」
「魔物を……」


レノ達は兵士の言葉に闘技場ではそのような噂がある事は知っていたが、それにしてもボアのような魔物まで闘技場で戦わせている事に驚く。せいぜいゴブリンやコボルト程度の魔物を捕獲して連れてくると思っていたが、まさかボアまでも捕獲して人力で運ぶなど想像もしていなかった。
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