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ゴノ闘技場編
王国騎士としてではなく……
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「正直、俺にとっては王国騎士というのはよく分からないから何とも言えないけど……でも、ドリスさんは少し気負い過ぎていると思う」
「……そう、王国騎士である事に拘り過ぎている」
「私が……?」
二人の言葉を聞いてドリスは戸惑い、彼女自身は自覚はないようだが、レノはドリスが王国騎士という立場に囚われて居るように見えた。
「ドリスさんは自分が王国騎士だからって、王国騎士に相応しい態度を取ろうとするけど、何となくだけどそのせいで自分の事を見失っている気がする」
「……肩に力が入りすぎ、もっと楽にした方がいい」
「で、ですけど……私は王国騎士です、だから普段から王国騎士に相応しいように振舞わなければ……」
「その気持ちは分からなくもないけど、ドリスさんの場合は自分自身に自信がないように見えるよ。本当に自分は王国騎士に相応しいのか、そんな風に考えていない?」
「あっ……」
レノの言葉にドリスは心当たりがあるのか呆気に取られた表情を浮かべ、言い返す事が出来なかった。彼女自身もここで自分が王国騎士として振舞おうとしながらも、心の何処かでは自分が王国騎士に相応しい存在なのかと不安を抱いている事に気付く。
「ドリスさんは強いよ、あの爆炎剣なんて俺にも真似できないくらいの凄い魔法拳も使えるんだから……」
「……実力は確かにある、だけどそれを上手く出し切れていない感じがする」
「そ、そうですか……」
「多分だけどドリスさんは自分が王国騎士になれたのは公爵家の慣わしだから、自分の実力で認められたわけじゃないと負い目を感じてるんじゃないかな?その負い目を誤魔化すために王国騎士らしく振舞おうとしている、でも反対に自分が王国騎士に相応しい人間じゃない……そんな風に考えてるんじゃない?」
「ううっ……何も言い返せませんわ」
ドリスはレノの言葉に否定は出来ず、彼の言う通りに今までのドリスは自分が王国騎士である事に拘り過ぎていた。そのせいで空回りしている部分があり、彼女はため息を吐き出す。
自分が王国騎士である事に対してドリスは負い目を感じていた。他の騎士達は実力で認められて王国騎士に選ばれたのに対し、彼女の場合は公爵家の慣わしで王国騎士に選ばれた存在。彼女が敵視しているセツナも似たような立場ではあるが、セツナの場合は功績を立てた上で王国騎士に就任している。
(私は王国騎士……ですけど、本当に王国騎士に相応しい力を持ってはいない)
自分の掌を眺めながらドリスは今まで目をそらしていた事実と向き合い、ため息を吐き出す。そして彼女はペンダントを握りしめると、今までの様に首に掛けたりはせず、荷物の中に預ける。
「決めましたわ、しばらくの間は私は王国騎士としてではなく、ただのドリスとして行動しようと思います」
「行動?」
「ええ、私自身が自分が王国騎士に相応しい実力を身に付けたと感じない限り、もう王国騎士である事を名乗るは止めますわ」
「……つまり、武者修行?」
「武者修行……確かにその言葉が一番当てはまりますわ。今の私は確かに実力不足、ならば力を身に付けて他の騎士達にも負けない強さを身に付ける必要があるのです!!そのためにはまずはゴノで腕試しを行いましょう!!」
「ゴノか……確か、闘技場と呼ばれる場所があるんだよね?」
ドリスの意気込みを聞いてレノは次の目的地の街である「ゴノ」の街の情報を思い出す。この国の中でも有名な街で「闘技場」と呼ばれる施設が建てられていると出発前に聞かされていた。
――ゴノの街に存在する「闘技場」とは腕自慢の傭兵や冒険者が国中から集まり、競い合う場所だった。試合に勝利すれば参加者には報酬が支払われ、試合に参加しない一般人のために賭博も行われているため、闘技場に赴く人間は後を絶たない。
戦うのは必ずしも人間だけとは限らず、時にはネズミ婆さんのような魔物使いの職業の人間が捕獲した魔物と戦わされる事態も存在する。死傷者が現れる事も珍しくはない。
レノとネココはともかく、ドリスはこの街に赴く理由はいくつかあった。まずはレノと同行しているのは彼女がレノの勧誘を諦めていないからであり、それに目的地が二人とも王都だからそこまでは共に旅をする事約束している。
戦力的にもドリスが加わる事は心強く、今のところはドリスの騎士団に入るかどうかはレノは返事を保留にしている。まずは王都へ辿り着き、色々とな仕事を見て回ってから騎士団に入るかどうかを考える事を伝えると、ドリスはあっさりと承諾してくれた。
旅の間にドリスもレノの勧誘を諦めず、また旅をする間に彼女は自分の騎士団に入る人材集めを行う事にした。国王からは急かされているが、彼女としても実力がない人間を騎士団に加えるつもりはなく、今のところは彼女はレノとネココを騎士団に迎え入れたいと考えている。ネココも実力は確かなため、彼女にも勧誘を行うが基本的に傭兵稼業に慣れているネココは乗り気ではない。
ゴノの街には闘技場に参加するために続々と実力者が集まっているため、ドリスはその場所でもしも自分の目に見合う相手がいれば勧誘するつもりだった。
「……そう、王国騎士である事に拘り過ぎている」
「私が……?」
二人の言葉を聞いてドリスは戸惑い、彼女自身は自覚はないようだが、レノはドリスが王国騎士という立場に囚われて居るように見えた。
「ドリスさんは自分が王国騎士だからって、王国騎士に相応しい態度を取ろうとするけど、何となくだけどそのせいで自分の事を見失っている気がする」
「……肩に力が入りすぎ、もっと楽にした方がいい」
「で、ですけど……私は王国騎士です、だから普段から王国騎士に相応しいように振舞わなければ……」
「その気持ちは分からなくもないけど、ドリスさんの場合は自分自身に自信がないように見えるよ。本当に自分は王国騎士に相応しいのか、そんな風に考えていない?」
「あっ……」
レノの言葉にドリスは心当たりがあるのか呆気に取られた表情を浮かべ、言い返す事が出来なかった。彼女自身もここで自分が王国騎士として振舞おうとしながらも、心の何処かでは自分が王国騎士に相応しい存在なのかと不安を抱いている事に気付く。
「ドリスさんは強いよ、あの爆炎剣なんて俺にも真似できないくらいの凄い魔法拳も使えるんだから……」
「……実力は確かにある、だけどそれを上手く出し切れていない感じがする」
「そ、そうですか……」
「多分だけどドリスさんは自分が王国騎士になれたのは公爵家の慣わしだから、自分の実力で認められたわけじゃないと負い目を感じてるんじゃないかな?その負い目を誤魔化すために王国騎士らしく振舞おうとしている、でも反対に自分が王国騎士に相応しい人間じゃない……そんな風に考えてるんじゃない?」
「ううっ……何も言い返せませんわ」
ドリスはレノの言葉に否定は出来ず、彼の言う通りに今までのドリスは自分が王国騎士である事に拘り過ぎていた。そのせいで空回りしている部分があり、彼女はため息を吐き出す。
自分が王国騎士である事に対してドリスは負い目を感じていた。他の騎士達は実力で認められて王国騎士に選ばれたのに対し、彼女の場合は公爵家の慣わしで王国騎士に選ばれた存在。彼女が敵視しているセツナも似たような立場ではあるが、セツナの場合は功績を立てた上で王国騎士に就任している。
(私は王国騎士……ですけど、本当に王国騎士に相応しい力を持ってはいない)
自分の掌を眺めながらドリスは今まで目をそらしていた事実と向き合い、ため息を吐き出す。そして彼女はペンダントを握りしめると、今までの様に首に掛けたりはせず、荷物の中に預ける。
「決めましたわ、しばらくの間は私は王国騎士としてではなく、ただのドリスとして行動しようと思います」
「行動?」
「ええ、私自身が自分が王国騎士に相応しい実力を身に付けたと感じない限り、もう王国騎士である事を名乗るは止めますわ」
「……つまり、武者修行?」
「武者修行……確かにその言葉が一番当てはまりますわ。今の私は確かに実力不足、ならば力を身に付けて他の騎士達にも負けない強さを身に付ける必要があるのです!!そのためにはまずはゴノで腕試しを行いましょう!!」
「ゴノか……確か、闘技場と呼ばれる場所があるんだよね?」
ドリスの意気込みを聞いてレノは次の目的地の街である「ゴノ」の街の情報を思い出す。この国の中でも有名な街で「闘技場」と呼ばれる施設が建てられていると出発前に聞かされていた。
――ゴノの街に存在する「闘技場」とは腕自慢の傭兵や冒険者が国中から集まり、競い合う場所だった。試合に勝利すれば参加者には報酬が支払われ、試合に参加しない一般人のために賭博も行われているため、闘技場に赴く人間は後を絶たない。
戦うのは必ずしも人間だけとは限らず、時にはネズミ婆さんのような魔物使いの職業の人間が捕獲した魔物と戦わされる事態も存在する。死傷者が現れる事も珍しくはない。
レノとネココはともかく、ドリスはこの街に赴く理由はいくつかあった。まずはレノと同行しているのは彼女がレノの勧誘を諦めていないからであり、それに目的地が二人とも王都だからそこまでは共に旅をする事約束している。
戦力的にもドリスが加わる事は心強く、今のところはドリスの騎士団に入るかどうかはレノは返事を保留にしている。まずは王都へ辿り着き、色々とな仕事を見て回ってから騎士団に入るかどうかを考える事を伝えると、ドリスはあっさりと承諾してくれた。
旅の間にドリスもレノの勧誘を諦めず、また旅をする間に彼女は自分の騎士団に入る人材集めを行う事にした。国王からは急かされているが、彼女としても実力がない人間を騎士団に加えるつもりはなく、今のところは彼女はレノとネココを騎士団に迎え入れたいと考えている。ネココも実力は確かなため、彼女にも勧誘を行うが基本的に傭兵稼業に慣れているネココは乗り気ではない。
ゴノの街には闘技場に参加するために続々と実力者が集まっているため、ドリスはその場所でもしも自分の目に見合う相手がいれば勧誘するつもりだった。
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