124 / 215
二人旅編
その後……
しおりを挟む
「こちらの男の賞金です、どうぞお受け取り下さい」
「…………」
「……どうも」
リンから渡されたレノはそれを見て呆然と立っている事しか出来ず、代わりに彼の隣に立っていたネココが受け取る。リンは二人に頭を下げるとセツナの元へ戻り、ドリスに話しかけた。
「残りの者達は私達が責任を以て街まで連行します。構いませんね、ドリス様?」
「え、ええ……それは構いませんが、どうして貴方達がここへ来たのですか?それを答えなさい!!」
「ふん、国王陛下はお前の事を心配してな……わざわざ子守役として私を派遣したんだ」
「陛下が……!?」
「お前が部下も率いずに盗賊の残党を相手にさせる事に不安を感じたんだろう。だから私が手伝いに来てやったんだ、有難く思え」
「くぅっ……!!」
セツナの言葉にドリスは悔し気な表情を浮かべ、国王からの命令であるならばドリスの立場からでは文句は言えない。その表情を見て満足したのかセツナは捕まえている盗賊達を自分が連れてきた配下に連行するように命じる。
「全員、連れていけ!!」
『はっ!!』
「い、嫌だ……止めろ!!近づくなっ!!」
「頼む、許してくれ!!俺は脅されていただけなんだ!!」
「ひいいっ!?」
往生際が悪く抵抗する盗賊達を騎士達は無理やりに立ち上がらせると、強制的に連行する。その様子をレノ達は見ている事しか出来ず、最後にセツナはレノ達に振り返って告げた。
「私の代わりにこの小娘の面倒を見てくれたようだな、感謝するぞ」
「セツナ!!」
「ふっ……私は一足先に戻るぞ、残念だがお前に貸す分の馬はない」
最後にセツナはドリスを冷やかすと、騎士達と共に盗賊を連行して街へと向かう。その様子をドリスは悔し気な表情で見送る事しか出来ず、とりあえずはレノ達も彼等の後に続いて徒歩で街に帰還する事になった――
――後日、黒狼の残党は二人の王国騎士によって壊滅されたという噂が国中へと広まる。その内容は黒狼の隠れ家を見つけ出したのが「黄金の騎士」であるドリスであり、その彼女と協力して共に黒狼の残党を討ち取ったのが「白銀の騎士」として名だ高く、白狼騎士団の団長であるセツナであると語られた。
実際の所は白狼騎士団は盗賊の連行をしただけに過ぎず、黒狼の残党を壊滅させたのはドリスではなく、レノ達の力である。だが、この真実を知る者は当事者と被害者である盗賊達しか知らず、その盗賊達も即刻に処刑される。
黒狼に属していたとはいえ、彼等の中には5年前に存在した黒狼とは何の関係もない人間が大半だった。しかし、盗賊に身を落として人々に迷惑を掛けたという理由から即座に彼等の処刑は決行された。実際の所は広まった噂の真偽を明かすわけにはいかず、早急に国が処分を判断したに過ぎない。
そして今回の件の真の功労者であるレノ達の手柄は公表されず、その代わりに口止め料代わりなのか彼等全員に大金が支給された。また、国内の街ならば自由に通り抜ける事が出来る特別通行証も発行され、この通行証を見せればもう街に入るための通行料を支払う必要はなくなった。
「たくっ、あんたらのせいでとんでもない事に巻き込まれたね」
「ちょっと待ってください、僕も巻き込まれた側ですよ」
「……でも、お陰で儲かった。こんな大金、滅多に手に入らない」
「そうだね……でも、なんだかすごい事になったね」
黒狼の残党が壊滅してから数日後、レノ達はシノの街の酒場に集まって目の前に置かれた袋に視線を向ける。中身は金貨が数十枚入っており、今回の件を他言しない事を条件に渡された国からの支給金だった。
レノは目の前に置かれた大金に対して思う所は色々と会ったが、他の3人は割と嬉しそうな表情を浮かべ、アルトの方も有難そうな表情を浮かべる。
「いや、本当に助かったよ。奴等に奪われた僕の荷物も回収されて検分が終わるまでは返してくれないから、危うく一文無しになる所だった」
「まあ、私としては今回の件が公にならないのは都合がいいね。この程度の口止め料で情報屋の口を塞ぐのは少し不満だけどね」
「……私は大満足、これだけあれば色々と出来る」
「…………」
3人の喜ぶ顔を見てレノは自分の前に置かれた通行証に視線を向ける。実はレノだけは支給金の他に通行証を発行して貰っている。理由としてはドリスが口添えしたらしく、彼がいなければ盗賊団の頭を捕まえる事は出来なかったと報告してくれたらしい。
この数日の間は色々と取り調べを受けたりしてレノ達も自由に行動は出来なかったが、改めて旅を再開する事が出来る。それは喜ぶべき事なのだが、レノが気がかりなのはドリスの事だった。
(ドリス、落ち込んでないといいけど……)
今回の一件は世間ではドリスとセツナの手柄として伝わっているが、実際の所はドリスは人質として捕まり、何も出来なかった事に激しく落ち込んでいた。結局はレノに助けられなければドリスは今頃は殺されていたか、最悪の場合は辱められていたかもしれない。レノ達に合わせる顔がないのか彼女はまだこの街に滞在しているはずだが、ここ最近は顔を合わせていなかった。
「…………」
「……どうも」
リンから渡されたレノはそれを見て呆然と立っている事しか出来ず、代わりに彼の隣に立っていたネココが受け取る。リンは二人に頭を下げるとセツナの元へ戻り、ドリスに話しかけた。
「残りの者達は私達が責任を以て街まで連行します。構いませんね、ドリス様?」
「え、ええ……それは構いませんが、どうして貴方達がここへ来たのですか?それを答えなさい!!」
「ふん、国王陛下はお前の事を心配してな……わざわざ子守役として私を派遣したんだ」
「陛下が……!?」
「お前が部下も率いずに盗賊の残党を相手にさせる事に不安を感じたんだろう。だから私が手伝いに来てやったんだ、有難く思え」
「くぅっ……!!」
セツナの言葉にドリスは悔し気な表情を浮かべ、国王からの命令であるならばドリスの立場からでは文句は言えない。その表情を見て満足したのかセツナは捕まえている盗賊達を自分が連れてきた配下に連行するように命じる。
「全員、連れていけ!!」
『はっ!!』
「い、嫌だ……止めろ!!近づくなっ!!」
「頼む、許してくれ!!俺は脅されていただけなんだ!!」
「ひいいっ!?」
往生際が悪く抵抗する盗賊達を騎士達は無理やりに立ち上がらせると、強制的に連行する。その様子をレノ達は見ている事しか出来ず、最後にセツナはレノ達に振り返って告げた。
「私の代わりにこの小娘の面倒を見てくれたようだな、感謝するぞ」
「セツナ!!」
「ふっ……私は一足先に戻るぞ、残念だがお前に貸す分の馬はない」
最後にセツナはドリスを冷やかすと、騎士達と共に盗賊を連行して街へと向かう。その様子をドリスは悔し気な表情で見送る事しか出来ず、とりあえずはレノ達も彼等の後に続いて徒歩で街に帰還する事になった――
――後日、黒狼の残党は二人の王国騎士によって壊滅されたという噂が国中へと広まる。その内容は黒狼の隠れ家を見つけ出したのが「黄金の騎士」であるドリスであり、その彼女と協力して共に黒狼の残党を討ち取ったのが「白銀の騎士」として名だ高く、白狼騎士団の団長であるセツナであると語られた。
実際の所は白狼騎士団は盗賊の連行をしただけに過ぎず、黒狼の残党を壊滅させたのはドリスではなく、レノ達の力である。だが、この真実を知る者は当事者と被害者である盗賊達しか知らず、その盗賊達も即刻に処刑される。
黒狼に属していたとはいえ、彼等の中には5年前に存在した黒狼とは何の関係もない人間が大半だった。しかし、盗賊に身を落として人々に迷惑を掛けたという理由から即座に彼等の処刑は決行された。実際の所は広まった噂の真偽を明かすわけにはいかず、早急に国が処分を判断したに過ぎない。
そして今回の件の真の功労者であるレノ達の手柄は公表されず、その代わりに口止め料代わりなのか彼等全員に大金が支給された。また、国内の街ならば自由に通り抜ける事が出来る特別通行証も発行され、この通行証を見せればもう街に入るための通行料を支払う必要はなくなった。
「たくっ、あんたらのせいでとんでもない事に巻き込まれたね」
「ちょっと待ってください、僕も巻き込まれた側ですよ」
「……でも、お陰で儲かった。こんな大金、滅多に手に入らない」
「そうだね……でも、なんだかすごい事になったね」
黒狼の残党が壊滅してから数日後、レノ達はシノの街の酒場に集まって目の前に置かれた袋に視線を向ける。中身は金貨が数十枚入っており、今回の件を他言しない事を条件に渡された国からの支給金だった。
レノは目の前に置かれた大金に対して思う所は色々と会ったが、他の3人は割と嬉しそうな表情を浮かべ、アルトの方も有難そうな表情を浮かべる。
「いや、本当に助かったよ。奴等に奪われた僕の荷物も回収されて検分が終わるまでは返してくれないから、危うく一文無しになる所だった」
「まあ、私としては今回の件が公にならないのは都合がいいね。この程度の口止め料で情報屋の口を塞ぐのは少し不満だけどね」
「……私は大満足、これだけあれば色々と出来る」
「…………」
3人の喜ぶ顔を見てレノは自分の前に置かれた通行証に視線を向ける。実はレノだけは支給金の他に通行証を発行して貰っている。理由としてはドリスが口添えしたらしく、彼がいなければ盗賊団の頭を捕まえる事は出来なかったと報告してくれたらしい。
この数日の間は色々と取り調べを受けたりしてレノ達も自由に行動は出来なかったが、改めて旅を再開する事が出来る。それは喜ぶべき事なのだが、レノが気がかりなのはドリスの事だった。
(ドリス、落ち込んでないといいけど……)
今回の一件は世間ではドリスとセツナの手柄として伝わっているが、実際の所はドリスは人質として捕まり、何も出来なかった事に激しく落ち込んでいた。結局はレノに助けられなければドリスは今頃は殺されていたか、最悪の場合は辱められていたかもしれない。レノ達に合わせる顔がないのか彼女はまだこの街に滞在しているはずだが、ここ最近は顔を合わせていなかった。
0
お気に入りに追加
660
あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。

今、私は幸せなの。ほっといて
青葉めいこ
ファンタジー
王族特有の色彩を持たない無能な王子をサポートするために婚約した公爵令嬢の私。初対面から王子に悪態を吐かれていたので、いつか必ず婚約を破談にすると決意していた。
卒業式のパーティーで、ある告白(告発?)をし、望み通り婚約は破談となり修道女になった。
そんな私の元に、元婚約者やら弟やらが訪ねてくる。
「今、私は幸せなの。ほっといて」
小説家になろうにも投稿しています。

【完結】聖女ディアの処刑
大盛★無料
ファンタジー
平民のディアは、聖女の力を持っていた。
枯れた草木を蘇らせ、結界を張って魔獣を防ぎ、人々の病や傷を癒し、教会で朝から晩まで働いていた。
「怪我をしても、鍛錬しなくても、きちんと作物を育てなくても大丈夫。あの平民の聖女がなんとかしてくれる」
聖女に助けてもらうのが当たり前になり、みんな感謝を忘れていく。「ありがとう」の一言さえもらえないのに、無垢で心優しいディアは奇跡を起こし続ける。
そんななか、イルミテラという公爵令嬢に、聖女の印が現れた。
ディアは偽物と糾弾され、国民の前で処刑されることになるのだが――
※ざまあちょっぴり!←ちょっぴりじゃなくなってきました(;´・ω・)
※サクッとかる~くお楽しみくださいませ!(*´ω`*)←ちょっと重くなってきました(;´・ω・)
★追記
※残酷なシーンがちょっぴりありますが、週刊少年ジャンプレベルなので特に年齢制限は設けておりません。
※乳児が地面に落っこちる、運河の氾濫など災害の描写が数行あります。ご留意くださいませ。
※ちょこちょこ書き直しています。セリフをカッコ良くしたり、状況を補足したりする程度なので、本筋には大きく影響なくお楽しみ頂けると思います。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる