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二人旅編
カトレアの苦手な物
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――無事に合流を果たしたレノ達は再会を喜び合う中、今まで何があったのかを話し合う。チェンが部下を率いて襲撃した時、実はネココは逃げのびる事に成功し、すぐにネズミ婆さんと合流してレノ達の助けに向かったという。
「……あの時は私一人だと、どうしようも出来なかった。だから一旦退くしかなかったけど、二人を置いて逃げた事は謝る……ごめんなさい」
「気にしなくていいよ、結果的にはネココのお陰で助かったんだから」
「ええ、その通りですわ……そもそもレノさんが敵に捕まったのは私のせいです、申し訳ありません」
「それも気にしないでいいよ。あんな厄介な痺れ薬を持っているとは思わないよ」
「なるほど、これが毒薬師という輩が作り出した毒か……興味深いな」
レノ達は捕まえた盗賊達を全身縛り付けた後、逃げられないように一か所に集める。盗賊達は全員が傷だらけで中には鼠に噛みつかれて者も多数存在し、涙目で俯いていた。
アルトは盗賊達から回収した痺れ薬を確認し、小さな壺に入った薬を確認して間違っても吸い込まないように気を付けながら指先を近づける。触れただけでは特に何も感じないが、これを大量に吸い込むと意識を失い、しばらくの間は目を覚ます事はないという厄介な毒薬だった。
「ふむ、恐らくこれは複数の毒草を粉末状になるまで磨り潰した物のようだね。どんな毒草を使っているのかは分からないが、詳しく調べてみよう」
「そんな事まで分かるのかい?あんた、その年齢で学者だというのは本当なんだね」
「自分の専門分野以外も知識を広げなければ一流の学者とは言えないんですよ、ネズミ婆さん……さん」
「別にそこはネズミ婆さんでいいよ……」
念のために毒薬師のロンが作り出した毒薬はアルトが調べる事に決め、レノはネココと共に助けに来てくれたウルとスラミンの頭を撫でる。
「二人とも来てくれたのか、助かったよ。ありがとう」
「クゥ~ンッ(あんまり心配させないで)」
「ぷるぷるっ(もっと褒めて)」
「こいつらに感謝するんだね、あんたらが消えた後に臭いを辿ってここまで辿り着けたんだからね」
レノとドリスがチェンに連れ去られた後、すぐにネココはネズミ婆さんに相談した後、ウルとスラミンと合流してレノ達の後を追う。ウルはレノが捕まった場所から臭いを辿ってきたらしく、街から離れたこんな森の奥まで追跡したという。
ウルがいなければネココ達も援軍に駆けつけられず、今頃はレノ達は盗賊達に捕まっていた可能性もあった。ウルの手柄にレノは彼の頭を撫でていると、ここで捕まって縄で縛りつけられていたチェンが口を開く。
「ふんっ……調子に乗るなよ、お前等はもう終わりだ」
「あんたね、そんな格好でよく偉そうな口が利けるね」
「黙れっ!!言っておくが、俺達を捕まえた所でお前等はこの森を生きては出られない!!何しろ、ここにはお前達の手に負えない奴がいるからな!!」
「どういう意味ですの?まさか、まだ仲間が残っていると……?」
「……まさか、吸血鬼?」
「吸血鬼!?吸血鬼がここにいるのかい!?」
ネココの呟きにアルトは興奮したように反応し、魔物の研究家でもある彼にとっては吸血鬼の存在は非常に興味深い存在だった。だが、吸血鬼という言葉を聞いて他の者達は顔色を変え、周囲を見渡す。
「さあ、出て来てくれカトレア!!俺達を助けろ、そうすればお前の望みを何でも叶えてやる!!」
「吸血鬼がここにいますの!?」
「ちぃっ……最後に面倒な奴がいるのを忘れてたね!!」
「……何処に隠れている?」
レノ達は周囲を見渡して吸血鬼の存在を探すが、どういうわけかいくら待っても吸血鬼らしき人物は姿を現さず、疑問を抱いた皆がチェンに視線を向ける。彼は焦った表情で何処かに存在するはずのカトレアに助けを求めた。
「お、おい!!何をしている、ふざけている場合か!?カトレア、出て来い!!俺達を助けろ!!」
「……出てきませんわね」
「何だい、ただのはったりかい」
「情けない男だな……期待したのにがっかりだよ!!」
「く、くそっ……そんなはずはない、カトレア!!カトレア!!」
チェンの助けを求める事が遺跡内に広がるが、返答が戻ってくる様子はなく、若干レノ達は呆れた表情を浮かべる。チェンは信じられない表情を浮かべ、自分がカトレアに見捨てられた事を悟ると、怒りの咆哮を放つ。
「くそぉおおおおっ!!ふざけるなぁあああっ!!」
いくら叫んでもカトレアは姿を現す様子はなく、こうして黒狼の残党はレノ達に手によって捕まった――
――同時刻、当のカトレアは遺跡の建物の一角にて捕まった盗賊達に視線を向け、特に悪びれた様子もなく呟く。
「ごめんね、チェン……私、鼠だけはどうしても苦手なの~」
カトレアは大量の鼠を従えるネズミ婆さんの姿を見て面倒そうな表情を浮かべ、彼女は夜が明ける前に遺跡を離れ、彼女はチェンたちをあっさりと見捨てた。
「……あの時は私一人だと、どうしようも出来なかった。だから一旦退くしかなかったけど、二人を置いて逃げた事は謝る……ごめんなさい」
「気にしなくていいよ、結果的にはネココのお陰で助かったんだから」
「ええ、その通りですわ……そもそもレノさんが敵に捕まったのは私のせいです、申し訳ありません」
「それも気にしないでいいよ。あんな厄介な痺れ薬を持っているとは思わないよ」
「なるほど、これが毒薬師という輩が作り出した毒か……興味深いな」
レノ達は捕まえた盗賊達を全身縛り付けた後、逃げられないように一か所に集める。盗賊達は全員が傷だらけで中には鼠に噛みつかれて者も多数存在し、涙目で俯いていた。
アルトは盗賊達から回収した痺れ薬を確認し、小さな壺に入った薬を確認して間違っても吸い込まないように気を付けながら指先を近づける。触れただけでは特に何も感じないが、これを大量に吸い込むと意識を失い、しばらくの間は目を覚ます事はないという厄介な毒薬だった。
「ふむ、恐らくこれは複数の毒草を粉末状になるまで磨り潰した物のようだね。どんな毒草を使っているのかは分からないが、詳しく調べてみよう」
「そんな事まで分かるのかい?あんた、その年齢で学者だというのは本当なんだね」
「自分の専門分野以外も知識を広げなければ一流の学者とは言えないんですよ、ネズミ婆さん……さん」
「別にそこはネズミ婆さんでいいよ……」
念のために毒薬師のロンが作り出した毒薬はアルトが調べる事に決め、レノはネココと共に助けに来てくれたウルとスラミンの頭を撫でる。
「二人とも来てくれたのか、助かったよ。ありがとう」
「クゥ~ンッ(あんまり心配させないで)」
「ぷるぷるっ(もっと褒めて)」
「こいつらに感謝するんだね、あんたらが消えた後に臭いを辿ってここまで辿り着けたんだからね」
レノとドリスがチェンに連れ去られた後、すぐにネココはネズミ婆さんに相談した後、ウルとスラミンと合流してレノ達の後を追う。ウルはレノが捕まった場所から臭いを辿ってきたらしく、街から離れたこんな森の奥まで追跡したという。
ウルがいなければネココ達も援軍に駆けつけられず、今頃はレノ達は盗賊達に捕まっていた可能性もあった。ウルの手柄にレノは彼の頭を撫でていると、ここで捕まって縄で縛りつけられていたチェンが口を開く。
「ふんっ……調子に乗るなよ、お前等はもう終わりだ」
「あんたね、そんな格好でよく偉そうな口が利けるね」
「黙れっ!!言っておくが、俺達を捕まえた所でお前等はこの森を生きては出られない!!何しろ、ここにはお前達の手に負えない奴がいるからな!!」
「どういう意味ですの?まさか、まだ仲間が残っていると……?」
「……まさか、吸血鬼?」
「吸血鬼!?吸血鬼がここにいるのかい!?」
ネココの呟きにアルトは興奮したように反応し、魔物の研究家でもある彼にとっては吸血鬼の存在は非常に興味深い存在だった。だが、吸血鬼という言葉を聞いて他の者達は顔色を変え、周囲を見渡す。
「さあ、出て来てくれカトレア!!俺達を助けろ、そうすればお前の望みを何でも叶えてやる!!」
「吸血鬼がここにいますの!?」
「ちぃっ……最後に面倒な奴がいるのを忘れてたね!!」
「……何処に隠れている?」
レノ達は周囲を見渡して吸血鬼の存在を探すが、どういうわけかいくら待っても吸血鬼らしき人物は姿を現さず、疑問を抱いた皆がチェンに視線を向ける。彼は焦った表情で何処かに存在するはずのカトレアに助けを求めた。
「お、おい!!何をしている、ふざけている場合か!?カトレア、出て来い!!俺達を助けろ!!」
「……出てきませんわね」
「何だい、ただのはったりかい」
「情けない男だな……期待したのにがっかりだよ!!」
「く、くそっ……そんなはずはない、カトレア!!カトレア!!」
チェンの助けを求める事が遺跡内に広がるが、返答が戻ってくる様子はなく、若干レノ達は呆れた表情を浮かべる。チェンは信じられない表情を浮かべ、自分がカトレアに見捨てられた事を悟ると、怒りの咆哮を放つ。
「くそぉおおおおっ!!ふざけるなぁあああっ!!」
いくら叫んでもカトレアは姿を現す様子はなく、こうして黒狼の残党はレノ達に手によって捕まった――
――同時刻、当のカトレアは遺跡の建物の一角にて捕まった盗賊達に視線を向け、特に悪びれた様子もなく呟く。
「ごめんね、チェン……私、鼠だけはどうしても苦手なの~」
カトレアは大量の鼠を従えるネズミ婆さんの姿を見て面倒そうな表情を浮かべ、彼女は夜が明ける前に遺跡を離れ、彼女はチェンたちをあっさりと見捨てた。
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