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二人旅編

作戦を立てる

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「どうする?盗賊の仲間を演じて忍び込むかい?」
「いや……出入口にも見張りがいるし、松明もあるから顔を見られる。他に入り込めそうな場所はないかな?」
「ここから見た限りではなさそうだね。正面突破は……厳しいか」
「最悪、その方法しかないけど……」
「チュイイッ……」


レノ達は建物の様子を観察し、流石に盗賊の本拠地というだけで警戒は厳重で隙が見当たらない。どうすればいいかと考えていると、ここでアルトはある作戦を提案する。


「よし、こうなったら囮作戦だ。僕が外に出て騒ぎ立てるから、そうすれば盗賊達が集まってくるはずだ。僕が盗賊を引き寄せている間に君だけでも忍び込むんだ」
「えっ!?でも、そんな事をしたらアルトが……」
「大丈夫さ、彼等は僕が貴族である事を知っている。まあ、もう勘当されたけど……ともかく、奴等が僕を生かしているのは人質にして実家から大金を巻き上げようとしているんだ。だから、僕が殺される事はないよ。もちろん、痛めつけられて牢屋に閉じ込められるだろうが……その時は助けに来てくれるよね?」
「アルト……!!」


アルトの言葉にレノは彼の優しさに感動するが、すぐにアルトの身体が震えている事に気付く。彼も自分が提案した作戦とはいえ、必ず上手く行く保証がない事は理解していた。逆上した盗賊に殺される可能性もある事は重々承知し、それでも自分を救ったレノのため、そして友人でもあるネココのために無理をしているのだとレノは悟る。

本当にアルトの作戦に乗るべきなのかとレノは悩み、本当に他の方法はないのかと考える。すると、ここでレノはある事を思い出した。


「そういえばアルト……シノに引っ越すためにサンノを出たと言っていたよね?」
「え?あ、ああ……そうだけど、それがどうかしたのかい?」
「引っ越しというからにはそれなりにの荷物も持って行こうとしたんだよね。という事はもしかして馬車で街に向かおうとしてたの?」
「そうだね、僕の場合は研究器材や今まで集めた本とかも持っていく物が色々とあるから、一度に全ての荷物を運び出すのは無理だから先に僕が引っ越し先へ移動して家具何かは新しく買い揃えるつもりだったけど……どうしても持って行きたい荷物は馬車に乗せてきたよ」
「なら、その馬車と御者はどうなったの?」
「御者はいないよ、馬車も僕が個人で買った物を利用していたからね。気ままに一人旅でもしようかと思った時にこの森で盗賊連中に捕まってしまったよ。いや、慣れない事はする物じゃないね。今更ながらに爺の言葉が身に染みるよ」


アルトの家に仕えている彼が「爺」と呼ぶ老人は常日頃からアルトの単独行動を注意して小言を告げていた。一緒にいた時はアルトは爺を煙たがっていたが、実際に彼の言う通りにこのような事態に陥ると、流石のアルトも爺の言葉をもっと真面目に聞いておくべきだったと反省する。

しかし、今のレナに取って気になるのはアルトの馬車の存在であり、ここには馬がいるという事である。その馬を使えばこの森を抜け出すときに利用できるかもしれず、それに盗賊達も街を行き来するのであれば必ず馬などの乗り物を利用しているはずだった。


「この遺跡に馬小屋のような場所はあった?」
「馬小屋か……それなら北側の出入口の近くにそれに近い感じの建物を見かけたよ。そこにはたくさんの馬がいたはずだ。でも、それを聞いてどうする気だい?まさか僕達だけで先に抜け出して街に戻った後、助けを求めるのかい?」
「……とにかく、そこまで案内してくれる?」


レノの言葉にアルトは戸惑いながらも従い、言われた通りに彼は盗賊達が隠れ家として利用している建物を迂回し、北側へと移動を行う――





――しばらく時間が経過した後、レノ達は盗賊達が馬小屋代わりに飼育している建物の近くにまで忍び込む。馬の世話をしている盗賊が数名存在し、近くには堀に掛けられた橋が存在した。

外へと繋がる場所なので橋の近くにも数名の見張りが存在し、仮に馬小屋で騒ぎが起きれば彼等も気づかれる可能性も十分に有り得た。しかし、ここまで来た以上はレノとアルトは覚悟を決め、まずは馬が管理されている建物の傍まで移動を行う。


「本当にやる気かい、レノ君?」
「これしか方法はないと思う……少し、馬たちには可哀想だけど、頼んだよリボン」
「チュイイッ!!」


レノの言葉にリボンは頷くと、彼女はレノの元を離れて馬たちが閉じ込められている部屋へと移動する。普通の馬小屋とは異なり、元々は人間が住む建物を少し改造して馬たちの管理を行っている。そんな場所にリボンは忍び込み、盗賊達の目を盗んで馬が閉じ込められている部屋へと入り込む。


「ヒヒンッ……」
「チュイイッ……」


時間帯も夜のために馬たちの殆どが眠りこけており、その様子を見たリボンは目元を怪しく光り輝かせる。そして彼女は鋭い牙を剥き出しにして馬へと襲い掛かった。
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