109 / 215
二人旅編
まさかの再会
しおりを挟む
「ひひひっ……さあ、あの魔道具の使い方を話せ、そうすれば楽に殺してやる」
「殺す?俺を?」
「当たり前だ!!俺の足をこんな風にしやがって、今は回復薬なんて簡単には手に入らないんだぞ!!」
盗賊の男はレノに対して自分の右足を見せつけるが、レノからすれば彼の要求を受け入れるつもりはなく、両手と両足の確認を行う。この程度の拘束ならば問題ないと判断すると、盗賊の男に告げた。
「俺を殺したらあの弓も使い方が分からなくなるよ?」
「そんな口を叩けるのは今だけだ!!痛めつけて、痛めつけて、痛めつけて……最後には死んだ方がマシだと思うぐらいに苦しめてやる!!」
「そう……なら、こっちも遠慮しないでいいな」
「あっ!?」
レノは男の話を聞いて笑みを浮かべると、両手と両足の部分に魔力を集中させ、木造製の手枷と足枷を破壊する。その光景を見て盗賊の男は何が起きたのか分からなかったが、両手と両足の拘束を解除したレノは男に踏み込むと、下から顎に掌底を食らわせる。
「ふんっ!!」
「あぐぅっ!?」
意表を突かれて強烈な一撃を受けた男は後ろに倒れ込み、更に壁に頭を衝突させて白目を剥く。その様子を見てレノは鼻を鳴らし、拳を確認して頷く。
「こっちはガキの頃に赤毛熊を殴り倒した事もあるんだ。それに義父さんや爺ちゃんにも喧嘩の仕方は伝授してもらったから、お前みたいな怪我人に負けないよ」
「あ、がっ……」
「聞こえてないか……丁度良かった、あんたの服と装備を貰うよ」
レノは倒れている盗賊の男からとりあえずは服を奪い、ついでに盗賊が身に付けていた皮鎧とパンダナも身に付ける。男はレノよりも身長が高かったので服は少々だぼだぼだったが、流石に下着姿で行動するわけにはいかない。
男が持ち込んだ尋問用の道具に関しては武器として使えそうな物は色々あったが、使い慣れていない武器を持ち歩くのは危険だと判断し、男が所持していた短剣だけを奪う。
「さて、ここは盗賊の隠れ家なのか……?」
レノは牢屋の中の天井付近に存在する窓に視線を向け、とりあえずは外の様子を伺う事にした。足元に風の魔力を集中させて跳躍を行い、空中で魔力を解放させて更に上昇する。
前に洞穴のプラントから逃れる時にも利用した空中跳躍を行い、どうにか窓に取り付けられている鉄格子を掴んでレノは外の様子を伺う。
(ここは……街の中なのか?でも、妙に静かだし、建物に光が灯っていないな……)
窓から見えたのは数多くの建物だったが、時刻が夜を迎えているのに殆どの建物に火が灯っていない。よくよく確認すると殆どの建物が廃墟の様だった。半壊した建物の数も多く、もしかしたらシノの街ではない可能性もあった。
(気絶している間に街の外に連れ出されたのか……どちらにしろ、すぐにここから抜け出さないとまずそうだ)
気絶している男から情報を聞き出そうかとレノは考えたが、男は完全に意識を失い、簡単には目を覚ましそうはない。仕方なく、危険を承知でレノは外へ出向こうとした時、窓から鼠が姿を現す。
「チュチュッ!!」
「うわっ!?」
「チュイッ!?」
急に鼠が現れてレノは驚きのあまり、危うく鉄格子から手を離しそうになって慌てて持ち直す。いきなり現れた鼠にレノは驚くが、尻尾には見覚えのあるリボンが取り付けられている事に気付き、ネズミ婆さんが従えている「リボン」だと知る。
「お前……リボンか?どうしてこんな場所に?」
「チュチュウッ!!」
「うん、何を言っているか分からない」
「チュイイッ……」
リボンは何かを伝えようと必死に身体を動かすが、鼠語を理解できないレノでは彼女(雄かもしれないが)の意思は伝わらない。しかし、リボンはレノの肩に移動すると、自分の胸元を叩く。
「チュ~チュ~」
「何?もしかして脱走してくれるのを手伝ってくれるの?」
「チュイイッ!!」
「そう……心強いよ」
レノはリボンが自分の元を着た事を知ってネズミ婆さんが力を貸そうとしているのだと判断し、彼女を連れた状態で牢屋から抜け出す。抜け出す際にレノは男が持っていた鍵束を回収し、しっかりと牢の鍵を閉じて置く。これで男は目を覚ましても牢から出られず、他の仲間に助けを呼べない。
自分の牢から抜け出したレノは念のために他の牢屋を調べ、ドリスとネココの姿を探す。二人も捕まっていないのかを念のために調べ、先ほどの盗賊の男の口ぶりから二人も捕まった可能性も高い。もしも仮に本当に二人がチェンに襲われいたらと考えると、レノはチェンに対して怒りを抱く。
(落ち着け、焦って行動するな……他に捕まっている人もいるかもしれない、冷静になるんだ)
二人以外にも盗賊に捕まっている者がいないかとレノは牢屋を全て覗き込むと、最後の牢屋には毛布に身を包んで横たわる人物を発見した。レノはすぐに鍵束を取り出し、牢の鍵を開くと眠っている人物を呼び起こす。
「あの、大丈夫ですか?起きてます?」
「う、ううん……ん?そ、その声は……もしかしてレノ君か?」
「えっ……アルト!?」
「チュイッ!?」
捕まっている人物の顔が天井の窓から射す月の光に照らされると、相手がサンノの街で別れたはずのアルトである事を知る。アルトは随分と汚れた格好をしており、自分の前に盗賊姿のレノが現れて驚く。
「殺す?俺を?」
「当たり前だ!!俺の足をこんな風にしやがって、今は回復薬なんて簡単には手に入らないんだぞ!!」
盗賊の男はレノに対して自分の右足を見せつけるが、レノからすれば彼の要求を受け入れるつもりはなく、両手と両足の確認を行う。この程度の拘束ならば問題ないと判断すると、盗賊の男に告げた。
「俺を殺したらあの弓も使い方が分からなくなるよ?」
「そんな口を叩けるのは今だけだ!!痛めつけて、痛めつけて、痛めつけて……最後には死んだ方がマシだと思うぐらいに苦しめてやる!!」
「そう……なら、こっちも遠慮しないでいいな」
「あっ!?」
レノは男の話を聞いて笑みを浮かべると、両手と両足の部分に魔力を集中させ、木造製の手枷と足枷を破壊する。その光景を見て盗賊の男は何が起きたのか分からなかったが、両手と両足の拘束を解除したレノは男に踏み込むと、下から顎に掌底を食らわせる。
「ふんっ!!」
「あぐぅっ!?」
意表を突かれて強烈な一撃を受けた男は後ろに倒れ込み、更に壁に頭を衝突させて白目を剥く。その様子を見てレノは鼻を鳴らし、拳を確認して頷く。
「こっちはガキの頃に赤毛熊を殴り倒した事もあるんだ。それに義父さんや爺ちゃんにも喧嘩の仕方は伝授してもらったから、お前みたいな怪我人に負けないよ」
「あ、がっ……」
「聞こえてないか……丁度良かった、あんたの服と装備を貰うよ」
レノは倒れている盗賊の男からとりあえずは服を奪い、ついでに盗賊が身に付けていた皮鎧とパンダナも身に付ける。男はレノよりも身長が高かったので服は少々だぼだぼだったが、流石に下着姿で行動するわけにはいかない。
男が持ち込んだ尋問用の道具に関しては武器として使えそうな物は色々あったが、使い慣れていない武器を持ち歩くのは危険だと判断し、男が所持していた短剣だけを奪う。
「さて、ここは盗賊の隠れ家なのか……?」
レノは牢屋の中の天井付近に存在する窓に視線を向け、とりあえずは外の様子を伺う事にした。足元に風の魔力を集中させて跳躍を行い、空中で魔力を解放させて更に上昇する。
前に洞穴のプラントから逃れる時にも利用した空中跳躍を行い、どうにか窓に取り付けられている鉄格子を掴んでレノは外の様子を伺う。
(ここは……街の中なのか?でも、妙に静かだし、建物に光が灯っていないな……)
窓から見えたのは数多くの建物だったが、時刻が夜を迎えているのに殆どの建物に火が灯っていない。よくよく確認すると殆どの建物が廃墟の様だった。半壊した建物の数も多く、もしかしたらシノの街ではない可能性もあった。
(気絶している間に街の外に連れ出されたのか……どちらにしろ、すぐにここから抜け出さないとまずそうだ)
気絶している男から情報を聞き出そうかとレノは考えたが、男は完全に意識を失い、簡単には目を覚ましそうはない。仕方なく、危険を承知でレノは外へ出向こうとした時、窓から鼠が姿を現す。
「チュチュッ!!」
「うわっ!?」
「チュイッ!?」
急に鼠が現れてレノは驚きのあまり、危うく鉄格子から手を離しそうになって慌てて持ち直す。いきなり現れた鼠にレノは驚くが、尻尾には見覚えのあるリボンが取り付けられている事に気付き、ネズミ婆さんが従えている「リボン」だと知る。
「お前……リボンか?どうしてこんな場所に?」
「チュチュウッ!!」
「うん、何を言っているか分からない」
「チュイイッ……」
リボンは何かを伝えようと必死に身体を動かすが、鼠語を理解できないレノでは彼女(雄かもしれないが)の意思は伝わらない。しかし、リボンはレノの肩に移動すると、自分の胸元を叩く。
「チュ~チュ~」
「何?もしかして脱走してくれるのを手伝ってくれるの?」
「チュイイッ!!」
「そう……心強いよ」
レノはリボンが自分の元を着た事を知ってネズミ婆さんが力を貸そうとしているのだと判断し、彼女を連れた状態で牢屋から抜け出す。抜け出す際にレノは男が持っていた鍵束を回収し、しっかりと牢の鍵を閉じて置く。これで男は目を覚ましても牢から出られず、他の仲間に助けを呼べない。
自分の牢から抜け出したレノは念のために他の牢屋を調べ、ドリスとネココの姿を探す。二人も捕まっていないのかを念のために調べ、先ほどの盗賊の男の口ぶりから二人も捕まった可能性も高い。もしも仮に本当に二人がチェンに襲われいたらと考えると、レノはチェンに対して怒りを抱く。
(落ち着け、焦って行動するな……他に捕まっている人もいるかもしれない、冷静になるんだ)
二人以外にも盗賊に捕まっている者がいないかとレノは牢屋を全て覗き込むと、最後の牢屋には毛布に身を包んで横たわる人物を発見した。レノはすぐに鍵束を取り出し、牢の鍵を開くと眠っている人物を呼び起こす。
「あの、大丈夫ですか?起きてます?」
「う、ううん……ん?そ、その声は……もしかしてレノ君か?」
「えっ……アルト!?」
「チュイッ!?」
捕まっている人物の顔が天井の窓から射す月の光に照らされると、相手がサンノの街で別れたはずのアルトである事を知る。アルトは随分と汚れた格好をしており、自分の前に盗賊姿のレノが現れて驚く。
0
お気に入りに追加
660
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。


聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

黒豚辺境伯令息の婚約者
ツノゼミ
ファンタジー
デイビッド・デュロックは自他ともに認める醜男。
ついたあだ名は“黒豚”で、王都中の貴族子女に嫌われていた。
そんな彼がある日しぶしぶ参加した夜会にて、王族の理不尽な断崖劇に巻き込まれ、ひとりの令嬢と婚約することになってしまう。
始めは同情から保護するだけのつもりが、いつの間にか令嬢にも慕われ始め…
ゆるゆるなファンタジー設定のお話を書きました。
誤字脱字お許しください。
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。

お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

【完結】聖女ディアの処刑
大盛★無料
ファンタジー
平民のディアは、聖女の力を持っていた。
枯れた草木を蘇らせ、結界を張って魔獣を防ぎ、人々の病や傷を癒し、教会で朝から晩まで働いていた。
「怪我をしても、鍛錬しなくても、きちんと作物を育てなくても大丈夫。あの平民の聖女がなんとかしてくれる」
聖女に助けてもらうのが当たり前になり、みんな感謝を忘れていく。「ありがとう」の一言さえもらえないのに、無垢で心優しいディアは奇跡を起こし続ける。
そんななか、イルミテラという公爵令嬢に、聖女の印が現れた。
ディアは偽物と糾弾され、国民の前で処刑されることになるのだが――
※ざまあちょっぴり!←ちょっぴりじゃなくなってきました(;´・ω・)
※サクッとかる~くお楽しみくださいませ!(*´ω`*)←ちょっと重くなってきました(;´・ω・)
★追記
※残酷なシーンがちょっぴりありますが、週刊少年ジャンプレベルなので特に年齢制限は設けておりません。
※乳児が地面に落っこちる、運河の氾濫など災害の描写が数行あります。ご留意くださいませ。
※ちょこちょこ書き直しています。セリフをカッコ良くしたり、状況を補足したりする程度なので、本筋には大きく影響なくお楽しみ頂けると思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる