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二人旅編
爆炎を斬る
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――時は遡り、トレントに挑む前にレノはアルトが生み出した「火球」を取り込み、剣に纏わせた風の魔力を利用して刀身に炎を纏う練習を行う。最初の頃は風の魔力の勢いが強すぎると火球を打ち消してしまったが、何度も繰り返す事でレノは徐々に魔力の調整を行い、遂には完全にアルトが撃ち込んだ火球の魔力を取り込んで刀身に「火炎」を宿す事に成功した。
『よし、成功した!!だんだんと上手く出来るようになってきた!!』
『信じられないな……まさか、他人の魔力を利用して合成魔術を完成させるなんて』
『えっ……そんなに凄い事なの?』
『当然じゃないか!!これは立派な合成魔法だよ!!普通の人間なら二つの魔力を同時に発動させて組み合わせるのも難しいのに……君の場合は他人の生み出した魔力さえも取り込んで利用しているんだ。そんな事が出来る魔導士なんて聞いた事もない!!』
アルトによると他人の生み出した魔法を取り込む事自体があり得ない事らしく、しかもレノの場合は自分の魔力を組み合わせた「合成魔法」の技術も会得しているという。並の魔導士では絶対に出来ない芸当だった。
レノの場合は別にそこまで複雑には考えておらず、小さな種火でも上手く風を送り込めば強くなって大火と化す。それを知っているからこそアルトの生み出した火球に自分の魔力を送り込めば炎の剣が誕生するのではないかと考えたに過ぎない。
『レノ君、正直に言わせてもらうと君の魔力を操る技術は天才的だ。他人の魔力を取り込んでしかも自分の物に出来るなんて普通ならあり得ない!!君は正に天才だ!!』
『え?いや、違うと思うよ』
『違う?違うとはどういう意味だい?』
刀身が炎で燃え盛る剣を目にしてレノはアルトの言葉の一部を訂正し、確かに一見する限りではレノは彼の魔力を剣に取り込む事は出来た。しかし、完全な意味で制御下に置いたわけではない。
『確かにこの炎は俺が操る事が出来るけど、この炎はあくまでもアルトが生み出した火球の炎を俺の風の魔力で強化させて、刀身に纏っただけだよ。つまり、この炎は俺とアルトが作り出した炎であって俺が完全に操れるわけじゃないよ』
『それは……どういう意味だい?』
『つまり、この剣の炎を俺は操作する事が出来ても……自分の意志で消す事は出来ないんだよ』
現在の剣に纏う炎はレノだけが作り出した魔力ではなく、アルトの魔力で構成された火球を取り込んでいる。つまり、レノが仮に風の魔力を送り込むのを止めた場合、刀身に纏う炎はどうなるのか、答えは消える事はなく燃え続けるか、あるいは暴発してしまう。
仮にレノが自分の魔力だけを利用して生み出した炎ならば自分の意思で消す事は出来るが、この状態の剣の炎をレノの意思で消す事は出来ない。つまり、何処かで発散させない限りは炎は消える事はない事を告げた――
――時刻は現在へと戻り、刀身に風の魔力を渦任せ、レノは爆炎を取り込む事に成功する。しかし、アルトの火球や普段から火属性の魔力を利用して生み出している「火炎」とは桁違いの魔力にレノは剣に爆炎を維持するだけでもきつかった。
(なんて魔力だ……でも、段々と慣れてきた)
ドリスの爆炎剣は純粋な火属性の魔力だけで構成され、その魔力を取り込んだ事で刀身に真紅の炎が纏う。最初は取り込む事が自分に出来るのかと不安を抱いたレノだったが、刀身に纏わせる風の魔力を渦巻の如く纏わせ、どうにか取り込む事に成功した。
(後はこの魔力を発散させればいいけど……ここで発散したら大惨事になる。外に出ないと……!!)
やはり他人の魔力で生み出した魔法を取り込み、それを刀身に維持するのは非常に難しく、咄嗟にレノは剣を構えた状態でロンが入ってきたとき開け開かれていた裏口に視線を向ける。完全に煙が蔓延していた事で油断していたのか、ロンが開けたままの状態で放置されていた裏口の扉から抜け出し、そして空へ向けて振り払う。
「こっ……のぉおおおっ!!」
「きゃあっ!?」
「にゃっ!?」
剣技「地裂」を繰り出す要領でレノは下から剣を振り払うと、空へ向けて刀身に纏っていた真紅の炎が放出され、ある程度まで上昇すると花火のように散って消えてしまう。その様子を見てレノは安堵するが、すぐに建物の中へと戻る。
一階に戻るとそこには床にへこたれるドリスと、状況をよく理解していないネココが降りていた。外の騒ぎを聞きつけてきたのか、顔が痣だらけになったロンを連れてネズミ婆さんも下りてきた。
「おいおい、今のは何の騒ぎだい!?他の奴等がもう攻め込んできたのかい!?」
「あっ!?貴女はあの時の……」
「あん?誰かと思えば王国騎士様じゃないかい?やっと来たのかい?」
「ううっ……も、もう許してくれ……」
「……どういう状況?」
ネズミ婆さんがロンを連れて出てくるとドリスは驚いた表情を浮かべ、二人は昨日に顔を合わせている。賞金首のロンは相当に痛めつけられたのか傷だらけであったが、その顔を見てドリスは驚く。
「そ、その方は?」
「ああ、こいつは賞金首さ。あんたも聞いた事はあるだろう?毒薬師のロンさ、こいつが私達を襲ってきたから返り討ちにしてやったまでだよ」
「では、先ほどの悲鳴は……」
「た、助けて……助けてくれぇっ……」
「……往生際が悪い、大人しく観念する」
「ふうっ……やっと誤解が解けた」
ドリスはネズミ婆さんと捕まっているロンの顔を交互に見た後、やっと状況を理解する――
『よし、成功した!!だんだんと上手く出来るようになってきた!!』
『信じられないな……まさか、他人の魔力を利用して合成魔術を完成させるなんて』
『えっ……そんなに凄い事なの?』
『当然じゃないか!!これは立派な合成魔法だよ!!普通の人間なら二つの魔力を同時に発動させて組み合わせるのも難しいのに……君の場合は他人の生み出した魔力さえも取り込んで利用しているんだ。そんな事が出来る魔導士なんて聞いた事もない!!』
アルトによると他人の生み出した魔法を取り込む事自体があり得ない事らしく、しかもレノの場合は自分の魔力を組み合わせた「合成魔法」の技術も会得しているという。並の魔導士では絶対に出来ない芸当だった。
レノの場合は別にそこまで複雑には考えておらず、小さな種火でも上手く風を送り込めば強くなって大火と化す。それを知っているからこそアルトの生み出した火球に自分の魔力を送り込めば炎の剣が誕生するのではないかと考えたに過ぎない。
『レノ君、正直に言わせてもらうと君の魔力を操る技術は天才的だ。他人の魔力を取り込んでしかも自分の物に出来るなんて普通ならあり得ない!!君は正に天才だ!!』
『え?いや、違うと思うよ』
『違う?違うとはどういう意味だい?』
刀身が炎で燃え盛る剣を目にしてレノはアルトの言葉の一部を訂正し、確かに一見する限りではレノは彼の魔力を剣に取り込む事は出来た。しかし、完全な意味で制御下に置いたわけではない。
『確かにこの炎は俺が操る事が出来るけど、この炎はあくまでもアルトが生み出した火球の炎を俺の風の魔力で強化させて、刀身に纏っただけだよ。つまり、この炎は俺とアルトが作り出した炎であって俺が完全に操れるわけじゃないよ』
『それは……どういう意味だい?』
『つまり、この剣の炎を俺は操作する事が出来ても……自分の意志で消す事は出来ないんだよ』
現在の剣に纏う炎はレノだけが作り出した魔力ではなく、アルトの魔力で構成された火球を取り込んでいる。つまり、レノが仮に風の魔力を送り込むのを止めた場合、刀身に纏う炎はどうなるのか、答えは消える事はなく燃え続けるか、あるいは暴発してしまう。
仮にレノが自分の魔力だけを利用して生み出した炎ならば自分の意思で消す事は出来るが、この状態の剣の炎をレノの意思で消す事は出来ない。つまり、何処かで発散させない限りは炎は消える事はない事を告げた――
――時刻は現在へと戻り、刀身に風の魔力を渦任せ、レノは爆炎を取り込む事に成功する。しかし、アルトの火球や普段から火属性の魔力を利用して生み出している「火炎」とは桁違いの魔力にレノは剣に爆炎を維持するだけでもきつかった。
(なんて魔力だ……でも、段々と慣れてきた)
ドリスの爆炎剣は純粋な火属性の魔力だけで構成され、その魔力を取り込んだ事で刀身に真紅の炎が纏う。最初は取り込む事が自分に出来るのかと不安を抱いたレノだったが、刀身に纏わせる風の魔力を渦巻の如く纏わせ、どうにか取り込む事に成功した。
(後はこの魔力を発散させればいいけど……ここで発散したら大惨事になる。外に出ないと……!!)
やはり他人の魔力で生み出した魔法を取り込み、それを刀身に維持するのは非常に難しく、咄嗟にレノは剣を構えた状態でロンが入ってきたとき開け開かれていた裏口に視線を向ける。完全に煙が蔓延していた事で油断していたのか、ロンが開けたままの状態で放置されていた裏口の扉から抜け出し、そして空へ向けて振り払う。
「こっ……のぉおおおっ!!」
「きゃあっ!?」
「にゃっ!?」
剣技「地裂」を繰り出す要領でレノは下から剣を振り払うと、空へ向けて刀身に纏っていた真紅の炎が放出され、ある程度まで上昇すると花火のように散って消えてしまう。その様子を見てレノは安堵するが、すぐに建物の中へと戻る。
一階に戻るとそこには床にへこたれるドリスと、状況をよく理解していないネココが降りていた。外の騒ぎを聞きつけてきたのか、顔が痣だらけになったロンを連れてネズミ婆さんも下りてきた。
「おいおい、今のは何の騒ぎだい!?他の奴等がもう攻め込んできたのかい!?」
「あっ!?貴女はあの時の……」
「あん?誰かと思えば王国騎士様じゃないかい?やっと来たのかい?」
「ううっ……も、もう許してくれ……」
「……どういう状況?」
ネズミ婆さんがロンを連れて出てくるとドリスは驚いた表情を浮かべ、二人は昨日に顔を合わせている。賞金首のロンは相当に痛めつけられたのか傷だらけであったが、その顔を見てドリスは驚く。
「そ、その方は?」
「ああ、こいつは賞金首さ。あんたも聞いた事はあるだろう?毒薬師のロンさ、こいつが私達を襲ってきたから返り討ちにしてやったまでだよ」
「では、先ほどの悲鳴は……」
「た、助けて……助けてくれぇっ……」
「……往生際が悪い、大人しく観念する」
「ふうっ……やっと誤解が解けた」
ドリスはネズミ婆さんと捕まっているロンの顔を交互に見た後、やっと状況を理解する――
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