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二人旅編
毒薬師のロン
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「すぐにここから出ないと……!?」
「レノ、駄目!!」
レノは窓から外へと抜け出そうとした瞬間、ネココが注意の言葉を掛ける。その言葉を聞いてレノは窓へ近づくのとを辞めると、突如として窓の向こう側から矢が放たれてレノの頬を掠めた。
「うわっ!?」
「おい、大丈夫かい!?」
「……窓の外で見張っている、下手に逃げようとしたら狙い撃ちされる」
即座にネココは窓のカーテンを閉めて外から見えないようにしたが、煙はもう二階にまで到達し、迫っていた。これでは逃げ道はなく、他の窓から脱出しようにも既に煙はレノ達の周囲に迫っている。
「くそ、どうする!?こんな状態だと私の鼠を呼んでも役に立たないよ!!」
「……万事休す」
「何か方法は……」
3人は迫りくる煙の中で背中を合わせ、この状況を脱する術を考える。すると、ここでレノはある事に気付き、一か八かの賭けに出る事にした――
――数分後、煙が完全に酒場内に充満した頃、建物の裏口から入り込む小男の姿が存在した。その男は耳栓にゴーグルに黒塗りのマスクを身に付け、酒場の中に入り込む。その手にはボーガンを握りしめていた。
酒場の中では大量の人間が床に倒れ込み、白目を剥いて身体を痙攣させていた。その様子を見て男は笑みを浮かべ、机の下から煙を生み出し続ける酒瓶を覗き込む。この酒瓶には男が事前に仕込んだ毒が入っており、一定の温度に到達すると液体は気体へと変化する。黄色の煙のような気体を吸い込むと普通の人間ならば身体が麻痺して倒れ込む。
『安心しろ、死にはしない。あまりに吸い続けると身体が麻痺したまま一生動かなくなる可能性もあるがな……ひひひっ』
男は倒れている人間達を見て嘲笑い、彼は標的がいるはずの二階へと向かう。その途中、階段の手すりに横たわる尻尾にリボンを巻いた鼠を見て疑問を抱くが、特に気にもかけずに二階へと上がった。
『へへっ……眠っているな、おやおや中の良い事で……』
二階に辿り着くとレノ達は身体を寄り添うように壁に背中を預けて倒れている事に気付き、その様子を見て「毒薬師のロン」は笑い声を上げる。
――賞金首であるロンは元々は有名な「薬剤師」であった。薬剤師とはこの世界における医者のような位置づけであり、治癒魔導士が治せない病気や毒などを対処する職業であった。
元々は傭兵団専属の薬剤師として働いていたが、5年前に彼が雇っていた黒狼が盗賊団と認定されて壊滅し、その際に逃げ延びた彼も指名手配された。それだけを聞くと同情の余地があるのだが、この男の場合は指名手配される前から問題を色々と起こしていた。
5年前のロンはまだ十代だったが、その時から彼は薬剤師としての腕は一流で周囲の人間の信頼も厚かった。しかし、彼は傭兵達が捕まえた犯罪者を秘密裏に利用し、毒薬の開発を行う。
ロンはわざわざ黒狼に所属していたのは傭兵を治療して金を貰い、そして彼等が捕まえた犯罪者を利用して裏で毒薬を作り出す。後に彼が作り出した毒薬が黒狼の暗殺稼業にも利用されていた事が発覚する。
過去にロンが犯罪者達を薬の実験に利用していた事が発覚すると、すぐに国は彼を捕まえようとした。しかし、ロンは黒狼が盗賊団に認定される前に逃げ出す。彼は事前に黒狼が狙われる事を知り、騎士団が動き出す前に傭兵達さえも裏切って逃げ出したのだ。
それから数年の間は自分の存在が知られないように気を付けながら薬剤師の仕事を行い、ひっそりと生きてきた。しかし、そんな彼の元に黒狼に所属していた傭兵が訪れ、彼を仲間へと引き入れた。
(こんなガキ共を始末するだけに使うには勿体ない毒だったが……まあいい、いい実験にはなったな)
ロンは新しく自分が作り出した毒を使用し、酒場内の人間全員を麻痺させる。最も派手にやり過ぎたので標的を仕留めた後はすぐに逃げ出さなければならない。本来の彼の狙いの相手は残念ながら訪れていない様子だが、それでもロウを捕まえてヤンも倒したと思われるレノとネココを始末すれば他の仲間からの評価は上がる。
『死ね、ガキがっ!!』
ボーガンを構えたロンはまずはレノに狙いを定めるが、矢を放つ寸前でレノは目を開くと、ロンに向けて飛び掛かる。突如として起き上がったレノにロンは驚愕し、矢を放とうとするが撃ち込む寸前にレノはボーガンを蹴り飛ばす。
「させるかっ!!」
『ぐあっ!?』
手にしていたボーガンを蹴り飛ばされたロンは悲鳴を漏らし、しりもちを着いてしまう。その様子をレノが見下ろすと、ロンは信じられない表情を浮かべて見上げる。どうして未だに毒煙が蔓延しているこの状況でレノは動けるのかとを問う。
『き、貴様!!どうして動ける!?』
「……俺の身体を見て不思議に思わないの?」
「な、何だと……これは!?」
ロンはレノの身体を見てある事に気付き、どういうわけなのか建物内に充満している毒煙がレノの身体を何故か避けていてた。まるで台風の目のようにレノの周囲には煙が近づかず、煙はかき消されていた。
しかも立ち上がったのはレノだけではなく、後ろで倒れていたネココとネズミ婆さんも起き上がり、二人はロンを前に移動すると指の骨を鳴らす。
「たくっ、私達を襲おうなんていい度胸だね……覚悟は出来てるかい?」
「……無関係の人をこんなに巻き込んで、許さない」
「さあ、覚悟しろ」
『ば、馬鹿な……なんで、何でお前等は動けるんだ!?』
自分の毒が効かない3人にロンは動揺を隠せず、そんな彼に対してレノは笑みを浮かべ、毒煙が自分達の元に押し寄せる少し前の事を思い返す――
「レノ、駄目!!」
レノは窓から外へと抜け出そうとした瞬間、ネココが注意の言葉を掛ける。その言葉を聞いてレノは窓へ近づくのとを辞めると、突如として窓の向こう側から矢が放たれてレノの頬を掠めた。
「うわっ!?」
「おい、大丈夫かい!?」
「……窓の外で見張っている、下手に逃げようとしたら狙い撃ちされる」
即座にネココは窓のカーテンを閉めて外から見えないようにしたが、煙はもう二階にまで到達し、迫っていた。これでは逃げ道はなく、他の窓から脱出しようにも既に煙はレノ達の周囲に迫っている。
「くそ、どうする!?こんな状態だと私の鼠を呼んでも役に立たないよ!!」
「……万事休す」
「何か方法は……」
3人は迫りくる煙の中で背中を合わせ、この状況を脱する術を考える。すると、ここでレノはある事に気付き、一か八かの賭けに出る事にした――
――数分後、煙が完全に酒場内に充満した頃、建物の裏口から入り込む小男の姿が存在した。その男は耳栓にゴーグルに黒塗りのマスクを身に付け、酒場の中に入り込む。その手にはボーガンを握りしめていた。
酒場の中では大量の人間が床に倒れ込み、白目を剥いて身体を痙攣させていた。その様子を見て男は笑みを浮かべ、机の下から煙を生み出し続ける酒瓶を覗き込む。この酒瓶には男が事前に仕込んだ毒が入っており、一定の温度に到達すると液体は気体へと変化する。黄色の煙のような気体を吸い込むと普通の人間ならば身体が麻痺して倒れ込む。
『安心しろ、死にはしない。あまりに吸い続けると身体が麻痺したまま一生動かなくなる可能性もあるがな……ひひひっ』
男は倒れている人間達を見て嘲笑い、彼は標的がいるはずの二階へと向かう。その途中、階段の手すりに横たわる尻尾にリボンを巻いた鼠を見て疑問を抱くが、特に気にもかけずに二階へと上がった。
『へへっ……眠っているな、おやおや中の良い事で……』
二階に辿り着くとレノ達は身体を寄り添うように壁に背中を預けて倒れている事に気付き、その様子を見て「毒薬師のロン」は笑い声を上げる。
――賞金首であるロンは元々は有名な「薬剤師」であった。薬剤師とはこの世界における医者のような位置づけであり、治癒魔導士が治せない病気や毒などを対処する職業であった。
元々は傭兵団専属の薬剤師として働いていたが、5年前に彼が雇っていた黒狼が盗賊団と認定されて壊滅し、その際に逃げ延びた彼も指名手配された。それだけを聞くと同情の余地があるのだが、この男の場合は指名手配される前から問題を色々と起こしていた。
5年前のロンはまだ十代だったが、その時から彼は薬剤師としての腕は一流で周囲の人間の信頼も厚かった。しかし、彼は傭兵達が捕まえた犯罪者を秘密裏に利用し、毒薬の開発を行う。
ロンはわざわざ黒狼に所属していたのは傭兵を治療して金を貰い、そして彼等が捕まえた犯罪者を利用して裏で毒薬を作り出す。後に彼が作り出した毒薬が黒狼の暗殺稼業にも利用されていた事が発覚する。
過去にロンが犯罪者達を薬の実験に利用していた事が発覚すると、すぐに国は彼を捕まえようとした。しかし、ロンは黒狼が盗賊団に認定される前に逃げ出す。彼は事前に黒狼が狙われる事を知り、騎士団が動き出す前に傭兵達さえも裏切って逃げ出したのだ。
それから数年の間は自分の存在が知られないように気を付けながら薬剤師の仕事を行い、ひっそりと生きてきた。しかし、そんな彼の元に黒狼に所属していた傭兵が訪れ、彼を仲間へと引き入れた。
(こんなガキ共を始末するだけに使うには勿体ない毒だったが……まあいい、いい実験にはなったな)
ロンは新しく自分が作り出した毒を使用し、酒場内の人間全員を麻痺させる。最も派手にやり過ぎたので標的を仕留めた後はすぐに逃げ出さなければならない。本来の彼の狙いの相手は残念ながら訪れていない様子だが、それでもロウを捕まえてヤンも倒したと思われるレノとネココを始末すれば他の仲間からの評価は上がる。
『死ね、ガキがっ!!』
ボーガンを構えたロンはまずはレノに狙いを定めるが、矢を放つ寸前でレノは目を開くと、ロンに向けて飛び掛かる。突如として起き上がったレノにロンは驚愕し、矢を放とうとするが撃ち込む寸前にレノはボーガンを蹴り飛ばす。
「させるかっ!!」
『ぐあっ!?』
手にしていたボーガンを蹴り飛ばされたロンは悲鳴を漏らし、しりもちを着いてしまう。その様子をレノが見下ろすと、ロンは信じられない表情を浮かべて見上げる。どうして未だに毒煙が蔓延しているこの状況でレノは動けるのかとを問う。
『き、貴様!!どうして動ける!?』
「……俺の身体を見て不思議に思わないの?」
「な、何だと……これは!?」
ロンはレノの身体を見てある事に気付き、どういうわけなのか建物内に充満している毒煙がレノの身体を何故か避けていてた。まるで台風の目のようにレノの周囲には煙が近づかず、煙はかき消されていた。
しかも立ち上がったのはレノだけではなく、後ろで倒れていたネココとネズミ婆さんも起き上がり、二人はロンを前に移動すると指の骨を鳴らす。
「たくっ、私達を襲おうなんていい度胸だね……覚悟は出来てるかい?」
「……無関係の人をこんなに巻き込んで、許さない」
「さあ、覚悟しろ」
『ば、馬鹿な……なんで、何でお前等は動けるんだ!?』
自分の毒が効かない3人にロンは動揺を隠せず、そんな彼に対してレノは笑みを浮かべ、毒煙が自分達の元に押し寄せる少し前の事を思い返す――
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