87 / 215
二人旅編
ネズミ婆さん
しおりを挟む
「あっはっはっ、止めておきなカマセ!!あんたの敵う相手じゃないよ!!」
「な、何だと!?」
酒場の一番奥の席に座っていた人物が男性に声をかけると、レノは男性の名前がカマセだと知り、そして彼に話しかけた相手が老婆だと気付く。
この老婆がネココが言っていた「ネズミ婆さん」かと思ったが、予想に反して老婆は普通の人間なのか頭に獣人族特融の獣耳は生やしていなかった。
「婆さん、どういう意味だ!?このガキが俺よりも強いだと!?そんなのあり得るか!!」
「有り得るんだよ、その子の二つ名を教えてやろうかい?白獅子の名前ぐらいはあんたもしっているだろう?」
「なっ……!?」
老婆の顔を見るとネココは安心した表情を浮かべ、一方でカマセの方は鼻を抑えながらも老婆に対して怒鳴り返す。そんなカマセに対して老婆はネココの渾名を口にすると、カマセは驚愕の表情を浮かべ、ネココの方はうんざりとした顔を浮かべる。
「……その渾名は好きじゃない、私は獅子じゃない」
「そういうじゃないよ、私のネズミ婆さんよりも格好良い二つ名じゃないかい」
「白獅子だと?」
「あの有名な……」
「えっ……ネココが白獅子?」
ネココの二つ名を老婆が話すと、酒場内に存在した者達が反応し、一方でレノも気にかかる。どうしてネココが「白獅子」などという名前が付けられたのかと思うと、老婆は理由を語ってくれた。
「1年前、あんたが単独で獅子の仮面を被って盗賊の隠れ家に忍び込み、100人近くの盗賊を戦闘不能に追い込んだ時に名付けられたんだろう?」
「だから、それが誤解……私が付けていたのは獅子の仮面じゃなかったし、そもそも100人も倒していない。30人ぐらいしかいなかった」
「え……でも、仮面は付けてたの?」
「盗賊達と戦う前、祭りが行われていてそこで偶々猫の仮面を買った。中々可愛いかったから気に入って仮面を付けてたんだけど、仕事の時に外すのを忘れていただけ……そもそも私が付けていたのは獅子じゃなくて猫の仮面だったのに、捕まった盗賊達が勘違いして獅子だと言い張ったせいで変な渾名を付けられた」
「あはははっ、そいつは災難だったね。でも、白猫よりも白獅子の方が威厳があって格好良いじゃないかい。傭兵なら可愛い名前より、格好いい名前の方が箔が付くだろう?」
「むうっ……」
ネココは自分の「白獅子」という二つ名には不満はあるが、彼女が白獅子だと知ったカマセという男は顔色を青くさせ、距離を取る。どうやらネココは傭兵としてはかなりの有名人だったらしく、本当に彼女が一流の傭兵だとレノは思い知らされた。
カマセが退いてくれたのでネココはレノと共にネズミ婆さんの元へと向かい、彼女の席の向かい側に座り込む。この際にレノも座ろうとしたが、ここでネズミ婆さんがレノに視線を向け、笑みを浮かべる。
「ふふふっ……あんたの事もよく知ってるよ、タスクオークにトレントを倒したという最近話題の巨人殺しの剣聖の弟子だろう?」
「えっ!?」
レノは自分の事も知っているネズミ婆さんの言葉に驚き、そんな彼に対してネズミ婆さんはレノの噂はこの街にも届いている事を伝える。
「あんたの噂はこの街にもよく伝わっているよ。それにしても、まさかあの巨人殺しの剣聖に弟子がいたとはね、あの爺さんは元気かい?」
「えっ……爺ちゃんの事、知ってるんですか?」
「知ってるも何も、あの爺さんとは昔からの付き合いさ。今でも傭兵の間では伝説の存在として扱われてるからね……何年か前に姿を消したから何処かで野垂れ死んだのかと思っていたけど、まだ生きてるのかい?」
「あ、はい……元気ですよ」
ネズミ婆さんは昔の事を思い出したのか感慨深い表情を浮かべ、そんな彼女にレノはロイは存命である事を伝える。するとネズミ婆さんは安心した表情を浮かべ、自分とロイの関係を話してくれた。
「ロイと私は昔馴染みでね、一時期はずっと一緒にいた事もあったよ。だけど、あいつが片腕を失くしてからは距離を置かれるようになってね……最後に顔を合わせたのはあいつが自分の片腕を斬った男の元に向かう前に会いに来てくれたんだよ」
「それって……巨人国へ向かう前の爺ちゃんと会ったんですか?」
「ああ、そうだよ。あの時のあいつの顔と来たら正に鬼の様な顔をしていたね。これが今生の別れになるかもしれないからって、こんな物まで私に渡して来たよ」
「それは……?」
「収納鞄さ、見た事はないかい?」
レノの前でネココの前にネズミ婆さんは鞄を置くと、外見は普通の鞄にしか見えないが、彼女は鞄に手を伸ばすと釣り口と酒瓶を取り出す。
どう考えても有り得ない量の荷物が鞄の中から現れると、レノは前にアルトが所持していた鞄と同じく収納型の魔道具だと気付く。アルトが所有していた鞄とはデザインが少々異なるが、性能は同じだった。
「あの男、仮にも女への贈り物にこんな物を渡してきたんだよ。まあ、私の商売柄としては宝石や指輪よりもこっちの方が嬉しいと知っていたんだろうけどね……結局、これを渡した後はもう私の元へは姿を現す事はなかったよ」
「……もしかして、ネズミ婆さんはレノのお爺ちゃんと恋人だった?」
「恋人?まさか、あいつとはただの腐れ縁さ!!まあ、一時期はこいつとなら所帯を持ってもいいと思った事はあるけどね……結局、お互いに別の人と結婚したよ」
昔のロイの事を語りながらネズミ婆さんは少し寂し気な表情を浮かべ、自分の左手に視線を向ける。だが、すぐに頭を振ってレノとネココに尋ねる。
「それよりもあんたら、私に用事があって来たんじゃないのかい?」
「……そうだった。ネズミ婆さんに聞きたい事がある」
「実は俺達、黒狼という組織を調べているんです」
「黒狼……今日はよくその名前を耳にするね。少し前にあんた達と同じように私の所に訪れて黒狼の情報を聞き出そうとした奴がいたよ」
「えっ!?」
「……その話、本当?」
ネズミ婆さんの言葉にレノとネココは驚き、ネズミ婆さんは頷く。彼女によると二人が訪れる少し前に黒狼の情報を尋ねに来た人物がいたという。その人物はネズミ婆さんから情報を聞き出すと立ち去ってしまったが、かなり派手な外見をしていたという。
「な、何だと!?」
酒場の一番奥の席に座っていた人物が男性に声をかけると、レノは男性の名前がカマセだと知り、そして彼に話しかけた相手が老婆だと気付く。
この老婆がネココが言っていた「ネズミ婆さん」かと思ったが、予想に反して老婆は普通の人間なのか頭に獣人族特融の獣耳は生やしていなかった。
「婆さん、どういう意味だ!?このガキが俺よりも強いだと!?そんなのあり得るか!!」
「有り得るんだよ、その子の二つ名を教えてやろうかい?白獅子の名前ぐらいはあんたもしっているだろう?」
「なっ……!?」
老婆の顔を見るとネココは安心した表情を浮かべ、一方でカマセの方は鼻を抑えながらも老婆に対して怒鳴り返す。そんなカマセに対して老婆はネココの渾名を口にすると、カマセは驚愕の表情を浮かべ、ネココの方はうんざりとした顔を浮かべる。
「……その渾名は好きじゃない、私は獅子じゃない」
「そういうじゃないよ、私のネズミ婆さんよりも格好良い二つ名じゃないかい」
「白獅子だと?」
「あの有名な……」
「えっ……ネココが白獅子?」
ネココの二つ名を老婆が話すと、酒場内に存在した者達が反応し、一方でレノも気にかかる。どうしてネココが「白獅子」などという名前が付けられたのかと思うと、老婆は理由を語ってくれた。
「1年前、あんたが単独で獅子の仮面を被って盗賊の隠れ家に忍び込み、100人近くの盗賊を戦闘不能に追い込んだ時に名付けられたんだろう?」
「だから、それが誤解……私が付けていたのは獅子の仮面じゃなかったし、そもそも100人も倒していない。30人ぐらいしかいなかった」
「え……でも、仮面は付けてたの?」
「盗賊達と戦う前、祭りが行われていてそこで偶々猫の仮面を買った。中々可愛いかったから気に入って仮面を付けてたんだけど、仕事の時に外すのを忘れていただけ……そもそも私が付けていたのは獅子じゃなくて猫の仮面だったのに、捕まった盗賊達が勘違いして獅子だと言い張ったせいで変な渾名を付けられた」
「あはははっ、そいつは災難だったね。でも、白猫よりも白獅子の方が威厳があって格好良いじゃないかい。傭兵なら可愛い名前より、格好いい名前の方が箔が付くだろう?」
「むうっ……」
ネココは自分の「白獅子」という二つ名には不満はあるが、彼女が白獅子だと知ったカマセという男は顔色を青くさせ、距離を取る。どうやらネココは傭兵としてはかなりの有名人だったらしく、本当に彼女が一流の傭兵だとレノは思い知らされた。
カマセが退いてくれたのでネココはレノと共にネズミ婆さんの元へと向かい、彼女の席の向かい側に座り込む。この際にレノも座ろうとしたが、ここでネズミ婆さんがレノに視線を向け、笑みを浮かべる。
「ふふふっ……あんたの事もよく知ってるよ、タスクオークにトレントを倒したという最近話題の巨人殺しの剣聖の弟子だろう?」
「えっ!?」
レノは自分の事も知っているネズミ婆さんの言葉に驚き、そんな彼に対してネズミ婆さんはレノの噂はこの街にも届いている事を伝える。
「あんたの噂はこの街にもよく伝わっているよ。それにしても、まさかあの巨人殺しの剣聖に弟子がいたとはね、あの爺さんは元気かい?」
「えっ……爺ちゃんの事、知ってるんですか?」
「知ってるも何も、あの爺さんとは昔からの付き合いさ。今でも傭兵の間では伝説の存在として扱われてるからね……何年か前に姿を消したから何処かで野垂れ死んだのかと思っていたけど、まだ生きてるのかい?」
「あ、はい……元気ですよ」
ネズミ婆さんは昔の事を思い出したのか感慨深い表情を浮かべ、そんな彼女にレノはロイは存命である事を伝える。するとネズミ婆さんは安心した表情を浮かべ、自分とロイの関係を話してくれた。
「ロイと私は昔馴染みでね、一時期はずっと一緒にいた事もあったよ。だけど、あいつが片腕を失くしてからは距離を置かれるようになってね……最後に顔を合わせたのはあいつが自分の片腕を斬った男の元に向かう前に会いに来てくれたんだよ」
「それって……巨人国へ向かう前の爺ちゃんと会ったんですか?」
「ああ、そうだよ。あの時のあいつの顔と来たら正に鬼の様な顔をしていたね。これが今生の別れになるかもしれないからって、こんな物まで私に渡して来たよ」
「それは……?」
「収納鞄さ、見た事はないかい?」
レノの前でネココの前にネズミ婆さんは鞄を置くと、外見は普通の鞄にしか見えないが、彼女は鞄に手を伸ばすと釣り口と酒瓶を取り出す。
どう考えても有り得ない量の荷物が鞄の中から現れると、レノは前にアルトが所持していた鞄と同じく収納型の魔道具だと気付く。アルトが所有していた鞄とはデザインが少々異なるが、性能は同じだった。
「あの男、仮にも女への贈り物にこんな物を渡してきたんだよ。まあ、私の商売柄としては宝石や指輪よりもこっちの方が嬉しいと知っていたんだろうけどね……結局、これを渡した後はもう私の元へは姿を現す事はなかったよ」
「……もしかして、ネズミ婆さんはレノのお爺ちゃんと恋人だった?」
「恋人?まさか、あいつとはただの腐れ縁さ!!まあ、一時期はこいつとなら所帯を持ってもいいと思った事はあるけどね……結局、お互いに別の人と結婚したよ」
昔のロイの事を語りながらネズミ婆さんは少し寂し気な表情を浮かべ、自分の左手に視線を向ける。だが、すぐに頭を振ってレノとネココに尋ねる。
「それよりもあんたら、私に用事があって来たんじゃないのかい?」
「……そうだった。ネズミ婆さんに聞きたい事がある」
「実は俺達、黒狼という組織を調べているんです」
「黒狼……今日はよくその名前を耳にするね。少し前にあんた達と同じように私の所に訪れて黒狼の情報を聞き出そうとした奴がいたよ」
「えっ!?」
「……その話、本当?」
ネズミ婆さんの言葉にレノとネココは驚き、ネズミ婆さんは頷く。彼女によると二人が訪れる少し前に黒狼の情報を尋ねに来た人物がいたという。その人物はネズミ婆さんから情報を聞き出すと立ち去ってしまったが、かなり派手な外見をしていたという。
0
お気に入りに追加
659
あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる