力も魔法も半人前、なら二つ合わせれば一人前ですよね?

カタナヅキ

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二人旅編

情報屋

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「ううむ、その話が本当だとすると相手は獣人族という事ですが、それだけの手がかりだけでは捜索は難しいですね。他に何か手がかりはありますか?」
「背丈は俺と変わらないぐらいで……そういえば短剣を投げつけられました」
「短剣の方は我々が回収しております。しかし、残念ながら別に特別な代物でもなく、この街の武器屋で販売されている品物でした。店主によると人気の品らしいのでかなりの数を買われているらしく、怪しい人物はいたかと言われても分からないそうです」
「……そう、なら私達はもう心当たりはない」
「そうですか……では、私は調査に戻ります。御二人はこれからどうしますか?宿屋は流石に戻れませんよね。もしもよろしければ今夜はここに泊られますか?兵士用ですが、仮眠室もありますので……」
「問題ない、知り合いの家が近くにあるからそこへ泊めてもらう」
「えっ?」
「そうですか、ならそこまで護衛しましょうか?」
「大丈夫、すぐ近くだから護衛はいらない」


警備兵が心配そうに尋ねると、ネココは首を振って申し出を断る。一方でレノはネココの知り合いがいるという言葉に戸惑い、そんな話は初耳だった。

ネココはレノの腕を掴むと警備兵の屯所を後にして無言のまま街道を歩く。先ほど襲われたばかりだというのに警備兵の元を離れ、勝手に行動するネココにレノは動揺する。


「ネココ?急にどうしたの?知り合いがいるって本当?」
「……知り合いがいるのは本当、だけど泊まるつもりはない。あのままあの場所に残っていたら保護される所だった」
「保護って……それが何か問題あるの?」
「私はともかく、レノは素性を知られるとまずいんじゃないの?」


レノはネココの言葉に咄嗟に自分の耳元に手を押し当て、確かにあのまま警備兵の所で保護されていた場合、彼等はレノ達の素性を尋ねるだろう。その時はレノがハーフエルフである事も必然と知られてしまう。

だが、いくらレノが他人に自分の正体が知られたくはないといっても、今現在は何者かに狙われている立場である。ならば素性を明かしてでも警備兵に保護してもらうのが一番だと思われるが、ネココは何か心当たりがあるのか彼女はどんどんと人気のない場所へと向かう。


「ネココ、何処に向かってるの?あんまり人がいない場所に行くのは危険なんじゃ……」
「大丈夫、宿屋の時は私が一緒にいなかったから襲われたけど、今は一緒にいる。もしも私達を狙う人間がいたらすぐに気付く」
「そこまで言うなら信じるけど……」


獣人族であるネココは人間よりも嗅覚と聴覚は優れ、仮に自分達を尾行する者がいれば彼女はすぐに気付く。レノも山で暮らしていた時は訓練のお陰で気配には敏感のため、もしも他の者に襲われそうになっても気付く自信はあった。

しかし、敵の正体を掴めない以上は無暗に外へ出歩くのは控えた方がいいと思われるが、ネココは迷いもなく路地裏を進んでいき、やがてある建物の前に辿り着く。


「……ここに私の知り合いがいる」
「ここは……酒場?でも、ここって裏口じゃ……」
「いいから、中に入る」


ネココに背中を押されてレノは酒場だと思われる建物の裏口を開くと、鍵は掛けられていなかった。裏口は厨房の傍の通路に繋がっており、人の気配は感じない。もう閉店時刻を迎えていると思われるが、ネココは迷いもなく店の中へと移動する。


「ネココ、ここって勝手に入っていいの?」
「いいから黙って付いてくる……階段を降りるから気を付けて」


二人は地下に続く階段を発見し、暗闇の中を歩いていく。足元に気を付けながらレノ達は階段を降りると、やがて倉庫のような場所へと辿り着いた。


「ここに知り合いがいるの?でも、誰もいないけど……」
「……この円卓を回すと隠し階段の出入口が開く」


ネココは倉庫内に保管されている大きな円卓を指差し、彼女は机を掴むと右方向に力を込める。すると円卓が回り始め、やがて倉庫内の奥の方から物音が鳴り響く。

二人は倉庫の奥へと移動すると、どうやら並んでいた二つの大きな棚が左右に移動したらしく、更に地下に続く階段が存在した。レノはこんな仕掛けがある事に驚き、ネココは階段を示す。


「この下には深夜の間だけ営業する酒場が存在する。そこにいる情報屋から話を聞き出す」
「情報屋?」
「この街の事なら何でも知っている……皆からは「ネズミ婆さん」と呼ばれている」
「ネズミ婆さん……?」


鼠型の獣人族の老婆でも待ち構えているのかとレノは疑問を抱くが、とりあえずはネココと共に地下の階段を降りる。すると、本当に地下には酒場が存在し、そこには10名程度の人が存在した。

普通の酒場と違って賑わっている様子はなく、酒場にいる者は黙々と酒を嗜んでいた。レノとネココが酒場に踏み込むと、出入口の近くにいた筋骨隆々の男が立ちふさがる。


「……誰だ?どうしてお前等みたいなガキがここへ辿り着けた?」
「ガキじゃない、私は立派な大人……この酒場にいる情報屋から話を聞きにきただけ、用事が終わればすぐに戻る」
「情報目当てか……誰と会いたい?」
「ネズミ婆さん」
「……なら、紹介料を払え。1人につき銀貨10枚だ」
「じゅっ……!?」


男の言葉にレノは驚き、知り合いの情報屋と会うだけで銀貨を10枚も支払わなければならないのかと驚くが、そんな男に対してネココは不機嫌そうに呟く。


「……貴方、誰?この店の用心棒?」
「そうだ、俺はここで雇われている。金を支払わないならさっさと出て行け」
「そっちこそ、生半可な実力で用心棒なんかしない方がいい。貴方程度では私には敵わない」
「何だと?」
「ちょ、ちょっとネココ?いったい何を言って……」
「嘘だと思うなら勝負してもいい、私が怖いのなら後ろにいるレノと交代してあげてもいい」
「……調子に乗るなよ、ガキが!!」


ネココの挑発に男は彼女の胸倉を掴もうとするが、それに対してネココはその場で跳躍を行うと、男の頭上へ向けて膝蹴りを叩き込む。


「ふがぁっ!?」
「……これ以上は止めておいた方がいい、大怪我だと済まなくなる」
「何してんのネココ!?ちょっと、落ち着いて……!!」
「こ、このガキがっ……!!」


膝を顔面に受けた男は鼻血を垂らし、その様子を見てネココは鼻を鳴らすと、レノは慌てて二人の間に割って入る。一触即発の雰囲気の中、酒場の奥の席で笑い声が上がった。
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