力も魔法も半人前、なら二つ合わせれば一人前ですよね?

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
84 / 215
二人旅編

閑話 〈火炎剣の習得〉

しおりを挟む
※この話は本当は章の最初に加えたかったのですが、色々と考えて閑話として投稿します。時系列はレノ達がサンノから離れたばかりの頃です。


「う~んっ……どうも、上手く行かないな」
「……どうしたの?」
「いや、この間の魔法剣の練習をしてるんだけど、中々上手くいかなくて……」
「この間の……ああ、あの燃える剣?」
「ウォンッ?」
「ぷるぷるっ?」


街を出発した日の翌日、早朝に目を覚ましたレノは魔法剣の特訓を行おうとした。前回にトレントとの戦闘前にアルトの火属性の魔石を取りつけた指輪を利用し、今回はアルトの力を借りずにレノは「火炎剣」を発動しようとする。

しかし、前回の時はアルトが「火球」の魔法を作り出し、それをレノが事前に発動した風の魔法剣に組み合わせる事で火炎を刃に纏わせる事が出来た。だが、今回はアルトの力を借りずにレノは右手に剣を持ち、風の魔力を纏わせた状態で左手に取り付けた指輪を構え、魔法を発動しようとした。


「火球《ファイアボール》!!」
「……炎が出てない」
「クァアッ……」


指輪を構えたレノは魔法を唱えるが、指輪に取り付けた魔石は一瞬だけ輝いただけで肝心の魔法は出てこない。その様子を見ていたウルは欠伸を行い、ネココも暇そうに見つめる。それからレノは何度か繰り返すと、やっと発動に成功した。


「火球、火球、火球……ああ、もう!!火球!!」
「あ、出た……でも、消えた」
「グウグウッ……(←昼寝)」
「ぷるぷるっ……(←ウルの枕にされた)」


何度か呪文を唱えると指先から一瞬だけ種火程度の小さな火球は出現したが、すぐに消えてしまう。その様子を見てレノは汗を流し、その場にへたり込む。


「駄目だ……やっぱり、魔法は上手く使えないや」
「……それだけ魔力を操れるのに魔法を作り出せないのはある意味凄いと思う」


子供の頃からレノは魔力を形にした「魔法」を作り出す事を大の苦手としていた。そのせいで子供の頃は上手く魔法が扱えない事からエルフの子供達に虐められていた事もある。今でもレノは風属性の魔力を巧みに操れるようになったが、エルフの様に道具を使わずに魔法を作り出す事は出来なかった。

火属性の魔法に関しても魔石の力を借りれば種火程度は生み出せるが、すぐに消えてしまう。風の魔法と同様で火の魔法も上手く扱えず、これでは単独ではレノは「火炎剣」を作り出せない。


「ネココは火属性に適性ないの?」
「無理、私は火属性の魔法は使えない。水属性なら適性があるけど……」


ネココが指輪を装着してアルトのように初級魔法を使ってもらえば火炎剣は作り出せるが、生憎と彼女は火属性の適性はなかった。一応はレノも魔石を使用すれば魔法は使えるので風属性以外にも火属性の適性はあるのは確かだが、この二つを組み合わせる事に難航していた。


(う~ん、指輪の魔石から魔力を引き出す事は出来るんだけどな……魔法となるとどうも上手く行かない。いっその事、やり方を変えるか?)


アルトが居た時は彼に火球を作ってもらい、それをレノが風の魔法剣に取り込み、火炎の魔法剣を作り出していた。しかし、彼に頼れない以上は他の方法で「火炎剣」を生み出す術を考えないといけない。

今後の戦闘では今まで通りの戦い方ではどうしようもない敵と遭遇するかもしれず、実際にトレントの時はレノの力ではどうしようもなかった。ここでレノは身体を起き上げると、剣を握りしめた状態で魔石に視線を向ける。


(そうだ、火属性の魔力を引き出して直接に剣に送り込むのはどうだ?いっその事、二つの魔力を同時に引き出して刀身に纏める事は出来るかな?)


試しにレノは指輪を嵌めている手で剣を握りしめ、体内から風の魔力を生成し、指輪からは火属性の魔石から魔力を引き出し、同時に二つの魔力を剣に送り込む。その結果、刀身に風と火の魔力が交じり合う。


「えっ……うわっ!?」
「にゃっ!?」
「ウォンッ!?(←スラミンに嚙り付く)」
「ぷるるんっ!?(←噛まれて驚く)」


二つの魔力が刀身で交じり合った瞬間、刃は炎に包まれる。その光景を見たネココ達は驚き、一方でレノの方もまさかここまで上手く行くとは思わずに戸惑う。


「やった、成功した……そうか、火球を発動しなくても火属性の魔力を取り込むだけで炎になるのか」
「……凄い炎、丁度良かった。魚を釣ったからそれで焼いて」
「丸焦げになっちゃうよ!?」


初めて単独で火炎剣の発動に成功した事にレノは感動し、こうして新たなにレノは新しい魔法剣の習得に成功した――


スラミン「ぷるぷるっ!!(痛いやんけっ!!)」
ウル「クゥンッ……(ごめんって……)」

(´・ω・`)パ-ン   ← スラミン
  ⊂彡☆))Д`)) ←ウル
しおりを挟む
感想 53

あなたにおすすめの小説

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません

みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。 未来を変えるために行動をする 1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

【完結】聖女ディアの処刑

大盛★無料
ファンタジー
平民のディアは、聖女の力を持っていた。 枯れた草木を蘇らせ、結界を張って魔獣を防ぎ、人々の病や傷を癒し、教会で朝から晩まで働いていた。 「怪我をしても、鍛錬しなくても、きちんと作物を育てなくても大丈夫。あの平民の聖女がなんとかしてくれる」 聖女に助けてもらうのが当たり前になり、みんな感謝を忘れていく。「ありがとう」の一言さえもらえないのに、無垢で心優しいディアは奇跡を起こし続ける。 そんななか、イルミテラという公爵令嬢に、聖女の印が現れた。 ディアは偽物と糾弾され、国民の前で処刑されることになるのだが―― ※ざまあちょっぴり!←ちょっぴりじゃなくなってきました(;´・ω・) ※サクッとかる~くお楽しみくださいませ!(*´ω`*)←ちょっと重くなってきました(;´・ω・) ★追記 ※残酷なシーンがちょっぴりありますが、週刊少年ジャンプレベルなので特に年齢制限は設けておりません。 ※乳児が地面に落っこちる、運河の氾濫など災害の描写が数行あります。ご留意くださいませ。 ※ちょこちょこ書き直しています。セリフをカッコ良くしたり、状況を補足したりする程度なので、本筋には大きく影響なくお楽しみ頂けると思います。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

最後に報われるのは誰でしょう?

ごろごろみかん。
恋愛
散々婚約者に罵倒され侮辱されてきたリリアは、いい加減我慢の限界を迎える。 「もう限界だ、きみとは婚約破棄をさせてもらう!」と婚約者に突きつけられたリリアはそれを聞いてラッキーだと思った。 限界なのはリリアの方だったからだ。 なので彼女は、ある提案をする。 「婚約者を取り替えっこしませんか?」と。 リリアの婚約者、ホシュアは婚約者のいる令嬢に手を出していたのだ。その令嬢とリリア、ホシュアと令嬢の婚約者を取り替えようとリリアは提案する。 「別にどちらでも私は構わないのです。どちらにせよ、私は痛くも痒くもないですから」 リリアには考えがある。どっちに転ぼうが、リリアにはどうだっていいのだ。 だけど、提案したリリアにこれからどう物事が進むか理解していないホシュアは一も二もなく頷く。 そうして婚約者を取り替えてからしばらくして、辺境の街で聖女が現れたと報告が入った。

公国の後継者として有望視されていたが無能者と烙印を押され、追放されたが、とんでもない隠れスキルで成り上がっていく。公国に戻る?いやだね!

秋田ノ介
ファンタジー
 主人公のロスティは公国家の次男として生まれ、品行方正、学問や剣術が優秀で、非の打ち所がなく、後継者となることを有望視されていた。  『スキル無し』……それによりロスティは無能者としての烙印を押され、後継者どころか公国から追放されることとなった。ロスティはなんとかなけなしの金でスキルを買うのだが、ゴミスキルと呼ばれるものだった。何の役にも立たないスキルだったが、ロスティのとんでもない隠れスキルでゴミスキルが成長し、レアスキル級に大化けしてしまう。  ロスティは次々とスキルを替えては成長させ、より凄いスキルを手にしていき、徐々に成り上がっていく。一方、ロスティを追放した公国は衰退を始めた。成り上がったロスティを呼び戻そうとするが……絶対にお断りだ!!!! 小説家になろうにも掲載しています。  

処理中です...