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魔法剣士編
新たなる魔法剣
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――数時間の時は流れ、レノ達は再び渓谷へと向かい、トレントの根が存在する洞穴に視線を向けた。ここから先はネココと別れ、彼女には一足先にトレントの元へ向かってもらう。
「もうすぐ日が暮れる……太陽が沈み切る前に急ごう」
「ネココ、気を付けて行ってきてね」
「……二人も気を付けて」
レノの言葉にネココは頷き、彼女は木々の枝を飛び移って大樹の方角へと向かう。一方でレノとアルトは再びロープを利用して渓谷の洞穴の中へと潜り込み、松明を掲げて様子を伺う。
この洞穴の奥にトレントの根が生えており、この根を使ってトレントは大地から栄養を吸収し、更にはゴブリン亜種が連れ込んだ魔獣の死骸から養分を吸い上げる。つまり、この根こそがトレントの生命線と言っても過言ではない。
「ここまで戻ってきたか……」
「やはり、こちらから攻撃を仕掛けなければ大人しいな……最初に僕達に襲い掛かったのは根を刺激せしまったからだろう」
天井が伸びる大量の根っこを前にしてレノとアルトは冷や汗を流し、これから自分達が行う行動がどれほど危険な事なのかを嫌でも思い知る。それでも引くわけにはいかず、アルトは指輪を構えるとレノも剣を抜く。
「覚悟はいいかい、レノ君?」
「アルトの方こそ、大丈夫?」
お互いの顔を見て苦笑いを浮かべ、もうすぐ日が暮れる。二人は覚悟を決めると最後に頷き合い、まずはレノは魔法腕輪を装着し、風の魔石の力を引き出して刀身に風の魔力を纏わせる。
「よし、準備はいいよ!!」
「ああ、行くよ!!ファイアボール!!」
刀身に風の魔力が纏うのを確認すると、アルトは指輪を構えて火球を放つ。火属性の魔力で構成された炎の塊がレノの元へと向かい、やがて刀身に触れると風の魔力と火の魔力が混ざり合う。
――昼間の焚火の火を強めるためにレノは息を吹きかけた時、風の力を送り込んで火を強めた事を思い出す。そして魔法には相性が存在し、風属性の魔力は火属性に取り込まれやすい性質を持っている事を思い出した。
レノが剣の刃に纏わせた風の魔力、それに対してアルトは指輪から生み出した火属性の魔力の塊が衝突した瞬間、刀身に炎が燃え広がる。風の魔力を吸収した事で一気に火の魔力が刃を包み込む。
炎の刃と化した剣をレノは振りかざすと、トレントの根に向けて振り払う。その結果、刀身に纏った炎の魔力が三日月状の斬撃へと変化を果たし、炎の刃が根を焼き払う。
「火炎刃!!」
見事に自分の魔力だけではなく、外部から取り込んだ火属性の魔力を利用した新し魔法剣を利用し、洞穴内に存在する根を焼く。火炎の刃によって洞穴の内部に存在した根は次々と燃え盛り、その光景を目にしたレノとアルトは外へ向けて駆け出す。
「よし、逃げよう!!」
「言われずとも!!」
レノとアルトは全力で洞穴の出入口に向けて駆け出し、後ろの方では大量の根が炎に飲み込まれた状態ながらも暴れ狂い、必死に掻き消そうともがく。しかし、元は普通の樹木の樹皮を焦がす程度の火力の炎とはいえ、レノが生み出した魔力と、風の魔石から引き出した魔力を吸収した事で炎は凄まじい火力を誇り、根っこを焼き尽くす。
根が燃え尽きれば地上のトレントも無事では済まず、今頃はなんらかの反応を引き起こしているはずだった。それを確認するためにレノとアルトは急いで洞穴を脱出すると、地上へと帰還する。
「アルト、早く登って!!」
「ああ、分かってる……もしも僕がトレントなら、きっと根を焼かれた時点ですぐに火を消そうとするだろう。そのために最初に行動を移すとしたら、ゴブリン亜種を派遣して火を消そうとするだろう」
ロープを伝ってレノとアルトは地表へと戻ると、すぐに森の奥の方から大量の足音が鳴り響き、すぐさま二人は木陰に身を隠す。案の定というべきか、大樹の方角から大量のゴブリンとゴブリン亜種が駆けつけ、渓谷の方へと飛び込む。
「ギギィッ!!」
「グギィッ!!」
「ギギギギッ!!」
木陰から渓谷の洞穴に向かうゴブリンの大群の様子を観察し、上手く作戦が成功した事をレノとアルトは喜ぶ。しかし、いつまでも喜んでばかりはいられず、今のうちにレノ達は大樹がある方向へ向かわなければならなかった。
「よし、ゴブリン達が離れた今ならウル君達を救えるかもしれない。早く行こう」
「ネココ、無事だと良いんだけど……」
レノもアルトも大樹の方角に向けて走り出し、先に向かったネココを心配する。彼女は大樹に先に潜り込み、先にトレントと対峙しているはずであった――
――同時刻、一足先に辿り着いていたネココはトレントの様子を伺うと、苦しみもがくように大樹全体が震えていた。そして朝方にウル達を捕まえた時のようにトレントの樹皮に人面が浮かび上がり、更には苦しむような声を漏らす。
『ジュラァアアアッ……!?』
「……変な鳴き声」
根を焼き尽くされた事でトレントは苦痛を味わい、徐々に根本の方から煙が上がる。その様子を見てネココは作戦が成功した事を知り、レノとアルトの無事を祈りながらも捕まっている3人の様子を伺う。
蔓に囚われた三人は吊るされた状態のまま動かず、既に意識は失っていると思われた。しかし、まだ毒液は打ち込まれてはいないらしく、特に外見に変化はない。アルトの話によると毒液を撃ち込まれた獲物は急激に痩せ細り、皮膚の色も変色すると聞いていた。
見た限りではウルもコクヨウもナオも怪我をしているが他に異変は見当たらず、無事な様子だった。だが、トレントは3人を吊るしている枝も激しく震わせ、やがて3人を拘束していた蔓も地上へ向けてずり落ちていく。
(まずい!?あの高さから落ちたら、ウルとコクヨウはともかく、ナオは助からない!!)
ウル達が吊るされている枝は地上からかなり離れており、魔獣であるウルとコクヨウならば落ちたとしても生き延びれるかもしれないが、意識を失って怪我をしているナオでは助からない可能性があった。
ナオを吊るしていた蔓がやがて力が完全に抜けた様に解けると、彼女の身体は地上へ向けて落下していく。それを見ていたネココは見ていられず、駆け出そうとするが、とてもナオの元には間に合わなかった。
(もう駄目っ――!?)
ネココが諦めかけた時、彼女は反対方向から巨大な物体が迫りくる光景を確認すると、今まで行方不明だったスラミンがナオが地上に墜落する前に受け止める。
「ぷるる~んっ!!」
「うぐっ……!?」
「スラミン!?」
墜落の寸前にスライムの柔らかな身体がクッションとなり、ナオは衝撃を和らげて助かった。その光景を見てネココは驚くが、スラミンはやり遂げた表情を浮かべる。
「もうすぐ日が暮れる……太陽が沈み切る前に急ごう」
「ネココ、気を付けて行ってきてね」
「……二人も気を付けて」
レノの言葉にネココは頷き、彼女は木々の枝を飛び移って大樹の方角へと向かう。一方でレノとアルトは再びロープを利用して渓谷の洞穴の中へと潜り込み、松明を掲げて様子を伺う。
この洞穴の奥にトレントの根が生えており、この根を使ってトレントは大地から栄養を吸収し、更にはゴブリン亜種が連れ込んだ魔獣の死骸から養分を吸い上げる。つまり、この根こそがトレントの生命線と言っても過言ではない。
「ここまで戻ってきたか……」
「やはり、こちらから攻撃を仕掛けなければ大人しいな……最初に僕達に襲い掛かったのは根を刺激せしまったからだろう」
天井が伸びる大量の根っこを前にしてレノとアルトは冷や汗を流し、これから自分達が行う行動がどれほど危険な事なのかを嫌でも思い知る。それでも引くわけにはいかず、アルトは指輪を構えるとレノも剣を抜く。
「覚悟はいいかい、レノ君?」
「アルトの方こそ、大丈夫?」
お互いの顔を見て苦笑いを浮かべ、もうすぐ日が暮れる。二人は覚悟を決めると最後に頷き合い、まずはレノは魔法腕輪を装着し、風の魔石の力を引き出して刀身に風の魔力を纏わせる。
「よし、準備はいいよ!!」
「ああ、行くよ!!ファイアボール!!」
刀身に風の魔力が纏うのを確認すると、アルトは指輪を構えて火球を放つ。火属性の魔力で構成された炎の塊がレノの元へと向かい、やがて刀身に触れると風の魔力と火の魔力が混ざり合う。
――昼間の焚火の火を強めるためにレノは息を吹きかけた時、風の力を送り込んで火を強めた事を思い出す。そして魔法には相性が存在し、風属性の魔力は火属性に取り込まれやすい性質を持っている事を思い出した。
レノが剣の刃に纏わせた風の魔力、それに対してアルトは指輪から生み出した火属性の魔力の塊が衝突した瞬間、刀身に炎が燃え広がる。風の魔力を吸収した事で一気に火の魔力が刃を包み込む。
炎の刃と化した剣をレノは振りかざすと、トレントの根に向けて振り払う。その結果、刀身に纏った炎の魔力が三日月状の斬撃へと変化を果たし、炎の刃が根を焼き払う。
「火炎刃!!」
見事に自分の魔力だけではなく、外部から取り込んだ火属性の魔力を利用した新し魔法剣を利用し、洞穴内に存在する根を焼く。火炎の刃によって洞穴の内部に存在した根は次々と燃え盛り、その光景を目にしたレノとアルトは外へ向けて駆け出す。
「よし、逃げよう!!」
「言われずとも!!」
レノとアルトは全力で洞穴の出入口に向けて駆け出し、後ろの方では大量の根が炎に飲み込まれた状態ながらも暴れ狂い、必死に掻き消そうともがく。しかし、元は普通の樹木の樹皮を焦がす程度の火力の炎とはいえ、レノが生み出した魔力と、風の魔石から引き出した魔力を吸収した事で炎は凄まじい火力を誇り、根っこを焼き尽くす。
根が燃え尽きれば地上のトレントも無事では済まず、今頃はなんらかの反応を引き起こしているはずだった。それを確認するためにレノとアルトは急いで洞穴を脱出すると、地上へと帰還する。
「アルト、早く登って!!」
「ああ、分かってる……もしも僕がトレントなら、きっと根を焼かれた時点ですぐに火を消そうとするだろう。そのために最初に行動を移すとしたら、ゴブリン亜種を派遣して火を消そうとするだろう」
ロープを伝ってレノとアルトは地表へと戻ると、すぐに森の奥の方から大量の足音が鳴り響き、すぐさま二人は木陰に身を隠す。案の定というべきか、大樹の方角から大量のゴブリンとゴブリン亜種が駆けつけ、渓谷の方へと飛び込む。
「ギギィッ!!」
「グギィッ!!」
「ギギギギッ!!」
木陰から渓谷の洞穴に向かうゴブリンの大群の様子を観察し、上手く作戦が成功した事をレノとアルトは喜ぶ。しかし、いつまでも喜んでばかりはいられず、今のうちにレノ達は大樹がある方向へ向かわなければならなかった。
「よし、ゴブリン達が離れた今ならウル君達を救えるかもしれない。早く行こう」
「ネココ、無事だと良いんだけど……」
レノもアルトも大樹の方角に向けて走り出し、先に向かったネココを心配する。彼女は大樹に先に潜り込み、先にトレントと対峙しているはずであった――
――同時刻、一足先に辿り着いていたネココはトレントの様子を伺うと、苦しみもがくように大樹全体が震えていた。そして朝方にウル達を捕まえた時のようにトレントの樹皮に人面が浮かび上がり、更には苦しむような声を漏らす。
『ジュラァアアアッ……!?』
「……変な鳴き声」
根を焼き尽くされた事でトレントは苦痛を味わい、徐々に根本の方から煙が上がる。その様子を見てネココは作戦が成功した事を知り、レノとアルトの無事を祈りながらも捕まっている3人の様子を伺う。
蔓に囚われた三人は吊るされた状態のまま動かず、既に意識は失っていると思われた。しかし、まだ毒液は打ち込まれてはいないらしく、特に外見に変化はない。アルトの話によると毒液を撃ち込まれた獲物は急激に痩せ細り、皮膚の色も変色すると聞いていた。
見た限りではウルもコクヨウもナオも怪我をしているが他に異変は見当たらず、無事な様子だった。だが、トレントは3人を吊るしている枝も激しく震わせ、やがて3人を拘束していた蔓も地上へ向けてずり落ちていく。
(まずい!?あの高さから落ちたら、ウルとコクヨウはともかく、ナオは助からない!!)
ウル達が吊るされている枝は地上からかなり離れており、魔獣であるウルとコクヨウならば落ちたとしても生き延びれるかもしれないが、意識を失って怪我をしているナオでは助からない可能性があった。
ナオを吊るしていた蔓がやがて力が完全に抜けた様に解けると、彼女の身体は地上へ向けて落下していく。それを見ていたネココは見ていられず、駆け出そうとするが、とてもナオの元には間に合わなかった。
(もう駄目っ――!?)
ネココが諦めかけた時、彼女は反対方向から巨大な物体が迫りくる光景を確認すると、今まで行方不明だったスラミンがナオが地上に墜落する前に受け止める。
「ぷるる~んっ!!」
「うぐっ……!?」
「スラミン!?」
墜落の寸前にスライムの柔らかな身体がクッションとなり、ナオは衝撃を和らげて助かった。その光景を見てネココは驚くが、スラミンはやり遂げた表情を浮かべる。
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