31 / 215
一人旅編
ホブゴブリン
しおりを挟む
「グギィッ!!」
「く、くそっ……もう駄目だ、逃げろっ!!」
「馬鹿、背中を見せるな!!こいつらは逃げ出そうとする奴を優先的に狙うんだぞ!!」
ホブゴブリンの気迫に圧倒された護衛の一人が逃げ出そうとしたが、それを見た他の仲間が慌てて引き留める。しかし、逃げ出そうとした人間に対して生き残っていたゴブリンが襲い掛かり、背中に飛びつく。
「ギギィッ!!」
「ギギギッ!!」
「ひいいっ!?た、助けてくれぇっ!!」
「くそっ、離れろっ……ぎゃあっ!?」
「グッギッギッ……!!」
護衛の何人かがゴブリンから仲間を救い出そうとするが、そんな彼等に対してホブゴブリンが棍棒を振り払って追い散らす。仲間を助けられない護衛達の姿を見てホブゴブリンは笑い声をあげるが、突如として背後に異様な気配を感じて背筋が凍り付く。
「グギィッ!!」
「うおおおっ!!」
「な、何だっ!?」
ホブゴブリンは振り返ると、そこには草原を凄まじい速度で移動を行うレノの姿が見えた。付与魔術を発動させたレノは靴に込めた風の魔力を利用し、足の裏から風圧を発生させて直進する。
駆け抜ける、というよりは低空跳躍を繰り返す要領でレノは「瞬脚」を利用して商団の馬車へと接近すると、剣を構えてホブゴブリンの元へ向かう。高速接近するレノを見てホブゴブリンは咄嗟に棍棒を振りかざそうとするが、それを見たレノは上空へと飛び上がった。
「うおおっ!!」
「ギィイッ!?」
「と、飛んだ!?」
横薙ぎに振り払われた棍棒を回避すると、上空へ飛び上がったレノは剣を構え、刀身の先端部から風の魔力を解放させて一気に振り下ろす。
「だああっ!!」
「ッ――!?」
『ギィイイイッ!?』
ホブゴブリンの頭上に目掛けて刃が食い込み、頭部から切断して胴体まで切り裂く。左右に真っ二つに斬られた自分達の頭の姿を見て他のゴブリン達は震え上がり、即座に武器を手放して逃げ出してしまう。
他にもホブゴブリンは1体だけ存在したが、こちらはレノが倒されたホブゴブリンを見て同様に怖気づいたのかゴブリン達と共に逃げ出す。それを確認したレノはここで見逃すと他の人間に危害が加える可能性があると判断し、その後を追う。
「逃がすかっ!!」
「グギィッ!?」
逃げ出そうとしたもう1体のホブゴブリンに対してレノは背後まで迫ると、剣を構えて大木を斧で薙ぎ倒す時の要領で振り抜く。その結果、刀身に宿った魔力が三日月状の斬撃として放たれ、ホブゴブリンの背中から胴体を切り裂く。
「嵐斧!!」
「グギャアアアッ!?」
『ッ……!?』
ホブゴブリンの胴体を今度は上半身と下半身が分かれるように切り裂いたレノを見て商団の人間達は震え上がり、あまりの光景に腰を抜かす者もいた。一方でホブゴブリンを仕留めたレノは剣を振り払い、額の汗を拭い、改めて他の人間に振り返る。
自分を見て唖然とする商人と護衛達の姿を見てレノは不思議に思い、自分がまだ剣を抜いたままだと気付く。すぐにレノは刀身にこびり付いた血を振り払うと、鞘を戻して彼等の元に歩む。
「あの……大丈夫ですか?」
「ひっ……」
「あ、ああっ……」
「た、助かったよ……」
レノが話しかけると商団の者達は怯えた表情を浮かべながらも礼を告げ、とりあえずはレノは彼等の安否を確認すると、自分の荷物を取りに向かう――
――魔物に襲われていた商団を助けてからしばらくすると、レノは商団の主人である男性と同じ馬車に乗ってニノの街に向かっていた。商団の主人は襲われていた時はずっと馬車の中に隠れていたらしく、護衛達が魔物を追い払ったと思ったらなんと通りすがりのレノが自分達を助けてくれたと聞いて非情に驚いた。
「いやはや、それほどお若いのにまさかホブゴブリンを倒す程の腕前とは……しかも部下からの話に聞いたところ、弓の腕も相当な物だと聞いておりますぞ」
「はあ……」
「おっと、これは失礼しましたな。私の名前はネカと申します。この度の件、誠にありがとうございます」
「どうも……レノといいます」
ネカと名乗る男性は年齢は40代~50代ほどだと思われ、両手にはいくつもの指輪を装着し、まるで貴族のような恰好をしていた。いかにも成金趣味の中年男性といった風貌だが、彼は自分の命と部下を救ってくれたレノに感謝し、その礼としてレノに小袋を差し出す。
「どうぞ、これをお受け取り下さい。命を助けていただいたお礼でございます」
「はあっ……じゃあ、受け取っておきます」
レノは別にお礼を受け取るために商団を助けたわけではないが、こういう場合は相手の気持ちも汲んで受け取っておいた方が面倒事にならないとロイから教わっていた。相手が差し出してきたのだから遠慮なく受け取り、決して目の前で小袋の中身を確認するような真似はしない。
小袋を受け取ったレノを見てネカは彼が取り外して座席に置いた「弓」と「剣」に視線を向ける。ネカが何かを探るような視線で自分の装備を見ている事に気付いたレノは疑問を抱くと、ここでネカは興味深そうな表情でレノに頼み込む。
「あの、実は私こう見えても武器の取り扱いも行っています。そこでどうかレノ殿の弓と剣を見せて貰ってもよろしいですかな?」
「え?はあ……別にいいですけど」
「おお、ありがとうございます!!」
許可を貰うとネカはレノが差し出した弓からまずは視線を向け、この時に彼は片眼鏡を取り出して装着すると、表情を一変させて真面目な顔つきで弓を覗き込む。ネカの雰囲気が変化した事にレノは驚くが、彼は弓を構成する木材と弦を見て興味深そうに頷く。
「ふむ、これは……素晴らしい弓ですな。特にこの弦、ただの糸ではありませんな。素材はもしかすると……ダークエルフの髪の毛ですかな?」
「えっ……ダークエルフ?」
「おや、ダークエルフの事を御存じないのですかな?ダークエルフとはこの地方に暮らすエルフとは異なり、褐色の肌に黒髪が特徴的なエルフ族らしいのです」
「ダークエルフ……」
ネカはレノが持っている弓の弦の材料はダークエルフの髪の毛から作り出したと思ったが、実際の所はレノはハーフエルフであるレノの髪の毛である。だが、自分以外にも黒髪のエルフの部族がいる事をレノは初めて知った。
弓を確認した商人はレノに返すと、今度はレノが所持していた剣に視線を向ける。元々は剣聖と呼ばれたロイが所持していた剣であり、ドワーフのダリルによって打ち直された剣のため、鞘から剣を抜いたと途端にネカは目を見張る。
「く、くそっ……もう駄目だ、逃げろっ!!」
「馬鹿、背中を見せるな!!こいつらは逃げ出そうとする奴を優先的に狙うんだぞ!!」
ホブゴブリンの気迫に圧倒された護衛の一人が逃げ出そうとしたが、それを見た他の仲間が慌てて引き留める。しかし、逃げ出そうとした人間に対して生き残っていたゴブリンが襲い掛かり、背中に飛びつく。
「ギギィッ!!」
「ギギギッ!!」
「ひいいっ!?た、助けてくれぇっ!!」
「くそっ、離れろっ……ぎゃあっ!?」
「グッギッギッ……!!」
護衛の何人かがゴブリンから仲間を救い出そうとするが、そんな彼等に対してホブゴブリンが棍棒を振り払って追い散らす。仲間を助けられない護衛達の姿を見てホブゴブリンは笑い声をあげるが、突如として背後に異様な気配を感じて背筋が凍り付く。
「グギィッ!!」
「うおおおっ!!」
「な、何だっ!?」
ホブゴブリンは振り返ると、そこには草原を凄まじい速度で移動を行うレノの姿が見えた。付与魔術を発動させたレノは靴に込めた風の魔力を利用し、足の裏から風圧を発生させて直進する。
駆け抜ける、というよりは低空跳躍を繰り返す要領でレノは「瞬脚」を利用して商団の馬車へと接近すると、剣を構えてホブゴブリンの元へ向かう。高速接近するレノを見てホブゴブリンは咄嗟に棍棒を振りかざそうとするが、それを見たレノは上空へと飛び上がった。
「うおおっ!!」
「ギィイッ!?」
「と、飛んだ!?」
横薙ぎに振り払われた棍棒を回避すると、上空へ飛び上がったレノは剣を構え、刀身の先端部から風の魔力を解放させて一気に振り下ろす。
「だああっ!!」
「ッ――!?」
『ギィイイイッ!?』
ホブゴブリンの頭上に目掛けて刃が食い込み、頭部から切断して胴体まで切り裂く。左右に真っ二つに斬られた自分達の頭の姿を見て他のゴブリン達は震え上がり、即座に武器を手放して逃げ出してしまう。
他にもホブゴブリンは1体だけ存在したが、こちらはレノが倒されたホブゴブリンを見て同様に怖気づいたのかゴブリン達と共に逃げ出す。それを確認したレノはここで見逃すと他の人間に危害が加える可能性があると判断し、その後を追う。
「逃がすかっ!!」
「グギィッ!?」
逃げ出そうとしたもう1体のホブゴブリンに対してレノは背後まで迫ると、剣を構えて大木を斧で薙ぎ倒す時の要領で振り抜く。その結果、刀身に宿った魔力が三日月状の斬撃として放たれ、ホブゴブリンの背中から胴体を切り裂く。
「嵐斧!!」
「グギャアアアッ!?」
『ッ……!?』
ホブゴブリンの胴体を今度は上半身と下半身が分かれるように切り裂いたレノを見て商団の人間達は震え上がり、あまりの光景に腰を抜かす者もいた。一方でホブゴブリンを仕留めたレノは剣を振り払い、額の汗を拭い、改めて他の人間に振り返る。
自分を見て唖然とする商人と護衛達の姿を見てレノは不思議に思い、自分がまだ剣を抜いたままだと気付く。すぐにレノは刀身にこびり付いた血を振り払うと、鞘を戻して彼等の元に歩む。
「あの……大丈夫ですか?」
「ひっ……」
「あ、ああっ……」
「た、助かったよ……」
レノが話しかけると商団の者達は怯えた表情を浮かべながらも礼を告げ、とりあえずはレノは彼等の安否を確認すると、自分の荷物を取りに向かう――
――魔物に襲われていた商団を助けてからしばらくすると、レノは商団の主人である男性と同じ馬車に乗ってニノの街に向かっていた。商団の主人は襲われていた時はずっと馬車の中に隠れていたらしく、護衛達が魔物を追い払ったと思ったらなんと通りすがりのレノが自分達を助けてくれたと聞いて非情に驚いた。
「いやはや、それほどお若いのにまさかホブゴブリンを倒す程の腕前とは……しかも部下からの話に聞いたところ、弓の腕も相当な物だと聞いておりますぞ」
「はあ……」
「おっと、これは失礼しましたな。私の名前はネカと申します。この度の件、誠にありがとうございます」
「どうも……レノといいます」
ネカと名乗る男性は年齢は40代~50代ほどだと思われ、両手にはいくつもの指輪を装着し、まるで貴族のような恰好をしていた。いかにも成金趣味の中年男性といった風貌だが、彼は自分の命と部下を救ってくれたレノに感謝し、その礼としてレノに小袋を差し出す。
「どうぞ、これをお受け取り下さい。命を助けていただいたお礼でございます」
「はあっ……じゃあ、受け取っておきます」
レノは別にお礼を受け取るために商団を助けたわけではないが、こういう場合は相手の気持ちも汲んで受け取っておいた方が面倒事にならないとロイから教わっていた。相手が差し出してきたのだから遠慮なく受け取り、決して目の前で小袋の中身を確認するような真似はしない。
小袋を受け取ったレノを見てネカは彼が取り外して座席に置いた「弓」と「剣」に視線を向ける。ネカが何かを探るような視線で自分の装備を見ている事に気付いたレノは疑問を抱くと、ここでネカは興味深そうな表情でレノに頼み込む。
「あの、実は私こう見えても武器の取り扱いも行っています。そこでどうかレノ殿の弓と剣を見せて貰ってもよろしいですかな?」
「え?はあ……別にいいですけど」
「おお、ありがとうございます!!」
許可を貰うとネカはレノが差し出した弓からまずは視線を向け、この時に彼は片眼鏡を取り出して装着すると、表情を一変させて真面目な顔つきで弓を覗き込む。ネカの雰囲気が変化した事にレノは驚くが、彼は弓を構成する木材と弦を見て興味深そうに頷く。
「ふむ、これは……素晴らしい弓ですな。特にこの弦、ただの糸ではありませんな。素材はもしかすると……ダークエルフの髪の毛ですかな?」
「えっ……ダークエルフ?」
「おや、ダークエルフの事を御存じないのですかな?ダークエルフとはこの地方に暮らすエルフとは異なり、褐色の肌に黒髪が特徴的なエルフ族らしいのです」
「ダークエルフ……」
ネカはレノが持っている弓の弦の材料はダークエルフの髪の毛から作り出したと思ったが、実際の所はレノはハーフエルフであるレノの髪の毛である。だが、自分以外にも黒髪のエルフの部族がいる事をレノは初めて知った。
弓を確認した商人はレノに返すと、今度はレノが所持していた剣に視線を向ける。元々は剣聖と呼ばれたロイが所持していた剣であり、ドワーフのダリルによって打ち直された剣のため、鞘から剣を抜いたと途端にネカは目を見張る。
0
お気に入りに追加
657
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる