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特訓編
付与魔術
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逃げ出した一角兎を捕まえるため、捜索を再開したレノは一角兎が逃げた方向へと進む。それからしばらくの間は森の中を進むと、小川を発見した。小川の傍には先ほど取り逃したと思われる一角兎の姿を発見し、茂みの中に隠れながらレノは様子を伺う。
(闇雲に飛び出しても捕まえる事は出来ない。距離が離れすぎてるからこっそり近づいても気づかれる恐れがあるし……どうすればいいんだ?)
小川との距離を見計らい、忍び足で近づいたとしても一角兎が振り向けば一発で気づかれてしまう。だからといって無策で飛び出しても一角兎を捕まえるのは難しく、単純な移動速度は一角兎の方が勝る。
色々と考えた末にレノは一角兎を仕留めるため、道端に落ちている小石を拾い上げた。掌に小石を治めた状態でレノは意識を集中させ、風の魔力を纏わせる。半年前は矢にしか魔力を封じ込めなた事はなかったが、今では別の物体にも魔力を封じ込める事が出来る事が判明した。
「これでよし……後はこいつをぶつければ捕まえられるな」
小石に風の魔力を纏わせるとレノは茂みの中から一角兎に狙いを定め、投擲を行う。その瞬間、放たれた小石は風の力によって拘束回転し、見事に一角兎の後頭部に直撃した。
「ギュイイッ!?」
「よし!!」
見事に一角兎に的中した小石を見てレノは喜びのあまり、茂みから飛び出して一角兎の元へ向かう。一角兎は後頭部から頭を貫かれ、絶命していた。その様子を確認してレノは一角兎を拾い上げる。
「やった、捕まえた!!これで義父さんも……あっ、しまった。付与魔術は使っちゃ駄目だと言われてたんだっけ……」
一角兎を捕まえた事にレノは喜んでしまったが、ここで義父のダリルの言葉を思い出す。レノは半年前に編み出した「付与魔術」は無暗に使用してはならないと厳重に注意されていた。
――付与魔術とはレノが生み出した魔力を物体に付与させる術の事を指し、魔法と言える代物ではないためにダリルは「魔術」という言葉を名付けた。魔法とはいえずとも、レノの魔力を使用した術なのだからとダリルは「付与魔術」という名前を名付ける。
物体に魔力を施す方法を「付与魔術」と名付けた後はダリルはレノに無暗に付与魔術を使用しないように注意した。理由としては付与魔術は便利ではあるが、これまでの特訓はレノの体力と筋力を強化するための訓練であるため、無暗に付与魔術に頼る事を彼は良しとはしなかった。
捕まえる事に夢中でレノは付与魔術で一角兎を倒してしまった事に後悔し、ため息を吐きながらもダリルの小屋に引き返す事にした。しかし、レノが小川から離れる前に川上の方角から水飛沫が舞い上がり、全身が赤色に染まった体調が2メートルほどの大きな熊が出現する。その姿を見た瞬間、レノは幼少期に襲われた赤毛熊の事を思い出す。
「グルルルッ……!!」
「そ、そんな……赤毛熊……!?」
エルフの里を襲った赤毛熊と比べると体格は一回りは小さいが、本物の赤毛熊を目にしたレノは非情に戸惑い、今までに山で赤毛熊など見かけた事は一度もない。レノは赤毛熊を目にした途端に腰を抜かしてしまい、そんなレノに対して赤毛熊は水を掻き分けながら接近する。
どうやらレノが倒した一角兎が流した血の臭いを嗅ぎ分けて現れたらしく、咄嗟にレノは一角兎を放り投げて逃げようとしたが、上手く足が動かない。このような状況では一も二もなく逃げろとダリルから注意されていたが、幼少期に自分が里を追い出される要因となった赤毛熊と遭遇した事でレノの身体は恐怖のあまりに言う事を聞かない。
(に、逃げなきゃ……殺される……!!)
何とか立ち上がって逃げようとするレノだが、考えている間にも赤毛熊は接近し、小川の中から身を乗り出して陸地へと上がる。その様子を見てレノはもう駄目かと諦めかけた時、不意に手元に冷たい物を感じた。
(川……そうだ、これを利用すれば……!!)
いつの間にか自分が流れている小川の傍に居る事に気づき、右手を川の水の中に沈める。その行為に赤毛熊は戸惑うが、レノは赤毛熊に対して狙いを定めて右手に一気に風の魔力を放出して派手な水飛沫を放つ。
「喰らえっ!!」
「アガァッ!?」
レノは救い上げるように川から右手を振り払うと、掌から放たれた風の魔力に川の水が氾濫を引き起こしたかのように吹き飛び、赤毛熊へと襲い掛かる。大量の水を浴びた赤毛熊は背中越しに倒れ込み、その間にもレノは一角兎の死骸を放置して駆け出す。
付与魔術の応用で川の水を上手く吹き飛ばして赤毛熊を怯ませる事に成功したレノは全速力で駆け抜ける。一方で赤毛熊の方は攻撃を受けた直後はしばらくの間は混乱していたが、すぐに身体を震わせて水を弾くと、怒りの咆哮を放ちながらレノの後を追う。
「ウガァアアッ!!」
「くそっ……!!」
単純な移動速度はレノよりも赤毛熊の方が勝り、折角距離が開いたと思ったらすぐに追い詰められてしまう。レノはどうにか木々を潜り抜けて赤毛熊を撒こうとするが、怒りのままに赤毛熊は樹木をなぎ倒しながらレノの後を追う。
(どうする!?どうすればいいんだ!?)
まともに戦えば勝てる相手ではなく、せめて武器があれば良かったのだが、そこいらに落ちている石を拾い上げて付与魔術を施して攻撃するしかない。しかし、追いかけられている状況で小石を拾い上げる余裕などなく、徐々にレノは赤毛熊に距離を詰められてしまう。
「ガアッ!!」
「うわっ!?」
背後から聞こえた声に咄嗟にレノは頭を下げると、頭上に赤毛熊の腕が通過し、もしも躱していなかったら頭を吹き飛ばされていた。屈んだ事で窮地は脱したが、既に赤毛熊は反対の腕を振りかざしてレノを頭上から切り裂こうとしてきた。
このままでは赤毛熊の鋭い爪で頭から切り裂かれると思ったレノは無意識に両手を構え、風の付与魔術を発動させる。両手から発生した強風によって赤毛熊の身体が後ろへと飛ばされ、どうにか危機は回避した。
「ガアアッ……!?」
「うわっ!?」
両手から風の魔力で生み出した突風によって赤毛熊の巨体を後ろに押し返す事には成功したが、ちゃんと踏ん張っていなかったレノは逆に自分の風の力で身体が浮き上がり、後方へと吹き飛ぶ。幸いにも後ろには障害物はなかったので地面に転ぶ程度で済んだが、もしも樹木や岩に衝突していたらとんでもない事態に陥っていただろう。
(闇雲に飛び出しても捕まえる事は出来ない。距離が離れすぎてるからこっそり近づいても気づかれる恐れがあるし……どうすればいいんだ?)
小川との距離を見計らい、忍び足で近づいたとしても一角兎が振り向けば一発で気づかれてしまう。だからといって無策で飛び出しても一角兎を捕まえるのは難しく、単純な移動速度は一角兎の方が勝る。
色々と考えた末にレノは一角兎を仕留めるため、道端に落ちている小石を拾い上げた。掌に小石を治めた状態でレノは意識を集中させ、風の魔力を纏わせる。半年前は矢にしか魔力を封じ込めなた事はなかったが、今では別の物体にも魔力を封じ込める事が出来る事が判明した。
「これでよし……後はこいつをぶつければ捕まえられるな」
小石に風の魔力を纏わせるとレノは茂みの中から一角兎に狙いを定め、投擲を行う。その瞬間、放たれた小石は風の力によって拘束回転し、見事に一角兎の後頭部に直撃した。
「ギュイイッ!?」
「よし!!」
見事に一角兎に的中した小石を見てレノは喜びのあまり、茂みから飛び出して一角兎の元へ向かう。一角兎は後頭部から頭を貫かれ、絶命していた。その様子を確認してレノは一角兎を拾い上げる。
「やった、捕まえた!!これで義父さんも……あっ、しまった。付与魔術は使っちゃ駄目だと言われてたんだっけ……」
一角兎を捕まえた事にレノは喜んでしまったが、ここで義父のダリルの言葉を思い出す。レノは半年前に編み出した「付与魔術」は無暗に使用してはならないと厳重に注意されていた。
――付与魔術とはレノが生み出した魔力を物体に付与させる術の事を指し、魔法と言える代物ではないためにダリルは「魔術」という言葉を名付けた。魔法とはいえずとも、レノの魔力を使用した術なのだからとダリルは「付与魔術」という名前を名付ける。
物体に魔力を施す方法を「付与魔術」と名付けた後はダリルはレノに無暗に付与魔術を使用しないように注意した。理由としては付与魔術は便利ではあるが、これまでの特訓はレノの体力と筋力を強化するための訓練であるため、無暗に付与魔術に頼る事を彼は良しとはしなかった。
捕まえる事に夢中でレノは付与魔術で一角兎を倒してしまった事に後悔し、ため息を吐きながらもダリルの小屋に引き返す事にした。しかし、レノが小川から離れる前に川上の方角から水飛沫が舞い上がり、全身が赤色に染まった体調が2メートルほどの大きな熊が出現する。その姿を見た瞬間、レノは幼少期に襲われた赤毛熊の事を思い出す。
「グルルルッ……!!」
「そ、そんな……赤毛熊……!?」
エルフの里を襲った赤毛熊と比べると体格は一回りは小さいが、本物の赤毛熊を目にしたレノは非情に戸惑い、今までに山で赤毛熊など見かけた事は一度もない。レノは赤毛熊を目にした途端に腰を抜かしてしまい、そんなレノに対して赤毛熊は水を掻き分けながら接近する。
どうやらレノが倒した一角兎が流した血の臭いを嗅ぎ分けて現れたらしく、咄嗟にレノは一角兎を放り投げて逃げようとしたが、上手く足が動かない。このような状況では一も二もなく逃げろとダリルから注意されていたが、幼少期に自分が里を追い出される要因となった赤毛熊と遭遇した事でレノの身体は恐怖のあまりに言う事を聞かない。
(に、逃げなきゃ……殺される……!!)
何とか立ち上がって逃げようとするレノだが、考えている間にも赤毛熊は接近し、小川の中から身を乗り出して陸地へと上がる。その様子を見てレノはもう駄目かと諦めかけた時、不意に手元に冷たい物を感じた。
(川……そうだ、これを利用すれば……!!)
いつの間にか自分が流れている小川の傍に居る事に気づき、右手を川の水の中に沈める。その行為に赤毛熊は戸惑うが、レノは赤毛熊に対して狙いを定めて右手に一気に風の魔力を放出して派手な水飛沫を放つ。
「喰らえっ!!」
「アガァッ!?」
レノは救い上げるように川から右手を振り払うと、掌から放たれた風の魔力に川の水が氾濫を引き起こしたかのように吹き飛び、赤毛熊へと襲い掛かる。大量の水を浴びた赤毛熊は背中越しに倒れ込み、その間にもレノは一角兎の死骸を放置して駆け出す。
付与魔術の応用で川の水を上手く吹き飛ばして赤毛熊を怯ませる事に成功したレノは全速力で駆け抜ける。一方で赤毛熊の方は攻撃を受けた直後はしばらくの間は混乱していたが、すぐに身体を震わせて水を弾くと、怒りの咆哮を放ちながらレノの後を追う。
「ウガァアアッ!!」
「くそっ……!!」
単純な移動速度はレノよりも赤毛熊の方が勝り、折角距離が開いたと思ったらすぐに追い詰められてしまう。レノはどうにか木々を潜り抜けて赤毛熊を撒こうとするが、怒りのままに赤毛熊は樹木をなぎ倒しながらレノの後を追う。
(どうする!?どうすればいいんだ!?)
まともに戦えば勝てる相手ではなく、せめて武器があれば良かったのだが、そこいらに落ちている石を拾い上げて付与魔術を施して攻撃するしかない。しかし、追いかけられている状況で小石を拾い上げる余裕などなく、徐々にレノは赤毛熊に距離を詰められてしまう。
「ガアッ!!」
「うわっ!?」
背後から聞こえた声に咄嗟にレノは頭を下げると、頭上に赤毛熊の腕が通過し、もしも躱していなかったら頭を吹き飛ばされていた。屈んだ事で窮地は脱したが、既に赤毛熊は反対の腕を振りかざしてレノを頭上から切り裂こうとしてきた。
このままでは赤毛熊の鋭い爪で頭から切り裂かれると思ったレノは無意識に両手を構え、風の付与魔術を発動させる。両手から発生した強風によって赤毛熊の身体が後ろへと飛ばされ、どうにか危機は回避した。
「ガアアッ……!?」
「うわっ!?」
両手から風の魔力で生み出した突風によって赤毛熊の巨体を後ろに押し返す事には成功したが、ちゃんと踏ん張っていなかったレノは逆に自分の風の力で身体が浮き上がり、後方へと吹き飛ぶ。幸いにも後ろには障害物はなかったので地面に転ぶ程度で済んだが、もしも樹木や岩に衝突していたらとんでもない事態に陥っていただろう。
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