種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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最終章 ヤマタノオロチ編

生物兵器 ヤマタノオロチ

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「ヤマタノオロチの詳細は分かったの?」
『こっちも色々と調査してみましたけど、やっぱりデータは残っていませんでしたね。というより、元々ヤマタノオロチという存在はセカンド・ライフ社が計画に立ち上げただけで、実際には開発には至らなかったんですよ』


終末者が誕生する前、世界を「ゼロ(リセット)」に造り替える存在としてヤマタノオロチという生物兵器が開発されようとしていた事は聞いていたが、実際には計画は頓挫して伝説獣や終末者という存在が造り出され、ヤマタノオロチ計画は破棄されていた。

しかし、どういう事なのか既に破棄されたヤマタノオロチ計画を実行する輩が存在したのか、現実にこの世界ではヤマタノオロチと呼ばれる存在が誕生し、そして数日前に巨大迷宮の付近から確認された強大な生体反応と大きく関係しているのは間違いない。


『私も色々と調査したんですが、どうやらレノさんが地下施設で出会ったという人型の……いえ、旧世界人は確かにヤマタノオロチが復活したと言ってたんですよね?』
「そんな風に聞こえたけど……」
『実はレノさんから話を聞いた後、私も少し気になってシュンさんにパシらせ……もとい、例の地下施設に侵入させて調査させたんですよ。レノさんが封印を施した部屋にも侵入しています』
「堅固な防壁でしたが、ベータ様の助言通りに排気孔を通り抜けて何とか侵入出来ました」
「そんな単純な手があったのか……」


人型の生物と出会った施設には武器格納庫が存在し、レノは念のために防御魔法陣を施して封印を行ったが、シュンは別の出入口から内部に侵入を果たし、格納庫内に存在した代物をベータに報告したという。


『実際の所、格納庫には旧世界の武器、というよりは兵器は1つも存在しませんでした。てっきり、終末者や私達のようなアンドロイドの武器が収納されていると踏んだんですが、部屋の中に入っていたのは大きめの培養槽と、レノさんが出会ったという旧世界人が収納されていたと思われる冷凍カプセルが複数存在するだけでした』


レノが出会った旧世界人の成れの果て、彼はどうやら元々は格納庫内に存在したらしく、ミノタウロスのミノっちに襲撃した個体もどうやら格納庫に保管されていたと考えるべきだろう。問題はどうして彼等があのような場所に保管されていたのかであり、他にも培養槽という単語が気にかかる。


「僕には何を言っているのか分からないんだが……地下施設とは放浪島の地下迷宮の事でしょうか?レノがデルタさんと出会ったという施設とは別なんですか?」
「別と言えば別だけど、放浪島に存在するという点は一緒かな。というか、お前はどうやって潜り込んだ?」
「以前に剣乱武闘の大会で立ち寄る機会が訪れたので、あの時に色々と細工を施しましてね」


シュンの話によれば、前回の剣乱武闘の際に放浪島に自由に行き来できるようにある特殊な細工を施したらしく、彼は普通の転移魔法では到達できない空中に隔離されたあの島に移動出来る手段を身に着けているらしく、実際に何度か大会後も訪れているらしい。


「……あの島は本来はそう簡単に王国関係者であろうと立ち入りは禁止されています。いくらレノ様の知り合いのベータさんの使いとはいえ、そう易々と立ち入られてはこちらも困りますが」
『まあ、その点に関してはシュンさんが後で自害するので許してください。それより話を戻しますが……』



適当に話を流しながらベータは説明を続け、彼女によれば格納庫に収納されていたのは二人の旧世界人と、培養装で管理されていたと思われる「生物」だけであり、シュンが侵入した際には既に培養槽は破壊されており、中に潜んでいたと思われる生物の姿は見当たらなかったという。


『これはあくまでも私の憶測ですが、あの旧世界人達がカプセルから出てきたのは培養装を破壊して外に抜け出した生物のせいじゃないかと思うんです。窮屈な培養槽に閉じ込められるのに嫌気を差したのか、それとも機器の故障なのかは知りませんが、収納されていた生物が培養槽から抜け出した表紙に冷凍カプセルが作動して旧世界人達も解き放たれたんじゃないでしょうか』
「その生物がヤマタノオロチだと?」
『それはまだ確証はありませんけど、シュンさんの話によれば培養槽の大きさはせいぜい3メートル弱、出てきた生物の大きさもたかが知れていますけど、問題なのはこの生物が何時の時期に抜け出したのかです』


格納庫から謎の生物が抜け出した正確な時期は把握できず、少なくとも地下迷宮の番人であるミノっちが旧世界人の片割れと交戦を始める前の時期であり、もしかしたらレノ達が抜け出した後の時期に既に抜け出していた可能性もある。


「その生物をヤマタノオロチと仮定して、どうやってあの島から抜け出して地上に戻ったんだ?普通に脱出するにしても、あの高度の島から落ちればたたじゃ済まないだろうし、飛行能力があったとしても島の周囲には結界のような物が張られているんじゃなかったっけ?」


放浪島は常に空中を移動し続ける場所であり、さらに島の周囲には暴風が吹き荒れており、外側や内側からでも容易には出入りできない。ヤマタノオロチが仮に飛行能力を保有している生物だと仮定しても、そう簡単に島外に脱出出来るとは思えない。


『えっと、アルトさんでしたっけ?1つ尋ねたい事があるんですけど、よろしいですか?』
「は、はい?」


ベータが唐突にアルトに視線を向け、まさか自分が呼ばれるとは思わなかった彼は驚いた表情を浮かべるが、


『放浪島でここ最近、入荷できる食料が減少したという現象は起きていませんか?魔物がやたらと少なくなったり、農作物が何者かに食い荒らされたというような事件は?』
「それは……」
「心当たりがあるの?」


アルトは何かを思い出したように神妙な表情を浮かべ、レノの質問に頷く。


「実は剣乱武闘が開催される前、時期的に言えばリバイアサンの討伐を果たした直後の頃に奇妙な事件が多発していると報告があったんだ。その内容というのが放浪島の南部地方の果物や肉食獣が異様なまでに減少し、収穫量が例年の半分以下だという報告が届いている」
「本当なのか?」
「ああ……だが、あの時は魚人や大雨期の影響の騒動で対処出来なかったんだ。実際、その後は何事も無かったように収穫量は安定したと聞いていたが……」
「つまり……その収穫量が激減した時期にヤマタノオロチなる生物が南部地方に現れ、餌を食らいつくしていたというのか」
『恐らく、南部地方の魔物を喰らう事で成長を果たした時点でヤマタノオロチは島の外に抜け出る能力を身に着けたんでしょうね。島の周囲を囲む暴風と言っても、それに耐えきれるだけの頑丈な肉体と風に吹き飛ばされない程の体重を所有していればどうにか出来そうですしね』
「その後に地上に降り立って、成長を続けていたという事ですか?」
『そういう事ですね。しかも今までの情報を纏める限り、どうやらヤマタノオロチは伝説獣が出現した場所に現れて伝説獣の死骸の一部を吸収し、その能力を宿している可能性も出てきました』
「まさか……儂が見たあの大穴を造り出したのも……!?」


テラノが発見した施設ではキマイラの死骸と、そのすぐ傍には巨大な縦穴が存在し、もしもベータの予測が正しければ大穴を造り出したのは成長を果たしたヤマタノオロチという事になる。
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