種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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大迷宮編 〈後半編〉

破壊の化身

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出現した六匹の伝説獣、そして鳳凰学園を崩壊させたキメラを想像させる姿形の化物に対し、調査部隊の面々は何も行動できなかった。否、正確に言えば行動を起こす前に相手が先に動き出す。



『ゴォアアアアアアアアアッ……!!』



全ての生物が同時に咆哮を放ち、顎が外れるのではないかという程に口内を開き、すぐにその行動の意味に気付いたレミアは咄嗟に憑依術を発動しようとしたが、先手を打つようにキメラが左腕の砲身を構え、砦の方向に向けて発砲を開始する。


『ダァクフレイィムッ!!』



――カッ!!



砲身から黒色の炎を想像させる爆炎が放たれ、砦に拡散する。その炎は間違いなくレミアの身体に宿る紅蓮のエンのように闇属性の力を含んだ「黒炎」であり、瞬く間に砦全体に広がっていく。


「う、うわああああああああっ!?」
「逃げろぉっ!!」
「ぎゃあぁあああああっ!!」


あちこちと悲鳴が響き渡り、黒煙に次々と兵士達が飲み込まれていく。特に魔法を扱えない巨人族達はその巨体を黒煙に飲み込まれ、為す術もなく喰らいつくされる。まるで炎自体に意識があるかのように黒炎が流れ込み、誰もがその光景に恐怖を抱く。


「ぼ、防御魔法陣を……!!」
「無駄だ!!さっさと逃げろ!!」


咄嗟に魔法の心得がある者は黒炎を防ごうとしたが、コウシュンは長剣を引き抜いて刃を振るう。


ズバァアアアンッ!!


風の精霊の加護を受けた彼の斬撃は不可視の風属性の刃を生み出すが、黒炎の一部を振り払うだけで限界であり、周囲に広がる全ての炎を防ぐ事は出来なかった。


「せ、セイント……いやぁあああっ!?」
「これは……いかん!!」


聖導教会から派遣された医療魔導士が聖属性の力で浄化を試みるが、魔法を発動する前に黒炎に飲み込まれ、隊員達は激しい混乱を起こして炎から逃げるために移動を開始する。コウシュンは他の者達の逃げる時間を稼ぐため、何度も剣を振るう。


「レミア!!早く変身しろ!!ミキを呼び出せ!!」
「わ、分かりました!!すぐに浄化を……!!」
「違う!!逃げろ!!」


コウシュンの言葉にレミアは驚いた表情を浮かべ、コウシュンは真面目な表情を浮かべて彼女に視線を向け、周囲を伺うように指示を出す。既に黒炎は急速的に広がっており、まるで火山流のように砦内を覆いつくす。

このまま何もしなればミキを召喚して空を飛べるレミア以外に助かる者は存在せず、だからこそ彼女は黒炎を浄化出来る可能性を持つミキを憑依させようとしたが、コウシュンの予想ではもう誰も助からない。


「お前だけでも逃げろ!!生き延びて、レノに伝えろ!!ここで無駄死にするんじゃねえ!!」
「し、しかし!!それでは皆が……」
「ふんっ!!」



ドパァアアアンッ!!



四柱将のゴウカイが棍棒を振るいあげ、地面ごと抉るように黒炎を吹き飛ばし、コウシュンの前に立つ。既に彼等の周囲は黒炎で埋め尽くされており、最早逃げる事は不可能だった。


「話は聞いていたぞ……行け!!そして伝えるのだ!!我等の死を無駄にするな!!」
「はっ……恰好良い事をいうじゃねえかおっさん」
「貴様の方が年上だろうが!!」
「な、なにを言って……」


レミアは加速度的に広がる黒炎に視線を向け、既に大部分の隊員達が飲み込まれており、このままでは他の砦に待機している者達も危険であり、確かにミキを召喚して空を飛行できるレミア以外に生き残れる者はいないだろう。

コウシュンは風の刃で黒炎を振り払い、ゴウカイは地面を叩き付けて黒炎ごと吹き飛ばすが、誰が見ても限界は迫っており、この2人を救い出す術はレミアは持っていない。


「早く行け!!そして他の者に避難を伝えろ!!このままでは全滅してしまうぞ!!」
「そんな……」
「最後にレノと旦那に伝えろぉっ!!ついでにフウカの奴にも……お前等と出会えて俺は、楽しかったとなぁっ!!」



ドォオオオンッ!!



徐々に2人の周囲から迫る黒炎が狭まり、最早一刻の猶予もなく、レミアが立っている場所も炎が迫っている。既に北の砦の者達は黒炎に飲み込まれ、ゆっくりと身体全身を焼き尽くされる。黒炎はホムラの真紅の炎とは違い、まるで痛めつけるように身体に損傷を与え、生きながらえる程に苦しみが続く。

レミアは自分の足元にまで迫った炎に唇を噛み締め、コウシュンとゴウカイの「遺言」を果たすため、彼女はミキを呼び出す。



「……必ず、お伝えします!!」




ゴォオオオオッ!!





レミアの身体に白色に光り輝く魔力が溢れだし、瞬時に片翼に天使の羽根を想像させる翼を生やした美しい聖天魔導士に変化を果たし、彼女は飛翔する。その光景にコウシュンは笑みを浮かべ、最期の最期に自分の想い人の姿が見れた事に満足する。



「……あばよ、初恋」
「ふっ……まさか、こんな形で貴様と運命を共にするとはな」
「うるせえよ」



ゴウカイと背中合わせの形でコウシュンは悪態を吐き、既に黒煙は2人の足を飲み込み、蟻地獄のように身体が飲み込まれていく。恐ろしい激痛と高熱が2人に襲っているはずだが、それでもコウシュンとゴウカイは笑みを浮かべ、最期の瞬間まで空を駆け抜けるミキの姿を見送る。



「後は頼むぜ……レノォオオオオオオオオッ!!」



コウシュンの咆哮が砦中に響き渡った直後、上空を移動するミキはその言葉に一瞬だけ反応したが、すぐに自分の役目を果たすために移動を行う。しかし、その目元には涙が零れ落ち、一途に自分を想い続けた仲間の最期さえも、今の彼女には悲しむ余裕と時間もない。





――ゴォオオオオオオオオオオオオオッ……!!





コウシュンの雄叫びに反応したように伝説獣達が咆哮を上げ、ミキは視線を向けると、そこには全ての伝説獣が身体中から煙を噴き上げ、全身の皮膚が赤色に変色している事に気づき、すぐに彼女は奴等の目的を見抜き、目を見開く。




「逃げてぇええええええええええええええっ!!」





――ズドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!





届くはずがない事は分かっているが、それでもミキは巨大迷宮を取り囲む全ての砦に待機している隊員達に叫び声を上げるが、無常にも6体の生物は口内から火山の噴火を想像させる勢いの熱線を吐きだし、その方角は全ての砦に向かって一直線に吐き出され、凄まじい衝撃と爆風と地震が周囲数十キロにまで及んだ――
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