種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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三国会談編

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ハヤテからの訓練を終えると、レノは皆の元に戻り、魔術師達に先ほどの受けた凝縮解放の事を尋ねると、全員が頭を抑える。


「まさかレノさんが凝縮解放も知らずに魔法を行使していたとは……」
「そんなに不味い事なの?」
「不味いというよりは有り得ない事です。普通、魔法を使う人間が最初に学ぶ基礎ですよ?」
「ビルドの奴は教えてくれなかったな……」


普通に考えれば孤児院時代、最初にレノに魔法を教えた育て親のビルドが教えるはずなのだが、彼女の場合は奴隷扱いしているレノが必要以上に強力な魔法を覚えた場合を考慮し、力を付けさせないために段階を飛ばして魔法を発現させる方法を教えていたのかもしれない。

ちなみに凝縮解放は普通の魔術師が最初に覚えるべき技術であり、むしろここまで強敵と戦い続けたレノがそんな基本的な技術を使用していないなど誰もが予想できるはずがなかった。


「凝縮解放を無しに魔法を発現出来る事も驚きですが、先ほどの光景を見てもレノさんはやはり異常なまでに魔法力(魔法威力)が凄まじいですね……最早、聖剣を所持した人間と堂々か、あるいはそれを上回る魔法を発現出来るはずです」
「……実際に天属性も扱える」
「その天属性の魔法すらもさらに上の段階を迎えられるかもしれません……それに気になる事があるのですが、レノさんは水属性と火属性も扱えましたよね?」
「ちょっとだけなら……」


レノはミキのように五大属性を全て扱えるが、戦闘で利用できるのは風属性と雷属性だけであり、他の属性は合成魔法で発現させない限りは威力は期待できない。だが、もしも凝縮解放の力を利用すれば今まで戦闘には扱えなかった属性も発現出来るかもしれない。


「試しに水属性の魔法を凝縮解放で発動して貰えませんか?」
「いいよ」


ゴポォオオオッ……!!


センリの言葉通りにレノはいつも以上に体内で魔力を集中させ、水属性の魔法に変換させる。すると今までは掌を覆う程度の水の塊しか生みだせなかったはずだが、今回は空中に1メートル近くの水の塊を発現させる事に成功する。


「おおっ……いつもの10倍くらい違う」
「なるほど……どうやらレノさんは元々は水属性も扱えたようですね。ですが、あまり制御は出来ていませんが」
「……ぷるぷるしてる」


掌に生み出された水球は形が安定せず、コトミやセンリのように完全な球形の形で維持は出来ず、水属性を扱えると言っても2人ほどに制御出来るわけではないようであり、適当な場所に放り投げておく。


「では、次は火属性の魔法を見せてくれませんか?」
「火属性って言われても……魔鎧しか出来ないんだけど」
「そう言えばそうでしたね……ですが、元々ダークエルフは火属性の魔法を扱うのが得意と聞いています。レノさんも素質は存在するはずですから、試してみてはどうでしょうか?」


レノが火属性の魔法を扱えないのは幼少期の「炎」に対する精神的恐怖(トラウマ)からのせいであり、その恐怖を植え込んだ張本人であるホムラとは既に和解しており、あの時以上の窮地は何度も味わっている。


(火……炎)


炎属性を巧みに操るホムラを思い返し、彼女のように掌に炎属性の火炎を生み出す想像を抱く。魔鎧以外で火属性の魔法を扱うのは初めての事であり、上手く成功するのか不安だったが掌に異変が訪れる。



ボウッ!!



空中に翳した手の中に炎が灯り、やがて形状が球体に変化すると、周囲に熱気が漂う。大きさはソフトボールほどではあるが、高密度の魔力が凝縮されており、単発でも魔法として使用できる熱気を放つ。


「くっ……!!」
「意識をしっかり持ってください!!集中しないと爆散しますよ!!」
「分かってる……!!」


だが、掌の火球を維持するだけでも今まで以上の集中力を必要とし、何とか火球を消散させると全身から汗が噴き出す。慣れない魔法による精神的な消耗が激しく、雷属性や風属性のように上手く扱えない。


「……大丈夫?」
「なんとか……けど、火属性の魔法がここまで扱いが難しいとは……」
「いえ、今の火球は間違いなく炎属性の領域に達していました。初めてで炎属性の火球を生み出したのは素晴らしいですが、炎属性は最も制御が難しい魔法なのです。今のレノさんでは扱いきれなかったのでしょう」
「改めてホムラの凄さが実感する……」


これほど難しい炎属性をホムラは巧みに操り、場合によっては岩石を利用して火山弾を生みだしたり、魔力を圧縮させてレーザーを想像させる砲撃魔法を放つなど、彼女の恐ろしさが改めて思い知らされる。

だが、これでレノは嵐属性、雷属性(天属性)、水属性、炎属性、無属性を操れることが判明し、今後はミキのように複数の属性を使用して戦闘を有利に運べるかもしれない。但し、覚えたての水属性と炎属性は完全に制御出来るまで訓練が必要だろう。


「全く……どんどんと化け物じみているな君は」
「ホノカも相当だと思うけど」
「僕の場合はこれが無いと魔法すら扱えないよ」


ホノカが呆れた表情を浮かべながら近づき、彼女も普通ならば有り得ない規模の転移魔法を発動させる事が出来るが、聖痕を失った今では魔力水晶の指輪が存在しなければ自力では発現出来ない。それに彼女は他の属性の魔法は一切扱えず、転移魔法だけを頼りに生き抜いてきた。


「凄いね~レノたん。あ、そうだ!!この際だから聖属性も覚えてみる!?」
「ヨウカ様……聖属性は幼少の頃から白石を埋め込まなければ修得は不可能なのですよ?」
「そうだっけ?でも、レノたんは聖剣が扱えるよね?」
「聖剣を扱う事と、聖属性を操れるのは別の話ですから……」
「……でも、覚える事が出来たら全ての属性をこんぷりーと」
「まだ闇属性も残ってるぞ」
「……あれは邪道だから覚える必要はない」
「土属性もあるでござるよ!!」


唐突にカゲマルが出現して話の輪に入ると、レノは掌を見つめる。以前にホノカから自分の身体が成長の限界点に達していると言われた事があったが、先の剣乱武闘でホムラと全力で戦闘を終えて以来、自分の魔力が再び成長している気がする。

レノは知らない事だがこれは彼の中のダークエルフの血が関係しており、彼等は激しい戦闘を終える度に強さを増し、肉体の限界を超えて更なる強さに到達する事が出来る。特にレノの場合はダークエルフの歴史上でも最高クラスのレイアのクローンであり、あのホムラと同等の強さの可能性が存在する。

アイリィとその姉であるフォルムも今のレノと同じであり、彼女達もレイアのように生まれながらの天才であり、同時に双方が鍛錬を積んだからこそ英雄として名前を刻み、聖痕という力も芽生えた。今のレノは彼女達と同じ可能性を秘めており、今後も更なる強さを迎える可能性が高い。


「そう言えば……あいつはどうしてるのかな」



大会以降、消息不明な姉の姿を思い浮かべ、今頃何処で何をしているのか気にかかる。魔槍はホノカに譲ったとしても、彼女が世界最強のダークエルフである事は変わりなく、今頃どのように過ごしているのか気にかかった。




※次の章から大迷宮の後編に移行しますが、最終章の一つ前の章になります。明後日から本格的に投稿します。
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