種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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三国会談編

和国到着

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――翌朝、玉座の間では魔導王が土下座を行いかねない勢いで頭を下げ、今回の騒動の件を謝罪する。彼だけではなく、大勢の大臣や魔導機兵の開発に関わった研究員たちも動揺であり、今回の魔導機兵の暴走は完全に魔導大国側の失態である。

人間という種族の平和のために造り上げた兵器が、逆に人間達を危険に及ぼした結果となり、当然だが魔導機兵の共同開発計画はご破算となる。アルトは魔導機兵のような兵器を頼るのではなく、人間達の努力と分かち合いで共に平和を歩むことを望む。


「も、申し訳ありません……今回の失態、全て我等の責任です」
「か、顔を上げてください魔導王……こちらも大切な魔導機兵を殆ど破壊してしまい、申し訳ない」
「状況が状況だから仕方なかったと思うけどね」


魔導機兵は2体と開発途中の機体を除いてレノ達との戦闘で破壊されており、特に雷帝に至っては修復不可能な状態であり、現在は研究員たちによる魔導機兵の回収が行われている。損傷は激しいが修復可能な機体も存在し、今後は兵器としてではなく別の観点で造り替えられる予定が組み込まれている。


「本来、機人族(マシンナーズ)とは人間の支えとなるべきロボットとして開発されました。使い方を誤らなければ彼等は人間に尽くし、共に生活を行う事も可能です。魔導機兵も機人族のように兵器としてではなく、生活の支えになるような改造を施すべきだと思います」
「な、なるほど……具体的にはどのように改造したらいいのでしょうか?」
「今回の騒動により、知識の塔の各所が損傷しました。完全に復旧するには人間の手では2、3年の月日を必要としますが、魔導機兵を工作用の機体に改造を行えば飛躍的に修復作業が進むはずです。よろしければ私が計画書を造り上げますが?」
「よ、よろしくお願いします!!」
「デルタがいつもよりテンション高い気がする」


機人族の複製品である魔導機兵に対してアンドロイドであるデルタは思う所があるのか、彼女は魔導王に魔導機兵の様々な可能性を提示し、しばらくの間はこの知識の塔内に残り、彼等の研究を手伝う事にするらしい。

レノとしてもデルタが望むのならば反対はしないが、アルトとしては魔導機兵の開発にはあまり賛成的ではなく、苦笑を浮かべる。だが、魔導機兵の可能性は意外にもカノンが同意する。


「私もデルタさんの意見に賛成です。魔導機兵は確かに恐ろしい力を持っていますが、乗っている人間が正しい人ならば大きな力になるはずです。実際、普通の人間でも魔物と対抗できる力を持てるのは非常に心強い事ですから」
「そうだな……共同開発はともかく、魔導機兵の可能性は否定できないな。あの力を守る事に扱えれば魔物の活性化にも十分に対抗できる」
「私は反対ですね。あれほどの強大な力が一般民衆に渡れば危険過ぎます。あまり民を疑いたくはありませんが、どんな場所にも悪人は生まれてしまいます。悪の手にあの機体が渡れば民衆が危険に晒されます」
「そこの所は対策を練ればどうにか出来るんじゃないのかな?例えば、魔導機兵に搭乗するには特別な試練を受けなければならない制度を設けたり、あるいは魔導機兵に特定の人物しか搭乗できないように仕掛けを施したり……」


議論のように魔導機兵に関する話し合いが行われ、色々な出来事が起きたが魔導機兵た良い意味でも悪い意味でも可能性に満ち溢れた存在であり、この魔導機兵が今後どのような形で歴史に関わるのかは魔導大国の行動次第である。



「申し上げます!!和国の方々が到着しました!!」



玉座の間で魔導機兵の存在意義を語り合う最中、一人の魔術師が報告を行い、慌てて魔導王は起き上がるとアルト達も所定の位置に下がる。そしてゲートが光り輝き、和国の人間だと思われる集団が姿を現した。


「和国の代表、ミコト様の御成り~」


何故か時代劇風に紹介を行う付き人を同行しながら、和国の代表である女性が姿を現す。年齢はアルトよりも少し年上の女性であり、服装は和服を想像させる恰好ではあるが、浴衣の類ではなく男性物の袴を羽織っており、髪型はポニーテールに纏めている。

彼女の背後には戦国時代風の鎧を武装した人間達が続き、その全員が本物の日本刀を装備しており、一番背後にはレノの見知った人物が後に続く。どうしてこのような場所に彼が存在するのか驚きだが、まずは和国の代表であるミコトが魔導王とアルトに頭を下げる。


「初めまして、私が和国の代表を務めるミコトと申します」
「お、お初にお目にかかります。バルトロス王国の国王を勤めるアルトです」
「魔導大国の代表、魔導王です」


想像以上に物腰柔らかで綺麗な人物の登場に2人の王は慌てて挨拶を行い、ここで三国の代表が揃った事になる。レノは王達が話し合いを行う間、気になっている人物に話しかける。


「ちょっと……何やってんのハヤテ?」
「お久しぶりでやんすね」


和国の団体の中には何故かアトラス大森林の護衛長であり、現在は消えた長老会の追跡を行っているはずのハヤテの姿があり、彼はレノに気付くと笑みを浮かべてくる。


「……誰?」
「知り合いか?」
「えっと……俺のお爺さん的な存在の人だよ」
「初めまして皆さん、レノさんのお爺さん的存在のハヤテと申しやす」
「ハヤテって……居合のハヤテ!?」


ハヤテの紹介にリノンが驚愕し、周囲の者達も驚きの表情を浮かべる。どうやらレノの予想以上に彼の名前は有名らしく、慌ててカノンが掌を差し出す。


「お噂はよく聞いています!!アトラス大森林の護衛長の古株であり、最強の居合剣士であるハヤテさんとこのような場所でお会いできるなんて……」
「そちらさんはカノン大将軍さんですね?あっしの心眼にはあんたさんの炎を想像させる魂の輝きが確認出来やすよ」
「なんと……それが噂に名高い心眼の能力なのですか!?」
「噂ほど大層な物でもありやせんが……そういう事ですかね」
「おおっ……格好いいな」
「そちらさんは随分とでかいと思ったら、あの豪腕大将軍ですね?レノさんが言っていた通り、頼りになりそうな人だ」
「あの……私語は慎んでくれませんか?」


気付けば声量も気にせずにハヤテと会話していた者達に魔導王が注意を促し、全員が頭を下げる。そんな中、和国の代表であるミコトはレノに視線を向け、すぐに何かに気付いたように息を飲む。


「あ、貴女は……!?」
「え?」
「……知り合い?」


ミコトはレノの顔を見た瞬間に身体が震え、コトミが不思議そうに問い質すがレノには心当たりがなく、以前に何処かで出会ったことがあるのかと質問を行おうとした時、


「ここであったが3年目……あの時の恨み、晴らさせて貰います!!」
「はあっ!?」
「み、ミコトさん!?」


唐突にミコトは腰に差した日本刀を抜刀すると、そのままレノに向けて駆け出し、アルトが驚いた声を上げるが彼女は刃を振り上げ、レノに向けて放つ。


「おっと」


ガキィイイインッ!!


だが、寸前でハヤテが目にも止まらぬ速度で抜刀し、ミコトの一撃を受け止めた。
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