種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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三国会談編

人工ゴーレム

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「改良がまだまだ必要ですが、いずれは我が国の民に普及したいと思っています」
「普及ね……」
「無論、魔法の知識が疎い児童には扱わせないように年齢制限は厳しく設けるつもりです。また、販売するとしても殺傷能力が低い魔法だけを対象とします」
「別に聞いてないんだけど」
「ちょっ……レノッ」


言い訳がましく説明を行う魔導王にレノは適当に返事を返し、そんな彼の態度にリノンが声を掛けるが、魔導王は苦笑いを浮かべて石札を収める。


「どうやら英雄殿にはお気に召しなかったようですね。では、他の魔道具の実権をご覧になられてはどうでしょうか?」
「他にもあるの?」
「こちらです」



――魔札の実験場の隣に案内され、今度は水晶壁内に砂が敷き詰められており、内部には先ほどとは違うロック・ゴーレムの個体が彷徨っていた。岩石で構成されたゴーレムとは違い、煉瓦で形成されたゴーレムである。



「こちらは最近我々が改良したゴーレムですが、やはりオリジナルと比べると精度が落ちますね」
「ゴーレムを人工的に作っているのですか!?」
「はい。我が国は兵士の代わりにゴーレム達を利用した軍隊を造り上げる計画が進行していまして、並の人間よりも強靭で力強く、過酷な環境であろうと乗り越える事が出来るゴーレムを開発しています」
「魔の聖痕と似ているな……」
「……闘人都市に見かけた個体と似ている」


闘人都市がロスト・ナンバーズによって襲撃された際、魔の聖痕で生み出された煉瓦製のゴーレムは存在したが、水晶壁内で隔離されている個体は瓜二つの容姿であり、どのような製造方法で造り出されたのか気にかかる。


「いくらなんでも魔物を兵力の代わりにするのは危険すぎるのでは……」
「ご安心ください。このゴーレム達は決して人間を襲わないように開発されています。万が一にも暴走した場合でも、内蔵されている胸元のゴーレムの核に触れれば停止することが出来ます」
「あの胸元に光っている宝石の事?」


煉瓦製のゴーレムの胸元には核と思われる魔石が露出しており、普通のゴーレムは自分の命に等しい各は体内に内蔵しているが、人工的に開発されたゴーレムは対外に露出しているらしい。


「魔法札に魔物の人工開発……思っていたよりも魔導大国の技術力は侮れませんね」
「俺としては命を弄んでいるようで嫌だけどね」


ジャンヌに囁きかけられ、レノとしては水晶壁内を彷徨うゴーレムに視線を向け、何故か可哀想に見えてしまう。彼自身も生まれは特別なため、人工的に開発されたゴーレムに対して色々と思う所はあった。


「では、次の実験場に案内しましょう」


魔導王はそんなレノの心中も察せずに自慢げに笑みを浮かべ、さらに隣に移動する。今度は水晶壁の内部には砂山が埋められており、特に魔物の姿は見受けられない。


「ここは?サンド・ゴーレムでも飼ってるの?」
「お待ちください。お前たち、あれを……」
「はっ!!では、これより地雷式魔道具の実験研究を行います!!」
「地雷式?」


すぐに水晶壁の内部に異変が訪れ、天井の部分が開かれ、上空から鋼鉄製の鉄球が落ちてくる。その光景に全員が唖然とし、鉄球はやがて砂山が一際高く盛り上げられた部分に落下した瞬間、



――ドゴォオオオオンッ!!



「うわぁっ!?」
「にゃうっ!?」
「おわっ!?」
「くしゅんっ」
「今、誰か一人くしゃみしたな」


鉄球が砂山に激突した瞬間に火柱が舞い上がり、そのまま鉄球が炎に飲み込まれ、半ば溶解しながら別の場所へ落下する。その光景に全員が耳を抑えながら魔導王に視線を向けると、彼は満足気な笑みを浮かべ、



「これが我が国の最高傑作の地雷式魔道具「ボム」です。先の魔王討伐大戦の際、王国軍が魔人族に利用した火属性の魔石による爆破作戦を参考に開発した魔道具です」
「あ、あの時の……!?」



魔王討伐大戦の際、前日に人魚族の襲撃で平原が泥沼と化し、戦場の足場が不安定に陥った。しかし、アルトはこの泥の中に大量の火属性の魔石を仕込み、魔王率いる軍隊が突入した時に頃合を見計らって火属性の砲撃魔法を放ち、事前に泥の中に埋め込んでいた魔石を誘爆させて魔王軍に大損害を与えた事がある。

この作戦を後で聞きつけた魔導大国は彼の作戦を元に、火属性の魔石を改良して効果を上昇させ、地面に埋め込んで強い衝撃が走るだけで魔石が爆発するように改造した。この新型の魔道具は地雷式魔道具として公表されており、既に軍事利用出来る段階に至っているという。



「このボムは魔導大国の要所に設置され、外部からの不用意な侵入者や、危険性の高い魔物に対して効果を発揮しています。よかったら王国の方にも輸入をしましょうか?」
「……考えておきます」



自慢気に語る魔導王に対し、アルトは自分の考えた作戦でこんな兵器が造り出されるなど予想さえ出来ず、顔色を悪くする。確かに素晴らしい性能の魔道具ではあるが、こんな物が戦争に利用されたらどれほどの人間が犠牲になるのかを考えると頭が痛くなる。

魔導大国は日々、魔法や魔道具の研究を欠かさない国家であり、レノはこの場所が旧世界と似ているように感じられた。科学の進歩は素晴らしいが、いずれ発達し過ぎた科学力が彼らの首を絞めるように思えてならない。



「……ところでお聞きしたい事があるのですが、アルト国王、ジャンヌ団長、そしてレノ副団長は聖剣の選定者である事は有名ですが、今回の会談で聖剣の方はご持参していますか?」
「え?いや……」
「私も今回は用意はしていませんが……」
「あるよ」


アルトとジャンヌは首を振るが、レノは腰に差しているカリバーンを握りしめると、魔導王は聖剣を覗き込む。


「これがあの有名なカリバーンですか……ですが、リバイアサンの討伐の際に聖剣が砕け散ったという情報が我が国には届いていますが、誤報ですか?」
「どきっ」
「……接着剤で直した」
「そ、そんな物で聖剣が修復できるのですか!?」
「こらっ!!冗談を言うにしても時と場所を考えなさい!!」
「……あうっ」


コトミの発言に本気で真に受けたように驚愕する魔導王だが、すぐに後方からセンリが注意を促し、すぐにレノは適当な嘘を並べる。


「えっと……壊れたって噂は流れてるけど、実際は平気だよ。ただ、あの戦いで少し無理したのは事実で今は調子が悪いけど……」
「そうですか……それは残念ですね」
「どういう意味ですか?」


魔導王があらかさまに落胆したように溜息を吐きだし、彼の態度に疑問を抱いたジャンヌが問いただすと、彼は地雷式魔道具の実験場の反対側に存在する通路に視線を向け、


「我々は前々から世界中に存在する聖剣と魔剣の情報を調べ上げ、そして今の時代の技術でこの二つの武具を再現できないのかと研究を行っています。よろしかったらご案内しますが、どうしますか?」
「聖剣と……魔剣の人工開発?」


さらりと途轍もない発言を行った魔導王に全員が顔を見合わせ、一先ずは彼の後を付いて行く事にした。
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