種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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三国会談編

研究の成果

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レノ達は魔導王に知識の塔を案内され、最上階から中層のフロアに案内され、魔導大国の研究室に訪れる。研究施設と言ってもレノが知っている旧世界の施設ほどの科学力は存在しないが、それでも現在の世界では最高峰クラスの設備が整えられていた。


「ここが我々が普段使用している研究室です」
「これは……水晶壁ですか?」
「魔物も飼育しているのか……」


魔導大国の研究室は水晶壁で形成された実験場が広がっており、水晶壁の内部には世界各地の魔物が存在し、中には危険指定されている魔人種まで存在した。


「この魔物達を利用し、我々は日夜魔法の研究と実験を繰り返しています」
「あ、サイクロプスだよレノたん」
「本当だ……なんか嫌な光景だな」


ヨウカが指さした方角には果物を食すサイクロプスの姿が確認され、レノとしては眉を顰める。サイクロプスは温厚な生物であり、大迷宮や地下迷宮の個体を除けば比較的に自らが襲い掛かる事はなく、レノノ森のロプスのように人間と共存できる知恵も存在する。

サイクロプスの他にもミノタウロス等の魔物も存在し、こちらの方は人間のように鍛錬を行っており、バーベルを掲げて体を鍛えていた。水晶壁は完全に防音性なのか、中で動いている事は確かだが音は響いてこない。


「映画みたいに水晶壁(硝子)を割って来ないのか心配だな」
「問題ありません。この水晶壁は魔法の通過性も非常に高く、脱走を計ろうとした個体は発見次第、魔術師部隊が対処します」


水晶壁は特殊加工を行えば魔法だけを通過させる事も可能であり、実験の際に暴れようとした魔物は魔術師部隊が魔法で対処するらしい。


「この場所でどのような実験を行っているのですか?」
「それは今からお見せしましょう。お前たち」
「はっ!!準備は出来ています!!」



――魔導王の言葉に配下の魔術師達が敬礼を行い、レノ達は一番奥にまで移動する。案内されたのは一際巨大な水晶壁が広がった実験場であり、中には「ロック・ゴーレム」の個体が収納されていた。



『ゴォオオオッ!!』


ドォンッ!!


「わふぅっ!?」
「おっと」
「ははっ……大丈夫ですよ。このゴーレムが水晶壁を破壊する事は出来ません」


水晶壁内部のゴーレムが内側から拳を叩き付けてくるが、確かに水晶壁が破壊される様子はなく、それでいながら他の水晶壁と違って防音性はないのか鳴き声がこちらにも響いてくる。


「このゴーレムは先日苦労して捕獲した個体なのですが、我々が開発中の魔道具の実験として利用しているのです」
「魔道具?」
「これの事です」


魔導王は一枚の石札を取り出し、アルトに手渡す。彼は不思議に思いながらも受け取ると、すぐに石札に小さな魔石が嵌め込まれている事に気づき、首を傾げる。普通の魔石よりも随分と小さく、通常ならば発動したとしても大した効力は見込まれないはずだが、


「では今から実験を行います。私がこの魔札(カード)を使用してみます」


アルトから石札を回収し、魔導王は掌で覆いこむように構え、ロック・ゴーレムに向ける。


「バーン・スラッシュ」


ズドォオオオンッ!!


石札が魔法名を告げた途端に内部の魔石が発光し、そのまま三日月状の形をした炎の刃が放出され、水晶壁内部に存在するロック・ゴーレムに衝突する。


『ゴァアアアアアアアアッ!?』
「うわっ……」


ロック・ゴーレムは炎の刃を直撃した事で吹き飛び、その光景に誰もが驚愕する。先ほどの魔導王の動作からは魔力を感じられず、通常は魔石を発動する際は必ず何らかの属性の魔力を魔石に込める事で魔法が発動できるのだが、彼は魔法名を告げただけで発動させた。

王国にも魔石に魔法を仕込んで発動させる技術があるが、彼の使用した石札の魔法の発言速度は凄まじく、魔法名を呟いた瞬間に発動していた。従来の魔石は使用する度に時間差で発動するはずだが、魔導王の場合は一瞬で展開したように見える。


「これが現在、我々が研究している魔道具です。驚きになられましたか?」
「あれってもしかして……」
「拙者達の里に伝わる護符とよく似ているでござる」


レノは何時の間にか接近していたカゲマルに囁きかけられ、確かに以前にカゲマルの里に訪れた時に見せて貰った「護符」と呼ばれる魔道具と酷似しているが、性能は護符よりも上かも知れない。カゲマルの里の人間が扱う護符は魔石のように魔力を必要とするが、先ほどの魔導王は魔力を使用せずに魔法を発動していたように見える。


「今のは……魔力を使用せずに魔法を使用したんですか?」
「そういう事になります。最も、現段階では使い捨てというのが難点ですが……」


魔導王は石札を差し出し、先ほどは赤く光り輝いていた魔石が力を失ったように灰色に変色しており、彼の話によると一度使用すれば効力は失われるらしい。


「一応は新しい魔石を取り換えれば再び使用できますが、皆様も記念にお試しになりますか?」
「遠慮しとく」
「私はちょっと興味あるかな~」
「僕も興味あるな」
「魔法名だけで魔法を……無詠唱魔法みたいだな」
「俺も、扱えるのか?」
「え、ええ……この石札は巨人族でも扱えますよ」


レノは断ったが、他の面々は中々に興味を注がれ、特にゴンゾウが若干興奮しながら問い質すと、魔導王は巨漢の彼に若干距離を取りながらも頷く。魔法が扱えない巨人族でさえも使用できるという事にゴンゾウは感動したように受け取り、すぐに人差し指と親指で摘みながら石札を水晶壁に向ける。


「こ、これでいいのか?」
「はい。その状態でサンダーボルトと魔法名を告げれば……あっ!?石札は魔石が嵌め込まれている方を向けっ……」
「サンダーボルト!!」


魔導王が使い方を説明し、彼はゴンゾウが自分とは反対方向に石札を構えている事に気が付き、慌てて注意を促すが、


バチィイイイッ!!


「ぬおおっ!?」
「ゴンちゃーーーんっ!?」
「ご、ゴンゾウ!?」
「ゴンさん!?」


皆の目の前でゴンゾウが握りしめていた石札から電流が流れ込み、彼の身体を感電させる。すぐにレノは魔鎧を発動させ、彼が握りしめている石札を弾く。


「だ、大丈夫かゴンゾウ?」
「ううっ……問題ない、レノの電撃と比べれば大したことない」
「すぐに回復させてあげるね!!」
「……やっぱり、僕は実験は遠慮して置こう」
「も、申し訳ありません……私がちゃんと確認していれば……」


ヨウカとコトミがすぐにゴンゾウの治療を行い、魔導王が何度も頭を下げる。彼が使用した石札の効力の凄さは良く分かったが、使用法を誤れば途轍もない被害が生まれる事をゴンゾウが証明してくれた形になる。
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