種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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大迷宮編 〈前半編〉

大迷宮の秘宝

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「大迷宮でレノ達が発見したというもう一つの「カラドボルグ」について……聖導教会側から話しが聞きたいのですが……」


アルトがセンリに視線を向けると、彼女は若干冷や汗を流しながら頷き


「はい。結論から言うと、あの聖剣は本物です。我々の調査の結果、間違いなくレノ様が以前に所有されていた聖剣と同じ素材で造られている事が判明しました」
「本物って……カラドボルグは二つ存在したというのか⁉」


センリの言葉に会議室に動揺が広がり、全ての聖剣の中で最も破壊力に特化した最強の聖剣が獣人族の領土に誕生した大迷宮の奥にもう一つ存在していたという事に驚きを隠せない。


「厳密に言えば、レノ様の所有していたカラドボルグこそが過去の歴史上で原初の英雄が使用した聖剣で間違いないでしょう。ですが、大迷宮内に存在したカラドボルグに関しては原初の英雄の銘が刻み込まれていませんでした。代わりに聖剣の柄の部分には奇妙な紋様が刻まれていましたが……」


レノが嘗て使用していたカラドボルグには実はアイリィが自分の銘を刻んでおり、刃の部分に「アイル」という文字が小さく刻み込まれている。実は彼女が製作した聖遺物には全て彼女の英雄時代の名前が彫られている。

だが、大迷宮で見つけ出したカラドボルグに関しては外見こそはアイリィが造り出したカラドボルグと瓜二つだが、肝心の刃の部分には彼女の名前が刻まれておらず、間違いなく彼女が生み出した代物ではない。


「どうして大迷宮に二つと存在しないはずのカラドボルグが封印されていたのかは分かりませんが……この聖剣は教会側で預からせて貰います。現時点では巫女姫様以外に触れる事も難しいので、魔王から回収したロンギヌス同様に厳重に封印します」
「ふむ……奇妙な話じゃ。どうしてカラドボルグがもう一つ存在し、そして獣人族の領土に出現した大迷宮の奥深くに保管されていたのか……謎は深まるばかりか」
「レノ殿はそのカラドボルグを扱えないのですか?」
「無理だった。まあ、今はカリバーンがあるから別にいいけど……」


アイリィのカラドボルグは彼女の力を宿した紋様のお蔭で使用する事が出来たが、大迷宮で発見したカラドボルグに関してはレノも他の者同様に扱えなかった。触れようとしただけで聖剣から激しい電流が流れ込み、弾かれてしまう。

巫女姫であるヨウカだけは全ての聖剣を所持できる能力が存在するらしく、彼女だけは大迷宮のカラドボルグを所持する事が出来た。但し、聖剣の選定者として選ばれた訳ではないので聖剣の力は引き出せず、今現在は聖導教会で管理されている。


「大迷宮で聖剣が発見されたのは驚きですが、問題なのは発見された聖剣が本物と同等の力を秘めている事です。あくまでも予測に過ぎませんが、もしかしたら他の大迷宮にも今回見つかった聖剣と同等の存在が眠っている可能性も否定できません」
「なんと……」
「まさかそんな事が……」


センリの発言に全員が絶句し、現在の世界で確認されている大迷宮の数は「6つ」でり、六種族の領土にそれぞれ別れて誕生している。その内の獣人族の大迷宮は各種族の調査隊のお蔭で攻略を果たしており、王国領土の大迷宮に関しては人命救助のために引き返しており、完全な攻略を果たしたわけではない。


「という事は、他の大迷宮にも聖剣カラドボルグ級の秘法が眠っている可能性があるのかい? 盗賊としては興味が注がれるが、それは色々と問題が大きいんじゃないかい?」
「ええ……今回の聖剣は何とか回収できましたが、今後の大迷宮の調査にはより一層に慎重に行動しなければなりませんね……もしも、あの魔槍ゲイ・ボルグやロンギヌスまで眠っていたとしたら……」
「僕のクサナギとアイギスと同じ代物も封印されている可能性もあるのか……」
「最悪な場合は所有者に悪影響を与える魔剣や妖刀が眠っている可能性です。銀の英雄が扱う氷華のような所有者の実力が未熟ならば力を制御できない代物が封印されていたとしたら……」
「ここで憶測を話し合っていてもしょうがないじゃろう。まずは我が国王の判断を聞くべきではないのか?」


テラノの発言に全員の視線がアルトに集中し、彼は難しい表情を浮かべながら、


「……長老会を動かした魔術師の動向も気になるが、僕としては大迷宮の調査の件も放置はできない。だが、今は森人族の戦況の報告を待とう」
「守護戦士がアトラス大森林を奪還できるかどうかを見守るのですか?」
「ああ……最も、森人族最強と謳われている彼等が敗北するとは思えないが……」
「早くても5~6日で決着は着くでしょう。その間、もう一度王国領土の大迷宮の探索を行ってはどうでしょうか? 今ならば戦力も十分ですし……」
「ライオネル達も忙しいだろうし、俺達だけでもう一度挑んでみる?」
「前回と違い、今回は万全の準備で挑むことが出来ます。以前に辿った道は私も記録しています」


大迷宮内に挑んだデルタは迷宮内の地図を記録しており、獣人族の大迷宮と違い、人間の領土の大迷宮は通路が変化する仕掛けは施されていない。また、今回はジャンヌやレミアといった主力も復帰しており、万全の体勢で挑むことが出来る。


「よし……なら、森人族の守護戦士がアトラス大森林の奪還に成功するまでは僕たちの方も領土内の大迷宮に挑もう。もしかしたら、獣人族の大迷宮のように聖剣のような武具が封印されているかも知れない」
「けど、結構奥の方まで進んだと思うけど、あの時は宝物庫なんて見つからなかったな……」
「守護者は存在しましたが、確かに宝物庫らしき存在は確認できませんでした。ですが、必ずしも大迷宮に一体の守護者だけが防衛しているとは限りません」
「え、あんな存在が他にもいるの?」
「可能性は否定できません。王国領土内の大迷宮は獣人族の大迷宮よりも規模が大きいので、前回とは違う道を辿れば別の場所に移動する事が出来るかも知れません」
「そうか……」


確かに前回の時は人命救助のため、大迷宮の捜索ではなく先行隊のメンバーの行方を追って進んでいたが、思えば随分と奥に進んでいた気がする。獣人族の大迷宮も広いが、それでも王国領土の大迷宮の方が広い気がする。


「ねえねえ……獣人族の大迷宮とか、王国領土の大迷宮とか、少し紛らわしいから名前付けない?」
「名前?」
「そうですね……同じ大迷宮と言っても、中の構造は大きく違いますし……これからは獣人族の大迷宮は「獣族迷宮」王国領土内の大迷宮は「王国迷宮」という名前で統一しませんか?」
「その理屈だと森人族は「森林迷宮」巨人族は「巨大迷宮」人魚族は「海底迷宮」魔人族は「魔族迷宮」とか?」
「それは分かりやすくていいですね‼すぐに他の六種族の方にも名前を統一する事を報告しましょう‼」
「なんだか逆に複雑になったような気がするが……まあ、確かに大迷宮という名前だけでは紛らわしいからな」


ヨウカの提案をあっさりと受け入れられ、今後は各種族の大迷宮の名前を個別化し、そして王国は森人族の戦況の報告が届くまでの間、自国の大迷宮の調査を再会する事が決まる。
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