種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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大迷宮編 〈前半編〉

護衛長

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「くそっ‼ また消えやがった‼」
「ど、どうするんですか⁉」
「てめえが考えろ‼ 敵をあぶりだす魔法ぐらい覚えてねえのかよ‼」
「全く……相変わらず口が悪いですね‼ ホーリーライト‼」


ミキを憑依させたレミアは杖を掲げ、魔水晶から光が周囲を照らす。その瞬間、姿を消したフウカと思われる空間の歪みがはっきりと誕生し、ベータが右腕を構える。


「とりあえず捕獲しますよ。ほぁたぁっ‼」


バシュッ‼


彼女の右腕の甲から銃口が飛び出し、そのままフウカの影に向けて網を発射する。どうやら外部の装甲はデルタに移植されたが、元々内蔵されている武器に関してはそのまま保存されていたようである。


「ふんっ」


ズバァアアッ‼


自分に向い来る鉄製のワイヤーで構成された網をフウカは何事もなく斬り裂き、そのまま後退する。既に姿は完全に晒されており、今度はコウシュンが動き出す。


「おらよっ‼」


ブォンッ‼


距離が離れているがコウシュンは剣を振り抜き、彼お得意の不可視の斬撃を放出したようだが、フウカは剣を構えると、


「馬鹿?」


ガキィンッ‼


見えない斬撃を受け流し、大橋に切傷が生まれる。それを見てコウシュンは舌打ちし、どうやら彼の能力は既に知られているようだった。


「くそっ……やっぱり無理か」
「なら、これならどうだい? はあっ‼」


ビュオォオオオッ‼


ホノカがクサナギを片手に振るいあげ、そのまま暴風を纏わせながら刃を放つ。そのまま刀身から竜巻が発生し、そのままフウカに放出されるが、


「効かない」


ボシュウゥウウウッ‼


風船から空気が漏れ出るような奇怪な音が鳴り響き、聖遺物であるクサナギから放たれた竜巻が彼女の身体に触れる寸前で二つに分かれ、そのまま湖の方に方向を反らされる。それを確認したホノカは溜息を吐き、クサナギに視線を向ける。


「どうやら彼女には効かないようだね……つぐつぐ、僕が戦う相手はどうして風属性にやたらと強い相手ばかりなんだい?」


彼女が今までクサナギが効かなかった相手は風の聖痕を宿していたリュウケン、ここにいるコウシュン、そして魔槍を操るホノカであり、彼等は独自の方法でクサナギの能力を無効化させる。強力な能力を宿しているのは間違いないが、クサナギは風属性の使い手とは非常に相性が悪い。


「仕方ない……ここは俺が」
「待てレノちゃん、ここで魔力や体力を無駄に使うな‼こんな奴がここから先は何人も待ち構えてるんだぞ‼」
「こんな奴……?失礼」
「何となく、この人ってコトミさんと似てません?」
「確かに……」


レノが電流を迸らせて攻撃を仕掛けようとするとコウシュンが引き留め、ここから先にも数多くのエルフ達と相対しなければならず、この中で一番の戦力である彼を無闇に頼るわけにはいかない。


「では、ここは私が……フィフス・マジック」


ゴォオオオッ……‼


ミキの周囲に五つの属性の魔弾が同時に発動し、流石にフウカも驚いたように目を見開かせる。その光景にコウシュンは笑みを浮かべ、複数の属性魔法で同時に攻撃されたら彼女であろうと防ぐことは難しい。


「マジック・アロー‼」



チュドドドッ‼



風、火、水、雷、聖の魔弾が同時に射出され、フウカに向けて接近する。彼女に当たる寸前で魔弾同士が衝突し、その時に生じる反発作用の爆発で相手を仕留めようとするが、


「奥の手、発動」
「やべっ‼逃げろ⁉」
「え?」


フウカは剣を構え、彼女の刀身が光り輝く。何らかの魔法剣を発動させる気なのか、そのままフウカは一回転するように刃を振るいあげ、


「一刀・嵐牙」


まるでフリスビーのような円盤型の風属性の斬撃が放たれ、そのままミキが射出した五つの魔弾と衝突し、魔力の反発作用の爆発が生じる。



ズドォオオオオンッ‼



「くっ⁉」
「あんの馬鹿、橋を壊す気か⁉」
「ちょっ、洒落になりませんよ⁉」
「飛べ‼」


大橋の上で生じた爆発により、橋が半ばで焼け崩れ、大きくバランスが崩れる。レノ達はすぐに上空に非難し、この場で飛べないホノカはミキに抱えられる。


「すまないミキさん」
「気にしないで下さい……で、ですが、失礼ですが少し重すぎる気がするのですが……?」
「ああ、すまない。色々と隠し持ってるからね。金貨とか」


ホノカを抱えたままミキは背中に光翼を発動させて浮き上がり、レノも飛行ユニットを展開させたベータに抱えられ、下の状況を見る。ちなみにコウシュンはレノの風輪のように足元に風を纏わせ、そのまま浮上している。


「どうですか? 見えます?」
「いや……また姿を隠したのかな?」
「だろうな……あの野郎、後で絶対レフィーアの姉御に説教されるぞ」


集落を繋ぐ大橋が無残に破壊され、湖に浮き上がる残骸を確認するがフウカの姿は見当たらない。どうやらまた姿を隠蔽したらしく、これでは迂闊に降りられない。


「どうします? やっぱり、ここはレノさんに任せるしかないんじゃないですか?」
「確かに面倒だな……だが、ここでフウカに手間取っているようじゃ先はねえ。しょうがない、ここは俺が本気を……」
「何をする気?」
「なっ⁉」


レノ達の後方から声を掛けられ、振り返るとそこにはフウカが右足を振り上げ、コウシュンの頭部に目掛けて振り下ろそうとしている姿があり、そのまま彼女の踵がコウシュンに触れようとした瞬間、



「――不意打ちは、盗賊の専売特許だよ」
「っ⁉」



そのフウカの後方からホノカが耳元に囁きかけ、彼女はアイギスを取り付けた腕をフウカの身体に押し付け、


「アイギス」
「あうっ⁉」


ドォンッ‼


右手の部分のみに守護壁を纏わせ、フウカの背中を強打する。彼女はそのまま空中でバランスを崩して落下し、そんなフウカの隙を逃すはずがなく、


「紫電‼」
「アクア・ショット‼」


ズドォオオンッ‼


「あばばばばっ……⁉」


空中で紫の電流と水属性の魔弾が衝突し、彼女は感電しながら湖に墜落し、そのまま沈んでいく。その光景を確認すると、レノ達は安堵の息を吐く。


「ふうっ……終わった」
「まあ、しぶとい奴だから死んじゃいねえだろうが……それにしても助かったぜ姉ちゃん」
「いや、僕もたまには役に立たないとね」
「いきなり転移した時は驚きましたよ……」



――ホノカはフウカが姿を現した瞬間、反射的に転移装置の指輪を発動させ、彼女の背後に自分と密着させているミキごと一緒に転移し、そのまま攻撃を仕掛けた。彼女の腕力ではたかが知れているが、アイギスの守護壁をソフィアの魔鎧のように纏わせて攻撃を仕掛けたのもいい判断だった。
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