種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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大迷宮編 〈前半編〉

フライングシャーク号の異変

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「……やはり、我等では触れる事はできんな」
「ゴム手袋でも持って来れば良かったね」
「そんな物でどうにか出来る代物なら泣くぞ……」


レノ達は飾られている「カラドボルグ」を見つめ、試しにダイア以外の者が触れようとしても電撃が流し込まれて触れられない。


「おかしいな~……私は普通に触れるのに」
「すごいですねヨウカさん‼」
「……流石は巫女姫様」


しかし、巫女姫であるヨウカだけは聖剣に触れる事が可能であり、何事もなく無事に聖剣を回収する。聖導教会の代々の巫女姫は全ての聖剣を所有できる能力が存在し、彼女達は聖剣の能力までを扱えないが触れる事で発生する拒否反応を受けず、恐らくはゲイ・ボルグやロンギヌスであろうと触れられると思われる。

レノも試しにカラドボルグに触れようとしたが、指先が触れた瞬間に電流が走って弾かれてしまう。アイリィが所有していたカラドボルグならばレノを所有者として認めるはずだが、大迷宮に保管された聖剣は別物らしい。


「それにしてもあれだけ苦労して手に入れた物がこのだけけとはね……ここにある煉瓦を持ち帰って販売しようかな」
「それは止めて置け……それにしてもこの聖剣はどうする? 基本的に聖剣の扱いは聖導教会が一番だが……」
「私達としては獣人族が管理したいんですけど~聖剣だと色々と問題があると思うので、上の方と相談した後で判断する事になると思いますけど、きっと獣王様も聖剣は預けてくれると思います~」
「それがいいな……」


聖剣となると非常に強力な兵器ではあるが、扱える者がいなければただの宝の持ち腐れであり、レノはジャンヌが告げていたある仮説を思い出す。



――彼女曰く、聖剣に認められた「選定者」だけが聖剣の力を引き出せると世間一般では信じられているが、実際は全ての聖剣に装備されている「聖光石」と呼ばれる特殊な魔石が関係していると思われる。聖光石は元は魔力が強い人間の身体に極稀に生まれる聖石を加工した物であり、基となった聖石の人間の子孫、あるいは親族が聖光石の力を引き出せることが可能であり、だから先代のレーヴァティンの所有者の母親を持つジャンヌは、彼女の血を受け継いだ彼女ならばレーヴァティンを扱えると確信していた(レノの場合はセンリから渡された聖石を長時間肌身離さず所有していたため、彼の魔力の影響を受けて聖石の性質がへんかし、自分の者へと変換させたと思われる)。



ヨウカが所有しているカラドボルグにも聖光石を嵌める翡翠型の窪みが存在し、レノは自分の所有しているカリバーンを確認する。恐らくはカリバーンに嵌め込まれているこの聖光石を埋め込めば、もしかしたらこのカラドボルグも扱えるようになるかもしれないが、今の所は試す必要はない。


「それにしても……アルト達はいつ戻ってくるのだ? ここから獣人族の都市まで距離があるとはいえ、もうそろそろ戻ってきてもおかしくはないだろう」


数日前に飛行船で都市に出発したアルト達だが、予定ならば2日もせずに都市に到着し、こちらに向けて戻ってきてもいい頃のはずだが、どうして未だに何の連絡もないのか。


「こっちに戻ってくる手段が無いのかな?」
「いや、僕の飛行船がある限りはそれはない。空を移動する限りは道中で襲われるとは考えにくし……」


基本的にこの世界には空を飛べる魔物は少ない。グリフォンやペガサス、嵐水竜のような竜種は存在するが、どれもが非常に希少種であり、滅多に遭遇するはずがない。また、空を移動する分に山や森を迂回する必要はないため、ホノカの飛行船よりも早い乗り物はこの世界には現在存在しない。


「ところでこの大迷宮はどうする? レノが念のために出入口を封印したが、あの結界はどれほど保つ?」
「解放術式の魔力を使用してまで組んだ魔方陣だから、そう簡単には壊されないと思うけど……」


現在の獣人族の大迷宮はレノが出入口に通路に巨大な防御魔法陣を仕掛けている。大幅に魔力を注ぎ込んで形成したため、六芒星どころかアイギス(最高ランク)級の硬度を誇る結界によって出入口は閉鎖されているが、再び刀狼のような化物が出現すれば防げる保証はない。

会話の最中にレノ達は洞窟から抜け出し、外で待機していた調査部隊の者達と合流する。外部では特にい異変は生じておらず、これで一応は大迷宮の調査も終えた事になるが、結局どうして魔獣が出現しているのか、そもそも何の目的で生み出されたのかも判明しなかった。


(こいつをベータに見せたらなにか分かるかな……)


今回の戦利品は「カラドボルグ」だけではなく、レノは撃破した守護者から入手したユニットを確認する。今回は両手の拳に装着されていたユニットと、頭部に取り付けられていたサングラスのような機器を回収している。

守護者は打ち倒した時点で既に事切れているらしく、レノの攻撃で死亡したわけではないようであり、電池が切れたように動かない。あのまま放置するのもどうかと思ったので適当に墓を作ってやったが、いずれはベータかデルタを引き連れて調査する必要があるかも知れない。


「ん? あれ?」
「なんだ……?」
「わふっ……なにか聞こえてきます?」
「どうした3人とも?」


砦に帰還する途中、レノとライオネルとポチ子が立ち止まり、リノンが不思議そうに語り掛けると三人は周囲を見渡す。


「何の音だ?」
「空からか……?」
「音?」


三人の耳には何かが聞こえ、続けて他の獣人族の者達も気が付いたのか周囲を見渡す。彼等は人間よりも遥かに聴覚が発達しており、異変に気付く。


「音? 何も聞こえないが……」
「いえ……確かに聞こえます」
「ヨウカはどうだい?」
「私は目はいいと思うけど、耳はそんなに……あ、聞こえた」
「聞こえるの⁉」


ヨウカも耳を澄ませると確かに奇妙な音が聞こえ、彼女は空を見渡すとすぐに目を見開く。方向的には獣人族の都市が存在する方角であり、何か見つけたのかとレノ達も視線を向けると、


「あれは……フライングシャーちゃん‼」
「いや、フライングシャーク号だよ?」
「シャーちゃんがこっちに向かってきてるよ‼」
「おおっ……迎えが来たのか‼」
「やっと帰れるんですね~」


こちらに向かって空を飛ぶ巨大な鮫を発見し、レノ達は笑みを浮かべるがすぐに異変に気が付く。どういうことかこちらに向かっているフライングシャーク号の周囲には無数の粒が存在し、すぐにそれが魔物だと判明する。


「あれは……グリフォンだと⁉ どうしてこんな場所に⁉」
「しかも、100や200じゃないぞ‼ いったい、どんだけいるんだよおい⁉」
「飛行船が襲われている⁉」
「ぼ、僕の船がぁっ‼」
「お、落ち着いてホノカちゃん‼」



――飛行船の周囲には無数のグリフォンが存在し、飛行船を襲撃していた。フライングシャーク号は真っ直ぐに移動しながらも反撃を試みており、各砲台から砲弾を発射していた。



ドドォンッ……‼ズドォオッ……‼



この距離からでも砲撃の音が聞こえるようになり、どうやらレノ達が最初に聞いた音は砲撃音だっらしく、グリフォン達を吹き飛ばすが、圧倒的な数の暴力でどんどんとフライングシャーク号は損傷を受けていた。
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