種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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大迷宮編 〈前半編〉

最期の試練

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レノ達は通路を抜け出し、四番目の通路へと移動する。そしていつも通りに色違いの煉瓦に鍵穴を差し込むため、レノが銅製の鍵を握りしめる。


「皆、準備は良い?」
「ああ」
「うむ」
「……YES」
「1人だけやたらと発音が良い気がする」


全員の確認を取り、レノは銅製の鍵を煉瓦の中に挿し込んだ瞬間、星形の魔方陣が発光する。何が起きるのかと身構えていると、よく観察すれば星型の魔方陣には見覚えがあり、レノも何度か使用した事がある「星形魔方陣」と呼ばれる転移型の魔法陣だった。


カッ‼


凄まじい閃光が通路に走り、レノ達の目が眩むと彼等の身体が浮き上がる感覚に襲われ、流れ星の如く全員が通路を移動する。流れ星の光の奔流に飲み込まれながら、そのまま地面に着地する。


「くっ……ここは?」
「転移、か?」
「……見て」


レノ達は瞼をゆっくりと開くと、そこには今までとは違った雰囲気の空間が広がっており、何処となく見覚えがある光景が広がっていた。


「ここは……」
「闘技場?」


眼の前に存在するのは古代ローマ風のコロッセウムを意識した構造の広間が円形状に広がっており、中央部には剣乱武闘の闘技場のような石畳の試合場が存在しており、中央部には人が存在した。


「あれは……」
「守護者(ガーディアン)か‼」
「あれが守護者か‼」


レノとリノンが大きく反応し、試合場の中心部には腕を交差させた状態で待ち構えるアンドロイドが存在した。王国領土の大迷宮に存在した守護者と瓜二つの容姿であり、違いがあるとすれば王国の迷宮に存在した個体は両腕にトンファー型の武装は施されておらず、変わりに両拳にボクサーのグローブを想像させる機器を取り付けていた。

守護者は動く気配はなく、まだ機能が停止しているのかレノ達は慎重に試合場に近付く。試合場まで3メートルという距離まで縮めると、守護者の身体から駆動音が鳴り響く。


『……生体反応を感知、ようこそ勇者よ』


守護者はゆっくりと瞼を開き、レノ達に視線を向ける。急に襲い掛かる様子はなく、何かを確かめるように全員を見据え、


『人型種4人、クローン種1人、猫型生物1匹確認』
「おい、貴様俺の事を何て言った?」
『よくぞ参られた勇者達よ。宝物庫の鍵を欲しければ、私を倒すがいい』


ライオネルの発言を無視しながら、守護者は芝居がかった台詞を吐く。すぐに彼の胸元の装甲が解放され、内部から「ダイヤモンド」で形成された鍵を取り出す。どうやら最後の通路が宝物庫へと繋がるらしく、もしかしたらこの場所が最後の試練の場なのかもしれない。


『七星剣「雷帝」を入手したければ私を倒し、この鍵を入手するがいい。但し、私がお前たちを打ち倒した際には全ての試練はリセットされる』
「雷帝?」
「りせっとだと?何を言っている……?」


新しく出てきた「七星剣」という単語にレノは首を傾げるが、守護者が告げたリセットという言葉はだいたいの予想が付く。恐らく、ここでレノ達が敗退した場合はここまで突破した試練が「最初」からになるのだろう。

本物の旧世界のゲームのような展開だが、実際にこの場所は現実世界のRPGのダンジョンを基に生み出されていると考えればそれほど可笑しくはない。


『さあ、勇者よ。上がってくるがいい』
「1人で戦う気か?」
『だが、この試合場の規則は一対一だ。もしも外部から支援があった場合、即刻に私の自爆装置が発動してお前たちを焼却する』
「おいこら」
「ここまで来て1人で戦えというのか……」


守護者とは一対一の戦闘で勝利しなければならないらしく、当然ながら一番戦闘力が高いレノが必然的に上がるしかない。他の面子では相性が悪く、ここは彼に任せるしかない。


「じゃあ、行ってくるよ」
「気を付けろ。奴は強いぞ……全く気配が感じられん」
「半分は機械だからじゃない?」


レノは試合場に上がると、守護者はまるで武闘家のように構え、現実世界の武道のデータでも記録しているのか隙が無い。


「……来い」


声音が変化し、レノは相手が本気になった事を悟り、自分も構える。お互いに向き合い、拳を握りしめると、2人は同時に動き出す。


「撃雷‼」
「インパクト‼」



――ドォオオオオンッ‼



レノの風雷を纏った右拳と、守護者の金属製の拳が衝突し、衝撃波が走る。その勢いは凄まじく、2人はお互いに吹き飛ばされる。


「ぐぅっ……⁉」
「レノ⁉」


右拳を抑え、レノは間違いなく先ほどの一撃で骨に罅が入ったことを確信する。想像以上の衝撃が拳を合わせた瞬間に走り、ただ殴られただけではこうはならない。


「ブースター展開」


ゴォオオオオッ‼


「せ、背中から火が噴いたぞ⁉」
「……ちょっと格好いい」
「いや、デルタさんも同じことが出来たんじゃないか?」


守護者は背中から飛行ユニットを展開し、吹き飛ばされた勢いを殺し、そのまま右拳を握りしめる。想像以上の衝撃だったが、拳自体は無傷であり、そのまま距離があるにも関わらずに拳を放つ。


「インパクト・ショット」



ドォオオオオンッ‼



アルトのデュランダルのように衝撃波が拡散し、レノの身体に襲い掛かる。彼はそのまま吹き飛ばされ、何とか立ち直る。


「くっ……厄介だな、あの手」


衝撃波を避ける事は難しく、レノは右手を抑える。あの拳に触れるのは危険であり、レノは左手を構える。


「紫電砲‼」


ズドォオオンッ‼


レーザーのように放出された紫の雷が守護者に放たれ、相手は直撃し、そのまま吹き飛ばされる。


「やったか⁉」
「いや、まだだ‼」


リノン達が歓声をあげるが、吹き飛ばされた守護者は身体中に電流を纏いながらも着地し、そのままレノを睨み付ける。


「高圧電流確認……殲滅モードに移行」


ガシャンッ‼


両拳をレノに向け、そのまま守護者はさらに巨大な衝撃波を放つ。その威力は凄まじく、石畳が吹き飛ばされる程であり、レノは肉体強化を発動させて両腕を交差する。



ドォオオオオンッ‼



「ぐあっ……⁉」


そのままレノは衝撃波に吹き飛ばされ、試合場から放り出されるが、足元に嵐を集中させ、


「瞬脚……‼」


ダァンッ‼


「落雷‼」


そのまま空中を駆け出し、右手に電撃を帯びると守護者に向けて振り下ろす。その瞬間に電撃が放たれ、守護者に放たれる。


ドガァアアアンッ‼


「うぐっ……‼」


守護者の全身に雷が迸り、膝を着くがそれでも左手を向け、


「インパクト・ライフル」


ズドォオンッ‼


「あぐっ⁉」
「……レノ‼」


小規模の衝撃波が弾丸のように放たれ、レノの右足の太腿を貫く。彼のそんな姿にコトミが悲鳴を上げるが、レノはもう片方の足を動かすと、


「雷、斧‼」



ドゴォオオオオンッ‼



巨大な電撃を射出し、守護者は回避しようとするが、


バチィイイイッ……‼


「ユニット損傷……⁉」


今までのレノの雷撃の損傷が蓄積されていたのか、背中のブースターが展開せず、そのまま天から降り注ぐ雷に飲み込まれた。


ズドォオオオンッ!!


「がぁああああああっ……⁉」
「まともな悲鳴を上げたな……」


守護者が来るし身悶える中、レノは左拳を握りしめ、一気に魔力を注ぎ込む。今日最後の一撃を放つため、レノは拳を振りかぶり、守護者も最後の意地なのか両拳を突き出し、



「インパクト……‼」
「嵐王撃‼」



――ドゴォオオオオンッ‼



最大出力の衝撃波と竜巻が衝突し、石畳の試合場が吹き飛ばされ、観客席にいたリノン達も悲鳴を上げる。それほどまでに凄まじい突風が生じるが、



「あぁあああああっ‼」



ズゥウウウンッ‼



「かはぁっ……⁉」



レノの左拳が守護者の胸元に叩き込まれ、装甲を破壊して吹き飛ばした。
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