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大迷宮編 〈前半編〉
長老会
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「お、そうだ。この武器はゴンちゃんのお土産に持って行こう」
「ず、ずっと持ち運ぶ気なのか?」
「だって勿体ないし……」
ソフィアは黄金の鉞を肩に担ぎ、上手く加工すればゴンゾウが剣乱武闘で壊した金棒の新しい武器になり、そのままソフィアの姿で移動を開始する。
「ねえ、ホノカちゃん。もう行こうよ~」
「駄目だ‼ほら、もう少しだけ持てるだろう⁉ポチ子君も手伝って‼」
「わ、わふぅっ⁉」
「何をしてるんですか貴女方は……」
ホノカは背中にゴールド・ゴーレムの残骸を背負い、その後ろには彼女よりも巨大な袋を背にしたヨウカと、お手製のリュックに勝手に黄金の残骸を突っ込まれて慌てふためくポチ子の姿があり、どうやら限界まで持ち帰るらしい。
「はっ……⁉ こ、これは‼金色に光り輝く玉‼黄金玉だな‼」
「テンション高いな……それはゴーレムの核みたいだね」
遂にゴールド・ゴーレムの核と思わしき球体を見つけ出し、ホノカは鼻歌交じりに自分の小袋に仕舞い込む。ゴーレムの核は非常に高値で取引されており、これだけでも相当な額になるだろう。嬉々としてゴーレムの残骸を回収するホノカに呆れる一方、ソフィアは視線を感じて振り向くとそこには鋭い視線で見つめてくるミアの姿があり、
「……先ほどから気になっているのですが、どうしてソフィア大将軍がここにいるのですか?それとレノ様は一体どこに?」
「「あっ」」
すぐに全員がミアだけがソフィアの正体を知らない事に気が付き、視線が彼女に集まる。どう説明すればいいのか考え込み、森人族にとって「性別変化」できるハーフエルフは断罪すべき存在なのだ。
――まだレノが子供の頃、彼は深淵の森に住んでいた時期があり、当時の族長であるムメイは彼を表面上は受け入れた。森に住んでいたエルフ達はハーフエルフである彼を疎んじていたが、それでも手を出すような行為は控えていた。
しかし、レノが狩猟の特訓中に魔法の訓練を兼ねてソフィアの姿に変化した際、それを目撃した人物(恐らくムメイの差し金)によって正体を知られてしまい、暴行を受けてしまう。普通のハーフエルフよりも性別変化の能力を持ったハーフエルフは忌み嫌われており、目の前のミアも恐らく他のエルフ同様にソフィアに対して嫌悪感を抱いているのだろう。
「……まさか、レフィーア様と親しくしている貴女が性別変化の能力まで持っているなんて……」
「……それが問題あるの?」
「大有りです‼」
ミアは長剣に手を伸ばし、今にも抜き放ちかねない殺気を放ち、慌ててそれを見た周囲の人間達が止めに入る。
「ま、待ってよ‼ソフィアたんはすっごくいい子だよ⁉どうして喧嘩するの⁉」
「退いて下さい巫女姫様‼私はその人を許すわけにはいかないのです‼邪魔をするというのならば……‼」
「君は自分で何を言っているのか意味が分かっているのかい?」
ヨウカがソフィアを庇うように前に出ると、ミアは苛立ちながら彼女を退かそうとするが、その後ろからホノカが彼女の肩に手を掛け、
「もう一度聞くぞ、今君は何をしようとした?聖導教会の巫女姫であるヨウカに何をしようとした?」
「っ……‼」
「森人族と聖導教会は古の時代から同盟を結んでいるはずだ。そして、聖導教会の頂点に立つ巫女姫には何があろうと一介のエルフでしかない君が手を出す事の意味を分かっているのか?君の安易な行動で森人族は聖導教会と戦争を引き起こす気なのかい?」
「……申し訳ありません」
冷静さを取り戻したのかミアは剣を収め、ヨウカに深々と頭を下げる。その光景に全員が安堵の息を吐くが、それでもミアはソフィアを睨み付ける。
「ですが、巫女姫様が庇われようと私は彼女を……いえ、彼を許すわけにはいかないのです。あの魔王と同じ能力を持つ相手を見過ごす事は出来ません」
「可笑しなことを言うね君は。その君たちが非常に憎んでいる魔王を倒したのは誰だと思ってるんだい?」
「確かに雷光の英雄が魔王を討ち取ったというのは有名です。ですが、我々はその場面を目撃したわけでもなく、ましてやこの時代に出没した魔王が1000年前に滅んだ魔王と同一人物など信じられません‼彼が1000年前に現れた魔王と同じ能力を宿している以上、危険を見過ごすわけにはいかないのです‼」
レノが魔王討伐大戦で魔王(リーリス)を打ち破ったのは有名ではあるが、正直に言えば彼が魔王を打ち倒した証拠はなく、魔王の亡骸もアイリィと共に消失してしまい、彼女が所有していたロンギヌスもレノが内密に回収したため、はっきりとした証拠を世間に知らしめているわけではない。
それでも剣乱武闘の活躍によって彼が魔王を打ち倒せる実力を持っていたのは証明されたが、あの大会自体が何か仕掛けが施されているのではないかと疑う輩も存在し、未だにレノの実力を疑う者も多い。
ミアと彼女の部隊の戦士たちもレノの真の実力を疑っており、だからこそ先日のように訓練場で彼の力を見極めようとしたり、本当に魔王を打ち倒せる実力者なのかを調べようとしたが、よりにもよってこの状況で彼の能力が発覚したのは不味かった。
「第二の魔王になる可能性がある存在は排除せよ……それが私達の掟なのです‼」
「笑わせないでくれ。それならどうして君たちはあの戦争に参加しなかった?」
ホノカの発言にミアは顔色を変え、彼女が言っているのは間違いなく今から二年前に起きた「魔王討伐大戦」である。あの時はバルトロス王国軍と魔人族を従えた魔王が対面し、その際に王国は確かに他種族からの救援を求めた。
当時は人魚族も魔人族同様に魔王に操られており、巨人族と獣人族は種族代表であるダンゾウと獣王が重傷を負っていたために混乱していたが、森人族に関してはレフィーアは健在であり、十分な余力が存在したにも関わらず、彼等から送り込まれてきたのは補給物資だけであり、ただの1人も援軍は送られてこなかった。
「正直に言えばあの時は君たちが人間が嫌いだから援軍を寄越さないのかと考えた。だが、魔王という存在をそれほどまで恐れている君たちがどうしてちんけな誇りを優先して援軍を拒んだのか、普通に考えれば前回の戦争では各種族同士が協力しなかったからこそ敗北したのをよく知っているはずだろう?なのにあの時も協力せずにただ傍観を決め込むのは可笑しいんじゃないのかい?」
「言わせておけば……私達とて危険は承知していました‼ですが、あの時は長老会が……‼」
「……長老会?」
「あっ……⁉」
ミアは自分が何を口走ったのかを気が付き、慌てて口を押える。レノは「長老会」という単語に聞き覚えがあり、以前にレフィーアが教えてくれた森人族の中でも権力が高い者達の事だ。
――嘗て、レノを襲撃した「緑影」彼等は本来は長老会と呼ばれる組織に従う者達であり、主に森人族という種族にとって邪魔な存在を排除するために生み出された暗殺部隊である。この長老会は非常に特別な組織であり、種族代表であるレフィーアも彼等の意見を無下には出来ない。
名前の通り、長老会は各領地に住む長老達で構成された組織であり、彼等は独自の判断で「影」を動かして森人族の邪魔となる存在を排除する。レノも過去に何度か影を送り込まれており、どうやら魔王討伐大戦の際も彼等が動いた様子がある事が発覚した。
「ず、ずっと持ち運ぶ気なのか?」
「だって勿体ないし……」
ソフィアは黄金の鉞を肩に担ぎ、上手く加工すればゴンゾウが剣乱武闘で壊した金棒の新しい武器になり、そのままソフィアの姿で移動を開始する。
「ねえ、ホノカちゃん。もう行こうよ~」
「駄目だ‼ほら、もう少しだけ持てるだろう⁉ポチ子君も手伝って‼」
「わ、わふぅっ⁉」
「何をしてるんですか貴女方は……」
ホノカは背中にゴールド・ゴーレムの残骸を背負い、その後ろには彼女よりも巨大な袋を背にしたヨウカと、お手製のリュックに勝手に黄金の残骸を突っ込まれて慌てふためくポチ子の姿があり、どうやら限界まで持ち帰るらしい。
「はっ……⁉ こ、これは‼金色に光り輝く玉‼黄金玉だな‼」
「テンション高いな……それはゴーレムの核みたいだね」
遂にゴールド・ゴーレムの核と思わしき球体を見つけ出し、ホノカは鼻歌交じりに自分の小袋に仕舞い込む。ゴーレムの核は非常に高値で取引されており、これだけでも相当な額になるだろう。嬉々としてゴーレムの残骸を回収するホノカに呆れる一方、ソフィアは視線を感じて振り向くとそこには鋭い視線で見つめてくるミアの姿があり、
「……先ほどから気になっているのですが、どうしてソフィア大将軍がここにいるのですか?それとレノ様は一体どこに?」
「「あっ」」
すぐに全員がミアだけがソフィアの正体を知らない事に気が付き、視線が彼女に集まる。どう説明すればいいのか考え込み、森人族にとって「性別変化」できるハーフエルフは断罪すべき存在なのだ。
――まだレノが子供の頃、彼は深淵の森に住んでいた時期があり、当時の族長であるムメイは彼を表面上は受け入れた。森に住んでいたエルフ達はハーフエルフである彼を疎んじていたが、それでも手を出すような行為は控えていた。
しかし、レノが狩猟の特訓中に魔法の訓練を兼ねてソフィアの姿に変化した際、それを目撃した人物(恐らくムメイの差し金)によって正体を知られてしまい、暴行を受けてしまう。普通のハーフエルフよりも性別変化の能力を持ったハーフエルフは忌み嫌われており、目の前のミアも恐らく他のエルフ同様にソフィアに対して嫌悪感を抱いているのだろう。
「……まさか、レフィーア様と親しくしている貴女が性別変化の能力まで持っているなんて……」
「……それが問題あるの?」
「大有りです‼」
ミアは長剣に手を伸ばし、今にも抜き放ちかねない殺気を放ち、慌ててそれを見た周囲の人間達が止めに入る。
「ま、待ってよ‼ソフィアたんはすっごくいい子だよ⁉どうして喧嘩するの⁉」
「退いて下さい巫女姫様‼私はその人を許すわけにはいかないのです‼邪魔をするというのならば……‼」
「君は自分で何を言っているのか意味が分かっているのかい?」
ヨウカがソフィアを庇うように前に出ると、ミアは苛立ちながら彼女を退かそうとするが、その後ろからホノカが彼女の肩に手を掛け、
「もう一度聞くぞ、今君は何をしようとした?聖導教会の巫女姫であるヨウカに何をしようとした?」
「っ……‼」
「森人族と聖導教会は古の時代から同盟を結んでいるはずだ。そして、聖導教会の頂点に立つ巫女姫には何があろうと一介のエルフでしかない君が手を出す事の意味を分かっているのか?君の安易な行動で森人族は聖導教会と戦争を引き起こす気なのかい?」
「……申し訳ありません」
冷静さを取り戻したのかミアは剣を収め、ヨウカに深々と頭を下げる。その光景に全員が安堵の息を吐くが、それでもミアはソフィアを睨み付ける。
「ですが、巫女姫様が庇われようと私は彼女を……いえ、彼を許すわけにはいかないのです。あの魔王と同じ能力を持つ相手を見過ごす事は出来ません」
「可笑しなことを言うね君は。その君たちが非常に憎んでいる魔王を倒したのは誰だと思ってるんだい?」
「確かに雷光の英雄が魔王を討ち取ったというのは有名です。ですが、我々はその場面を目撃したわけでもなく、ましてやこの時代に出没した魔王が1000年前に滅んだ魔王と同一人物など信じられません‼彼が1000年前に現れた魔王と同じ能力を宿している以上、危険を見過ごすわけにはいかないのです‼」
レノが魔王討伐大戦で魔王(リーリス)を打ち破ったのは有名ではあるが、正直に言えば彼が魔王を打ち倒した証拠はなく、魔王の亡骸もアイリィと共に消失してしまい、彼女が所有していたロンギヌスもレノが内密に回収したため、はっきりとした証拠を世間に知らしめているわけではない。
それでも剣乱武闘の活躍によって彼が魔王を打ち倒せる実力を持っていたのは証明されたが、あの大会自体が何か仕掛けが施されているのではないかと疑う輩も存在し、未だにレノの実力を疑う者も多い。
ミアと彼女の部隊の戦士たちもレノの真の実力を疑っており、だからこそ先日のように訓練場で彼の力を見極めようとしたり、本当に魔王を打ち倒せる実力者なのかを調べようとしたが、よりにもよってこの状況で彼の能力が発覚したのは不味かった。
「第二の魔王になる可能性がある存在は排除せよ……それが私達の掟なのです‼」
「笑わせないでくれ。それならどうして君たちはあの戦争に参加しなかった?」
ホノカの発言にミアは顔色を変え、彼女が言っているのは間違いなく今から二年前に起きた「魔王討伐大戦」である。あの時はバルトロス王国軍と魔人族を従えた魔王が対面し、その際に王国は確かに他種族からの救援を求めた。
当時は人魚族も魔人族同様に魔王に操られており、巨人族と獣人族は種族代表であるダンゾウと獣王が重傷を負っていたために混乱していたが、森人族に関してはレフィーアは健在であり、十分な余力が存在したにも関わらず、彼等から送り込まれてきたのは補給物資だけであり、ただの1人も援軍は送られてこなかった。
「正直に言えばあの時は君たちが人間が嫌いだから援軍を寄越さないのかと考えた。だが、魔王という存在をそれほどまで恐れている君たちがどうしてちんけな誇りを優先して援軍を拒んだのか、普通に考えれば前回の戦争では各種族同士が協力しなかったからこそ敗北したのをよく知っているはずだろう?なのにあの時も協力せずにただ傍観を決め込むのは可笑しいんじゃないのかい?」
「言わせておけば……私達とて危険は承知していました‼ですが、あの時は長老会が……‼」
「……長老会?」
「あっ……⁉」
ミアは自分が何を口走ったのかを気が付き、慌てて口を押える。レノは「長老会」という単語に聞き覚えがあり、以前にレフィーアが教えてくれた森人族の中でも権力が高い者達の事だ。
――嘗て、レノを襲撃した「緑影」彼等は本来は長老会と呼ばれる組織に従う者達であり、主に森人族という種族にとって邪魔な存在を排除するために生み出された暗殺部隊である。この長老会は非常に特別な組織であり、種族代表であるレフィーアも彼等の意見を無下には出来ない。
名前の通り、長老会は各領地に住む長老達で構成された組織であり、彼等は独自の判断で「影」を動かして森人族の邪魔となる存在を排除する。レノも過去に何度か影を送り込まれており、どうやら魔王討伐大戦の際も彼等が動いた様子がある事が発覚した。
応援ありがとうございます!
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