種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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大迷宮編 〈前半編〉

迷宮の異変

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「紫電砲‼」


ズドォオオオンッ‼


『ウォオオオオンッ――⁉』


前方の通路に群がる魔獣達に掌を向け、レノは紫色のレーザーを想像させる電撃を放射する。魔獣達は一撃で吹き飛ばされ、そのまま灰と化す。


「す、すげぇっ……」
「おい‼呆けている場合じゃねえだろ‼戦いやがれ‼」
「お、おう‼」
「ギャウンッ⁉」


後方の通路ではダイア達が善戦し、ツルハシや棍棒で足元の魔獣達をなぎ倒す。流石は巨人族の強者であり、魔獣達は一気に吹き飛ばされ、流石に相手も警戒を始めて距離を取る。


「グルルルッ……‼」
「ウォンッ‼」
「うぉん、じぇねえっ‼鳴くならワンと鳴け‼ワンとよぉっ‼」


ドゴォンッ‼


ダイアはツルハシを振り抜き、魔獣達を壁際に叩き付けて絶命させる。大会以降も鍛錬は怠ってはいなかったようであり、前の時よりも筋肉が増加している。他の巨人族達も負けずに奮戦を行い、次々と魔獣を打ち倒す。


「ガァアアアッ‼」
「しつっこい……‼」


バチィイイイッ……‼


その間にもレノは攻撃を仕掛けてきた魔獣を回避すると、右足に電撃を迸らせ、一気に蹴り上げる。


「雷斧‼」



ズドォオオオンッ‼



『ギャワァアアアアンッ――⁉』



右足から放出した巨大な雷によって大多数の魔獣は悲鳴を上げて消し飛び、一気に通路が開ける。さらに駄目押しとばかりにレノは掌を地面に押し付け、


「地雷‼」



――ドォオオオンッ‼



「ガァアアッ⁉」
「ギャンッ⁉」
「ガハァッ⁉」
「うおおっ⁉ 地面から雷が⁉」


ダイア達の前に立っていた魔獣達を地面に流し込んだ電撃で一掃し、最後の一撃とばかりにレノは右腕に雷撃を発動させ、剣乱武闘でホムラとの戦闘で偶然覚えた技を試す。


「爆雷‼」


ドゴォオオオンッ‼


『ギャオォオオオンッ⁉』


拳を叩き付けた瞬間、電撃が地面に拡散して激しい土煙と共に振動が発生する。その衝撃で遠方に離れていた魔獣達も吹き飛ばす。ホムラとの戦闘では目眩まし程度の効果しかなかったが、魔獣達には十分効果があり、これで通路に出現した魔獣達は全て一掃したことになる。


「お、終ったのか……?」
「凄いなあんた……もう、あんた1人で何とかできるんじゃないのか?」
「流石にそれは無理……今度こそ帰るよ」
「お、おう‼」


レノは額の汗を拭い、流石に魔獣との連戦で疲労した。即座にダイア達を引き連れて転紙を発動させ、大広間に向けて転移を開始する。




――だが、転移した大広間には誰も存在せず、十数分前までは存在したはずの調査部隊のメンバーが全員姿を消していた。




「これは……何が起きた?」
「お、おい……ここ最初の場所だろ?」
「他の奴等は何処にいるんだ?」
「み、見ろ‼血の跡だ‼」


周囲を見渡しても他の人間の姿は見えず、代わりに周囲には激しい戦闘の跡が残っており、無数の魔獣達の亡骸が転がっていた。幸いというべきか、隊員らしき人物の姿はなく、戦闘が起きたのは確かだが死亡者が出た可能性は低い。

レノは魔獣の亡骸を確認し、まだ殺されてからそれほど時間が経過した様子はなく、先ほどまでここで戦闘が行われていたのは間違いない。これまでの状況からだいたいの予想は可能であり、レノは先ほどの鐘の音を思い出す。


(……ここにも魔獣が現れたのか)


迷宮全体に響いたと思われる鐘の音を想像させる轟音が鳴り響いた後、今まで発見できなかった魔獣達が次々と迷宮中に姿を現した。恐らくはこの大広間にも無数の転移魔方陣が出現し、魔獣達が出現して調査部隊を襲撃してきたと考えるべきだろう。

結果としては状況から省みるに調査部隊の圧勝だったらしく、魔獣の亡骸しか存在しない事から勝利した事は間違いないらしいが、となると調査部隊は何処に消えたのか。


「……帰ったのか」
「はあっ⁉ マジかよ⁉」
「それ以外に考えられないしね」


レノ達は後方を確認すると、地上へと繋がる通路を見る。予想通り、レノ達のために置いて行ったと思われるランタンが放置されており、ご丁寧に壁際には文字が書き込まれていた。


『……晩御飯までにはもどってくるように』
「文章を書く時も最初は無言なのかあいつは」


恐らくはコトミが書いたと思われる文字を発見し、レノは溜息を吐く。人が苦労して戻ってきたにも関わらず、先に帰還している者達に文句を言いたい気分だが、彼等としてはレノを信用しての行動であり、常時襲われる危険性が高いこの場所で長居するのは危険な事も確かだが。


「しょうがない……帰ろうか」
「ちょ、調査はどうするんだよ?」
「まずは一旦戻って、情報を整理するんだと思う。急に現れた魔獣達によって負傷した人間もいるだろうし、多分今日の所はこれでお終いだよ」
「そ、そうか……まあ、俺はまだ戦い足りなかったがな‼」
「なら、1人だけ残ってもいいけど……」
「そ、それは別の機会にするぜ……おら、帰るぞ‼」
「あ、頭っ‼」
「待ってくれよぉっ‼」


ダイアが一足先にランタンを掴んで通路を駆け抜け、他の者達も後に続く。レノもすぐに彼等の後を追い、不意に立ち止まる。


「……今のうちに」


レノはその場に五芒星の防御魔方陣を書き込み、通路を塞ぐように展開させる。これならば仮に魔獣達が外に出ようとして来ても結界が阻み、万が一にも結界を崩壊させるほどの強力な個体が出現しなければ安全だろう。当然、もう一度この大迷宮を調査する際には解除する必要があるのだが。



「あ、でもこれだと逃げ遅れた人がいたら困るな……まあ、大丈夫だと思うけど」



念のために外に出た際は他の人間に迷宮内に逃げ遅れた人間がいないかを確かめる必要があり、その場合は瞬時に戻って結界を解除すればいいと判断すると、レノはダイア達に続いて地上に向けて帰還した。



――何事もなく無事に大迷宮の洞穴に辿り着くと、そこには地面にへたり込んだ調査部隊の人員と、隊長達に突っかかるダイアの姿が見えた。



「おい‼ 俺達を置いて逃げ帰るなんて何を考えてんだ‼」
「いや、本当にすまん……別に見捨てたわではないのだが…………」
「私が提案した事です。責めるのなら私だけを……」
「お、落ち着いて下さい~」


どうやら自分たちを残して先に帰還した事にダイアが激怒しているようであり、ライオネル達に言い寄っているらしく、その間にレノはリノン達の姿を探す。


「あ、レノさん‼」
「おおっ、無事に帰ってきたんだな‼」
「……お帰り」
「ただいま」


すぐに自分の部隊の皆を探し当て、ホノカとヨウカの姿が無いことに気付き、周囲を見渡す。


「怪我をした人がいたら私に言ってね。すぐに治すからね‼」
「え~治療薬~治療薬はいりませんか~」


ヨウカは自主的に負傷した人間の治療を行っており、ホノカはまるで売り子のように木箱を掲げながら中に入っている治療用のポーションを運んでいた。


「片方はともかく、もう片方は何してんの?」
「あ、ああ……万が一のために大量の治療薬を普段から用意しているらしい。ちなみに有料らしい」
「こんな時でも商売か……盗賊王の異名を持つ割には盗賊らしい事をしていない気がする」
「……実際、裏では商売王という仇名が付けられている」


ホノカのキャラクター性が未だに掴めず、とりあえず彼女は無視してレノは隊長達の元に戻る。やっとダイアも怒りが収まったのか、少し不機嫌そうではあるがライオネル達に巻物(地図)を渡す。それを受け取ると、大隊長のライオネルは地面にへたり込んでいる調査部隊の面々に向けて声をかける。


「……今回の調査はこれで引き上げるとする‼ 負傷している者はすぐに治療を行え‼ 砦に戻るぞ‼」


調査部隊は即座に大迷宮から砦の方へと移動し、洞穴には再び木の柵が取り付けられる。念のために確認した所、どうやらレノ達が最後の部隊だったらしく、大迷宮に取り残された者は1人も存在せず、一応は全員が無事に帰還した事になる。
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