種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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大迷宮編 〈前半編〉

砂漠の遺跡

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フライングシャーク号がアマラ砂漠を飛行してから数時間が経過し、レノ達は食堂で休んでいると、ホノカの部下である女性(基本的に彼女の側近は女性で統一されている)が到着を知らせてくる。


「ホノカ様、到着いたしました」
「そうかい……着陸の準備を」
「その……お言葉ですが、もう時間帯が……」


部下が水晶壁の窓に視線を向け、既に日が暮れ始め、周囲が夕焼けに染まっていた。ホノカもその光景を確認し、少しだけ考え込む仕草を行い、レノは首を傾げる。


「夜に着陸するのが問題なの?」
「言い忘れていたが、アマラ砂漠は夜を迎えると激しい砂嵐が発生するんだ。安全面を考えるならば交易都市に戻るのが一番なんだが……」
「だったら、俺だけが残って遺跡を調べようか?」
「え⁉危ないよレノたん⁉」
「別に平気だよ。この飛行船に転移魔方陣をマーキングしておけばいつでも戻れるし」
「ああ、なるほど。その手があったか」


ホノカは指輪を取り出し、剣乱武闘で彼女が使用していた魔水晶の指輪だった。後で聞いたところ、1つ1つの指輪がアトラス金貨に匹敵するらしく、彼女はあの大会で相当な費用を使用してホムラに挑んだらしい。


「そういう事なら僕も残ろうか。ヨウカは危険だから、ここで待機しているように」
「え~……」
「ホノカ様、我々はどうすれば?」
「君たちは何人か同行してくれ。万が一の場合を考え、飛行船はすぐに交易都市に向けて発ってくれ。それじゃあ、一先ずは一度着陸を……」
「その必要はないんじゃない? 俺が甲板の方から飛び降りて、転移魔方陣で迎えに来るよ」
「そうか、それは助かるよ」


レノは食堂の水晶壁の窓あら外の光景を確認し、確かにホムラの言う通り、砂漠の上に奇妙な建物が存在した。何故か見覚えのある形であり、放浪島で見かけた研究施設と同様にキューブ状の四角い建物が存在していた。


(あれは……やっぱり旧世界の研究施設か? )


まるで四角い黒いサイコロを想像させる形の建物に対し、レノは考え込む。間違いなく、放浪島で見かけた建物と同じ形状であり、恐らくは砂山に隠れているが地上に出ている部分以外にも地下に建物が存在するだろう。


(一先ずは調べてみるか……)


レノはゆっくりと食堂を離れ、甲板の方から飛行船を飛び降りる事にする。瞬脚を使用すればどれほどの高所であろうと着地には問題ない。ホノカの許可を貰い、一先ずは食堂に転移魔方陣を設置すると、レノは甲板に向けて移動した。



――数分後、飛行船から無事に砂漠の建物の元まで移動したレノは転移魔方陣でホノカとその配下十数名を転移させ、建物の前まで移動する。既に日は沈み始め、心無しか風が強まったように思える。間もなくこの砂漠に砂嵐が発生するのだろう。



「これが例の建物なんだが……何か分かるかい?」
「う~ん……」
「一応は私達の方も調べてみましたが、どういう事か出入口が見当たらないのです」
「だろうね」


放浪島のレノ達も最初は出入口が見当たらず、最初はどうすべきが悩んでいたが、ウルが建物が地面に埋まっている事に気が付いて地面を掘りだして出入口を見つけてくれた。


「多分、砂に埋まっていて分かりにくいけど相当に大きな建物だと思う。砂を掘り返せば出入口が見つかるかも」
「なるほど、何か知っているようだね」
「しかし……砂を掘り返すと言っても時間が掛かり過ぎます。ここはやはり、一度避難してから一晩待ち、人員を増加して調査すべきでは?」


ホノカの配下の言葉にレノは考え込み、確かに一理あるがこの建物を一刻も早く調べたい気持ちもある。もしかしたら内部にベータ達のような存在が眠っている可能性もあり、どうにかして調べられないか考える。建物の四方の何処かに出入口が繋がる場所が存在するのだろうが、それならば一気に調べる方法を試みる。


「よし……皆、少し下がってて」
「何をする気だい?」
「少し早めに砂嵐を呼び起こす」
「は?」


レノはそう告げると、安全な位置までホノカたちを下がらせ、右手に嵐の魔力で形成した球体を生み出す。



ダァンッ‼



そのまま瞬脚でレノは一気に上昇し、掌を翳す。


「撃嵐‼」



ギュオォオオオオッ‼



掌から竜巻が形成され、そのまま建物を飲み込む。突如として誕生した竜巻に砂が舞い散り、砂嵐が誕生する。そのまま竜巻は砂を吹き飛ばしながら建物を掘り起し、やがてある程度まで砂が吹き飛ばされたのを確認するとレノは竜巻の放出を中断する。


「な、なんという威力……⁉」
「流石は剣乱武闘の覇者……凄い」
「あの程度の事で驚いていたら、彼には付き合っていられないよ。どうやら目的を達したらしい」


砂嵐に巻き込まれない様に避難していたホノカの配下たちは驚きの声を耳にしながら、レノは地面に着地する。撃嵐によって掘り起こした建物を確認し、砂が吹き飛んだことでビルのような形になってしまった。


「随分と深いな……」


元から地上に出ていた部分だけでも10メートルは超えていたが、竜巻によって掘り起こした事によって3倍近くの建物が露わになる。外見はビルと酷似しており、一番底の方で出入口と思われる扉が見えた。


「これは魔法無しで降りるのはきついな……」
「それは任せてくれ。僕が転移で皆を移動させよう」
「気配を殺して後ろに立つな」


何時の間にか接近していたホノカにレノは呆れた声を上げ、彼女は建物を見下ろし、興味深そうに視線を向ける。この世界の住人である彼女にとっては初めて見る建築物であり、彼女はそのまま底を見下ろす。


「随分と埋まっていたな……それに砂嵐が起きればまた埋め尽くされるだろうね。早いうちに出入口を調べてみよう」
「風も強くなってきたし、俺が一度降りるよ」


レノはそのまま建物の底へ向けて落下し、瞬脚で着地の際に浮き上がって衝撃を殺す。目の前に存在する建物を確認し、出入口の扉を確認する。


「やっぱり、セカンドライフ社のマークか」


旧世界ではあらゆる分野に進出した大企業であり、レノの中に存在する「霧崎 雛」も彼等によって造り出された存在である。放浪島の研究施設も同じマークが刻まれており、レノは出入口の扉を確認する。


「また随分と簡素な扉だな」


放浪島の施設とは違い、扉には両開きのドアノブが設置され、どうして近代科学で造られたのにやたらと簡素な扉なのか疑問に抱きながらも手を伸ばし、寸前で手を止める。迂闊に触れれば何らかの罠が張ってある可能性も存在し、どうするべきか悩む。


「カリバーンがあれば破壊できるかもしれないけど……その前にホノカたちを迎えに行くか」


レノは建物の壁に転移魔方陣を書き込み、地上にいるホノカたちを迎え入れる準備を行う。砂地に転移魔方陣を書き込んでも風で簡単に紋様が乱されるため、建物に書き込む以外に方法はない。



――数十秒後、無事にホノカたちを建物の前まで呼び寄せる事に成功し、ホノカは若干興奮気味に建物を調べまわる。



「これは面白いね……一体、どんな素材で造られているのか気になるよ。先代の魔人王が纏っていた鎧の素材として使われていたというヒヒイロカネと同じなのかな?」
「さあ……それよりこの扉なんだけど」
「ああ、そう言えばどうして開けないんだい? もうそろそろ砂嵐が起きてしまうよ?」
「下手に触れても大丈夫かなって……」
「なるほど。罠を警戒しているのかい? だったら魔鎧とやらで全身を覆って開けてみればどうだい?」
「その発想は無かった」


確かにその方法ならば大抵の罠には対処できる。高圧電流だろうが、銃弾であろうが、レノの防御型の魔鎧ならば対処できるだろう。
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