種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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剣乱武闘 覇者編

魔剣の原点

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――全ての聖剣、武具系の聖遺物の誕生は主に原初の英雄が誕生した1000年前の時代に生み出されたと言われている。エクスカリバー、カリバーンなどは後期の時代に造り出された物も存在するが、それ等の類も元を辿れば1000年前に開発された聖剣を基に参考して生み出された代物であり、この世界の殆どの聖遺物は1000年前のバルトロス帝国や魔術教会が存在した時代に生み出されている。

ほぼ全ての聖遺物はあの原初の英雄であるアイルが生み出した物であり、彼女が発案した以外の聖遺物も同じ時代の研究者に開発されている。だが、聖剣とは似て非なる能力を持つ「魔剣」に関しては何時頃の時代に生み出されたのかは定かではない。

一説によれば聖剣を参考に生み出されたのが魔剣であり、今は滅ぼされたドワーフが生み出した代物とも言われている。しかし、結局のところは誰がどんな目的で生み出したのかは不明であり、その精製方法も不明。最初に歴史に登場したと言われる魔剣は「銀の英雄」が操る冷気を操る「氷華」そして軽量でありながら途轍もない切れ味を誇る「飛燕」が有名ではあるが、この二つの魔剣も出自は不明であり、使い手であるナナですらもこの二つの魔剣がどのような理由で生み出されたのかも知らず、彼女がどのような経緯で入手したのかも謎である(レミアの憑依で呼び出すのは彼女の全盛期の時代であり、過去や未来の記憶に関しては曖昧でナナ自身もどのような理由で魔剣を手に入れたのかもはっきりとは覚えていない)。



――だが、地下通路に表れたシュンは確かに自分が所有している自称魔剣の「雪奈」はナナが扱っていたという「氷華」の姉妹剣と告げ、確かにリノンの剣が触れた瞬間に刃が凍結して破壊された事から魔剣の類であることは変わりない。



リノンは自分の手元の剣を確認し、シュンの刃と衝突した部分のみが凍結された事に気が付き、ナナの氷華が周囲を凍らせるほどの冷気を常に放ち続けるのに対し、彼の魔剣は触れた個所を一気に凍結させる事が出来るようだった。


「……火炎剣」
「またそれですか?」


ボウッ‼


リノンは残された刃に炎を纏わせ、まるでレーザーサーベルのような高熱が発せられるが、シュンは動じた風もなく居合の体勢に入る。リノンは残された刃を確認し、居られたのは中腹部であり、ナイフよりは少し長い程度の刀身を確認し、彼の出方を伺う。


「では……行きますよ」


ダァンッ‼


リノンの視界にシュンが消え去り、彼女が目にも止まらない速度で動いたのかと一瞬錯覚したが、すぐに上空を見上げるとそこには通路の天井を足場にこちらに向けて剣を抜き放つシュンの姿があり、リノンは咄嗟に刃を放つ。


「はあっ‼」
「おっと」


ガァアアアンッ‼


シュンの刃とリノンの炎の刃が触れ合い、金属音が響き渡る。同時に周囲に火花と氷の礫が舞い、2人はお互いを通り過ぎて距離を取る。


「くっ……⁉」
「流石ですね……良い目をお持ちだ」


パリィイインッ‼


二度も自分の攻撃を受けた事にシュンが驚いた表情を浮かべ、レノでさえも見切るのが難しい速度の攻撃をリノンは凌ぐ。相当に優れた動体視力を持ち、流石は国王の専属騎士として名高い騎士と感心する一方、彼女の剣先が砕けた事に笑みを浮かべる。


(私の炎では防げないのか……⁉ )


リノンの火炎剣は火属性ではなく、さらに上の段階の炎属性で生成されており、彼女もこの数年で腕を上げていた。流石にホムラのような馬鹿げた威力を引き出せはしないが、彼女の炎は並大抵の氷属性の魔法であろうが溶解させる程の威力を誇るが、全身に炎を纏っていたにも関わらずに更に刃を氷結されて砕かれた事に動揺を隠せない。

シュンが使用している剣は魔剣で違いなく、普通の氷ならば蒸発させる自分の火炎剣が通用しない事に冷や汗を流し、リノンはさらに火力を引き上げる。


ゴォオオオオッ……‼


周囲に熱気が漂うほどに刃を纏う炎が発熱し、リノンは剣を構える。だが、シュンは拍子抜けとばかりに溜息を吐き、


「その程度の炎が……何の役に立つと思っているんですか‼」
「くっ⁉」


ガァアンッ‼


横薙ぎに刃を放ち、リノンはその速度に避けきれず、剣で受け止めるが刃が触れた瞬間、炎が掻き消えて刃が凍結する。直後に凍り付いた箇所が砕け散り、残された刀身は最早ナイフ程度しか残っていない。


「くっ……よくも私の剣を」
「これ以上、無駄な足搔きは止めたらどうですか?」


シュンが鞘に剣を戻し、居合の体勢に入る。リノンはこれ以上防ぐことは状況を悪化させることを理解し、その一方で打開策が見つからない事に歯を食いしばる。シュンの一撃を喰らう度に刃を破壊され、大切な家宝が無残な姿に変化した事に憤る暇もなく、リノンは後退る。


(攻撃を防げない以上は避けるしかないのは解っている……だが、あの速度を私に躱せるのか? )


彼が抜刀する度に向かってくる剣の速度は凄まじく、咄嗟に剣で受ける以外の行動は難しい。相手の動きを察知し、剣で防ぐ事が出来てもリノンには躱す手段はない。優れた動体視力でシュンの動きを見抜けても、彼の速度に追いつけるほどの身体能力は今のリノンにはない。

もしもこれがレノやソフィアならばシュンの一撃を躱すと同時に反撃も出来るだろうが、リノンには同じ真似は出来ない。彼女は剣一筋で今の地位に上がったのであり、魔法剣以外の魔法は不得手だった。


「そろそろ終わらせますよ……先ほどの係員が兵士を呼ぶ前に貴方を連れ去る必要がありますから」
「何が目的だ‼」
「目的? そうですね……強いて言うなら確かめてるんですよ。彼の正体を」


彼、という言葉にリノンの脳裏に昔は弟のように可愛がっていた幼馴染を思い出し、目つきを変える。自分を人質に何をする気なのかは分からないが、他の人間まで迷惑をかけるわけにはいかず、リノンは剣を握りしめる。


「……この技は試合にとっておくつもりだったが、そうも言っていられないな」
「何か秘策でも?」
「そういう事だ‼」


リノンは握りしめている剣の刀身から炎を吹き出し、そのまま勢いよく刃を振るう。その直後、まるでレノの「乱刃」のように三日月状の炎の刃が生み出され、狭い通路内を覆いつくす程の規模でシュンに放つ。


「火炎刃‼」



ドォオオオオンッ‼



「これは……お見事です」



シュンは迫りくる炎の刃に対し、剣を抜き放ち、そのまま切り裂く。放たれた炎は彼の持つ剣の刃に触れた瞬間に消散し、そのまま周囲に飛び散る。


「ですが、所詮はその程度……⁉」
「――陽炎」


しかし、炎を切り裂いた瞬間に何時の間にかリノンが目前まで迫っており、彼女は放出した巨大な炎の刃を盾にして接近を行い、そのまま折れた刀身に炎の刃を形成し、シュンに向かって放つ。


「はああっ‼」
「くっ……⁉」



ブォンッ‼



咄嗟にシュンは剣を振り抜くが、リノンの炎の刃は彼女の魔力によって形成された物であり、触れた瞬間に刃が通り抜け、当然ながらに氷結もしない。そのまま2人は剣を振り抜き、防御しようとしたシュンの刃は空振りし、リノンの火炎の刃は彼の胸元を貫く。



ドガァァアアンッ‼



「――爆炎剣」
「がはぁっ……⁉」


シュンの胸元に爆発が生じ、そのまま彼の身体が吹き飛ばされた――
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