種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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剣乱武闘 覇者編

クラーケン

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「ふんぬっ‼」
「いでででっ⁉」


ソフィアはロープを握りしめ、そのまま力ずくでダイアを引きずり出そうとするが、逆に彼の身体に巻き付いているロープが食い込んで悲鳴が上がる。それでも力を抜くわけにはいかず、ソフィアは倒れている彼の仲間達を叱咤する。


「へばってないで手伝って‼」
「お、おうっ……⁉」
「誰だか知らないけど、助かるぜ」


一度は諦めかけた男たちがロープに全員がしがみ付き、彼女と共に救い出そうと引き上げる。さらに丘の上からポチ子とゴンゾウが到着し、彼等も力を貸す。


「ここは任せろレノ‼」
「わふっ‼」
「歯で咥えた⁉」


ゴンゾウがソフィアの代わりにロープを握りしめ、ポチ子も手ではなく口でロープを噛みついて引っ張り上げる。ゴンゾウの剛力によってダイアが岸辺の方に引き寄せられ、ソフィアは彼の足元に絡みついている物の正体を確かめるために動き出す。


「遅れました」
『大丈夫か‼』
「私達も手伝いますわ‼」
「「同じく」」


遅れて他の面子も到着し、全員がロープを握りしめて引っ張り上げる中、ソフィアは湖の中に身を投じる。


「す、すまねえっ……⁉」
「いいから早く手を‼」
「お、おおっ‼」


ダイアは手を伸ばしてきたソフィアの腕を掴み、2人はロープを手繰り寄せて岸辺に戻ろうとするが、彼の足元に絡みついていた水中の影がソフィアの元まで伸びてくる。


ギュルルッ‼


「うわっ……」
「くそっ……またかっ⁉」


2人の両足に表面が滑ついた触手のような物が絡みつき、水中に引き込もうとしてくるが、ソフィアは敢えて水中に潜り込み、自分の足を絡みついてくる物の正体を見極める。


ゴボゴボッ……‼


(こいつは……イカ、いやタコか⁉ )


水中で自分の足に絡みついていたのは軟体動物の足であり、赤色の触手のような物がダイアとゴンゾウに絡み付いていた。ソフィアはそのまま足に手を伸ばし、引き離そうとするがヌメヌメと滑っていて掴み難く、それでいながら足元を拘束して引きずり込む力だけは強い。


(水中だから難しいけど……焼き切れろ‼ )


ジュワァアアアッ……‼


ソフィアは足元に魔鎧(フラム)を形成し、火属性の魔力で形成された魔力の鎧は高熱を発し、そのまま絡みつく触手を熱する。唐突な高熱に驚いたのか、ソフィアの両足を拘束していた触手は引き剥がれ、さらにダイアの足に絡みついていた触手も離れる。


「ぷはっ……今だ‼」
「うおおおおおっ‼」


水中から顔を出したソフィアの言葉にゴンゾウたちが反応し、そのまま勢いよくロープを引きずり出して2人を岸辺に一気に引き寄せる。


「ぶはぁっ‼ げほげほっ‼」
「大丈夫か⁉」
「私は平気だけど……どうやら本気で怒らせたかも」



ザパァアアアンッ‼



二人が引き寄せられたのと同時に水面に派手な水飛沫が上がり、先ほどの触手の主だと思われる巨大なタコが出現する。その巨体は少なくとも10メートルを軽く超えており、触手の数も普通のタコよりも遥かに多い。


「く、クラーケンだと⁉」
「嘘だろおい‼ ここは陸地だぞ⁉」
「クラーケン……海の魔物がどうして湖に」


ソフィア以外の者達は巨大タコの正体を知っているのか、唐突に出現した海中に生息するはずの生物の登場に驚愕し、全員が後退る。


「クラーケンって……ホノカの飛行船の参考にした魔物だったよね」
「本来は海中にだけ生息する種のはずですが……流石は放浪島ですね」


クラーケンは現実世界でも有名な海の魔物であり、北欧伝承の海の怪物である。この世界のクラーケンは巨大なタコかイカの形状をしており、湖に表れたのはタコ型のクラーケンだった。


「キュルルルッ……‼」
「え、鳴き声?」
「普通のタコと違い、クラーケンは鳴きますよ。というより、少し危険な雰囲気ですね」


鳴き声らしき音を吐きながら、クラーケンはどのようにあれほどの巨体を湖に隠していたのか全長を現し、全員がその大きさに呆気にとられる。


「おいおい……普通のクラーケンより二倍近くでかいじゃねえか⁉」
「ま、まさか……俺が乗っていたのはあいつの頭か⁉ どうりでぶよぶよした地面だと思っていたが……」


どうやらダイアが湖の中心部に進んでいた際、彼が乗り上げていたのは地面ではなく巨大なクラーケンの頭部だったらしく、その全長は20メートルを超え、さらには湖に沈んでいる分も考えればさらに巨体だと思われる。

現時点でも腐敗竜を超える巨体であり、どのようにこんな相手と戦えばいいのか分からず、全員が慌てて岸辺から引き上げる。


「逃げろ‼ あんな奴に勝てるわけがねえ‼」
「陸地ならあいつだってついてこれねえ‼」
「ちなみにイカ型のクラーケンの墨は美味な調味料として扱われてますよ」
「今、その豆知識はどうでもいいから‼」


全員が湖の前の丘の上を駆け上る中、クラーケンはゆっくりと身体を動かし、在ろう事か岸辺を乗り上げて移動してくる。


「お、おい‼ あいつ普通に陸に登ってきたぞ⁉」
「短時間なら陸地の上でも移動できると聞いていますが」
「そういう事は速く言えよ‼」


16人の参加者が30メートル近くのクラーケンに追跡され、何とか全員が丘の上まで避難するが、クラーケンは触手を蠢かして移動し、幸いにも速度は遅いが、すぐに丘の上に到達するだろう。


「あんなのに勝てるわけがねえ‼ 逃げるぞお前等‼」
「お、おう‼ それと、助けてくれてありがとな‼」


ダイアたちのグループは一足先に丘を駆け出し、そのままソフィア達はクラーケンを前にして立ち止まり、どう対処すべきか考える。


「……これほどの巨体、恐らく湖の主でしょうね」
「どうしますかソフィア様?」
「貴女が戦われるのならば私達も従います」
『分が悪いが……高いPを入手できる好機でもあるな』
「大型の魔物ならば、俺の出番だ」
「くぅ~んっ……焼けば食べられそうです」
「さっきいっぱいお肉食ってたやん……まあ、逃げきれる保証もないし、それにいい加減にムカついてきたから……やるとしますか」


ソフィアの言葉に全員が頷き、すぐに戦闘態勢に入る。デュラハンとゴンゾウは武器を構え、ポチ子は準備体操を行い、シュンは不敵な笑みを浮かべて剣の柄に手を伸ばし、従者の2人は彼の前に移動する。そしてソフィアは両手を確認し、ある方法を試すためにゴンゾウに視線を向ける。


「……よし、ゴンちゃん。力を貸して」
「どうする気だ?」
「えっとね……ごにょごにょっ……」
「むうっ……やったことはないが、試してみるか」


ゴンゾウの耳元でソフィアが囁き、周囲の者達が怪訝な視線を向けるが、作戦が決まったのかゴンゾウは金棒を握りしめ、まるで野球選手のようなフォームで構える。


「タイミングが大事だから……俺が合図したら遠慮なく振り切ってね」
「問題ない」
『おい、何を……来たぞ⁉』


ビュンッ……‼


デュラハンが彼等の行動を問い質す前にクラーケンが触手を放出し、そのまま横薙ぎでソフィア達を薙ぎ払おうとするが、


「今だ‼」
「ぬぅんっ‼」


触手が届く前にソフィアがゴンゾウの前で跳躍し、両足を魔鎧で武装させて彼の前に突きだすと、ゴンゾウはそのままソフィアの身体に目掛けて金棒を野球選手のように振り抜き、



ガキィイイイイインッ‼



そのまま魔鎧で武装したソフィアの足の裏に金棒を叩き込み、彼女はまるで野球ボールのように真っ直ぐに飛来し、そのままクラーケンの頭部に目掛けて突っ込んだ。
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