種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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剣乱武闘 覇者編

第一次予選 〈決着〉

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――ゴォオオオオオオオオオッ‼


無数のロックゴーレムが試合場に出現し、参加者たちは混乱に陥る。ゴーレムは魔物の中でも一際厄介な種であり、並の武器では彼等の硬い外殻を崩せず、仮に攻撃が通った所で胸元か腹部に存在する核を破壊しない限りは通用しないのだ。


「ゴァアアアッ‼」
「ひぃ⁉」
「こ、この野郎‼」


ガキィンッ‼


冒険者の1人が刃を振るうが、ゴーレムの外殻に弾き返され、逆に痺れて剣を落としてしまう。その間にもゴーレムたちは冒険者に襲い掛かり、彼等の身体を捕まえる。


ガシィッ‼


「ぎゃあぁっ⁉」
「は、離せっ‼」
「ゴォオオオッ……」


ブォンッ‼


そのままゴーレムは捕まえた冒険者を投擲し、投げ飛ばされた人間はリ試合場外の水堀に派手に水飛沫を上げて沈む。


『ご安心ください。このロックゴーレムは性格は大人しい方なので、人間を襲ったりはしないっす。その替わり、自分の縄張りに入ってきた存在は容赦なく投げ飛ばす習性があるので気を付けて欲しいっす』
「ど、何処が安心だ⁉」


カリナの実況が響く中、選手たちはゴーレムに捕まれば無事では済まなず、次々と水堀に放り投げられる。


「うざい」
「ゴァアアアッ⁉」


ズガァアアンッ‼


だが、ソフィアだけは近づいてきたゴーレムの外殻に拳をめり込ませ、そのまま岩の硬度を誇る身体に腕を貫き、核を握りつぶす。


パキィイインッ‼


「ゴァッ……」
「悪いけど、君たちの相手は今までに腐るほどやってきたからね」


何気にソフィアの人生でゴーレムとの戦闘は非常に豊富であり、地下迷宮に済んでいた頃はゴーレム・キングなどの地上には滅多に姿を現さない種とも交戦済であり、前回の大会でもサンド・ゴーレムを打ち倒している。


「ゴァアアアアッ‼」
「ゴォオオオオッ‼」
「ちぃっ‼ 舐めんじゃねえっ‼」
「アクアショット‼」


他の腕利きの冒険者もゴーレムを相手に奮闘し、巨人族は巨体を生かしてゴーレムと張り合い、魔術師はゴーレムが苦手とする水属性の魔法攻撃を行う。


「さてと……そろそろ終わりかな?」


ソフィアはミラークリスタルを確認し、既に参加者の数が「2500」を下回っている事に気が付き、あと少しで第一次予選が終了する。一方で他のブロックでも異変が起きており、それぞれの試合場で魔物が勃発し、襲い掛かっていた。


『ゴォオオオッ……‼』
『ぬうっ……打撃が、効かんだと‼』
『落ち着け‼ こいつらは水に弱い‼ 前の大会で弱点は知っているからな‼』


アマラ砂漠に飛ばされた冒険者たちには無数のサンド・ゴーレムが襲い掛かり、ゴンゾウたちのいるブロックにも無数の魔獣が出現していた。


『こいつらは……トロールか‼』
『わふっ‼ 前の時みたいに捕まりません‼』
『ゲヘヘヘッ‼』


ゴンゾウたちのいる平原ではトロールの集団が襲い掛かり、ゴンゾウは金棒で応戦し、ポチ子も以前に拘束された時の雪辱を晴らすために刃を振るう。他のブロックも多種多様な魔物達が出現し、一気に人数が減る。


『さあっ‼ 残りの参加者たちも一気に減少して来ましたよ‼ ここからが正念場すよ‼』
『うわ~……ソフィアたん大丈夫かな』
『平気平気~フェンリル殺しの英雄なんだからさ』


呑気なミズナの発言を耳にしながらもソフィアはゴーレム達に視線を向け、両手を手刀に変化させる。


「魔鎧刀」


ゴォオオオッ‼


まるで両手にレーザーサーベルのような青い炎の刀身を纏わせ、彼女は一気に勝負を付けるために邪魔なゴーレム達に攻撃を加える。



ズバァアアンッ‼



「ゴァアアッ……⁉」


手刀を振るっただけでゴーレムの身体が切り裂かれ、その切れ味はオリジナルのリノンの火炎剣にも劣らない。正確には魔鎧の熱によって溶解させているのだが、そのままソフィアはゴーレム達を切り刻む。


「す、すごい……何だあの火属性の魔法⁉」
「青い炎なんて見たこともねぇ……」
「そう言えば昔、聖導教会の聖天魔導士の中で蒼の炎を操る人がいるとか授業で習ったことがあるけど……」
「おお、その話なら儂も知っとるぞ……初代の聖天魔導士、蒼天の魔導士と謳われた方の事じゃ」
「どうでもいいよそんな事‼ 俺、あの人を応援するぜ‼」


観客席でソフィアの雄姿に民衆が沸き立ち、その一方で特等席に居るリノン達も応援に熱が入る。


「行け‼ そこだ‼ そのまま一気に倒しちまいな‼」
「バルさん、お仕事はいいんですか?」
「そんなもん、あいつらに任せてきたよ‼ 折角のソフィー(愛称)の晴れ舞台に仕事なんてやってられるかい‼」
「同感だね。僕も今回ばかりは仕事を忘れて純粋に楽しませてもらうよ」
「皆様、ジュースを持ってきましたけど飲みますか?」


最前列の特等席にはバルたちが観戦しており、試合場で無双するソフィアを応援していた。リノンはミラークリスタルでポチ子たちの健闘も見ており、レミアはまるで給仕係のようにバルに奉仕を行う。


「あの、レミア大将軍も落ち着いて見られたらどうですか?」
「そんな……ソフィア様のお母さまがいらっしゃるのにそのような事……それにソフィア様がこの程度の予選を勝ち残る事は当たり前です。ならばここは少しでもバル様との嫁姑関係をよりよくするために動く番です‼」
「……正妻は私」
「やれやれ……本当にモテるなうちの弟分は……」


バルの隣にはコトミとレミアが座り込み、その一方でリノンは先ほどから黙っているジャンヌに不思議に思って視線を向けると、彼女は訝し気な視線を試合場に向けていた。


「どうかしたのか? 何か気になる事でも?」
「いえ……あちらの方々が先ほどからどうも気になる動きを見せていて」


ジャンヌが指差したのは森人族の戦士たちであり、彼等は少し前からソフィアの周囲を囲むように動いており、ゴーレムの出現を利用して彼女の標的から逃れ、一定の距離を保ちながら伺っている様子だった。


「あれは……森人族の刺客か? またソフィアに何か仕掛けるつもりなのか?」
「だと思いますが……どうにも気になります。攻撃を仕掛ける様子はありませんが……」
「自爆でもする気じゃないのかい?」
「こ、怖い事を言わないで下さい……有り得そうで恐ろしいです」


森人族の刺客は敵を討ち取るためならば自らの命も惜しまず、実際に森人族の影は拘束された際に情報漏洩を逃れるために自決をも躊躇しない。ソフィアを四方から囲むように森人族達は動き回り、彼女がロックゴーレムに囲まれた瞬間に彼等は動いた。


「今だ‼」
「喰らうがいい‼」
「我等の‼」
「怒りを‼」


四人の森人族は右腕を構え、フードに隠していたボーガンを構え、その鏃には雷の魔水晶が埋め込まれていた。



「なんかデジャウを感じる」



ソフィアの脳裏に少し前に訪れたカゲマルの故郷で出会った三人衆を思い出し、その間にも彼等は魔水晶が埋め込まれた鏃を射出する。



チュドドッ‼



鏃はまるで弾丸のように放たれ、ソフィアは四方から近付いてくる鏃を確認し、下手に弾き返すのも危険と判断し、近くに存在したゴーレムを盾代わりに引き寄せる。


「ちょっとごめん‼」
「ゴォオッ⁉」



ズドドドッ‼



そのままソフィアはゴーレムの影に隠れるが、鏃はそのまま外殻に衝突し、瞬間に魔水晶が発光する。



ドォオオオンッ‼



試合場に雷が迸り、無残にも砕け散ったゴーレムの外殻が周囲に吹き飛ぶ。その光景を見て観客達は息をのみ、試合場の森人族たちは歓喜の声を挙げる。


「やったか⁉」
「あれほどの電撃を受ければひとたまりも……」
「いや、何だあれは……⁉」


雷が生じた場所には黒煙が舞い上がり、無数のゴーレム残骸の中から青い光が零れ落ち、誰もがその光景に驚愕する。煙の中から全身に「魔鎧」を発動させたソフィアが姿を現し、軽く咳き込みながら彼女は姿を現す。



「けほっ……流石に少しドキッとした」



彼女は何事もなかったかのように無傷であり、身体を覆う魔鎧を解除して首を鳴らす。電撃に耐性がある彼女ならば魔鎧無しでも生き残れただろうが、魔法に対して強い対抗性を持つ魔鎧を発動させるのが上策だった。


「さてと……そろそろ本気を出すかな」
「戯言を……今までの動きが手加減していたとでもいうのか‼」
「まさか、手加減なんてレベルじゃないよ」


ソフィアは笑みを浮かべ、この半月の間で生み出した新しい技を発動させる。それは聖爪がない場合に襲われた時を考慮し、生み出したあたらしい魔鎧の技だった。



「狼爪」



ゴォオオオッ‼



彼女の右手に魔鎧で形成した白狼を想像させる爪が誕生し、魔爪とでも言うべき魔鎧の爪が誕生し、森人族は後退る。炎の爪を思わせるソフィアの右手に彼等の本能が恐れ、迂闊に動けない。


「それじゃあ、行くぞ‼」
「ひっ……⁉」
「と、言いたいところだけどここまでかな」
「はあっ⁉」


動き出そうとしたソフィアが立ち止まり、森人族達は呆気に取られていると、すぐに周囲の異変に気が付く。先ほどまで暴れていたロックゴーレムが停止し、他の参加者たちも立ち止まっている。何が起きたのかと理解できないでいると、ソフィアはミラークリスタルの方を指差す。


「予選突破おめでとう」


彼女が指差したミラークリスタルの上部には「1800」という数字が表示されており、直後のカリナの放送が入る。



『試合終了~‼ 参加者人数が既定の人数に下回ったので、第一次予選は終了っす‼ 参加者の皆さまはそれ以上の戦闘行為は認められないっすから、そのまま退去してください‼』
『怪我を負った人は医療室に来てね~』
『ちなみに予選突破した選手は闘人都市の全ての宿屋がただ宿泊できるように手配しておきますから、三日目の第二次予選までゆっくりと身体を休めて欲しいっす‼ それでは選手の皆さん、お疲れ様でした~‼』



――ウワァアアアアアアアッ‼



カリナの言葉を最後の観客達の声援が沸き起こり、こうして第一次予選は終了した。
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