種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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剣乱武闘 覇者編

五大属性

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「というわけで、オラ修行をつけにもらいきたんだけど」
「オラ……?よ、良く分かりませんが私如きがレノ様の修行を見るなんて……」


アルトの部屋を後にすると、レノが向かった先はレミアの元であり、彼女は訓練場で鍛錬を行っていた。彼女は憑依させなくてもこの王国でも指折りの剣士であり、自己鍛錬は欠かさない。また、剣乱武闘に備えて通常よりも厳しい訓練を課しており、現在は休憩中だった。


「いや、レミアに修行を見てもらうのもいいけど、どちらかというと今回はミキに用事があるんだけど」
「ミキに?」


レノがどうしてレミアの元に訪れたのかというと、それは自分と同じ「五大属性」を全て習得した歴代最高の聖天魔導士であるミキに教えを受ける為であり、彼女がどのように魔法を極めたのかが気になったからである。

彼女ほどではないが、レノも一応は風、火、水、雷、そして無属性の五大属性は扱え、ミキの元で魔法を学べばもっと強くなれるのではないかと思って訪れたのだが、レミアは申し訳なさそうにおろおろと視線を泳がせ、


「も、申し訳ありません‼ 今の私はミキを呼び出せないんです……」
「どういう事?」
「えっと、前にも説明したと思いますが私が過去の英雄を身体に憑依させる事が出来るのは体内に命石を埋め込んでいるからです。ですが、今まで私の身体にはナナ、ミキ、そしてあと1人……3人の命石が埋め込まれていました。しかし、今の私には3人の命石は存在しないんです」
「え、どうして?」
「ええとですね……実は私の憑依術は一年に数回、定期的に命石を体内から取り外す必要があるんです。だいたい三カ月単位で命石が体内から取り出さないといけません。ずっと命石を身体の中に入れておくと精神面に影響が出てしまい、英雄たちの意識が流れ込んで人格が崩壊してしまう危険性がありまして……」
「何それ怖い」


初めて知った憑依術のデメリットに驚く一方、今のレミアは一週間の間は三人の英雄を呼び出せない状態らしく、だからこそ今のうちに自分自身を鍛えるために訓練を行っていたらしい。常日頃から憑依術で英雄を呼び出せたにも関わらず、今の彼女は拠り所がないという不安を打ち消すために訓練に集中している節があるらしく、鍛錬に励んでいたという。


「情けない話です……私の力は英雄たちに依存しきっています。大将軍という肩書がありながら、私自身の力量はリノンさんや、ワルキューレ騎士団のテン団長にも遠く及びません」
「その2人は人外じみてるからあんまり落ち込む必要はないよ」


リノンにしろ、テンにしろ、どちらも人間とは思えないほどの戦闘力を誇り、実際にこの2人は単独では撃破は難しいゴーレム・キングを打ち倒せるほどの実力は存在する。それでもレミアは首を横に振って自分の腰に掲げている二つの長剣に視線を向け、それはよく見ると銀の英雄の愛剣である「飛燕」と「氷華」であり、普段は収納用の魔石に収めているはずだが、訓練のために取りだしていたらしい。


「この二つの魔剣もナナの言う事は聞いても、私には従いません。飛燕も氷華も聖剣に劣らない能力を所有している扱いきれない自分の不甲斐なさに心が挫けそうです」
「それは俺にとっても耳が痛い」


レノもカリバーンを扱いきれない点があり、実際にあまり使用する機会は少ない。能力的にはアイリィ作の聖剣にも劣らないはずだが、上手く扱えないのだ。それに本人としても今まで通りの聖遺物頼りの戦闘方法を抜け出すため、敢えて使用していないようにしているのだが。


「まあ、あんまり気を落とさないで訓練頑張ってね」
「あ、はい……あの、レノ様? 魔法を習いたいのならミキではなくセンリ様に教えてもらってはどうですか?」
「センリが得意なのは水属性だからなぁ……」


五大属性を操れると言っても、レノは水属性を最も苦手としており、実際に戦闘に使用する際は他の属性と合成させて使用している(例:乱刃+水弾=水刃)。センリも一応は他の属性も扱えるが、ミキには遠く及ばない。

ならば森人族の誰かに魔法を教わろうかと考えたが、フレイやムミョウが得意とするのは風属性であり、基本的に雷属性と並んで嵐属性を愛用するレノが教わることは殆どない。レフィーア当たりならば複数の属性を扱える可能性はあるが、彼女に借りを作るのは避けたい。

レグから教わった魔鎧もそれなりに極めており、今のレノならば全身を武装するどころか身に着けている武器さえも魔鎧で覆えることが可能であり、漫画でよくある表現だが全身から蒼炎のオーラを湧き出す事も出来る(夜道を歩く時に便利)。


「う~ん……仕方ない、北部山岳か地下迷宮に行って野生の勘でも取り戻すかな」
「あの……放浪島への出入りは滅多なことでは許されないのでは……?」
「そういやそうだった」


頻繁に放浪島に訪れていたため、あの天空に浮かぶ島が囚人を収監するための監獄島であることを思い出し、いくら剣乱武闘のためにとはいえ入島を許可してはくれないだろう。


「でも、そうなると他に頼れる人なんていないしなぁ……」
「でしたらこの城で私達と訓練しませんか? レノ様のお相手が務まる方など限られていると思いますが、私も精一杯に努力します‼」
「俺、知り合いが相手でも容赦なく魔法をぶっ放すけど」
「そ、それはちょっと……」


現状でレノの相手が務まるのは大将軍クラスであり、兵士や騎士では相当に手加減しないと訓練にもならない。レノとしては自分自身を強くするために拮抗した相手との対戦を望んでおり、少なくとも王城に残る選択肢はない。


「俺も旅に出るかな……ウルに乗れば移動距離も伸ばせるし、今まで行ったことがない場所に行ってみようかな」
「何の話をしてるのかな?」


 意に後方から声を掛けられ、何処かで聞いた声音だと思いながら振り返ると、そこには予想外の人物が二人立っていた。


「やっふぅっ‼レノたん‼」
「ヨウカ?それにホノカも」
「やあ、久しぶり……というほどでもないね」


そこには盗賊王のホノカと彼女の腕に絡みつくヨウカの姿があり、まるで南国でも行ってきたような軽装であり、どうしてこの2人が王城に居るのか気にかかる。


「何時から着てたの?」
「ついさっきだよ。ほら、上を見てくれ」
「あれは……」


レノが空を見上げると、そこにはタコの形を模した飛行船が王城の上空に浮かんでいる事に気が付き、どうやらフライングシャーク号とスカイシャーク二号機の次世代型の新しい飛行船の様であり、今回はサメではなくタコを模しているらしい。


「ホノカちゃんのクラーケン三号機に乗ってきたんだよ~」
「今回も勝手に名付けられたよ……まあ、別にいいんだけどね」


心無しか諦め気味のホノカが溜息を吐きながら呟き、クラーケン三号機は他の船と違って武装している様子は見られず、その代わりに他の二つよりも大きい。以前に聞いた時は品物の輸送用のためだけに開発した機体らしく、既に第四機目も開発段階に入っているらしい。


「さっき、アルト君と挨拶してきたよ。剣乱武闘に備えて大量の武器や防具が必要だからね。僕たちはこれから闘人都市に戻るけど、レノ君はどうするんだい?」
「ホノカはともかく、ヨウカは遊んでいいの?」
「ぶ~……遊んでないよ。私も闘人都市で魔除けの儀式を行うんだからね」


ヨウカがホノカと同行しているのも理由があり、彼女は移動経費の削減と安全性のために飛行船に乗車し、品物を送り届けるために飛行船が着陸した際には付近の村や街の魔除けの儀式を行っている。それに空路ならば盗賊や魔物などに襲われる危険性も無いため、センリも了承しているらしい。


「闘人都市か……俺も乗っけて貰おうかな」
「え、レノたんも来てくれるの? わ~いっ‼」
「君の場合は転移魔方陣で戻れるんじゃないのかい?」
「気分の問題」
「あの、レノ様修行の方は……?」
「乗っている間に考える事にする」
「……お供する」
「いつからいたんだいコトミ君⁉」
「……その台詞は聞き飽きた」



――こうして、レノはクラーケン三号機でホノカとヨウカ、あとは何故か付いてきたコトミと共に闘人都市に移動する事を決める。
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