種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
804 / 1,095
真章 〈終末の使者編〉

呪鎧

しおりを挟む
「……今まである意味一番の難敵だな」
「魔鎧とは……また厄介な能力を」
「敵に使われると本当に面倒な能力だなあれ」


オルトロスが「魔鎧」に酷似した能力を扱う事が発覚し、事態はさらに面倒なことになる。オルトロスが発する魔力の正体が魔鎧と同じ能力である以上、魔法攻撃に対して強い耐性力を持つことが発覚し、聖剣の攻撃ですら通じない可能性も浮上してきた。

今までの伝説獣もそれぞれが厄介な能力を所有していたが、聖剣などの武具系の聖遺物の魔法攻撃が有効だったが、オルトロスの「呪鎧(とりあえずはレノが命名した)」はそれさえも通用せず、非常に厄介極まりない。魔法が効かないとなるとこの世界のあらゆる攻撃手段が通じない事を意味しており、対策が難しい。


「……レグにどうにかできないか聞いてみる」
「そうだな……なら俺がひとっ走り行ってきて」


ドンドンッ‼


こうなれば魔鎧の専門家であるレグの元に尋ねるため、転移魔方陣を発動させて闘人都市に戻ろうとした時、唐突に部屋に激しいノックがされる。センリが不審に思って入室を許可すると、慌てた様子の修道女が室内に入り込む。


「し、失礼します‼ センリ様、転移の間にて大変な事が……‼」
「どうしたというのですか? 落ち着いて説明しなさい」
「は、はい……実は転移の間の転移魔方陣が急に発動ができなくなって、外部への転移が不可能になりました」
「そんな馬鹿な……不調ですか?」
「いえ、専門家の話によれば魔方陣自体に問題があるのではなく、まるで外部から何らかの影響を受けて発動できなくなったと……」


修道女の話を聞き、センリはレノに視線を向け、ここでやってもいいのかという彼の視線に頷き、レノはすぐにその場で転移魔方陣を発動させる。流石に地面を刻み付けるわけにもいかないので、アイリィから頂いた用紙を利用するが、


「〇ーラ‼」
「……ルー〇?」


掛け声と同時に転移魔方陣が書き込まれた用紙に魔力を送り込んで発動させようとするが、どういう事か魔方陣が発光しても転移する様子は訪れず、教会が設置している転移魔方陣だけが反応しない訳ではないようだった。


「発動できないみたい」
「そうですか……となると、原因はやはり……」
「オルトロスの影響だと考えるのが妥当だろう……隔離されていても、あの嫌な魔力が感じ取れる」


――どうやらオルトロスの魔力の影響が周囲地域にまで与えているようであり、一部の魔法が使用不可能になっている。特に転移系統の魔法は発動できず、さらには教会内部に張っている結界も弱まっているらしい。



地下に隔離されているにも関わらず、ここまで地上に影響を与えるオルトロスの脅威を再確認し、同時に非常に厄介なことになる。転移魔方陣が使用できない以上、これでは他種族や地方に存在する教会から援軍が頼めず、オルトロスが地上に出た場合は現在の総本部の戦力だけで対処しなければならない。


「まさか転移魔方陣まで封じられるとは……これじゃ打つ手がない‼」
「落ち着くんだ‼まずは状況を整理する……使用できなくなった魔法を調べ、オルトロスが目覚めるまでに収集できるだけの戦力を集結させて……」
「そいつはちょっと難しいね……ワルキューレ騎士団も大雨期の影響で各地に派遣して復興活動に行かせてるよ。大雨期の影響で餌に飢えた魔物達が沸きだしているからね」


大雨期の影響で今まで安全な場所に隠れていた魔物達も再び人里を襲撃している。そのため、現在の聖導教会は地方の教会にワルキューレ騎士団の女騎士を送り込み、対処に当たらせている。


「今現在のワルキューレ騎士団の戦力はどの程度なのですか?」
「一応は百騎はいるけど、殆どが最近入団したばかりの新兵だよ。戦闘に出すのはまだ不安な奴等ばっかりだから、ここで訓練をさせていたのが仇になったね……」
「くそ……こんな事なら美香も連れて来るべきだったか……」


大魔導士の位を与えられた元勇者である美香は王国に滞在中であり、彼女は彼女でストームナイツ騎士団の専属の魔術師として働いており、現在は王国付近に出没した魔物の対処に当たらせている。彼女の砲撃魔法ならば伝説獣にも通じるが、現時点では呼び出す方法がない以上はどうしようもない。


「そういえばテラノ将軍はまだここにいるのでしょうか?あの方が居るのならば大きな力に……」
「テラノ将軍は調べたいことがあると言って雷雲号に乗って今朝方立ち去りました。何でも気になる所があると……」
「タイミングが悪かったな……というか、いたんだあのお爺ちゃん」


テラノは既に雷雲号でもう一度大雨期の影響で沈んでしまった施設を調べるため、早朝から総本部から旅立っており、既に移動してから半日以上も経過しているので呼び出すこともできない。つまりは現在の戦力だけで対処しないといけないが、オルトロスの対抗策が浮かばない以上は迂闊には動けない。

こうして考えている間にもオルトロスが覚醒するまでの時間が迫り、そして隔離されている地下空間からオルトロスの「呪鎧」が地上に向けて迫っている。



(……魔鎧に対して抵抗できるのは……)



レノは昔にレグから教わった魔鎧の特徴を思い出し、ある事を思い出す。それはあくまでも魔鎧は魔力によって生み出された防御法であり、魔法に対して対抗性が強い武器には通用しない事だ。


「魔法すに対抗できる武器なら通じると思う」
「対抗……ですか? 生憎とそのような武器はこの教会には……」
「いや、1つだけ心当たりがある」


レノはアルトの視線を向け、彼は気が付いたように自分のデュランダルを確認する。彼の聖剣は最も硬度が高く、そしてあの魔人王の鎧さえも打ち破った破壊力と強い魔法耐性を備えており、これならば呪鎧でも対抗できるかもしれないが、デュランダルだけではオルトロスの呪鎧を突破して本体に辿り着くことは難しい。


「……デルタ、そう言えばお前さっき転移を使ったけど今でも使用できるの?」
『問題ありません。私が使用する「簡易転移」は皆さまが使用している転移魔法とは根本的に違うエネルギーで発動しているので、オルトロスの魔力の影響は受けません』
「なら、オルトロスの間近にまで転移することはできる?」
『呪鎧が支配している空間には転移できませんが、呪鎧の目前にまでは転移が可能です』
「レノ?何か思いついたのか?」
「1つだけ方法が思いついた」



――まず、溢れ出る呪鎧をアルトのデュランダルで振り払い、オルトロスが眠っている場所にまで接近する。そして皆が転移できる空間を作り出した後、デルタの簡易転移で皆を呼び寄せて一斉攻撃で止めを刺す作戦を伝える。



無論、色々と無茶な作戦ではあるが現状ではこれ以上の策は無いのも事実であり、すぐに全員が賛同してくれた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

なりゆきで、君の体を調教中

星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

結婚して5年、初めて口を利きました

宮野 楓
恋愛
―――出会って、結婚して5年。一度も口を聞いたことがない。 ミリエルと旦那様であるロイスの政略結婚が他と違う点を挙げよ、と言えばこれに尽きるだろう。 その二人が5年の月日を経て邂逅するとき

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
 第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。  言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。  喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。    12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。 ==== ●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。  前作では、二人との出会い~同居を描いています。  順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。  ※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。

大好きな母と縁を切りました。

むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。 領地争いで父が戦死。 それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。 けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。 毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。 けれどこの婚約はとても酷いものだった。 そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。 そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……

処理中です...