種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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真章 〈終末の使者編〉

呪鎧

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「……今まである意味一番の難敵だな」
「魔鎧とは……また厄介な能力を」
「敵に使われると本当に面倒な能力だなあれ」


オルトロスが「魔鎧」に酷似した能力を扱う事が発覚し、事態はさらに面倒なことになる。オルトロスが発する魔力の正体が魔鎧と同じ能力である以上、魔法攻撃に対して強い耐性力を持つことが発覚し、聖剣の攻撃ですら通じない可能性も浮上してきた。

今までの伝説獣もそれぞれが厄介な能力を所有していたが、聖剣などの武具系の聖遺物の魔法攻撃が有効だったが、オルトロスの「呪鎧(とりあえずはレノが命名した)」はそれさえも通用せず、非常に厄介極まりない。魔法が効かないとなるとこの世界のあらゆる攻撃手段が通じない事を意味しており、対策が難しい。


「……レグにどうにかできないか聞いてみる」
「そうだな……なら俺がひとっ走り行ってきて」


ドンドンッ‼


こうなれば魔鎧の専門家であるレグの元に尋ねるため、転移魔方陣を発動させて闘人都市に戻ろうとした時、唐突に部屋に激しいノックがされる。センリが不審に思って入室を許可すると、慌てた様子の修道女が室内に入り込む。


「し、失礼します‼ センリ様、転移の間にて大変な事が……‼」
「どうしたというのですか? 落ち着いて説明しなさい」
「は、はい……実は転移の間の転移魔方陣が急に発動ができなくなって、外部への転移が不可能になりました」
「そんな馬鹿な……不調ですか?」
「いえ、専門家の話によれば魔方陣自体に問題があるのではなく、まるで外部から何らかの影響を受けて発動できなくなったと……」


修道女の話を聞き、センリはレノに視線を向け、ここでやってもいいのかという彼の視線に頷き、レノはすぐにその場で転移魔方陣を発動させる。流石に地面を刻み付けるわけにもいかないので、アイリィから頂いた用紙を利用するが、


「〇ーラ‼」
「……ルー〇?」


掛け声と同時に転移魔方陣が書き込まれた用紙に魔力を送り込んで発動させようとするが、どういう事か魔方陣が発光しても転移する様子は訪れず、教会が設置している転移魔方陣だけが反応しない訳ではないようだった。


「発動できないみたい」
「そうですか……となると、原因はやはり……」
「オルトロスの影響だと考えるのが妥当だろう……隔離されていても、あの嫌な魔力が感じ取れる」


――どうやらオルトロスの魔力の影響が周囲地域にまで与えているようであり、一部の魔法が使用不可能になっている。特に転移系統の魔法は発動できず、さらには教会内部に張っている結界も弱まっているらしい。



地下に隔離されているにも関わらず、ここまで地上に影響を与えるオルトロスの脅威を再確認し、同時に非常に厄介なことになる。転移魔方陣が使用できない以上、これでは他種族や地方に存在する教会から援軍が頼めず、オルトロスが地上に出た場合は現在の総本部の戦力だけで対処しなければならない。


「まさか転移魔方陣まで封じられるとは……これじゃ打つ手がない‼」
「落ち着くんだ‼まずは状況を整理する……使用できなくなった魔法を調べ、オルトロスが目覚めるまでに収集できるだけの戦力を集結させて……」
「そいつはちょっと難しいね……ワルキューレ騎士団も大雨期の影響で各地に派遣して復興活動に行かせてるよ。大雨期の影響で餌に飢えた魔物達が沸きだしているからね」


大雨期の影響で今まで安全な場所に隠れていた魔物達も再び人里を襲撃している。そのため、現在の聖導教会は地方の教会にワルキューレ騎士団の女騎士を送り込み、対処に当たらせている。


「今現在のワルキューレ騎士団の戦力はどの程度なのですか?」
「一応は百騎はいるけど、殆どが最近入団したばかりの新兵だよ。戦闘に出すのはまだ不安な奴等ばっかりだから、ここで訓練をさせていたのが仇になったね……」
「くそ……こんな事なら美香も連れて来るべきだったか……」


大魔導士の位を与えられた元勇者である美香は王国に滞在中であり、彼女は彼女でストームナイツ騎士団の専属の魔術師として働いており、現在は王国付近に出没した魔物の対処に当たらせている。彼女の砲撃魔法ならば伝説獣にも通じるが、現時点では呼び出す方法がない以上はどうしようもない。


「そういえばテラノ将軍はまだここにいるのでしょうか?あの方が居るのならば大きな力に……」
「テラノ将軍は調べたいことがあると言って雷雲号に乗って今朝方立ち去りました。何でも気になる所があると……」
「タイミングが悪かったな……というか、いたんだあのお爺ちゃん」


テラノは既に雷雲号でもう一度大雨期の影響で沈んでしまった施設を調べるため、早朝から総本部から旅立っており、既に移動してから半日以上も経過しているので呼び出すこともできない。つまりは現在の戦力だけで対処しないといけないが、オルトロスの対抗策が浮かばない以上は迂闊には動けない。

こうして考えている間にもオルトロスが覚醒するまでの時間が迫り、そして隔離されている地下空間からオルトロスの「呪鎧」が地上に向けて迫っている。



(……魔鎧に対して抵抗できるのは……)



レノは昔にレグから教わった魔鎧の特徴を思い出し、ある事を思い出す。それはあくまでも魔鎧は魔力によって生み出された防御法であり、魔法に対して対抗性が強い武器には通用しない事だ。


「魔法すに対抗できる武器なら通じると思う」
「対抗……ですか? 生憎とそのような武器はこの教会には……」
「いや、1つだけ心当たりがある」


レノはアルトの視線を向け、彼は気が付いたように自分のデュランダルを確認する。彼の聖剣は最も硬度が高く、そしてあの魔人王の鎧さえも打ち破った破壊力と強い魔法耐性を備えており、これならば呪鎧でも対抗できるかもしれないが、デュランダルだけではオルトロスの呪鎧を突破して本体に辿り着くことは難しい。


「……デルタ、そう言えばお前さっき転移を使ったけど今でも使用できるの?」
『問題ありません。私が使用する「簡易転移」は皆さまが使用している転移魔法とは根本的に違うエネルギーで発動しているので、オルトロスの魔力の影響は受けません』
「なら、オルトロスの間近にまで転移することはできる?」
『呪鎧が支配している空間には転移できませんが、呪鎧の目前にまでは転移が可能です』
「レノ?何か思いついたのか?」
「1つだけ方法が思いついた」



――まず、溢れ出る呪鎧をアルトのデュランダルで振り払い、オルトロスが眠っている場所にまで接近する。そして皆が転移できる空間を作り出した後、デルタの簡易転移で皆を呼び寄せて一斉攻撃で止めを刺す作戦を伝える。



無論、色々と無茶な作戦ではあるが現状ではこれ以上の策は無いのも事実であり、すぐに全員が賛同してくれた。
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