種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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真章 〈終末の使者編〉

目撃者

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ある程度の調査を終え、黒猫酒場に全員が集合する。レノを先頭に酒場に入った瞬間、異変を感じ取り、すぐにカウンターの席に1人の女性が座り込んでいる事に気づき、やたらと威圧感を放っている。その光景に殆どの者が後退る中、レノだけは溜息を吐きながらその人物の元に歩み寄り、肩を叩く。


「……何してんのお姉ちゃん」
「その呼び方は止めろ。普通に私の事は名前で呼べ」


振り返りもせずに返事を返す世界最強のダークエルフ(レノはハーフエルフ)を前に、レノは気にした風も無く隣に座り込み、カウンターにいるバルが疲れた表情で彼に振り返り、久しぶりの再会だというのにホムラの存在が邪魔で素直に喜べない。


「景気はどう?」
「見ての通りだよ……随分と今日は大所帯だね」
「まあね……カリナは?」
「今はバルルの方で働いてるよ。あと少ししたら帰ってくるんじゃないかね」


そう言いながらバルはレノの前にコップを注ぎ、臭いから察するに葡萄酒の様であり、まだ一応は業務中ではあるが、一杯だけ飲み込む。


「ひ、久しぶりでござるなバル殿」
「あんたも久しぶりだね。えっと、シャドウマルだっけ?」
「ある意味惜しい」
「カゲマルでござる‼」


レノの隣にカゲマルが座り込み、2人を見て他の者たちも習って酒場の中に入り込む。コトミとポチ子はホムラを警戒してか離れた席に座り、最後にジャンヌがカゲマルの隣に座る。


「……調子はどうだ?」
「まあまあかな」
「そうか……」


珍しくホムラの方から話しかけられ、レノが適当に答えると彼女は特に気にした風も無くコップに酒を注ぎ、レノは以前から気になっていたが彼女はどうやって収入を得ているのか気にかかり、この際に尋ねてみる。


「そう言えばホムラはどうやって稼いでるの?」
「どうした急に……」
「いや、気になって……」
「あの男……以前に所属していた組織の給金で暮らしている」


話によると彼女がまだ組織に所属していた際、仕事を行う代わりにそれ相応の金銭を得ているらしく、十数年は遊んで暮らせるほどの大金を所有しているらしい。そもそも基本的に彼女は金銭を利用する機会が少なく、普段は野外で生活しているらしい。

金銭を使用するとしたら、このような酒場で酒や食事を頼む時だけであり、決して人間が造った宿屋には宿泊しない。昔から建物の中で暮らすというのは性に合わず、大雨期の最中でさえも宿屋に泊まらず、都市中の酒場を訪ねてに夜通し酒を飲み続けていたという。


「お前の方はどうだ? 何か、面白いことはないのか」
「リバイアサンを倒したぐらいかな」
「リバイアサン? どういう事だ?」


伝説獣の名前が出たことにホムラが興味を示し、経緯を訪ねてくる。レノはジャンヌを一瞥し、彼女は仕方がないとばかりに頷き、これまでの出来事を語る。その間にジャンヌたちの方も今日の内に集まった情報をまとめるために会議を行う。


「かくかくしかじかわふぅ~(事情説明)……というわけで、リバイアサンを倒す事には成功したけど、カリバーンの捜索を行っているわけ」
「つまらん。どうして私を混ぜなかった」


少し拗ねた様にリバイアサンの討伐に参加できなかったホムラがコップの酒を飲み込み、普段から何処にいるのかも分からない彼女をどうやって誘うんだと文句も言いたくなるが、ここで喧嘩していても始まらない。


「だったら、今回の作戦に協力してよ。ホムラはカリバーンには興味ないの?」
「ない。私にはこれがある」


そういいながら彼女は魔槍を取り出し、相変わらず禍々しい雰囲気を醸し出しており、それが異様にホムラに似合っている。元々は魔王が所有していたという聖遺物だが、この槍を最終決戦の時にリーリスが装備していたとしたらと考えるだけで恐ろしい。


「そう言えば……お前の方こそなんだその背中の包みは?」
「ああ、これ?」


レノは自分の背中に巻き付けているやたらと細長い包みの事を思い出し、全身を黒衣の包帯で巻き付けているが、その中身は魔王討伐大戦に参加した者ならば誰しもが見覚えのあるはずの代物だった。



「カリバーンの代わりに持ってきたんだけど……使い道がないから困ってるんだ」



カウンターの席に荷物を置き、包帯を剥ぎ取って中身を見せると、ホムラはそれを見た瞬間に首を傾げる。デザインは彼女の魔槍と似ており、実際の所は能力はレーヴァティンに近い聖遺物でもある。

魔王討伐大戦の際、レノがリーリスの死体から拾い上げた代物であり、結局は持ち主がいない以上、レノが一時的に預かるという名目で所有している。ある意味ではカラドボルグに匹敵する威力を誇る武器であり、同時に扱いを間違えれば所有者の命が危ない代物でもある。


「ロンギヌス……リーリスの奴からパクった槍だよ」
「ほうっ……これが」


名前は知っていたのかホムラが身を乗り出してロンギヌスを見つめ、魔王討伐大戦の際にリーリスがゲイ・ボルグの代わりに用意した槍であり、こちらは魔力を注ぎ込めば注ぎ込むほどの威力を発揮するタイプの聖遺物である。カラドボルグとレーヴァティンの中間に位置するような能力であり、所有者の魔力容量によって大きく性能に差が出てくる。

ちなみにこのロンギヌスは聖剣と違い、選定者を選ぶことはなく、誰でも使用可能である。但し、生半可な魔力容量の持ち主ではこの槍は扱いきれず、一瞬で魔力を吸い尽くされて干からびるが。


「お前に扱えるのか?」
「一階だけ試してみたけど、屋敷の一部を壊しちゃってめっちゃ怒られた」


一度だけ聖天魔導士の屋敷の裏庭で使用した際、槍の先端からレーザーを想像させる熱線が放出され、その熱線が屋敷の屋根を一部破壊してしまい、センリに1時間近くも説教された。それ以来、この槍を興味本位で使用することは危険と判断して聖導教会に厳重に保管していたのだが、カリバーンを失った以上、代わりとなる武器が見つかるまで装備する事にした。

ロンギヌスも慣れてしまえばそれなりに使い勝手が良く、剣よりは上手く扱える。これは森人族が棒術を得意とする事が関係しているのかもしれず、意外なほどにレノはロンギヌスの扱いに慣れた。


「……まあ、中々に面白い話だったが……私は私で忙しい、お前たちの仕事にも興味が沸かないからな」
「忙しいって、あんたここんところは毎日飲んだくれるだけじゃないかい?」
「ば、バル殿……⁉」


ホムラが相手を怯えた様子もなくツッコミを入れるバルにカゲマルの方が顔色を悪くするが、予想に反してホムラは黙り込んで何か考え込み、思い出したように語り始める。


「……そう言えば、あの大会の時にお前たちが言っていた奴を見かけたかもしれないな」
「え?」
「黒装束にやたらと光り輝く剣を持った男なら、私も見かけたな」
「ほ、本当でござるか⁉」
「うるさい。耳元で喚くな」
「こ、これは失礼を……」


まさかの予想外の人物の予想外の発言にカゲマルが食いつき、そんな彼女に容赦のない一言で黙らせると、ホムラはあの時の出来事を思い出すように話を始めてくれた。
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