種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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真章 〈終末の使者編〉

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ドゴォオオオオンッ……!!


フライングシャーク号とスカイシャーク二号機の砲門から無数の砲弾が放たれ、派手にリバイアサンに的中する。火属性の魔石を加工して造られた砲弾は着弾と同時に激しい爆発を起こすが、当のリバイアサンにはあまり効果はない。


グォオオオオオッ……‼


何十発もの砲弾を浴びながらも、リバイアサンは空中を飛び回るミキに狙いを定め、何度も牙を伸ばす。彼女は既に疲労からか最初の頃よりも速度が落ちており、それでも休まずに旋回を続けてリバイアサンの注意を引く。



「くっ……これ以上は……スカイ‼」



背中の羽根を顕現させるのにも不可能となり、彼女は風属性の魔法で身体を浮き上げる。だが、この魔法では高速移動が不可能であり、一気に速度が落ちてしまう。


「一旦、避難しなければ……⁉」


リバイアサンから逃れるために近くに浮揚しているフライングシャーク号に向けて飛行を仕様とした時、唐突にリバイアサンが顎を異様な角度まで開き、口元を赤く発光させる。


「まさか⁉」


リバイアサンの意図に気が付き、このままでは危険と判断し、何とか方向転換を行おうとした瞬間、リバイアサンの口内から赤色の閃光が放たれる



カッ‼



周囲一帯が赤色の光に飲み込まれ、次の瞬間にリバイアサンの口から巨大な熱線が放たれ、天空を貫く。咄嗟に回避行動を取っていたミキは砲撃から免れたが、余波には耐え切れず、そのまま海面に向けて落下する。



オォオオオオッ――‼



そのまま熱線を放出しながらリバイアサンは首元を動かし、熱線が横薙ぎに放出される。幸いにもフライングシャーク号とスカイシャーク二号機は別々の方向にいたからこそ免れたが、熱線は徐々に港町の方角に向けて移動していく。



「いけませんっ……⁉」



海中から何とか浮き上がったミキが咄嗟に魔法を使用しようとするが、既に魔力切れの傾向なのか憑依する事もままならず、淡い光と共にレミアの姿に戻ってしまう。



「れ、レノ様……‼」



熱線が港町の方向に移動しようしている姿を確認し、彼女は誰よりも敬愛している彼の名前を告げるが、次の瞬間にアリーゼの港に異変が生じる。



――ドォオオオオオンッ‼



熱線が港町を直撃する寸前、巨大な防護壁が形成され、リバイアサンの熱線を防ぐ。それはレミアの脳裏にある人物が思い浮かぶ。

聖遺物級の砲撃を防げる手段など限られており、間違いなくあの防壁は最高の防御力を誇る盾「アイギス」から生み出された力であり、事前に港町にホノカが待機していた事を思い出す。恐らく、海上の様子を確認していたホノカが咄嗟にアイギスを起動してリバイアサンの熱線を防いだようであり、アイギスの盾が熱線を拡散させて港町を守護していた。



「す、凄い……⁉」



先の魔王討伐大戦のゴーレムとは比べ物にならない熱線を防いだアイギスにレミアが感動する一方、同時に何時までも熱線を放出し続けるリバイアサンに視線を向けると、そこには明らかな異変が起きていた。



オォオオオオオオオッ――‼



異様なまでに身体中を赤く発光させたリバイアサンの姿があり、全身から湯気のような物が沸き起こっている。身体全体が異常なまでに発熱現象を起こしており、レミアが沈んでいる海中にまで熱が感じられる。



(まさか……熱線の影響? )



先ほどのような高火力の熱線を放出を続ける事はリバイアサンの身体にも悪影響を及ぼすようであり、レミアの予想を証明するようにリバイアサンの身体が悪化し、砲撃を中断する。



オォオオオオオッ……⁉



そのままリバイアサンは派手に水飛沫を上げながら身体を沈ませ、その際に生じた津波にレミアは巻き込まれて流されてしまう。彼女は助けを求めるために必死に水中でもがきながら手を伸ばすと、不意に何者かが自分の右手を掴む感覚が訪れ、海面に引き上げられる。


「ぷはぁっ⁉」
「救出に成功、保護を開始します」
「はっ……はあっ……あ、貴女は……⁉」


 
――彼女を助け出した人物は聖天魔導士の館でメイドを行っているはずのデルタであり、彼女は防水使用と言わんばかりに何故かダイバーを想像させる装甲に変化しており、そのまま彼女を背負って移動を開始する。



「ど、どうして貴女がここに……?」
「主人の命により、私は海に落ちた人間を救出するために待機していました」
「レノさんが……?」



事前にレノは聖導教会に連絡を送り、援軍としてデルタを呼び寄せていた。この船島作戦で万が一にも海中に落ちた人間がいたとしたら彼女に救出するように指示を与えており、今までずっとデルタは海中で待機しており、センサーに反応したレミアを救い出した



「保護対象を固定、潜水モードから飛行モードに切り替えます」
「きゃっ⁉」



ガシィッ‼



そのままデルタはレミアの身体を抱きしめ、背中にブースターを出現させ、一気に上昇する。


「で、デルタさん⁉ 貴方も飛べるんですか⁉」
「先の戦いから私もグレートアップしました。終末者の装甲を回収し、他にも多数の機能が追加されています」


聖導教会で捕獲した終末者の装甲の大部分を引き剥がし、今現在はデルタの身体に組み込まれている。レノとの戦闘で大きく損傷した装甲の部分は修復に時間が掛かるが、飛行ユニットに関して無事であり、短時間ならば彼女も飛行できる。


『えっと、もしもし聞こえる?』
「問題ありません」
『あ、本当に通じた』
「……え?」


飛行の最中、必死にデルタにしがみ付いているレミアの耳元にレノの声が聞こえ、驚いたように顔見上げるとデルタの両耳に搭載されたイヤホン型の機器から彼の声が聞こえたようであり、すぐに彼女はホノカが所持している魔導電話の存在を思い出す。


『まさか魔導電話とも繋がるとは……まあ、そんな事よりレミアは救出した?』
「完了しています。これより、安全な場所まで避難させます」
「ま、待ってください‼ 私はまだ……」
「要求は却下します。その身体では戦闘は不可能です」


デルタのセンサーは対象人物の魔力エネルギーを感じ取ることも可能であり、既に長時間の憑依によってレミアの身体は消耗しており、これ以上の戦闘は明らかに不可能だった。


『2人は港町の方に避難してて、こっちも拾い上げる余裕はないから』
「了解。すぐに移送を開始します」
「ちょっ……わぁああああっ⁉」


そのまま音速を突破したのではないかという速度でレミアを担いだデルタは移動を開始し、その間にもフライングシャーク号とスカイシャーク二号機は、海水で身体を冷却させるリバイアサンに接近し、この隙を逃さないとばかりに飛行船の砲台が向けられる。



ゴォオオオオッ……‼



スカイシャーク二号機の超魔導大砲が向けられ、砲台が変形を行い、赤いサメの口元から大砲が突き出され、操縦席に座り込むカノンがリバイアサンの頭部を狙う。



『超魔導大砲、発射‼』



――ズドォオオオオオンッ‼



遂にはスカイシャーク二号機の開け放たれた口からレーザー砲を想像させる砲撃が発射された。
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