種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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真章 〈終末の使者編〉

一掃

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「はぁああああっ‼」


レノとミキがリバイアサン気を引いている間、ジャンヌは魚人の侵攻が激しい船島の南端部に移動し、レーヴァティンを解き放つ。蓄積された真紅の炎が解き放たれ、無数の魚人を薙ぎ払う。


「ギィイッ⁉」
「シャアァアアアッ⁉」


――ドゴォオオオオンッ‼


水中で産まれた魚人たちはレーヴァティンから放たれる炎を異常なまでに怯え、彼女から距離を取る。意外な弱点を発見し、彼女は逃走を始める魚人たちを追撃し、この半年で生み出した新しい技を使用する。



「降り注げ‼」



彼女は刀身を天空に向け、次の瞬間に火柱が発生する。上空に打ち上げられた火柱は空中に飛翔して10メートル級の火球に変化し、そのまま分散して隕石を想像させる火球が無数に放出される。


ズドドドッ……‼


上空から火球が降り注ぎ、周囲に存在する魚人たちに激突する。火球は衝突した瞬間に爆発を起こし、そのまま数匹の魚人たちを巻き込みながら爆散する。その威力は先ほど魔術師部隊が発動させた火属性の魔法とは比べ物にならず、魚人達を確実に減らしていく。

リバイアサンが登場した瞬間に大渦が消失し、新手の魚人たちも出てこなくなり、恐らくは現在この船島と港町アリーゼに存在する魚人たちで打ち切りになったのだろう。リバイアサンは一時的にレノとミキに任せ、彼女は残された魚人たちを一掃に集中する。



「「ギィアァアアアッ⁉」」



彼女が剣を振る度にレーヴァティンの炎が焼き払い、ジャンヌは額に汗を流す。それは疲労からの汗ではなく、彼女は聖剣の威力の調整に苦労していた。



(威力を上げすぎると氷が溶けてしまう……かといって、生半可な炎は通用しない)



この船島は巨大な氷塊で形成された島であり、彼女が本気でレーヴァティンの力を使用したら氷を溶解させ、下手をしたら船島その物が瓦解してしまう。それでもこの作戦に彼女が参加したのは、アルトのデュランダルではそもそも衝撃波によって氷が砕けてしまう可能性の方が高く、彼よりも聖剣の扱いに長けているジャンヌがこの作戦に選ばれた。



「シャアァアアアッ‼」
「くっ……待ちなさい‼」


ズガァアアンッ‼


海中に逃げ込もうとする魚人たちを爆炎で焼き払い、ジャンヌは自分が船島の端にまで移動していることに気が付く。周囲には既に兵士たちの姿はなく、代わりに船島中の魚人が集まったのではないかという数の魚人に囲まれていた。



「はあっ……はあっ……このままでは……‼」
「ギシシシッ……‼」
「ギィイイイッ……‼」


疲れ切った彼女を前に魚人たちが笑い声を想像させる鳴き声を挙げ、徐々に包囲網を縮める。ジャンヌは聖剣を握りしめたまま、兵士たちが安全な場所まで避難したことを確信し、



「ふふっ……私を追い込んだつもりなら、残念でしたね」
「ギィッ?」
「ギギッ……?」



唐突に笑みを浮かべるジャンヌに魚人たちは疑問を浮かべ、レーヴァティンを掲げると、友人であるリノンの技を参考にした新しい技を使用する。



「極炎陣‼」



ガキィイインッ‼



レーヴァティンの刀身を勢いよく氷塊に突き刺し、魚人たちがその行動に意味が分からずに首を傾げるが、すぐに足元の氷の大地に異変が生じる。



ビキィイイイイッ……‼



突き刺した刃の部分を中心に氷塊に罅割れが生じ、すぐに意図を察した魚人たちは驚愕の声を上げて逃走を図るが、罅割れから亀裂へと変化し、そのまま一気に拡大する。



「はぁあああああっ‼」



蓄積させた魔力を注ぎ込み、レーヴァティンの刃が発熱し、煙が舞い上がる。それに呼応したように亀裂が広がり、遂には船島の南端部の大部分にまで到達する。、



――ズガァアアアアアアンッ……‼



遂には船島の一部がレーヴァティンの熱によって崩壊してしまい、ジャンヌと大量の魚人たちが存在する部分だけが海中へと崩れ落ちる。その際に崩壊した氷塊に魚人たちが巻き込まれ、海に飲み込まれていく。



「「「ギィアァアアアアアッ⁉」」」



魚人たちは無数に砕けた氷に飲み込まれ、その間にジャンヌは氷塊を上手く利用して跳躍し、レーヴァティンを空中で振り翳し、最後の一撃とばかりに炎を走らせる。今度はレノの魔法を参考にした技であり、一気に放出する。



「火炎刃‼」



刃を大きく振り翳した瞬間、三日月状の巨大な炎の刃が誕生し、そのまま海面に飲み込まれていく氷塊に衝突した瞬間、水柱を生じさせるほどの爆発が生じる。



――ドォオオオオオンッ‼



魚人たちは悲鳴を上げる暇もなく、氷塊と共に爆炎に飲み込まれ、その際に生じた余波で船島が激しく揺れる。空中でその様子を確認し、魔力の消耗が激しいジャンヌはそのまま落下し、海に飲み込まれようとした時、


「おっと」
「きゃっ……⁉」



ダァンッ‼



海面に墜落する寸前で彼女の身体が抱きしめられ、そのまま空中に浮き上がる。驚いて顔を向けると、そこにはリバイアサンの相手をしていたレノの姿があり、このような状況にも関わらずにジャンヌは頬を赤らめる。


「れ、レノさん……どうして」
「いや、何だか危なさそうだったから……降りるよ」


そう告げると砕けた船島の氷塊の一部に着地し、ジャンヌをゆっくりと下ろす。彼女に外傷がないことを確認すると、すぐに視線をリバイアサンに向け、そこには必死に空中を移動してリバイアサンの気を引くミキの姿があり、リバイアサンの後方から近づくスカイシャーク二号機と、遂に港町から移動してきたフライングシャーク号が接近している姿が見えた。
 フライングシャーク号がここま姿を現さなかったのは予想外に超魔導大砲から従来の魔導大砲の設置に時間が掛かってしまい、燃料の補給も時間が掛かったせいであり、これでやっと最終作戦に突入できる。


「移動するよ」
「え、あ、はい?」


レノは掌を地面に押し付け、その瞬間に転移魔方陣が浮かび上がる。いちいち地面に魔方陣を書き込む事も無く魔方陣を形成させたレノに彼女は驚きを隠せず、彼はジャンヌの視線に気づいて一枚の紙を取り出す。紙には転移魔方陣が書き込まれており、以前にも見たことがある物だった。


「これだよ。アイリィの奴が残してたの」
「それは……あの時のですか?」


以前にアイリィが学園都市で見せた魔道具であり、この紙を使用すれば書き込まれた魔方陣が発動し、目的地まで移動できるタイプの魔道具である。名前は「転紙(てんし)」と呼ばれており、これを使用すれば一瞬で魔方陣が発動する。

貴重な魔道具であるため、普段は保管しているのだが、万が一の場合も考えて今回の作戦前に用意しており、移動先はスカイシャーク二号機の船内であり、ジャンヌを連れて発動させる。



――次の瞬間、2人の視界が一瞬で切り替わり、スカイシャーク二号機の超魔導大砲が設置されている砲台に移動する。二人の出現に驚いた表情を浮かべたカノンが操縦席の前で驚愕の声を上げる。



「れ、レノさん⁉ それにジャンヌさんも……一体どうやってここに」
「そんな事より、準備は整っているの?」
「す、すいません……準備は終わっていますが、想像以上にリバイアサンの動きが激しく、船体も揺れるので上手く狙えなくて……」
「嵐水竜の時は一発で仕留めてたけど……」
「あの時は雲から姿を現す瞬間を予測して狙い撃ったのですが……リバイアサンの移動速度が予想以上で、胴体を撃ち抜くことはできると思いますが、頭部だけを狙うとなると……」



先の嵐水竜同様、一発限りの超魔導大砲で撃ち抜くとしたらより効果的な個所を狙うのが当たり前だが、常に移動を行うリバイアサンの頭部や首元を狙うのは非常に難しく、あまり接近したら逆にリバイアサンの熱線に撃ち落とされる可能性があるため、一向に狙撃できる好機が見出せない。
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