種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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真章 〈終末の使者編〉

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「ブモォオオオッ‼」
「グ、クソガッ……‼」


ミノっちの猛攻を完全には防ぐ事が出来ず、化物は壁を背にして押し込まれる。無数の乱打に右腕で防ごうとするが、ミノっちは巧みに掻い潜って化物の胴体に拳をめり込む。右腕以外の部分は本当に防御力が低いのか、損傷を受けているように思える。

これならばレノは自分たちの助太刀は必要ないかと思ったが、不意に化物の右腕に異変が生じ、血管らしきものが浮かび上がり、全体がより赤く変色した。


「アガァアアアアッ⁉」
「ブモッ――」



ズガァアアアアンッ‼



次の瞬間、再び目にも止まらぬ速さで繰り出された右腕によってミノっちの身体が吹き飛ばされ、そのまま10メートル以上も吹き飛ばされ、壁に激突して吐血する。


「ガハァッ……⁉」
「ミノっち‼」
「おのれ‼」


ミノっちがそのまま倒れ込み、リノンたちが動き出す。全員が武器を構え、化物に向かって移動を行おうとした時、


「アァアアアアアッ‼」


悲鳴とも咆哮とも取れる大声を叫びながら化物は再度、右腕から蒸気を想像させる白煙を吹き出す。その熱量は半端ではなく、咄嗟に全員が距離を取って避難する。


「くっ……またこれか‼」
「退け‼」


ゴンゾウがミノっちを担ぎ上げ、全員が煙から避難する。先ほどのとは違い、煙は広間全体を覆いつくす勢いで噴出され、レノがもう一度嵐の力で上空に巻き上げようとした時、



「ウオォオオオオッ……‼」
「おっと」


ブォンッ‼


白煙の中から化け物が姿を現し、右腕を突き出してきたが彼は咄嗟に回避し、逆に相手の身体に掌を押し付け、この三カ月の間に覚えた新技を試す。


「衝風‼」


ズズゥンッ‼


「ゲボッ……⁉」



体の内側から風の魔力を直接放出し、全体に衝撃が走る。嵐撃の応用版であり、こちらの方が発動時間が短く、その分に威力は劣るが、化物には効果覿面だったようだ。


「ググッ……‼ アガァッ……⁉」
「追撃‼」
「ゴハァッ⁉」


ズゥンッ!!


そのまま踵落としを化物の頭部に叩き込み、地面にめり込ませる。レノは一旦上空へと飛び上がり、右手に掌大の水の魔力を発動し、左手に嵐の魔力を発動させ、両手を合わせて新たな合成魔術を発動させる。



「水刃‼」



ズドォオンッ‼



「イギャアァアアアアッ⁉」



三日月状の水の刃が放たれ、そのまま化物の背中に激突する。その瞬間、背中に大きな切り傷が生まれ、血飛沫が舞う。乱刃の変化技であり、水の魔力を吸収したことで威力が向上し、以前にセンリのアドバイスで教えて貰った技だった。


「やったか⁉」
「いや……まだだ」


他の面子が化物が傷を負ったことに歓喜するが、すぐに化物の異変に気が付き、驚愕の表情を浮かべる。



「ウ、グォオオオオッ……‼」



ボコボコッ……‼



傷を負った化物の背中の血液が凝固し、瞬時に止血するのと同時に左腕に変化が訪れ、徐々に巨大化する。まるでゴンゾウの以前の鬼人化と酷似しているが、化物の場合はさらに変化させ、右腕を刃物のように変形させる。



「イデェッ……‼ イヤダァアアアアアアッ‼」



化物が両目から血の涙を流しながら起き上がり、巨大化した両腕を振るいあげ、無茶苦茶に振り回す。途轍もない腕力を誇る右腕で壁を砕き、刃物と変化した右腕で地面を切り裂く。その姿はどことなく最終変化した魔王と酷似しており、レノ達は距離を取る。


「クソ、クソクソクソクソクソッ……‼」
「……ちょっとやばいかも」


呪詛のように悪態を繰り返す化物に対し、レノは冷や汗を流す。こんな相手にこそ聖剣の出番だが、生憎と今回はカリバーンは持ち込んでいない。リバイアサンとの戦闘以降、随分と無茶を差せたので王国で保管しており、ならば事前に仕込んだ解放術式でどうにかしようとした時、


「ここは私に任せてください」
「ジャンヌ?」
「できるかどうかわかりませんが……私のレーヴァティンで浄化します」


彼女は戦斧を地面に突き刺し、レーヴァティンを抜き取る。聖剣の中でも「炎属性」を司り、蓄積させた魔力を爆発させる彼女の剣ならば通用するかもしれないが、



「時間はどれくらいかかる?」
「……2、いや1分ほどあれば……恐らくは」
「そうか……なら、俺達の出番だな」
「うむっ」
「よし……」
「わふっ‼」
「……おっしゃあ」
「ウォンッ‼」
「え、なに? どうすればいいんだ⁉」



ジャンヌがレーヴァティンに魔力を蓄積させる間、レノ達はあの化け物を抑えなければならず、時間稼ぎを行わなければならない。全員が意思疎通する中、フレイだけは皆の考えに気付かず、戸惑った表情を浮かべる。

そんな彼女を放置し、レノ達はジャンヌを庇うように前に躍り出ると、無茶苦茶に周囲を荒らしまわっていた化物が立ち止まり、こちらに視線を向ける。特にこの中では一番の巨体であるゴンゾウに視線を向け、


「オオキナニグゥッ……‼ ヨコセェッ‼」
「……来い‼」


ドォンッ‼


化物が跳躍し、そのまま彼に飛びかかる。ゴンゾウはそれに対して自分の両腕に「部分強化」を発動させ、そのまま金棒で迎え撃つ。



ガァアアアンッ‼



化物の右腕の刃とゴンゾウの金棒が衝突し、凄まじい金属音が響き渡る。両者は衝撃で体勢を崩し、それでもすぐに持ち直したゴンゾウが金棒を振るいあげ、そのまま叩き込む。


「ぬんっ‼」
「グハァッ⁉」


ドゴォンッ‼


金棒が化物の胴体にめり込み、そのまま吹き飛ばそうとするが、予想外にも相手に重量があり、バランスを崩す程度の衝撃しか与えられない。


「ゴノッ……‼ シネヤァッ‼」
「ぐはっ⁉」


ズドォンッ‼


右腕がゴンゾウの胸元に叩き込まれ、そのまま勢いよく吹き飛ばされそうになるが、なんとか押し留まり、逆にゴンゾウがその右腕を掴んで拘束する。


「ぐぐぐっ……‼」
「コノ……ハナセッ‼」
「そのまま抑えていてくれ‼」
「わぉんッ‼」
「ウォンッ‼」



ゴンゾウに右腕を掴まれたまま動けない化物に対し、リノンとポチ子、さらにはウルが飛び上がり、三人は空中から仕掛ける。



「和風牙‼」
「火炎旋風‼」
「ガァアアアッ‼」



ポチ子は回転しながら双剣を振り下ろし、リノンは火炎剣の状態のまま回転斬りを行い、ウルは横回転をしながら牙を放つ。



――ズガァアアアアンッ‼



「ウグァアアアアアアアッ⁉」



背中、右肩、左肩の三方向からの攻撃に化物は悲鳴を上げ、その隙を逃さずにゴンゾウが相手の身体を掴み取り、渾身の力で相撲の要領で押し切り、


「うおぉおおおおっ‼」
「グヘェッ⁉」


ドォオオオンッ‼


そのまま化物の身体を押し倒し、右腕を振り上げて顔面に叩き付ける。周囲に血飛沫が舞い、それでも止めに至らなかったのか、すぐに化物が両腕を振るってゴンゾウを振り払う。


「ゴノッ……クソガァッ‼」


怒り心頭で起き上がる化物に対し、レノはフレイと共に掌を合わせ、お互いの風の魔力を凝縮させて球体上の嵐を形成させ、


「本当に上手くできるの?」
「大丈夫だって……多分」
「最後の一言で凄い不安になったんだけど……行くよ‼」


レノとフレイが同時に掌を突き出し、化物に向けて2人が形成した嵐の魔力が凝縮された球体が解き放たれる。その速度は尋常ではなく、ゴンゾウたちを潜り抜け、化物の目前にまで迫ると、


「合体魔法‼」
「竜巻‼」



ギュオォオオオオッ‼



「オアァアアアアアアッ⁉」


空間に凄まじい竜巻が発生し、そのまま化物の巨体が浮き上がり、天井近くまで上昇したところで暴風が消散し、巨体が落下する。



「ウワァアアアアアアッ⁉」



空中で暴れながら落下する光景は滑稽だが、このままの勢いで落ちれば無傷で済むはずがなく、化物は両腕を交差させて何とか墜落の衝撃を堪えようとするが、地面の方に視線を向けたときに異変を察知する。



「時間稼ぎ、ありがとうございます‼」



そこにはレーヴァティンを構えたジャンヌが化物に向けて跳躍しており、彼女を投げ飛ばしたと思われるミノっちが鼻息を鳴らし、その横には彼を治療したと思われるコトミがVサインを行っており、彼女はレーヴァティンに真紅の炎を纏わせ、刀身を震わせる。



「マッ――⁉」
「遅い‼」



ズバァアアアアンッ‼



――次の瞬間、化物の上半身と下半身が一刀両断され、そのまま地面に落下して派手に土煙を沸き上げた。
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