種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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真章 〈終末の使者編〉

迷宮の結界

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「……ミノっちの案内の元、私達は彼の縄張りに辿り着いた」
「急にどうしたコトミ?」
「……現状把握」


現在、レノ達はミノっちの案内で彼の縄張りである広間に到着し、入り組んだ迷宮の中を突き進み、円形上に広がっている空間に到着する。天井から落石でも落ちて来たのか、無数の岩石が周囲に散らばっており、レノ達は岩石を潜り抜けながら広間の中央付近に移動して感嘆の声を上げる。


「これは……家か?」
「というより、釜倉?」
「ブモォッ」


広間の中央部にはミノっちが普段住んでいる岩石で形成された住処が存在し、天井からの落石だけではなく、この迷宮に広がっている壁の一部も材料として利用しており、釜倉に近い形状の家だった。

流石にこれだけの人数を入れるほどの大きさではなく、ミノっちはそのまま住処に入り込み、すぐに大きな袋を担いで姿を現す。


「ブモォッ……」
「おっ……まだ持ってたんだ?」


ミノっちは少し黄ばんだ袋をレノに差し出し、すぐに受け取って中身を確認すると、この地下迷宮に住んでいた時にレノが彼に預けていた様々な品物が入っていた。中身の殆どはゴーレムから回収した特殊な魔石や、この地下迷宮内で拾い上げた冒険者たちの遺品であり、地面に中身を広げて全員が覗き込む。


「これは……もしかして、ゴーレムの核の破片ですか? しかも、こんなにたくさん……」
「こっちはもしかしてミスリル製のナイフか? よくこんな物まで……」
「ウォンッ‼」
「あ、ウルが加えてるのはオークの骨だ」
「なっ? これはもしかして古代魔法の古文書じゃないですか⁉ こんな物まで……」
「……おーぱーつ」


全員がレノが地道に集めていた戦利品に夢中になり、特にリノンとジャンヌは興奮気味に武器や魔法の古文書(巻物)を調べ、1つ1つが現在の地上では滅多に入手できない貴重品であり、これだけでも全部を合わせれば小さな家が購入できるほどの値段となる。


「ずっと持っててくれたんだな……ありがとう」
「……ブモォッ」


レノは律儀に自分がいなくなった後も預けていた品物を大事に保管していたミノっちに礼を告げ、彼はその場に跪き、相変わらず自分の事を主人として崇める姿に頬を搔き、昔は顔を合わせる度に殴り合っていたのに随分と性格が変わったことに溜息を吐く。

しばらくの間はミノっちの家でレノの戦利品の鑑賞が行われていたが、流石に何時までもこの場所に留まる訳にもいかず、もう一度ミノっちに浮揚石が存在する場所の心当たりがないのか尋ねる。


「……私、不思議な石、探してる……知らない?」
「ブモォッ……?」
「……力、籠める。石が浮く、心当たりない?」
「外国人を相手に片言で話しかけてるみたいだな……」


コトミの手振り身振りも加えた説明に対し、ミノっちは思い出したように頷き、ある方向を指差す。


「……探し物はあっちにあるだって」
「よし、もう一回案内してくれるように頼んで」
「……場所、教えて」
「ブモォッ」


ジェスチャーを交えたコトミの説明が上手く通じたのか、そのままミノっちは自分が指差した方向に歩み出し、後から全員が続く。後方では慌てて戦利品を袋に戻して持ち帰ろうとしたリノンが、あまりの予想外の重量に体勢を崩し、ゴンゾウが慌てて後方から支える。


「ちょ、ちょっと待ってくれ……この荷物、やたらと重くて……」
「大丈夫か? 俺が持とう」
「す、すまない……」


ゴンゾウがリノンから荷物を受け取り、そのまま巨人族の腕力で軽々と持ち上げ、移動を行う。ミノっちの住処を後にする。


「……お腹すいた」
「そう言えばもうすぐ昼時か……適当な奴を捕まえてご飯にしようか」
「ここで昼食にするのか? もう少し、安全な場所に移動してから……」
「ミノっちがいるから平気だよ」


レノ達は移動を始めてから30分が経過し、コトミの言葉に昼食を行う事を決める。レノたちはそれぞれが持参した弁当を取り出し、ミノっちは見張り役としてレノが与えたニンジンカ(ニンジン)を食しながら魔物達が接近してこないかを見張る。


「……センリのお弁当、美味しい」
「それは師……センリが用意した物ですか?」
「随分と多いな……」
「意外と俺とコトミも食べる方だよ」


コトミが用意した重箱にはレノとコトミのため、センリがわざわざ用意してくれたおにぎりとおかずが入っており、移動中でも食べられるようにと作ってくれたのだ。ちなみに聖導教会組の人間は基本的に誰でも大量の食事を必要としており、これは他者を癒すために使用したエネルギーの補給のために食事を多く食す傾向があるからだと言われている。

リノンは持参の弁当を取り出し、ジャンヌは城の人間が用意してくれた栄養バランスを考えられた弁当、ゴンゾウとポチ子は何処から取り出したのか骨付き肉を取り出し、フレイはレノが分けてくれた生野菜、ウルは先ほどのオークの骨に喰らいつく。


「わふわふっ……」
「がつがつっ……」
「……むしゃむしゃっ……」
「いや、落ち着いて食べようよ」


皆が夢中で食事を行い、レノも食べながら周囲の光景に視線を向ける。食べ物の匂いに釣られて何度か魔獣が姿を見せるが、ミノっちの存在に気付いて恐れを為して慌てて逃げ出す。少し懐かしい光景であり、レノが地下迷宮の第一階層でミノっちに護衛させる度に同じような事が起きていた。

皆が食事を終え、レノ達は後片付けを終えて再び移動を開始し、不意にミノっちが真っ直ぐに延々と伸びる通路の途中で立ち止まる。


「ブモッ……」
「どうした?」
「……何かいるって」


ミノっちが皆を制止させ、そのまま前方の通路を確認する。レノはウォール・グールでも出現したのかと気配を探るが、奴等の気配は感じられないが、確かに違和感を感じる。


「ブモォオオオッ……‼」


唐突にミノっちが咆哮を上げ、周囲に振動が発生する。次の瞬間、前方の空間に揺らめきが生じ、レノの脳裏に昔、空間を捻じ曲げて侵入者を閉じ込める罠に引っ掛かったことを思い出し、どうやら同類の罠が張られているらしい。

あの時は延々と真っ直ぐに広がる通路を歩き渡り、アイリィが仕込んでいてくれた転移魔法のお蔭で脱出できたが、あの時の様な空間魔法の罠にまた引っ掛かったてしまったのかと思ったが、ミノっちの咆哮で空間の境目が出現する。


「これは……森人族の結界魔法と似てますね」
「確か、空間に干渉して対象を閉じ込める魔法だったか?」
「間違いない。これはあたし達が扱っている魔法だ」


フレイがミノっちの横を通り過ぎ、波紋が生じている空間に掌を向け、何事か探るように瞼を閉じる。数秒後、彼女は何か納得したように頷きながら振り返り、



「……結界としては単純な魔法だな。中に入る前に魔法で攻撃すれば、簡単に壊れる」
「中に入れば? という事は、まだ俺達は結界の外なの?」
「ああ、まだ大丈夫だ……だが、こういった魔法は閉じ込められると内部から脱出することは難しいんだ。中に入り込む前に発見できてよかった」
「へえ……」
「どうすれば壊れるんですか?」
「レノが、それともお前たちの誰かが特大の魔法をぶっ放せば壊れるんじゃないのか? 但し、生半可な威力じゃ跳ね返されるからな」
「なるほど……では、僭越ながら私が」
「私もやろう」



ジャンヌが戦斧を、リノンが長剣を抜き放ち、それぞれが刃に魔力を走らせる。リノンはいつも通りの「火炎剣」を発動し、ジャンヌは刀を白く発光させ、両者は同時に空間に向けて攻撃を放つ。


「火炎乱武‼」
「フォトン・レイ‼」


バリィイイインッ‼


迷宮内に轟音が広がり、2人の攻撃が結界に突きだされ、そのままガラスが崩壊したかのような音が響き渡り、結界が破壊された。
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