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真章 〈終末の使者編〉
サルモドキ
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「犬牙流極意‼ 風牙‼」
ギュオォオオオッ‼
ポチ子が空中で双剣を振るいあげ、彼女の身体に風属性の魔力が吹き溢れる。ポチ子が得意とするのは肉体強化だが、風属性の魔力も扱える。そのまま渦巻き状の風の魔力を刀身に纏わせながら、トロールに振り下ろす。
ブシュウウゥッ‼
「ウゴォオッ⁉」
まるでドリルのようにトロールの肩肉を削り取り、彼女は離れると地面に着地し、片方の剣を口に加え、もう片方の剣を空中に放り投げる。そのまま四つん這いの体勢から跳躍し、そのままトロールの首元に向けて刃を放つ。
「じゅふぅふぇんっ(獣剣)‼」
「ゴァッ……⁉」
ズバァアアアアッ――‼
ポチ子の身体がトロールの横を通り過ぎた瞬間、トロールの巨大な頭部と胴体が切り離され、そのまま両方とも地面に崩れ落ちる。ポチ子は口から剣を話し、落下してくる片方の件も掴み取ると、鞘に収めて振り返る。
「これが……犬牙流です」
「かっけぇっ」
「見事だ」
「あ、あの犬っ娘こんなに強かったのか」
普段の態度からは想像できないほどにクールに決めるポチ子にレノ達は拍手を行い、フレイが冷や汗を流す。彼女がポチ子の戦闘を行う姿を見るのは初めてであり、もしかしたらここ最近鍛錬を怠っていた自分よりも強いのではないかと不安を抱く。
レノ達は打ち倒したトロールの死体を横切り、数十秒もすれば臭いを嗅ぎつけた他の魔物達が死肉に群がるだろう。その前にレノ達は地下迷宮の移動を行い、念のために壁や地面に道標を施しながら先に進む。
「……気のせいか、前に来た時よりも魔物の数が少ないように感じられますが……」
「そうだな……以前の時は、頻繁に戦闘になっていたが今は随分と静かだ」
「確かに……」
最初の襲撃から数分後、レノ達はその後は一度も魔物に遭遇せずに迷宮を順調に進んでいた。トロールと戦闘を行って以降、他の魔物とは未だに遭遇していない。
「気配はあるんだが……襲ってくる様子はないな」
「こっちを、見張っているのか?」
「変な奴等だな……」
「グルルルッ……‼」
周囲から感じ取れる気配から、姿は見えなくても間違いなく付近に魔物が潜んでいる事は確かだが、どういう事か前回の侵入の時とは違って襲い掛かる様子はない。すぐに何人かがレノに視線を向けて心当たりがないのかを問い質すと、
「ああ……第一階層の奴等は基本的に群れて行動しているから、相手より自分たちの数が少ない場合は襲い掛かる事は無いよ」
「なるほど……こちらは7人にウルが1匹、そう考えるとそれほど可笑しくはないのか?」
「ですが、前にテンペスト騎士団が聖剣回収のためにこの迷宮に訪れたときは1つの部隊に10人以上の人数を組んで挑みましたが、あの時は人数側でこちらが有利だった時でも襲われていましたが……?」
「こういったら何だけど、魔物だって馬鹿じゃないから、だいたいの相手の力量というか、実力、というよりは戦闘力を計れる能力ぐらい持ってるよ」
前回の時に地下迷宮に突入したテンペスト騎士団の部隊が魔物達の襲撃を受けてほぼ全滅した理由は、一言で言えば彼らが単純に実力不足だったからであり、今回のメンバーは当時の騎士団の者達と比べたら途轍もなく腕が立つ者達ばかりで行動しているから魔物達も易々と襲撃してこないのだ。
特にレノという存在がいるから襲われないという理由が大きく、先行する彼はまるで気軽に近所を散歩でもするかのように突き進むが、魔物達にとっては彼をから感じ取れる膨大な魔力に恐れを抱いている。
「……ん? あれ?」
「どうした?」
「いや……これを見て」
先頭のレノが立ち止まり、壁を指差す。そこには先ほどレノが書き残した王国の紋章の道標が書き込まれており、何時の間にか道に迷って同じ場所に戻ったのかと考えたが、レノは壁際を指差す。、
「これ、俺達が残した道標じゃない。確かに似ているけど、端の方に残していたウルの肉球マークが消えてる」
「ウォンッ‼」
「そんな物まで書きこんでいたのか……」
「となると、誰かが先回りして私達の残した道標を書き込んだのか?」
驚いた表情を浮かべるリノンに頷き、このように小賢しい罠を張る魔物は地下迷宮内でも限られている。以前にも地上で水人華を利用してレノをスライムが潜む泉に誘導した「トラップ・モンキー」のように、自分自身の手を汚さずに他の魔物が潜む場所にまで誘い込み、殺害させてお零れを得ようとする魔物が存在しする。レノは地下迷宮に住んでいた時にこの魔物の事を「サルモドキ」と名付けていた。
「多分、案外すぐ近くにこっちの様子を伺っていると思うけど……」
「……レノ」
周囲を見渡し、壁に偽の道標を書き込んだ相手を探していると、コトミがレノの袖を引いてある方向を指差す。
「……あそこの通路の影に、誰か隠れてる」
「おっ、見つけた?」
「……多分」
コトミの言葉にレノは視線を向け、7、8メートル先の右側に存在する通路を確認し、壁に手を押し当てる。隠れている場所が分かれば後は威嚇するだけで十分であり、掌に電流を迸らせる。
「地雷」
ズドォオオオンッ‼
掌から放たれた電撃が壁に伝わり、そのままコトミが告げた通路の方向へ向かう。電流が右方向の通路へと消え去る直後、電流が拡散する音と悲鳴が響き渡る。
バチィイイイッ……‼
「ギィアァアアアアッ⁉」
通路側から人間のような悲鳴が響き渡り、レノとコトミ以外の全員が驚愕し、全員が声のした方向に駆け出す。そのまま右方向の通路を覗き込んだ瞬間、その異様な光景に息を飲む。
「ギィイ……⁉」
そこには全身が茶色い体毛で覆われた人型の生物が横たわっており、外見は猿と酷似しているが、顔の部分だけはやたらたと人間的であり、猿の胴体と人間の顔を持った生物としか表現できない。その生物のすぐ傍には恐らくは壁に先ほどの偽物の道標を書き込んだと思われるチョーク(ただのチョークではなく、魔術師が魔方陣を書き込む際に愛用する特別な素材で造られている)が握り締められており、痙攣した状態で泡を噴いている。
「やっぱりお前か……相変わらず姑息な手を使うな」
「な、何だこいつは⁉ レノ、これは魔人族なのか⁉」
「いや、頭は良いけど人の言葉は分からないみたい。前に何度か遭遇したことがあるけど、いつもいいところで逃げられてた」
「面妖な……このような魔物は初めて見ました」
「気色悪いな……」
「ウォンッ‼」
「トラップ・モンキーとも、違う種みたいだな」
「がるるるっ……‼ (天敵の名前を聞いて興奮)」
「……どうどう(落ち着かせる)」
「わふぅ~(頭を撫でられて和む)」
倒れこんでいるサルモドキに対して全員が感想を告げると、すぐにレノは止めを刺すために右手を向け、そのまま「乱刃」で斬り裂こうとした時、
「……ギギィッ‼」
ドォンッ‼
気絶したと思い込んでいたサルモドキが唐突に跳躍し、そのままどこから取り出したのかナイフを片手にレノ達に飛びかかる。レノの電撃を真面に受けながら動ける分、相当に魔法耐性が高い生物だったのだろうが、
ガシィッ‼
「ウギィッ⁉」
―――突如、サルモドキは空中で身体が停止し、すぐに自分の肉体が後方から何者かに捕まえられている事を悟り、振り返るとそこには牛と人間が合わさったような化け物の姿があり、レノ達が驚愕の表情を浮かべる中、そのまま彼は大きくサルモドキの身体を振り上げ、
「ブモォオオオオオッ――‼」
ズガァアアアアンッ‼
迷宮に轟音が響き渡り、サルモドキはこの地下迷宮の主と言っても過言ではないミノタウロスこと「ミノっち」に地面に叩き付けられ、絶命した。
ギュオォオオオッ‼
ポチ子が空中で双剣を振るいあげ、彼女の身体に風属性の魔力が吹き溢れる。ポチ子が得意とするのは肉体強化だが、風属性の魔力も扱える。そのまま渦巻き状の風の魔力を刀身に纏わせながら、トロールに振り下ろす。
ブシュウウゥッ‼
「ウゴォオッ⁉」
まるでドリルのようにトロールの肩肉を削り取り、彼女は離れると地面に着地し、片方の剣を口に加え、もう片方の剣を空中に放り投げる。そのまま四つん這いの体勢から跳躍し、そのままトロールの首元に向けて刃を放つ。
「じゅふぅふぇんっ(獣剣)‼」
「ゴァッ……⁉」
ズバァアアアアッ――‼
ポチ子の身体がトロールの横を通り過ぎた瞬間、トロールの巨大な頭部と胴体が切り離され、そのまま両方とも地面に崩れ落ちる。ポチ子は口から剣を話し、落下してくる片方の件も掴み取ると、鞘に収めて振り返る。
「これが……犬牙流です」
「かっけぇっ」
「見事だ」
「あ、あの犬っ娘こんなに強かったのか」
普段の態度からは想像できないほどにクールに決めるポチ子にレノ達は拍手を行い、フレイが冷や汗を流す。彼女がポチ子の戦闘を行う姿を見るのは初めてであり、もしかしたらここ最近鍛錬を怠っていた自分よりも強いのではないかと不安を抱く。
レノ達は打ち倒したトロールの死体を横切り、数十秒もすれば臭いを嗅ぎつけた他の魔物達が死肉に群がるだろう。その前にレノ達は地下迷宮の移動を行い、念のために壁や地面に道標を施しながら先に進む。
「……気のせいか、前に来た時よりも魔物の数が少ないように感じられますが……」
「そうだな……以前の時は、頻繁に戦闘になっていたが今は随分と静かだ」
「確かに……」
最初の襲撃から数分後、レノ達はその後は一度も魔物に遭遇せずに迷宮を順調に進んでいた。トロールと戦闘を行って以降、他の魔物とは未だに遭遇していない。
「気配はあるんだが……襲ってくる様子はないな」
「こっちを、見張っているのか?」
「変な奴等だな……」
「グルルルッ……‼」
周囲から感じ取れる気配から、姿は見えなくても間違いなく付近に魔物が潜んでいる事は確かだが、どういう事か前回の侵入の時とは違って襲い掛かる様子はない。すぐに何人かがレノに視線を向けて心当たりがないのかを問い質すと、
「ああ……第一階層の奴等は基本的に群れて行動しているから、相手より自分たちの数が少ない場合は襲い掛かる事は無いよ」
「なるほど……こちらは7人にウルが1匹、そう考えるとそれほど可笑しくはないのか?」
「ですが、前にテンペスト騎士団が聖剣回収のためにこの迷宮に訪れたときは1つの部隊に10人以上の人数を組んで挑みましたが、あの時は人数側でこちらが有利だった時でも襲われていましたが……?」
「こういったら何だけど、魔物だって馬鹿じゃないから、だいたいの相手の力量というか、実力、というよりは戦闘力を計れる能力ぐらい持ってるよ」
前回の時に地下迷宮に突入したテンペスト騎士団の部隊が魔物達の襲撃を受けてほぼ全滅した理由は、一言で言えば彼らが単純に実力不足だったからであり、今回のメンバーは当時の騎士団の者達と比べたら途轍もなく腕が立つ者達ばかりで行動しているから魔物達も易々と襲撃してこないのだ。
特にレノという存在がいるから襲われないという理由が大きく、先行する彼はまるで気軽に近所を散歩でもするかのように突き進むが、魔物達にとっては彼をから感じ取れる膨大な魔力に恐れを抱いている。
「……ん? あれ?」
「どうした?」
「いや……これを見て」
先頭のレノが立ち止まり、壁を指差す。そこには先ほどレノが書き残した王国の紋章の道標が書き込まれており、何時の間にか道に迷って同じ場所に戻ったのかと考えたが、レノは壁際を指差す。、
「これ、俺達が残した道標じゃない。確かに似ているけど、端の方に残していたウルの肉球マークが消えてる」
「ウォンッ‼」
「そんな物まで書きこんでいたのか……」
「となると、誰かが先回りして私達の残した道標を書き込んだのか?」
驚いた表情を浮かべるリノンに頷き、このように小賢しい罠を張る魔物は地下迷宮内でも限られている。以前にも地上で水人華を利用してレノをスライムが潜む泉に誘導した「トラップ・モンキー」のように、自分自身の手を汚さずに他の魔物が潜む場所にまで誘い込み、殺害させてお零れを得ようとする魔物が存在しする。レノは地下迷宮に住んでいた時にこの魔物の事を「サルモドキ」と名付けていた。
「多分、案外すぐ近くにこっちの様子を伺っていると思うけど……」
「……レノ」
周囲を見渡し、壁に偽の道標を書き込んだ相手を探していると、コトミがレノの袖を引いてある方向を指差す。
「……あそこの通路の影に、誰か隠れてる」
「おっ、見つけた?」
「……多分」
コトミの言葉にレノは視線を向け、7、8メートル先の右側に存在する通路を確認し、壁に手を押し当てる。隠れている場所が分かれば後は威嚇するだけで十分であり、掌に電流を迸らせる。
「地雷」
ズドォオオオンッ‼
掌から放たれた電撃が壁に伝わり、そのままコトミが告げた通路の方向へ向かう。電流が右方向の通路へと消え去る直後、電流が拡散する音と悲鳴が響き渡る。
バチィイイイッ……‼
「ギィアァアアアアッ⁉」
通路側から人間のような悲鳴が響き渡り、レノとコトミ以外の全員が驚愕し、全員が声のした方向に駆け出す。そのまま右方向の通路を覗き込んだ瞬間、その異様な光景に息を飲む。
「ギィイ……⁉」
そこには全身が茶色い体毛で覆われた人型の生物が横たわっており、外見は猿と酷似しているが、顔の部分だけはやたらたと人間的であり、猿の胴体と人間の顔を持った生物としか表現できない。その生物のすぐ傍には恐らくは壁に先ほどの偽物の道標を書き込んだと思われるチョーク(ただのチョークではなく、魔術師が魔方陣を書き込む際に愛用する特別な素材で造られている)が握り締められており、痙攣した状態で泡を噴いている。
「やっぱりお前か……相変わらず姑息な手を使うな」
「な、何だこいつは⁉ レノ、これは魔人族なのか⁉」
「いや、頭は良いけど人の言葉は分からないみたい。前に何度か遭遇したことがあるけど、いつもいいところで逃げられてた」
「面妖な……このような魔物は初めて見ました」
「気色悪いな……」
「ウォンッ‼」
「トラップ・モンキーとも、違う種みたいだな」
「がるるるっ……‼ (天敵の名前を聞いて興奮)」
「……どうどう(落ち着かせる)」
「わふぅ~(頭を撫でられて和む)」
倒れこんでいるサルモドキに対して全員が感想を告げると、すぐにレノは止めを刺すために右手を向け、そのまま「乱刃」で斬り裂こうとした時、
「……ギギィッ‼」
ドォンッ‼
気絶したと思い込んでいたサルモドキが唐突に跳躍し、そのままどこから取り出したのかナイフを片手にレノ達に飛びかかる。レノの電撃を真面に受けながら動ける分、相当に魔法耐性が高い生物だったのだろうが、
ガシィッ‼
「ウギィッ⁉」
―――突如、サルモドキは空中で身体が停止し、すぐに自分の肉体が後方から何者かに捕まえられている事を悟り、振り返るとそこには牛と人間が合わさったような化け物の姿があり、レノ達が驚愕の表情を浮かべる中、そのまま彼は大きくサルモドキの身体を振り上げ、
「ブモォオオオオオッ――‼」
ズガァアアアアンッ‼
迷宮に轟音が響き渡り、サルモドキはこの地下迷宮の主と言っても過言ではないミノタウロスこと「ミノっち」に地面に叩き付けられ、絶命した。
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