種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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魔王大戦編

魔王

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「レノさん!!さっさと無敵のカリバーンで何とかしてくださいよぉっ!!」
「なら、時間を止めるくらいの能力を寄越せ!!」
「無理です!!」


雷雲号で移動しながらレノはカリバーンを握りしめ、不安定ではあるが両手で構えると、追跡してくるリーリスに視線を向け、彼女の胸元の魔の聖痕を確認する。あの場所に剣を突き刺せば勝機はあるが、あんな生物に近づいたら一瞬で肉塊(ミンチ)にされてしまう。

このままでは逃げ続けても進展せず、一か八か賭けに出るしかない。レノはカリバーンの力を最大限に引き出し、アイリィに振り返り、


「あいつの動きを止められない!?一瞬で良い!!」
「保証は出来ませんけど……やって見せます!!」


そう告げるとアイリィは回収したばかりの転移の聖痕を確認し、ホノカは無機物しか送り込めなかったが、本来の持ち主であるアイリィに制限は無く、雷雲号の前方に魔方陣を形成させて飛び込む。


ブゥンッ――!!


視界が一瞬に変化し、どうやら少し離れた場所に移動したようだが、リーリスは魔方陣に飲み込まれたアイリィ達の姿を見失い、混乱したように周囲を見渡す。まだ理性は残っているようであり、その間にオーバーヒートを起こしている雷雲号から2人は降り立ち、アイリィは樹の聖痕を発動させて地面に掌を押し当てる。


メキメキィッ……!!


『ナニィッ……!?』


唐突に足元に木の根が絡みつき、リーリスはすぐに引き千切ろうとするが、その前に身体全体に植物の蔓が拘束し、身体ごと持ち上げられる。それに留まらず、アイリィは雷と嵐の聖痕も発動させ、


『ウオォオオオオオッ……!?』


ビュオォオオオオッ……!!


竜巻が発生し、そのままリーリスの身体を飲み込んだと思うと、何時の間にか雷雲が上空に形成されており、巨大な雷を落とす。彼女は激しく痙攣を起こし、その間にもアイリィは最後に甲冑の騎士が操作していた重力の聖痕を発動させ、


「これが……最後です!!」


ドゴォオオオオンッ……!!


『ゴァアアアアッ……!?』


何十倍もの重力がリーリスの肉体を押し潰し、そのまま地面に亀裂が走る。複数の聖痕の攻撃にリーリスの頑強な肉体にも影響が及び始め、罅割れが発生する。これは損傷を受けたというよりも、アイリィの聖痕にリーリスの聖痕が反応し、内側から崩壊したている。

リーリスの聖痕は元々はアイリィの所有物であり、聖痕同士が本来の持ち主の元に戻ろうとしているのだ。しかし、「影」と「魔」の聖痕だけはリーリスが後の時代に開発した力であり、アイリィには反応せず、重力で押し潰されそうになりながらも、彼女に力を送り込んで立ち上がる。


『ワタシノ、チカラァアアアアッ……!!』


他の聖痕がアイリィに反応している事に気付き、魔の聖痕と影の聖痕が他の「水」「磁力」「炎」の力を逃すまいとしており、各聖痕同士に血管の様な者が浮き上がり、直結させる。それでもフォルムの肉体は限界を迎えており、徐々に崩れ去っていく。

今の状態ならば攻撃が通じると判断し、レノはカリバーンを握りしめて接近し、アイリィは重力の範囲を縮める事で間違っても彼を押し潰さないように注意を払いながら、レノはカリバーンを振り上げる。


「カリバァアアアアンッ!!」
『マテッ……!?』



――ズガァアアアアアアアアアン!!



カリバーンから金色の雷を纏った光の奔流が放出され、そのままリーリスの身体を飲み込み、徐々に崩れ去る。彼女は悲鳴を上げながらも、右腕に仕込んだ「ロンギヌス」の杖を振り翳し、そのまま魔力を送り込んで熱線を無茶苦茶な方角に放出する。


ズドォオオオオオンッ!!


「まだそんな力が……きゃああっ!?」
「アイリィ!?」


熱線は地面に掌を押し付けるアイリィに放たれ、彼女は直撃して吹き飛ぶ。その瞬間、リーリスに掛けられていた重力が解除され、彼女はロンギヌスを腕から引き抜き、傷ついた身体でレノに突撃する。


『レノォオオオオッ……!!』
「リーリスゥッ!!」


御互いの名前を呼び合い、御互いに拳を振り抜き、レノは左拳に解放術式を発動させ、天属性の力を纏わせる。リーリスはロンギヌスの槍を引き抜いた右腕を掲げ、炎の魔力を纏わせ、両者の拳が衝突する。その瞬間、凄まじい爆風が発生し、どちらも派手に吹き飛ぶ。



ドガァアアアアアアアンッ!!



レノとリーリスの身体が強い衝撃が走り、左拳を痛めながらもレノは肉体強化を発動させ、前方に視線を向ける。リーリスは右拳が破壊されており、それでも左腕にロンギヌスの槍を握りしめ、魔力を送り込み、御互いに最後の賭けに出た。


「カリバーン!!」


掌を差し伸べ、地面に放置していた聖剣が自動的に掌に収まる。聖剣の所有者だからこそ出来る芸当であり、彼は全ての魔力を注ぎ込み、リーリスと同時に砲撃を放つ。



「うおぉおおおおおおおおおおおっ!!」
『キエロォオオオオオオオオオオッ!!』




――ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!




2人の聖遺物の砲撃が衝突し、聖雷と赤熱の光線が混じり合い、光の奔流の凌ぎ合いが始まる。リーリスが莫大な魔力をロンギヌスに注ぎ込む一方、レノは今までに培った魔力をカリバーンに注ぎ込む。



ズガァアアアアアアアッ……!!



『オアァアアアアアアアアアッ!!』
「ぐっ……!!」


周囲一帯に爆風が発生し、レノの髪の毛が徐々に白髪化を始め、魔力が失われていく感覚に襲われる。それでも彼は最後の力を振り絞り、カリバーンを握りしめたまま走り出す。砲撃が途中で中止されたことにより、ロンギヌスの光線がそのまま遥か後方に放たれ、後方で核爆発のように大爆発が生じる。

それでも、敢えてレノは後方に生じた爆発の爆風を利用し、そのまま瞬脚を発動させてカリバーンを振り抜き、唐突な彼の行動に驚愕したリーリスの身体に向けて放つ。



「おぉおおおおおおっ!!」
『キサッ……!?』



ズゥウウウウンッ――!!



カリバーンの刃がリーリスの胸元に突き刺さり、その瞬間に肉体内部から聖雷が走り込み、肉体崩壊を始める。それだけではなく、レノは残った魔力を全て右拳に注ぎ込み、最後の力を振り絞り、金色の雷をッ纏わせ、リーリスの肉体から抜け出した黒色の瘴気に向け、



『レノォオオオオオッ……!?』
「――消えろ」



ドォオオオオオオンッ――!!



放浪島に潜む地下迷宮の第三階層の化け物、実態を持たない霊魂、世界を一度征服した「魔王(リーリス)」は天属性の雷に飲み込まれ、完全に消滅した――
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