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魔王大戦編
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「妙な奴等?」
「原理は分からんが、身体がやたらと半透明で視界で捉えるのが困難な奴等だった。噂に聞く魔人王のインビジブルという魔法を扱っているのかと思ったが、奴等の場合は気配さえも途絶えていた。正直に言えば悪霊系の魔物を相手にしている気分だったな」
「半透明……まさか、あいつらか」
「心当たりがあるんですか?」
フレイが驚いた表情を浮かべ、彼女に視線が集中すると少しだけ言いにくそうに視線をそらし、
「……私達森人族の中にも人間の王国のように「影の一族」と呼ばれる存在がいる。主に情報収集や暗殺を生業とした奴等だ。私も族長から話は聞いているが実際に遭ったことは無い」
「そう言えば私も聞いたことありますね……でも、そんなに凄い人たちなんですか?」
「奴等を捉えるのは私ですら困難だった。結局、面倒になって館全体を燃やし尽くして排除しようと考えたんだが、寸前で逃げられた」
「……族長の仕業か?目的はレノの回収だったのかもしれないが……」
「なら、もしかしたら子供達は攫われたんですかね?」
「いや、そこまでは分からん……だが、あいつらもエルフならば子供は不用意に殺さないはず。例え、人間の子供だろうとな」
「……聞きたい事はそれだけか?」
ホムラが睨み付けるようにアイリィに視線を向けると、今度はバルに頼まれていた質問を行う。
「ハナムラ侯爵家の屋敷に侵入したことを覚えていますか?」
「ああ……無駄に豪勢なあの趣味の悪い屋敷か。クズノキ(クズキの本名)の奴がそこに仕えていると聞いていたが、まさかあの猫耳女が先に侵入していると聞いた時は少し驚いたな。まあ、都合が省けたと思ったが、結局どちらも逃げられたんだが」
「地下牢に閉じ込められていたバルさんの部下たちはどうしたんですか?」
「あの時は……確か、既に地下牢に捕まっていた奴等は全員兵士に殺されていたな。情報を聞き出す事が出来なかったが、その兵士たちのやり方には虫唾が走ったから消し炭にしたがな」
燃え盛る屋敷内でバルを適当に相手をしたあと、ホムラは地下牢に侵入した時には既にバルの部下たちは既に兵士たちに彼女の脱走の手助けをしたとして槍に串刺しにされており、誰一人として生き残っていなかったという。結局、ホムラが不憫に思って兵士たちをなぎ倒した後、火葬代わりに彼らの死体を焼却し、地上に戻った時にはバルはクズキに救助されて姿を消していたという。
話を聞けば聞くほど、彼女に抱いていた想像が崩れ、少なくとも彼女がレノの大事な人たちに直接的に手を下した訳ではなさそうようである。それでも彼女が鳳凰学園でクズキを殺したという事実に変わりは無く、結局は彼にとっては復讐の対象である事に変わりはないが。
「なら、ここから先は私の純粋な疑問です。どうやってこの屋敷に訪れたんですが?そう簡単に入り込めない様に一応は防衛魔法が施されているはずですけど……」
「……交易都市で妙な男が現れた。あの女(ホノカ)がここにいると聞いて、そいつに渡された羊皮紙に触れたら気が付いたらこの屋敷のすぐ傍に転移していた」
「羊皮紙?」
「……まさか」
アイリィの脳裏に先の学園都市でレノ達に渡した特殊な魔方陣を刻み込んだ羊皮紙を思い出し、すぐに有り得ないと首を振る。あの転移魔法は1000年前に焼失した古代魔法であり、世界で操れる者など彼女以外にいるはずが無いと思っていたが、彼女の話が事実なら違和感を抱く。
しかし、他にも気になるとしたらどうしてホムラがその男の話を信じた事であり、そもそも相手はどうやって聖導教会の管轄である聖天魔導士の屋敷の前に転移できるように仕組んだのか、第一に今回のソフィアのパーティーは内密に進められたにも関わらず、何故ホノカが参加する事を知っていたのかだが、
「私としても胡散臭い男だと思ったが、他に手掛かりがなかったから乗ってやった」
「馬鹿なんですか貴女?」
「どちらにしろ、あの女が都市にいない事は確かだったからな。待つのも面倒だったし、罠であろと突破するつもりだったが……結果はこの様か」
「何を笑ってるんだお前……」
「ク~ンッ……」
口元に自嘲気味の笑みを浮かべるホノカにフレイとウルは後退り、こんな得体の知れない女に自分の甥が苦しめられたのかと考えると色々と思う所はあるが、それよりも彼女を送り込んだ「男」という存在も気になるが、今はレノの弟分である子供達を連れ去ったと思われる「影」の事も気にかかる。
「その影というのはどれくらいの規模なのか分からないんですか?」
「さあ……私も子供の頃に族長から聞いただけだからな。でも、1000年前の時代から存在したのは確からしい。確か……長老会?とかいう組織に所属しているとか何とか……」
「どちらにせよ、厄介な奴等に目を付けられてましたね。ある意味ではロスト・ナンバーズよりも質が悪い……」
「おい」
深い溜息を吐くアイリィに対し、ホムラは拘束されながらも周囲を見渡し、
「あの子供はどうした?」
「レノさんの事を言ってるんですか?貴女にこっぴどくやられて伸びてますよ」
「そうか……ふふっ」
「何を笑ってるんですか。貴女は負けたんですよ?」
結果的には全員で襲い掛かる形になったが、最後はソフィアの捨身の一撃によってホムラが気絶に追い込まれたことは間違いなく、負けた事に違いは無い。一対一の戦いならばホムラに勝てる存在などいないかもしれないが、どんなに言い訳をしようと生殺与奪の権利を相手に与えた時点で彼女の負けだった。
「いや……まさか、あの時の子供が私に追いつくまでに成長しているとはな」
「レノさんを舐めたらいけませんよ。いつもを期待以上の働きをしてくれる頑張り屋さんですからね」
「そうだろ!!うちの子は凄いんだ!!」
「ウォンッ!!」
何故か満足げに頷くフレイにホムラとアイリィは呆れた視線を向けるが、一先ずだいたいのホムラの正体は掴め、新たに出てきた謎の存在に疑問を抱く一方、今後の事について皆で考えなければならない。
「さてと……貴女の処分ですが、まずは世界各地で大多数の殺人、及び放火をしている証拠が多数発見。王国の貴族であるハナムラ侯爵家の屋敷を襲撃して全焼、鳳凰学園の教師を殺害、今回の聖導教会の管理している土地に侵入、及び聖天魔導士の屋敷にも入り込み、建物の損壊させ、大勢の人に暴行と殺人未遂を結構。極め付けに何よりも許せないのは私が大事にとって置いたデザートの机を台無しにしたことは大罪ですね!!」
「最後のは言う必要あるのか……?」
「そうか……デザートの件だけは謝っておく」
「謝った!?」
「じゃあ、その件は許しましょう。アルトさんからは王国で死刑するか、それとも聖導教会側で断罪するか相談中です」
「死ぬのは確定なのか」
「当たり前だ馬鹿!!お前のせいでレノがどんな人生を送ったと思ってんだ!!」
フレイは激昂し、確かにホムラという存在がレノの人生は大きく変わった事は事実だが、逆に言えば彼をここまで強くしたのは彼女という存在がいたからだろう。彼女に復讐するという想いを抱き続けていなければ、レノはあれほどまでに「強さ」を求めてはいなかっただろう。だからと言って、彼女がレノに対して行った行為が許されるものではないのだが。
「でも、そんな貴女の罪を全て帳消しにする方法を教えてあげます」
「なに?」
「はあっ!?」
ここまで仕出かしたホムラに対してとんでもないことを告げるアイリィにフレイは驚愕し、拘束されている彼女も訝し気な表情を浮かべると、
「現在の王国は深刻な戦力不足ですからね……頼りの勇者さん達も美香さん以外が全員死んじゃいましたから、リーリスの配下にある人魚族と魔人族、さらにはフェンリルを相手に同時に相手にするのは難しい状況なんですよ。頼りの綱の巨人族もダンゾウさんが回復しない限り、援軍を期待できません。森人族の方も非協力的ですからね」
「正気か?」
「何を考えてんだお前!?こいつは……!!」
「黙ってください。これはあくまでも提案に過ぎません。ですが、恐らくはアルトさんも教会側も納得するはずでしょう」
リーリスは間違いなく、近日中に闘人都市の宝玉を狙って訪れるだろう。その際にホムラの所持していたゲイ・ボルグを狙うのは確定的であり、このままあの槍と彼女をこの屋敷で管理するのは危険すぎる。そもそも魔槍は所有者以外の人間には扱えず、武器としても扱えない。
ならばホムラをこちら側に引き入れる事で戦力差を覆し、リーリスを打倒する方が賢明ではあるのだが、
「断る。他者に降る事など吐き気がする」
「なんだと!?」
「もう、話が進まないので貴女は黙っててくださいよ」
「ふげっ!?」
ドスッ!!と急所に指を突き立てられ、フレイはその場でうずくまり、容赦のない攻撃に仲間同士ではないのかとホムラが疑問を抱いていると、アイリィは彼女に顔を近づけ、悪役のような笑みを浮かべ、
「別に断ってもいいんですよ?ただ、貴女はあの男とやらに復讐も果たせず、ソフィアさんに負けたまま惨めな最期を迎える事になるんですよ~?」
「……何が言いたい?」
「汚名返上したいというのなら、私達に協力してください。そうしてくれるのなら、貴女の今まで犯した罪は帳消しにしましょう」
「そんな権限がお前みたいな女にあるのか……?」
「王国側には色々と協力してますし、それに彼等にとっても大きな利益がある話ですからね。最悪でも無罪放免とまではいかなくても、放浪島送りにはなると思いますよ」
「……何をさせる気だ?」
ホムラの発言に笑みを浮かべ、彼女は次の言葉を告げた瞬間、胡散臭げだった彼女の表情が一変し、先ほどのソフィアの成長を楽しんでいた時のように笑みを浮かべた。
「――フェンリルを殺してください。貴女1人で」
「原理は分からんが、身体がやたらと半透明で視界で捉えるのが困難な奴等だった。噂に聞く魔人王のインビジブルという魔法を扱っているのかと思ったが、奴等の場合は気配さえも途絶えていた。正直に言えば悪霊系の魔物を相手にしている気分だったな」
「半透明……まさか、あいつらか」
「心当たりがあるんですか?」
フレイが驚いた表情を浮かべ、彼女に視線が集中すると少しだけ言いにくそうに視線をそらし、
「……私達森人族の中にも人間の王国のように「影の一族」と呼ばれる存在がいる。主に情報収集や暗殺を生業とした奴等だ。私も族長から話は聞いているが実際に遭ったことは無い」
「そう言えば私も聞いたことありますね……でも、そんなに凄い人たちなんですか?」
「奴等を捉えるのは私ですら困難だった。結局、面倒になって館全体を燃やし尽くして排除しようと考えたんだが、寸前で逃げられた」
「……族長の仕業か?目的はレノの回収だったのかもしれないが……」
「なら、もしかしたら子供達は攫われたんですかね?」
「いや、そこまでは分からん……だが、あいつらもエルフならば子供は不用意に殺さないはず。例え、人間の子供だろうとな」
「……聞きたい事はそれだけか?」
ホムラが睨み付けるようにアイリィに視線を向けると、今度はバルに頼まれていた質問を行う。
「ハナムラ侯爵家の屋敷に侵入したことを覚えていますか?」
「ああ……無駄に豪勢なあの趣味の悪い屋敷か。クズノキ(クズキの本名)の奴がそこに仕えていると聞いていたが、まさかあの猫耳女が先に侵入していると聞いた時は少し驚いたな。まあ、都合が省けたと思ったが、結局どちらも逃げられたんだが」
「地下牢に閉じ込められていたバルさんの部下たちはどうしたんですか?」
「あの時は……確か、既に地下牢に捕まっていた奴等は全員兵士に殺されていたな。情報を聞き出す事が出来なかったが、その兵士たちのやり方には虫唾が走ったから消し炭にしたがな」
燃え盛る屋敷内でバルを適当に相手をしたあと、ホムラは地下牢に侵入した時には既にバルの部下たちは既に兵士たちに彼女の脱走の手助けをしたとして槍に串刺しにされており、誰一人として生き残っていなかったという。結局、ホムラが不憫に思って兵士たちをなぎ倒した後、火葬代わりに彼らの死体を焼却し、地上に戻った時にはバルはクズキに救助されて姿を消していたという。
話を聞けば聞くほど、彼女に抱いていた想像が崩れ、少なくとも彼女がレノの大事な人たちに直接的に手を下した訳ではなさそうようである。それでも彼女が鳳凰学園でクズキを殺したという事実に変わりは無く、結局は彼にとっては復讐の対象である事に変わりはないが。
「なら、ここから先は私の純粋な疑問です。どうやってこの屋敷に訪れたんですが?そう簡単に入り込めない様に一応は防衛魔法が施されているはずですけど……」
「……交易都市で妙な男が現れた。あの女(ホノカ)がここにいると聞いて、そいつに渡された羊皮紙に触れたら気が付いたらこの屋敷のすぐ傍に転移していた」
「羊皮紙?」
「……まさか」
アイリィの脳裏に先の学園都市でレノ達に渡した特殊な魔方陣を刻み込んだ羊皮紙を思い出し、すぐに有り得ないと首を振る。あの転移魔法は1000年前に焼失した古代魔法であり、世界で操れる者など彼女以外にいるはずが無いと思っていたが、彼女の話が事実なら違和感を抱く。
しかし、他にも気になるとしたらどうしてホムラがその男の話を信じた事であり、そもそも相手はどうやって聖導教会の管轄である聖天魔導士の屋敷の前に転移できるように仕組んだのか、第一に今回のソフィアのパーティーは内密に進められたにも関わらず、何故ホノカが参加する事を知っていたのかだが、
「私としても胡散臭い男だと思ったが、他に手掛かりがなかったから乗ってやった」
「馬鹿なんですか貴女?」
「どちらにしろ、あの女が都市にいない事は確かだったからな。待つのも面倒だったし、罠であろと突破するつもりだったが……結果はこの様か」
「何を笑ってるんだお前……」
「ク~ンッ……」
口元に自嘲気味の笑みを浮かべるホノカにフレイとウルは後退り、こんな得体の知れない女に自分の甥が苦しめられたのかと考えると色々と思う所はあるが、それよりも彼女を送り込んだ「男」という存在も気になるが、今はレノの弟分である子供達を連れ去ったと思われる「影」の事も気にかかる。
「その影というのはどれくらいの規模なのか分からないんですか?」
「さあ……私も子供の頃に族長から聞いただけだからな。でも、1000年前の時代から存在したのは確からしい。確か……長老会?とかいう組織に所属しているとか何とか……」
「どちらにせよ、厄介な奴等に目を付けられてましたね。ある意味ではロスト・ナンバーズよりも質が悪い……」
「おい」
深い溜息を吐くアイリィに対し、ホムラは拘束されながらも周囲を見渡し、
「あの子供はどうした?」
「レノさんの事を言ってるんですか?貴女にこっぴどくやられて伸びてますよ」
「そうか……ふふっ」
「何を笑ってるんですか。貴女は負けたんですよ?」
結果的には全員で襲い掛かる形になったが、最後はソフィアの捨身の一撃によってホムラが気絶に追い込まれたことは間違いなく、負けた事に違いは無い。一対一の戦いならばホムラに勝てる存在などいないかもしれないが、どんなに言い訳をしようと生殺与奪の権利を相手に与えた時点で彼女の負けだった。
「いや……まさか、あの時の子供が私に追いつくまでに成長しているとはな」
「レノさんを舐めたらいけませんよ。いつもを期待以上の働きをしてくれる頑張り屋さんですからね」
「そうだろ!!うちの子は凄いんだ!!」
「ウォンッ!!」
何故か満足げに頷くフレイにホムラとアイリィは呆れた視線を向けるが、一先ずだいたいのホムラの正体は掴め、新たに出てきた謎の存在に疑問を抱く一方、今後の事について皆で考えなければならない。
「さてと……貴女の処分ですが、まずは世界各地で大多数の殺人、及び放火をしている証拠が多数発見。王国の貴族であるハナムラ侯爵家の屋敷を襲撃して全焼、鳳凰学園の教師を殺害、今回の聖導教会の管理している土地に侵入、及び聖天魔導士の屋敷にも入り込み、建物の損壊させ、大勢の人に暴行と殺人未遂を結構。極め付けに何よりも許せないのは私が大事にとって置いたデザートの机を台無しにしたことは大罪ですね!!」
「最後のは言う必要あるのか……?」
「そうか……デザートの件だけは謝っておく」
「謝った!?」
「じゃあ、その件は許しましょう。アルトさんからは王国で死刑するか、それとも聖導教会側で断罪するか相談中です」
「死ぬのは確定なのか」
「当たり前だ馬鹿!!お前のせいでレノがどんな人生を送ったと思ってんだ!!」
フレイは激昂し、確かにホムラという存在がレノの人生は大きく変わった事は事実だが、逆に言えば彼をここまで強くしたのは彼女という存在がいたからだろう。彼女に復讐するという想いを抱き続けていなければ、レノはあれほどまでに「強さ」を求めてはいなかっただろう。だからと言って、彼女がレノに対して行った行為が許されるものではないのだが。
「でも、そんな貴女の罪を全て帳消しにする方法を教えてあげます」
「なに?」
「はあっ!?」
ここまで仕出かしたホムラに対してとんでもないことを告げるアイリィにフレイは驚愕し、拘束されている彼女も訝し気な表情を浮かべると、
「現在の王国は深刻な戦力不足ですからね……頼りの勇者さん達も美香さん以外が全員死んじゃいましたから、リーリスの配下にある人魚族と魔人族、さらにはフェンリルを相手に同時に相手にするのは難しい状況なんですよ。頼りの綱の巨人族もダンゾウさんが回復しない限り、援軍を期待できません。森人族の方も非協力的ですからね」
「正気か?」
「何を考えてんだお前!?こいつは……!!」
「黙ってください。これはあくまでも提案に過ぎません。ですが、恐らくはアルトさんも教会側も納得するはずでしょう」
リーリスは間違いなく、近日中に闘人都市の宝玉を狙って訪れるだろう。その際にホムラの所持していたゲイ・ボルグを狙うのは確定的であり、このままあの槍と彼女をこの屋敷で管理するのは危険すぎる。そもそも魔槍は所有者以外の人間には扱えず、武器としても扱えない。
ならばホムラをこちら側に引き入れる事で戦力差を覆し、リーリスを打倒する方が賢明ではあるのだが、
「断る。他者に降る事など吐き気がする」
「なんだと!?」
「もう、話が進まないので貴女は黙っててくださいよ」
「ふげっ!?」
ドスッ!!と急所に指を突き立てられ、フレイはその場でうずくまり、容赦のない攻撃に仲間同士ではないのかとホムラが疑問を抱いていると、アイリィは彼女に顔を近づけ、悪役のような笑みを浮かべ、
「別に断ってもいいんですよ?ただ、貴女はあの男とやらに復讐も果たせず、ソフィアさんに負けたまま惨めな最期を迎える事になるんですよ~?」
「……何が言いたい?」
「汚名返上したいというのなら、私達に協力してください。そうしてくれるのなら、貴女の今まで犯した罪は帳消しにしましょう」
「そんな権限がお前みたいな女にあるのか……?」
「王国側には色々と協力してますし、それに彼等にとっても大きな利益がある話ですからね。最悪でも無罪放免とまではいかなくても、放浪島送りにはなると思いますよ」
「……何をさせる気だ?」
ホムラの発言に笑みを浮かべ、彼女は次の言葉を告げた瞬間、胡散臭げだった彼女の表情が一変し、先ほどのソフィアの成長を楽しんでいた時のように笑みを浮かべた。
「――フェンリルを殺してください。貴女1人で」
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