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魔王大戦編
意外な人物
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「……がはっ……!!」
「ソフィア!?」
口元から血が滴り落ち、ソフィアは想像以上のホムラとの実力差に愕然とし、未だにここまで力の差があるとは想像できなかった。それでも、ここで立ち上がらなければまた大事な人たちを目の前の女に奪われると判断し、残りの魔力を全て肉体強化に回そうとするが、先にホムラが彼女に向けて掌を構える。
「いい加減にしたまえ」
「むっ……」
だが、何時の間にかホムラの後方にはクサナギを所持したホノカが立っており、今までに見た事が無いほどの真剣な表情で彼女の首元に刃を構え、その隣にはセンリも杖を構え、アイリィはその隙にソフィアの身体を引きずって避難させる。
「どうやってここに来たのかは分からないが……これ以上の狼藉は見逃せない」
「何者かは分かりませんが……巫女姫様の大事なお方を、そして私にとっても大切な友人をこれ以上傷つけさせるわけにはいきません」
「ほうっ……なら、今度こそ戦うのか?」
「不本意ながらね」
ゴォオオオオッ……!!
クサナギから風圧が放たれ、センリも無数の光球を発現させ、一触即発の雰囲気に誰もが距離を取り、その間にもヨウカとコトミが傷だらけのソフィアの治療を行う。
「……レノ……!!」
「ソフィアたんっ……!!すぐに治してあげるからね!!」
「貴女に死なれたら私も困るんですよっ!!ベ〇マ!!」
「それ、洒落にならん……」
半分ふざけているのかと思うほどに興奮したアイリィも治療に参加し、三人の聖属性の治癒魔法が流し込まれ、ソフィアの肉体が再生される。そんな四人を庇うように大将軍であるレミアとカノンは前に出るが、それぞれが武器を所持しておらず、頼りの憑依術もナナの飛燕と氷華が収納されている魔石も装着していないため、唯一彼女が現在憑依できるのは未だに扱いに慣れていない「ミキ」だけである。
「しかし……」
レミアは後方を振り返り、もしも弱った状態のレノをミキが確認した場合は一体何を仕出かすか分からない。彼女の抱いているハーフエルフという種の憎悪心は憑依したレミア自身が良く知っており、ここで不用意に変身するわけにはいかない。
「くっ……こんな時に魔銃さえあれば……!!」
「無い物ねだりをする暇はないだろう」
「国王様?」
今まで傍観していたアルトがソフィアの元に跪き、重体ではあるが意地でも気絶しないとばかりに瞼は開いており、依然とホムラから視線を外さない。そんな彼の諦めない意思に敬意を抱く一方、アルトは覚悟を決めて歩み寄る。
「お、おい坊ちゃん!?」
「危ないっすよ!?」
「王子!!じゃなくて新国王!!あんたの出る幕じゃないよ!!」
慌ててバルたちが引き留めようとするが、それらを無視してアルトはホムラに歩み寄り、彼女も不思議そうに見つめると、彼は意を決したように冷や汗を流しながらも、
「……貴女は「紅の死神」ですね」
「……懐かしい名前だな」
ホムラは以前にある組織に所属していた頃の自分の異名を知る者がいた事に驚き、アルトに意外そうな表情を浮かべる。その反応にアルトは何か確信を抱いたのか、一度だけバルの方を一瞥して視線を戻す。
「剣乱武闘の後……ソフィアに頼まれてバルさんの素性をカゲマル部隊長に調査させた際、貴女の存在も知る事が出来た」
「何だって!?」
唐突な発言にバルが驚いた表情を浮かべ、アルトとカゲマル(彼女だけはクナイを構えてアルトの前に移動している)に視線を向ける。
「拙者は前々からソフィア殿に頼まれて、バル殿の怨痕を解く方法を模索していたでござる。任務の都合上、片手間でしか調査できなかったのでござるが、アルト王子……今は国王でござるが、ともかく直々に頼まれて本格的な素性調査を行ったでござる」
「聞いてないよ!?」
自分のためにそんな事まで頼んでいたのかとバルがソフィアに驚愕の表情を浮かべるが、それを無視してカゲマルは話を進める。
「バル殿が所属していたという組織の事に関しては掴んだでござるが、既に数年前に解散しており、あまり重要な情報は掴めなかったでござる。それでも組織の長を勤めていた人間を特定し、その者が放浪島の東部監獄に収容されている所まで掴んだでござるよ!!」
「……なんだと?」
カゲマルの言葉にホムラが異常なまでに怒気を膨らませ、そんな彼女にホノカとセンリがアルトを庇うように移動し、話を続けさせる。
「先の放浪島での白狼探索の際、拙者は内密に東部監獄に赴き、直接その老人から話を聞きだしたでござる。地上の補給物資の増量を対価にご老人は全てを語ってくれたでござるよ」
「ああ~……話しちゃいましたか」
彼女の言葉にソフィアを治療中のアイリィが苦笑いを浮かべ、意識が朦朧としながらもソフィアの脳裏に幼少の頃に出会った老人の事を思い出し、まさか彼が、バルやビルト、そして一時期ではあるがムメイを従わせていた組織の長を勤めていた存在だった事に驚きを隠せない。
「ご老人はある目的のために20代の頃に放浪島から脱出し、地上に降りると同時に大きな組織を形成し、一時期は闇ギルドの中でも有名な存在となったでござる。その際に深淵の森の族長であるムメイ、そしてソフィア殿の養母であるビルト、鳳凰学園の教師を務めたクズキ、おまけにバル殿を部下として従えさせていた事は判明したでござる!!」
「誰がおまけだっ!!」
「……それはともかく、カゲマルの話によれば彼は独自のルートで地上と放浪島を行き交っていたらしく、その中で興味深い少女の話を聞いたらしい」
「ちっ……」
ホムラは白けたとばかりに視線を反らし、そんな彼女の反応に困惑しながらも全員がカゲマルに視線を向けると、滅多に注目を浴びない彼女は少し照れながらも、
「老人はある理由で放浪島に一時帰還し、ある人物の捜索を行っている最中に地下迷宮の出入口に通じる出入口の一つから、あるダークエルフの少女を発見し、彼女を連れて地上に赴いたと話もしてくれたでござる」
「その彼女って……」
「……私だ」
カゲマルの言葉にホムラが忌々し気に肯定し、同時にソフィアの頭の中で放浪島の地下施設でベータが話してくれた自分と同じ出生のクローンの事を思い出し、ある答えが導かれる。ベータ達の監視を抜け出して地下迷宮から姿を眩まし、そのまま立ち去ったという。薄々と勘付いてはいたが、ソフィアの前の世代に生み出された少女こそがホムラだったのだ。
カゲマルの話が事実ならば、ホムラもソフィア同様に深淵の森のレイアのクローンであり、ある意味ではソフィアの「姉」に等しい存在である。
「老人は拾い上げた少女に生きるために必要な武術と魔法を教え込み、過酷な任務を与え続けたそうでござる。子供でありながらその才能は凄まじく、全身を血に染まりながらも戦い続ける姿を仲間達は紅の死神と名付けたそうでござるな」
「まさか……やっぱり、あの時のガキなのかい?」
「黙れ」
心当たりがあるのかバルは驚いた表情で呟き、苛立ちを露わにしたホムラは声を荒げるが、カゲマルは構わずに話を続ける。、
「しかし、ある任務の途中でその少女が消えたと聞き、すぐに老人も捜索隊を出しあそうでござるが、結局は消息不明となったそうでござるが……どうやら体内に刻まれた怨痕を自力で解除し、逃走していたようでござる」
「違う。私が奴の呪いを凌駕しただけだ」
バルたちは当時所属していたという「組織」の秘密を外部に漏らさないため、舌の部分に怨痕が仕込まれており、仮に他者に組織の内部情報を提示しようとした瞬間に怨痕が発動し、舌を噛み切る呪いが埋め込まれている。しかし、幼少の頃にホムラは身に宿していた「炎の聖痕」の力で怨痕を消失させ、自由を得た。
――彼女が執拗なまでに老人の後を追うのは復讐のためであり、折角ベータたちの監視から抜け出し、地下迷宮から脱出したにも関わらず、怨痕などという忌まわしい力で自分を無理やりに従えた老人の存在が許せず、この手で殺す事で忌まわしい過去を払拭するために生き続けた。
※この老人は元々はアイリィの契約者の1人であり、聖痕の収集は出来ませんでしたが地上から大量の魔力補給のための薬品を送っていたために見逃されていました。彼が組織を形成したのは聖痕の情報を集める為でしたが、まるで藁の山の針を掴むような話であり、結局は組織は解散して放浪島に帰還し、余生を過ごす事を決めました。
「ソフィア!?」
口元から血が滴り落ち、ソフィアは想像以上のホムラとの実力差に愕然とし、未だにここまで力の差があるとは想像できなかった。それでも、ここで立ち上がらなければまた大事な人たちを目の前の女に奪われると判断し、残りの魔力を全て肉体強化に回そうとするが、先にホムラが彼女に向けて掌を構える。
「いい加減にしたまえ」
「むっ……」
だが、何時の間にかホムラの後方にはクサナギを所持したホノカが立っており、今までに見た事が無いほどの真剣な表情で彼女の首元に刃を構え、その隣にはセンリも杖を構え、アイリィはその隙にソフィアの身体を引きずって避難させる。
「どうやってここに来たのかは分からないが……これ以上の狼藉は見逃せない」
「何者かは分かりませんが……巫女姫様の大事なお方を、そして私にとっても大切な友人をこれ以上傷つけさせるわけにはいきません」
「ほうっ……なら、今度こそ戦うのか?」
「不本意ながらね」
ゴォオオオオッ……!!
クサナギから風圧が放たれ、センリも無数の光球を発現させ、一触即発の雰囲気に誰もが距離を取り、その間にもヨウカとコトミが傷だらけのソフィアの治療を行う。
「……レノ……!!」
「ソフィアたんっ……!!すぐに治してあげるからね!!」
「貴女に死なれたら私も困るんですよっ!!ベ〇マ!!」
「それ、洒落にならん……」
半分ふざけているのかと思うほどに興奮したアイリィも治療に参加し、三人の聖属性の治癒魔法が流し込まれ、ソフィアの肉体が再生される。そんな四人を庇うように大将軍であるレミアとカノンは前に出るが、それぞれが武器を所持しておらず、頼りの憑依術もナナの飛燕と氷華が収納されている魔石も装着していないため、唯一彼女が現在憑依できるのは未だに扱いに慣れていない「ミキ」だけである。
「しかし……」
レミアは後方を振り返り、もしも弱った状態のレノをミキが確認した場合は一体何を仕出かすか分からない。彼女の抱いているハーフエルフという種の憎悪心は憑依したレミア自身が良く知っており、ここで不用意に変身するわけにはいかない。
「くっ……こんな時に魔銃さえあれば……!!」
「無い物ねだりをする暇はないだろう」
「国王様?」
今まで傍観していたアルトがソフィアの元に跪き、重体ではあるが意地でも気絶しないとばかりに瞼は開いており、依然とホムラから視線を外さない。そんな彼の諦めない意思に敬意を抱く一方、アルトは覚悟を決めて歩み寄る。
「お、おい坊ちゃん!?」
「危ないっすよ!?」
「王子!!じゃなくて新国王!!あんたの出る幕じゃないよ!!」
慌ててバルたちが引き留めようとするが、それらを無視してアルトはホムラに歩み寄り、彼女も不思議そうに見つめると、彼は意を決したように冷や汗を流しながらも、
「……貴女は「紅の死神」ですね」
「……懐かしい名前だな」
ホムラは以前にある組織に所属していた頃の自分の異名を知る者がいた事に驚き、アルトに意外そうな表情を浮かべる。その反応にアルトは何か確信を抱いたのか、一度だけバルの方を一瞥して視線を戻す。
「剣乱武闘の後……ソフィアに頼まれてバルさんの素性をカゲマル部隊長に調査させた際、貴女の存在も知る事が出来た」
「何だって!?」
唐突な発言にバルが驚いた表情を浮かべ、アルトとカゲマル(彼女だけはクナイを構えてアルトの前に移動している)に視線を向ける。
「拙者は前々からソフィア殿に頼まれて、バル殿の怨痕を解く方法を模索していたでござる。任務の都合上、片手間でしか調査できなかったのでござるが、アルト王子……今は国王でござるが、ともかく直々に頼まれて本格的な素性調査を行ったでござる」
「聞いてないよ!?」
自分のためにそんな事まで頼んでいたのかとバルがソフィアに驚愕の表情を浮かべるが、それを無視してカゲマルは話を進める。
「バル殿が所属していたという組織の事に関しては掴んだでござるが、既に数年前に解散しており、あまり重要な情報は掴めなかったでござる。それでも組織の長を勤めていた人間を特定し、その者が放浪島の東部監獄に収容されている所まで掴んだでござるよ!!」
「……なんだと?」
カゲマルの言葉にホムラが異常なまでに怒気を膨らませ、そんな彼女にホノカとセンリがアルトを庇うように移動し、話を続けさせる。
「先の放浪島での白狼探索の際、拙者は内密に東部監獄に赴き、直接その老人から話を聞きだしたでござる。地上の補給物資の増量を対価にご老人は全てを語ってくれたでござるよ」
「ああ~……話しちゃいましたか」
彼女の言葉にソフィアを治療中のアイリィが苦笑いを浮かべ、意識が朦朧としながらもソフィアの脳裏に幼少の頃に出会った老人の事を思い出し、まさか彼が、バルやビルト、そして一時期ではあるがムメイを従わせていた組織の長を勤めていた存在だった事に驚きを隠せない。
「ご老人はある目的のために20代の頃に放浪島から脱出し、地上に降りると同時に大きな組織を形成し、一時期は闇ギルドの中でも有名な存在となったでござる。その際に深淵の森の族長であるムメイ、そしてソフィア殿の養母であるビルト、鳳凰学園の教師を務めたクズキ、おまけにバル殿を部下として従えさせていた事は判明したでござる!!」
「誰がおまけだっ!!」
「……それはともかく、カゲマルの話によれば彼は独自のルートで地上と放浪島を行き交っていたらしく、その中で興味深い少女の話を聞いたらしい」
「ちっ……」
ホムラは白けたとばかりに視線を反らし、そんな彼女の反応に困惑しながらも全員がカゲマルに視線を向けると、滅多に注目を浴びない彼女は少し照れながらも、
「老人はある理由で放浪島に一時帰還し、ある人物の捜索を行っている最中に地下迷宮の出入口に通じる出入口の一つから、あるダークエルフの少女を発見し、彼女を連れて地上に赴いたと話もしてくれたでござる」
「その彼女って……」
「……私だ」
カゲマルの言葉にホムラが忌々し気に肯定し、同時にソフィアの頭の中で放浪島の地下施設でベータが話してくれた自分と同じ出生のクローンの事を思い出し、ある答えが導かれる。ベータ達の監視を抜け出して地下迷宮から姿を眩まし、そのまま立ち去ったという。薄々と勘付いてはいたが、ソフィアの前の世代に生み出された少女こそがホムラだったのだ。
カゲマルの話が事実ならば、ホムラもソフィア同様に深淵の森のレイアのクローンであり、ある意味ではソフィアの「姉」に等しい存在である。
「老人は拾い上げた少女に生きるために必要な武術と魔法を教え込み、過酷な任務を与え続けたそうでござる。子供でありながらその才能は凄まじく、全身を血に染まりながらも戦い続ける姿を仲間達は紅の死神と名付けたそうでござるな」
「まさか……やっぱり、あの時のガキなのかい?」
「黙れ」
心当たりがあるのかバルは驚いた表情で呟き、苛立ちを露わにしたホムラは声を荒げるが、カゲマルは構わずに話を続ける。、
「しかし、ある任務の途中でその少女が消えたと聞き、すぐに老人も捜索隊を出しあそうでござるが、結局は消息不明となったそうでござるが……どうやら体内に刻まれた怨痕を自力で解除し、逃走していたようでござる」
「違う。私が奴の呪いを凌駕しただけだ」
バルたちは当時所属していたという「組織」の秘密を外部に漏らさないため、舌の部分に怨痕が仕込まれており、仮に他者に組織の内部情報を提示しようとした瞬間に怨痕が発動し、舌を噛み切る呪いが埋め込まれている。しかし、幼少の頃にホムラは身に宿していた「炎の聖痕」の力で怨痕を消失させ、自由を得た。
――彼女が執拗なまでに老人の後を追うのは復讐のためであり、折角ベータたちの監視から抜け出し、地下迷宮から脱出したにも関わらず、怨痕などという忌まわしい力で自分を無理やりに従えた老人の存在が許せず、この手で殺す事で忌まわしい過去を払拭するために生き続けた。
※この老人は元々はアイリィの契約者の1人であり、聖痕の収集は出来ませんでしたが地上から大量の魔力補給のための薬品を送っていたために見逃されていました。彼が組織を形成したのは聖痕の情報を集める為でしたが、まるで藁の山の針を掴むような話であり、結局は組織は解散して放浪島に帰還し、余生を過ごす事を決めました。
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