種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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英雄編

ブランB

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「さっき二通りの作戦があるって言ってたけど、もう1つの作戦は?」
「こっちの方が確実性があるんですけど、実現できるかどうかは賭けですね。私とヨウカさん、それにセンリさんと……コトミさん辺りが力を合わせて鳳凰学園を多い囲む結界を形成するんですよ」
「結界って……そんな事までできるの?」
「理論上は可能なはずですけど……最低でも聖天魔導士クラスの魔力容量と器用さの持ち主が4人ほど存在しないと不可能ですね」
「それ、コトミとヨウカにはきついと思うけど……」


巫女姫であるヨウカならば追い詰められたら何らかの覚醒を経て(漫画の主人公補正のような)、すんなりと結界を発動させる事も出来るかも知れないが、流石にコトミには荷が重い。素質ならばワルキューレ騎士団の中でも群を抜いているらしいが、将来性はあっても現在の彼女は優れた魔導士レベルだ。

しかも聖天魔導士クラスとなると聖導教会の人間達の中でも限られており、さらに言えば最低でも30分以内にこの場に呼び寄せる等、不可能に近い。


「まあ、プランBはあくまでも保険ですから、あんまり期待しないで下さい。レノさん達は結界に侵入して、時間が経過するまで耐え忍んでください」
「了解……けど、そっちは大丈夫?」


敵の数が把握できない以上、学園の外部にもロスト・ナンバーズの勢力が隠れている可能性は高い。テンペスト騎士団に避難活動を行わせている間、奴等の勢力が住民達を襲い掛かる可能性がある以上、学園に精鋭部隊を召集させるのは危険だと思われるが、


「平気ですよ。少なくとも今回は相手も本気ですからね。確実に皆さん達を殺すために動いています。学園内に戦力を集結させているのは間違いありません。下手をしたら、リーリス以外の全員が待ち構えている可能性もあります」


昨夜の件を考えても、複数人のロスト・ナンバーズの主戦力がこの都市に滞在しているのは間違いなく、この鳳凰学園で決戦が始まるだろう。よくよく考えればソフィア達にとって初めてロスト・ナンバーズと接触した場所であり、皮肉にも彼等との決着をつけるのかもしれない。


「敵の数は未知数……だが、僕たちも成長した」
「そうですね……カトレアを陥れ、勇者達を洗脳し、世界に混乱の渦を引き起こした罪を償ってもらいます」
「この場所で戦う事になるとはね……そう言えばクズキの墓参りに行くの忘れてた。ミキの仇を討った後、手土産を持って行かなきゃ」
「それ、フラグみたいで縁起が悪いんですけど」


この学園都市でホムラに殺されたクズキの事を思い出し、よくよく考えれば一度も墓参りに赴いていない。彼は死後、色々と不審な点が見つかったので聖導教会で葬られている。墓というほど立派な墓は造りだされていないが、学校内に彼の墓標代わりに職員室の彼の机に発見された「向日葵」が植えられていると聞いている。


「さて……そろそろ行ってきてください。無理をせずにどうしても駄目なら退避してくださいね」
「退避できるかな……結界に入った途端、外に出られない仕組みとかされてそう」
「その可能性は45パーセントぐらいですね」
「地味に高い」
「ついでにこれがゴンゾウさんたちを呼び寄せる召喚魔方陣の羊皮紙です。正門に辿り着いたらこの羊皮紙に魔力を送り込んでください。センリさんに関しては私が連れてきますので」



アイリィからギガノ、ゴンゾウ、リノンの三人分の召喚魔方陣が描かれた羊皮紙を受け取り、三人は肉体強化で身体能力を上昇させ、学園に向けて駆け抜ける。特にソフィアは他の2人を遥かに上回る速度で前方を移動し、そんな彼女に追いかける形でジャンヌとアルトは必死に移動する。



――ダァンッ!!



「……遠いな」
「そうですね……何時の間にこれほどまで……」


建物の屋根を跳躍していくフィアの後姿に対し、2人は苦笑いを浮かべながらその後に続く。まるで離れていく彼女との距離が、自分たちの力の差の様に感じられ、この数か月の間にどれほど彼女が力を付けたのか実感する。

最初の頃、アルトがソフィア(レノ)に対して辛辣な態度を取っていたのはリーリスの「分身」による影響を受けていた事もあるが、実際には地下迷宮でカラドボルグを所有し、リノンとの結ばれる道を閉ざしたソフィアに対し、理不尽ではあるが憎悪のような感情を抱いていた。

しかし、時が経過して彼女は次々と大きな功績を上げ、何時の間にか周囲の人間達に認められていく。世界から迫害される存在のハーフエルフでありながら聖剣に認められ、腐敗竜を撃退した英雄の1人であり、それ以降も第四部隊の新部隊長として無理難題の任務を押し付けられても遂行し、何よりも彼女の周囲には特別な人間達が集まってくる。

巫女姫のヨウカや聖天魔導士のセンリを始め、交易都市の盗賊王とも親交関係を持ち、黒猫酒場の皆や、魔人族(ライオネル)や巨人族(ダイア)など、さらには魔物であるハイ・ゴブリン(カイと仲間達)とも友好的な関係を築き、種族問わずに数多くの者達と関わりを持つ。驚くべきことにソフィアはその全員と友達のように慕われ、誰一人として彼女をハーフエルフだからと言って気後れしない。

アルトも最初の頃は彼女がカラドボルグを所持しているから皆に特別扱いされていると思っていた。だが、それは大きな間違いであり、きっと聖剣が無かったとしてもソフィアは変わらずに数多くの種族の関係を深めていただろう。自分の生まれを否定せず、他種族と交わる事に何の迷いも見せず、実際にソフィアは一度たりとも他の種族に対して特徴的な偏見を持たず、幼少の時もゴンゾウやポチ子とも打ち解けた。


彼女は決して種族差別を行わない。それがソフィアの大きな魅力であり、旧世界の人間である「霧咲 雛」の記憶を持って生まれた事が関係している。この世界の住民たちが持つ種族差別という常識を受け入れなかった。だからこそ、ソフィアは数多くの仲間達と出会えた。


「……だが、いつか必ず」
「ええっ……追いついて見せましょう」


小さくなったソフィアの後姿に対し、アルトとジャンヌはすぐにも自分たちも力を付けて追いつくことを決意し、いずれは彼女の隣で対等に戦えるほどに成長する事を誓う。もうこれ以上、闘人都市のような彼女だけに負担を持たせる事態はなんとしても避けるため、2人は後を追う。



――この十数分後、鳳凰学園でロスト・ナンバーズとバルトロス王国の最大規模の決戦が繰り広げられる。
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