種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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英雄編

会議難航

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「話を戻すが……カゲマル部隊長」
「カゲマルと呼び捨てして欲しいでござる」
「分かった……カゲマル、国王の行方は?」
「拙者の配下の情報によると、どうやら学園都市に潜伏しているようでござる」


懐かしい単語が耳に入り、レノは2人の大将軍に見られながらもカゲマルの話に集中する。彼女曰く、学園都市に滞在している隠密部隊の配下によると、勇者の一行らしき者達を見かけたらしく、彼等は現在は閉鎖されている「鳳凰学園」に立て籠もっているらしい。

あの学園には約6年ほど前にレノ達も通っていたが、二度によるロスト・ナンバーズの襲撃によって現在も閉鎖中であり、学園には最低限の見張りしか配備していなかった事が仇となった。勇者達は人間大の袋を抱えて学園に忍び込む姿が目撃され、十中八九は学園内に居る可能性が高い。

しかし、隠密部隊が学園に侵入したところ、どういう事か森人族のプロテクト・ドームが鳳凰学園を覆うように張られており、侵入は出来なかったという。


「鳳凰学園……よりにもよってあの場所か」
「私達の母校を……許せん」
「ですが……森人族の結界が張られているというのが気になりますね」
「ムメイの仕業だよ。多分」


今回の国王誘拐の一件は間違いなくロスト・ナンバーズが関わっており、学園を覆う結界もムメイが配下に命じて造りだしたに違いない。


「結界の破壊は拙者たちでは不可能なので、一応は学園を覆い囲む形で部下を潜ませているので、何かあったらすぐに情報が伝わるでござる」
「結界の中に勇者達がいるなら、転移魔法は使えないはずだけど」
「本当かレノ?」
「少なくとも闘人都市では使えなかった」


闘人都市でムメイとの戦闘した時、彼女はプロテクト・ドームでレノを隔離し、転移魔法による脱出を封じた。もしも森人族の結界が転移魔法を阻害する能力を持っているとしたら、勇者達は鳳凰学園から移動できないはず。


「それが事実なら勇者達も動けない状況でしょう……しかし、ロスト・ナンバーズが関わっているとしたらすぐに国王を救助しなければいけません」
「だが、迂闊に結界を破壊して侵入すれば相手に転移魔法で逃げられる恐れがある。それにロスト・ナンバーズの主戦力が待ち構えている可能性もある」
「ふむっ……某と父は相対したことが無いので分かりませんが、それ程までに危険な存在なのですか?そのロスト・ナンバーズとは?」


ギガノの発言に対し、リノンとジャンヌとレミアが同時に頷き、


「私達もロスト・ナンバーズのメンバーと直接対峙しましたが、相当な実力者でした。最も、正確に言えば厄介な能力を所持しているというべきでしょうか……」
「厄介?」
「例の無機物から魔物を生み出す能力の事かのう?」
「それもありますが、私が相対したマドカと名乗るハーフエルフは奇怪な魔道電話を取り出し、誰かに指示を与えていました。どうやら能力以外にも、厄介な魔道具を所持しているようです」
「私の心臓部に埋め込まれていたという魔道具も、ロスト・ナンバーズという輩が造りだした物でしょうね……」


カノンは自分の胸元を抑え、確かに相手は得体の知れない技術力を誇り、会議室の全員が押し黙る。


「聞くだけでは訳の分からん連中のようだが……問題は何故、この時期に勇者達が反乱を起こして国王を誘拐したのかだ」
「明らかに我々にとっては最悪の時期に誘拐したからな……」


現在、各種族は連絡が取れない「魔人族」と「人魚族」の警戒体制に入っており、バルトロス王国も同様に領土に大勢の兵士を配備している。そのため城塞都市の警備が薄くなってしまい、このような事態に陥った要因の一つでもある。

鳳凰学園に国王が人質として監禁されている以上、何としても救い出さなければならないが、相手がどれほどの戦力で待機しているのが分からない事には迂闊に強行突破は出来ない。下手をしたら結界内にはロスト・ナンバーズのメンバーが勢揃いで待機している可能性があった。

相手は全種族を敵に回すような行動を堂々と行う集団であり、中には都市1つを崩壊し兼ねないほどの巨大隕石を呼び寄せる能力者まで存在する。不用意に結界を破壊して侵入を試みた場合、ロスト・ナンバーズの罠が待ち構えていたら、王国側も多大な被害を受ける。最悪の場合、鳳凰学園を巻き込んだ一大決戦に陥ってしまう。


「しかし、得体の知れない相手だからと言って国王を見捨てる事は出来ん!!」
「待て!!こんな状況だからこそ、冷静に判断しなければ……」
「何を言う!!今この時にも国王の身に何かが起きているとしたらどうする!?」
「王国の存亡がかかっているのだぞ!?下手な判断は出来ん!!」


今まで黙っていた大臣や将軍たちも騒ぎ出し、議論が一気に過熱する。その一方でアルトは国王代理という重責に頭を抱え、四人の大将軍達もロスト・ナンバーズとの決戦を考え、表情が険しい。しかし、レノだけは何かを考え込むように腕を組んで黙り込み、リノンはそんな彼に視線を向け、不思議そうに首を傾げる。


「……レノ?どうかしたのか?」
「いや……結界の侵入方法って破壊するか、それとも合言葉以外で侵入する方法があるの「かなって」
「合言葉……?」


以前に深淵の森に飛行船のフライングシャーク号で訪れた際、追跡してくるバジリスクを引き寄せてエルフの集落の結界に侵入し、脱出する際にレノが使った合言葉を使った。あの時は「開けクマ」という言葉で結界が一時的に解除したが、今回の鳳凰学園に張られた結界も同じタイプだった場合は合言葉が存在するはずだが、それを知る術がない以上はどうしようもできないが。


「アルト……王子様?」
「いや、アルトでいいよ……今更、君に敬語を言われても怖いんだが……」
「ごめん、一応は使った方が良いかなと思って」
「なんと……王子とため口を使う仲とは」
「それほど驚くべき事でもなかろう。聞けば、2人とも学園ではご学友と聞いておる」


アルトに対して普通に話しかけるレノにギガノが驚いた表情を浮かべるが、テラノの方は特に驚きはしない。実際、若い頃のバルトロス国王も今のアルトのように親しい人間ならば身分を気にせず話しかけるように伝え、実際にテラノも現在も公式の場以外では彼に敬語を使わずに話しかけていた。


「この王城の転移の門は他の種族の領土にも行ける?」
「可能だ。魔人族と人魚族を除き、他の種族の重要地点に転移出来る。だが、それを行うには事前に相手側に報告し、了解を得てからでないと使用できないが……」
「その割にはレフィーアは勝手に着た様に思えるけど……」
「……あれは嫌がらせの意味もあったんだろう。森人族は完全に人間という種を見下しているからな」
「何でそんなに人間と森人族って仲悪いの?」


前々からの疑問だが、どうして森人族は人間に対して異様なまでに嫌悪しているのかが気にかかる。ハーフエルフは忌み嫌われている理由は分かるが、人間が嫌われる理由が分からないのだが、


「そうだな……色々と理由があるんだろうが、人間は生きている内は必ず森林を伐採して生活の支えとしている。それが気に喰わないんだろう」
「納得」


そう言われてみれば確かに森人族は樹木を愛し、生活のために大量の森林を伐採する人間を嫌う理由が分かる。レノもハーフエルフであるため、その気持ちは分からなくはないが、別に今まで気にしていなかったので今更人間を嫌う理由にはならない。


「レノ、こんな時に転移の門で何処に行きたいんだ?何を考えているのか教えてくれないか?」
「いや、森人族の結界なら専門家に聞いた方が早いかなって」
「専門家……まさか、レノ……!?」


すぐに何人かが彼が何を言いたいのか理解し、目を大きく見開かせ、


「うん、レフィーアに直接聞いてみようかなって」
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